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親父は山が趣味で、昔は家に山仲間を連れて来ては飲んだくれておりました。 そんな親父の友人のお話です。 ある山。広大な山容で、ガスが出たりしたら迷いやすい山です。魔の山とも呼ばれているそうですが。 良く知られた山です。有名な小説の舞台にもなった所です。 その山で道に迷い彷徨ううちに、急斜面を滑落してしまい、足が折れた。 身動きも出来ず、助かるには偶然の発見を待つしかない。夏山で、装備も十分だったのが幸いでした。 食料を細々と食い繋ぐ覚悟をしてから2〜3日が経ちました。 大自然の只中とは言え、目に入る景色は何十時間も同じ。同じ木、同じ草、同じ地面。 夜などは、周囲何キロには俺一人しか居ないという孤独感に襲われます。 救助など、来る当ては全くと言って良いほど、無い。 正常な精神状態を保つには非常に困難な状況だったそうです。 それでも何とか正気を維持できたのは、日中にやって来る、数羽の小鳥達のおかげでした。 何と言う名の鳥かは知りませんが、雀よりやや大きな小鳥が、何処からか飛んで来ては、すぐそこの 茂みに潜り込み、飛び去って行く。その合間に、不思議そうに自分を見ては可愛らしい鳴き声をあげ、 それで心が和みました。小鳥達は、茂みを飛び立つ時には口に何やら餌を咥えて行きます。 巣で待つヒナに与えるつもりなのでしょう。そう思うと、家に残してきた子供達の顔が思い浮かび、 こんな所で死んでたまるかと、気力も沸いて来ました。 あの鳥達が近くに居ると思うと、夜の孤独も少しは緩和されたそうです。 そしてその後、親父の友人は、奇跡的に通りがかった営林の人に発見され、通報を受けた山岳レスキュー によって助けられました。 自分のすぐそばに居た、もう一人の遭難者と共に…。 ―と言うのも、救助に来たレスキューの人が見つけたのですが、小鳥達が餌場にしていた藪の中に、遭難 者の遺体があったそうです。 遺体は、鳥に食い荒らされて、それはそれは無残な姿になっていたそうです。 |
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