正徳年間(1711〜15)の出来事である。 三河国吉田(現在の愛知県豊橋市今橋町)で古物商を営む善右衛門の元に、ある武家から幕を五張欲しいと注文が入った。町中から幕を集めたが三張しか入手出来なかった為、善右衛門は岡崎まで足を伸ばしたがそこでも幕は見つからない。仕方なく、善右衛門は名古屋まで買出しに向かった。 道中陽が落ちて、善右衛門は知人の宿に入るが、急ぎの用の為、一休みした後に馬を仕立てて出立した。天気は良く風も穏やかで、中秋の名月が明るく夜道を照らしている。 宿を出ると、馬子が名古屋へ抜ける近道を知っていると言うので、善右衛門は渡りに船と喜んだ。 やがて道は人家も行き交う人もないススキが生い茂る野原に出た。 馬子は烏頭村だと言う。 野原に入って間もなく、突然激しい突風が吹きつけてきた。 馬は堪らず膝を折り、地面にうずくまってしまう。 突風は再び吹きつけ、頭を抱えて伏した善右衛門は息も出来ない程で、気が遠くなった。 やがて、何者かがずしんずしんと足音を響かせながら近づいて来た。 善右衛門が顔を上げると、少し先の林の方から仁王の様な大入道が歩いてくるのが見えた。 身の丈は一丈三、四寸(約4m前後)もあり、坊主頭で目がギラギラと鏡の様に光っている。 激しい風にもびくともしていない。 善右衛門が地面に突っ伏したまま震えていると、やがて風はぴたりと収まった。 大入道の姿も無く、一息ついた善右衛門は馬子と連れ立って後ろも見ずに逃げる様に先を急いだ。 一里も進むと夜が明け始め、一軒の民家があった。 善右衛門は一休みさせてもらいつつ、主に大入道の事を訊ねると、このあたりではそんな物が出るという話はないと。狐狸が化けて人を驚かす見越し入道という化物話があるがその類ではないかと言う。 その後、名古屋で首尾よく幕を仕入れた善右衛門だが、急に体調を崩し、食欲を無くし発熱する。自宅に戻り医者に掛かったり薬を飲んだりしても、熱が上がるばかりで、13日目には遂に命を落としてしまった。 人々は善右衛門が出会ったのは疫病神ではないかと噂したと言う… 以上は西村白烏が『煙霞綺談』の中で紹介している奇談です。 西村白鳥は、遠州金谷宿の人。吉田の林自見との縁で、自見の『市井雑談』の続編として『煙霞綺談』を 編纂し安永2(1773)年に発表しました。『煙霞綺談』は、三河遠江あたりの巷談・俗談集です。 さて、身長4mで目がギラギラと輝く大入道。一説には、この正体は「巨人型宇宙人」ではないかと云わ れております。 ↑もしかして、コイツか?(フラットウッズ・モンスター=身長3m) 確かに、そう言われると、大入道が現れる前の突風はUFOの着陸を思わせるし、善右衛門の病状はUF Oからの放射線を浴びて、放射線障害になったとも思われます。 放射線を5Gy(グレイ)以上被曝すると、小腸内の幹細胞が死滅し、吸収細胞の供給が途絶する。このた め吸収力低下による下痢や、細菌感染が発生し、重症の場合は20日以内に死亡する。 ―と言う事なので、善右衛門は最低でも5Gy以上の放射線を浴びたのでしょう。 5Gyと言うと、例えば広島型原爆の爆心地から1キロ位の所で被爆したのと同程度の放射線量です。 UFOって、なんて危険な乗り物なのでしょう。乗ってる宇宙人は平気なのでしょうか? ―そんな事はいいとして、宇宙人説にはちょっと疑問も。 これがUFO着陸・宇宙人遭遇だとしたら、UFOが降下する描写が無いのは何故なのでしょうか? 天気は良く、見晴らしの良い野原ならば、UFOが降りてくるのも良く見えた筈ですが。 身長4mの大男が乗ってきたUFOなら、円盤型としたら高さ10m・直径30m位あってもおかしくありま せん。 そんなでかいのが空から降りて来たら、バカでも気付く筈です。 百歩譲って善右衛門さんは馬上で居眠りでもしていたのかもしれませんが、馬子は馬を牽いて歩いている のだから、UFOが降下してきたら当然気付く筈です。 しかも、善右衛門さん達はUFOが飛び去るのも見ていないではありませんか。 ほんとうに 降りてきたのか 宇宙人 ―思わず一句詠んでしまいました。 もしかして、万が一にもこれが宇宙人遭遇事件ではないとすると、何なのか!!?? そこで、愛知県の旧地名を漁ってみたのですが、どうにも「烏頭村」と言う地名が出てこない。 位置関係からすると、岡崎と名古屋の間の筈なのですが。(もしそのあたりに「烏頭」と言う地名がある とご存知の方がいらっしゃいましたら、是非お知らせ下さい。) そのかわりに見つかったのが、岡山県井原市美星町の「烏頭」と言う地名。 美星町は今では井原市の一部となっておりますが、平成17(2005)年3月1日に井原市に編入されるまでは 岡山県小田郡に属していました。 この岡山県小田郡、昔は備中国の一郡であり、そこには「見越し入道」の伝承が残っているのです。 ちなみに「見越し入道」とは… 日本の妖怪の一つで、各地に伝承が残されている。 見越し入道は長崎県壱岐での呼び名で、「のびあがり入道」(長野県・静岡県)、「高坊主」(徳島県)、その他「次第高(しだいだか)」、「高入道」、「乗越入道」、「見上入道」、「入道坊主」、「ヤンボシ」など全国に数多くのバリエーションを展開している。「尼入道」と言う女性版もいる。 一人歩きの夜道に現れることが多く、大抵は僧の格好をしている。 普通の大きさから大きくなるものや最初から大きな姿で現れるものもあり、首が伸びるものもある。 見上げれば見上げるほど大きくなり、見越し入道に飛び越されると死ぬ、喉を締め上げられるともいい、入道を見上げたために後ろに倒れると、喉をかみ殺されるともいう。 見越し入道を撃退する方法もあり、「見越し入道見抜いた」と唱えると入道は消える(九州・壱岐島)、頭から足元にかけて見下ろす(岡山県・小田郡)、度胸を据えて煙草を吸うと消える(神奈川県)、差金で見越し入道の高さを計る(静岡県)などが伝えられている。 見越し入道の正体は、狐や狸が化けたもの、古道具が化けた物、崇り神の一種など諸説あるが、結局は良く判らない。 「見越し入道」に限らず、妖怪話や幽霊話などでは、全国各地に類話が存在するものが多くあります。 これは、江戸時代に街道が整備され、人・物・金の流通が発達していくと同時に情報の流通も活発になっ て、巷談・俗談・奇談の流布範囲も全国的になったからではないでしょうか。 遠い場所の話が口伝で旅をして、違う土地に定着すると言う事が頻繁に起こったのだと思います。 まるで、草花の種が鳥や風に運ばれ遥か遠くの土地に根付く様に。 ちなみに、この手の話の運搬役は、諸国を旅しながら商いをする行商人達だったとか。 特に富山の薬売り商人は、訪問先での話のツカミに各地の奇談を語っていたそうです。 今ほど自由に旅行が出来ない当時の庶民にとって、遠い国での不思議な話は、これ以上無く興味深いもの だったのです。 先述の通り、『煙霞綺談』は三河遠江周辺の奇談を集めたものとされておりますが、収集されている話の 中には、場所が今ひとつ不明瞭な話や、他国で流布する話が三河遠江の事件として焼き直されているもの も見受けられます。 私は、光る目の大入道の話も、備中国の「見越し入道」の伝承を元に書かれた話ではないかと思います。 烏頭村と言う地名は、元ネタの名残なのではないでしょうか。 突風を伴う妖怪としては、真っ先に天狗が思い浮かびますし、目が光るのはヌエや化け猫など「夜系妖 怪」の特徴です。原因不明の熱病で死ぬのはまさに疫病神の崇りです。 西村白鳥さんは、その様な妖怪変化のハイブリット型として、この大入道を描いたのではないのかなと、 そんな風に思います。 ただ単に「見越し入道」の話をなぞるだけではつまらなかったのでしょう。たぶん。 [UFO] ブログ村キーワード
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