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「何百年か前のミッキー・マウス」の記事から繋がって、有名な都市伝説ネタを一つ。ある方からのリクエストにお
応えして記事にします。それは―
あの!!ウォルト・ディズニーの遺体が冷凍保存されている!!
と言うウワサ。TVや都市伝説本にも良く出てくるネタです。
ウワサの内容はこんな感じ。
バージョン①;1966年12月15日、ウォルトは当時の医学水準では治療が不可能なウイルス性の難病により死去した。葬儀は身内だけで執り行われたが、その場に彼の遺体は存在しなかった。ウォルトの遺体は密かに冷凍保存処理されていたからだ。その後、遺体は極秘裏にある場所に移された。それは、カリフォルニアのディズニーランドにある「カリブの海賊」の地下である。
ウォルトの死後数週間を経て、ディズニーの幹部達が試写室に呼ばれ、ウォルトが亡くなる直前に撮影したフィルムを見せられた。その中でウォルトは、この世のものとは思えないほど不気味な表情で椅子に座り、今後の計画を1人ずつ名指しで伝えた後、「近々、また会おう。」と言って姿を消した。
21世紀に入り、ウォルトの罹患していた病気の治療法は確立されたが、遺体を解凍する技術が開発されていないので、今なおウォルトは冷凍されたまま眠り続けている…。
バージョン②;医師に余命いくばくもない事を宣告されたウォルトは極度に死を恐れるようになり、友人の葬儀にも参列しなくなった。1966年12月15日、ウォルトは死去し、身内だけで葬儀が行われたが、その場に彼の遺体は存在しなかった。実は、ウォルトはまだ生きており、密かに自分の葬儀を見守っていたのだ。仮の死を迎える事により、本当の死を免れようとしたのだ。その後、ウォルトは生きたまま冷凍保存され…(以下同文)。
と、「死んでから冷凍」「生きたまま冷凍」の2つのバージョンが存在します。
「ウォルト・ディズニー冷凍保存説」の根拠としては、
①ウォルトが、治療不可能なウイルス性疾患に罹っていた事。
②葬儀が身内だけで行われた事。
③ウォルトの墓が存在しない事。
④ウォルトは、スタッフに人体の冷凍保存について詳しく調べる様に指示していた事。
⑤同時に、主治医に1975年に蘇生させる様に頼んでいた事。
などがあります。
さて、この根拠が正当な物かを調べてみました。
まず、①は間違いです。ウォルトの死因は肺がんに伴う急性の循環器不全と言う事です。主治医のバート・H・コ
ットンの証言ではウォルトの左肺気道にがんが生じていたとの事です。
②は事実です。ウォルトの葬儀は、遺言により身内だけでしめやかに執り行われたそうです。
③については、これは間違い。ウォルト・ディズニーの墓はロサンゼルスにあります。日本語のサイトでは引っか
かってきませんでしたが、英文のサイトでは一発でヒットしました。所在地はForest Lawn Memorial Park (Glenda
le),Los Angeles County, California, USAとなっております。
(↓)ウォルト・ディズニーの墓
④についても、これは事実でした。ミッキーマウスクラブの脚本家は人体冷凍保存についてウォルトから質問さ
れて資料係に調査を依頼した事があり、その調査をした資料係の証言もあります。【注1】
⑤についても、1969年にフランスの新聞「イシ・パリ」紙で、記事になったと言う事実がありました。
さて、ここまでは、この話が事実なのか単なるウワサなのか、判然と致しません。
少なくとも、「臓器売買の為に子供が誘拐される」とか「地下に巨大カジノがある」とか言う他のディズニー系の都
市伝説よりは信憑性がある様なない様な…。
そこで、拙いリサーチ力をふりしぼり、更に調査を進めた結果、このウワサの出所に突き当たりました。
それは、一本の新聞記事でした。
ウワサを最初に流したのは、ナショナルスポットライトというアメリカの大衆紙に載った記事でした。
「ナショナルスポットライトの記者が、看護師を装ってウォルト・ディズニーが息を引き取ったセントジョセフ病院
の霊安室に潜入したところ、ディズニーは金属製の円筒の中で眠っていた」という内容です。
その後、イエローペーパーのミッドナイト誌が、「ウォルト・ディズニーは生きたまま冷凍されている」と一面の
トップで報道し、ディズニー・アニメーションスタジオの資料係の話として生前のウォルト自身が大量の低温冷蔵
資料を収集していたと伝えました。
イエローペーパーの与太記事を真に受ける人は、当時は殆んど居なかったと思いますが、ウワサがウワサを呼
び、尾ひれがついて、いつしか都市伝説へと成長して行ったのでしょう。
(バージョン②の「生きたまま…」の方が元ネタに近いんですね。―まあ、どっちでもいいですが。)
ディズニーアニメーションスタジオのアニメーター、ウォード・キンボール氏は、こうした噂が流れるのを聞いて「い
かにもディズニーらしい」と述べ、またウォルト自身ももっともらしく振る舞って生前から冷凍の噂を煽りた
てていたそうです。「イシ・パリ」紙の記事は、この辺から出てきたのだと思います。
冷凍保存されている(とされる)場所に「カリブの海賊」が選ばれたのは、ロスの「カリブの海賊」はウォルト自身が
設計にかかわった最後のアトラクションであり、ウォルトの死後3ヶ月程でオープンした為、一緒に冷凍保存施設
を作っていてもおかしくない―と思われたからでしょう。【注2】
蛇足ですが、人体冷凍保存のパイオニアと言われる「アルコー延命財団」が初めて人体の冷凍保存を行ったの
が1976年ですから、ウォルトの死後10年も経ってからです。つまり、ウォルトが亡くなった時点では、人体冷凍保
存の技術はまだ確立されていなかったのです。
そして、「冷凍保存」を否定する決定的な証拠は、ウォルトの死亡診断書です。
ロサンゼルス郡の戸籍登録所にはウォルトの死亡診断書が保管されております。
それは、きちんと申請すれば誰でも見る事ができるそうですが、そこには「(ウォルト・ディズニーの遺体は)1966
年12月17日にForest Lawn Memorial Parkで火葬されたと記載されています。
死亡診断書に虚偽の記載はできません。
アメリカでは、プレスリーやジョン・レノン等、「実は生きている」系の都市伝説は良く聞きますが、「冷凍保存され
ている」と言われるのはウォルト・ディズニーだけの様です。
夢と魔法の王国の主としては、むしろそちらの方がお似合いなのかも知れません。白雪姫や眠れる森の美女だ
って、永い眠りから甦ったのですから…。
【注1】遺体の冷凍保存という発想は、ロバート・エッチンガー博士により1962年に提唱されております。
【注2】都市伝説芸人のSさんが、TVで冷凍保存されている場所を言おうとしたら「命にかかわるので…」と途中でカットされたらしいですが、まことに上手い演出ですな。
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