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貸別荘の天気雨

関東近郊の某所にある、瀟洒な貸別荘。
 
数年前の夏の事です。
 
その貸し別荘で仲間内の飲み会をやろうと言う事になり、Fさん一行十数人は都心から車で2時間ほど走って、
 
そのコテージに入りました。そこには広い庭と専用の露天風呂があり、Fさん達は庭でバーベキューをして、温
 
泉を堪能し、また庭に出て飲んでは騒いでおりました。
 


 
日付が変わる頃です。突然、バラバラと大粒の雨が落ちてきました。皆酔って笑いながら酒を抱えてコテージに
 
逃げ込みます。「盛り上がってるのに、何だよ〜」「まあ、中で飲みなおそう!!」なんて言いながら。でも、夜空は晴
 
れ渡り、満点に星が瞬いています。「タヌキの婿入りだな」「キツネの嫁入りだろ?」と軽口を叩きながら、しかしF
 
さんは酔った頭の片隅で「雲ひとつないのに、天気雨なんか降るものなのか?」とは思っていたそうです。強風
 
でも吹いていれば遠くの雨雲からとも考えられるのですが、風は全く凪いでいます。
 
 
広いリビングで飲みなおしていると、数人いた女性陣は「私達はそろそろ…」と二階の寝室に引き上げていきまし
 
た。何だつまらないと言いながらも、男ばかりで猥談に花を咲かせていると、今度はどこからかギシ、ミシ、ギ
 
シ…と妙な音がします。「何だ、この音?」「家鳴りだろ?以外に安普請なのかもな、この別荘」「まあ、飲もう飲も
 
う」と言っている傍から・・・
 


 
どーん
 
と物凄い音が鳴り響きました。「雷が落ちたんだ」「でも、光ったか?」と、誰かが言います。その言葉にFさんが
 
外を見ると、相変らず星空から激しい雨が降っています。
 
 
ギャーッ!! キャアアア!!と、複数の悲鳴が二階から聞こえたのがその時でした。
 
女の子達が何か騒いでいる。
 
「おい、見てこいよ、どうせ雷でビビッたのか、ゴキブリでも出たんだろう」と先輩格に言われ、Fさんと数人が二階
 
に上がってみると、女の子達が廊下で一塊に座り込んで泣いていました。尋常でない雰囲気に、「どうしたどうし
 
た」と訊ねても、あうあう言うばかりで言葉になりません。まあ、下に行って落ち着けよと、一人ひとり抱えるように
 
リビングに連れて行きました。
 
 
泣きそぼって、まともに喋れない女の子達に酒を飲ませ、何とか喋るようになるまで10分以上。
 
ようやく落ち着いた女の子達は、口を揃えて「幽霊が出た」と言います。ぽつぽつと語るのを聞き取ると、ベッドに
 
入っても女子話に花が咲いてなかなか寝付けなかった時にどーんと大きな音がして、天井の梁に、首吊りしてる
 
人が現われた…と、そんな感じの話でした。寝室は勾配天井で、太い梁が通っているのはFさんも昼間に見てい
 
ました。
 


 
まさか、馬鹿馬鹿しい、酔っ払って幻覚でも見たんだろ、男連中はそう言いながらも心なしか青ざめている。先ほ
 
どの怪音が影響しているのでしょう。よし、行ってみようと、先輩格が言いますが、女の子達は絶対駄目と引き止
 
めます。まじ、今でもいるかもしれないからと。そう言われると、男気を見せたくなるのが悲しい性で、男連中はそ
 
んな幽霊なんている訳ない、行こう行こうと武者震い。それでも、誰が先頭を切るか躊躇している様子なので、幽
 
霊とかは全く信じていないFさんは「じゃあ、行きましょう」と、切り込み隊長を志願し、階段に向いました。
 
 
二階の、女子部屋の前に立ち、「いいですか、開けますよ」とFさんが言うと、一同ごくりと唾を飲む…かと思いき
 
や、どいつもこいつも缶のビールやウイスキーのグラスを片手にし、ごくりごくりと喉に流し込んでいます。
 
 
ともあれ、キイイとドアを開け、電気を点けると…首吊り幽霊の姿はありません。
 
 
なあんだ、いないじゃないかと安堵した一同が部屋の中に入ると、バーンとドアが閉まりました。
 
その時、   どーん!!
 
再び大きな音が響き、部屋中に 
 
ううううううううううううぉぉぉぉぉ〜
 
男の呻き声と言うか、断末魔と言うか、そんな感じの声が満ちる。
 
そんな中、男達は金縛りに遭ったように硬直するばかりです。
 
 
何が起こっているのかサッパリわからないFさんが窓に目を向けると、ビビリまくっている自分達が映り、そして…
 
その後に、見慣れぬ、中年男の姿がありました。これぞ幽霊とばかりに、恨めしそうな顔で自分達を見ている(様
 
な感じがする)。ギクリとして振り向いても、そんな男はいない。でも窓を見直すと、いる。もう一回窓を見ると、い
 
るし、もう一回振り向いても、―いない。
 
「と、兎も角、で、出ましょう」さすがに背筋が寒くなったFさんが促して、一同はさっきの勢いは何処へやら、ほう
 
ほうの体でリビングに戻りました。
 


 
どうでした?いましたか?また凄い音がしましたけど?と聞いてくる女の子達や護衛役で残っていた男から聞か
 
れても、何かヘンな声がした…としか答えられない一同。兎も角、この別荘は変だと言う事になり、このままここ
 
で一晩明かそうと言う事になりました。酔いは醒めましたが宵は深くなっていき、いつしか雑魚寝状態。そのまま
 
何事も起こらず朝を迎えました。
 
庭や道路には昨夜雨が降った痕跡は全くありませんでした…。
 


 
前日談です。怪談で、「前日談」とは、あんまり聞きませんし、私も初めてですが。
 
 
実はその貸し別荘を手配したのはFさんで、それはFさんの勤める会社がその貸し別荘を運営する会社と保養
 
所契約を結んでいたからなのですが、Fさん達が泊まる数日前に担当者から、そのコテージで昨日首吊りがあ
 
ったと報告されていたそうです。担当者から、予約取り消しますか?と打診されたのですが、幽霊だなんだのは
 
頭から信じていなかったFさんは、「別にそのままでいいっすよ」と答えたとか。
 


 
後日談です。
 
首吊りがあったのは、二階の寝室、あの夜女の子達が使っていた部屋だった事が判明。
 
蛇足ながら、あの貸し別荘は現在も稼働中。御祓いとかが実施されたかは不明。
 
 
さらに蛇足ながら、Fさんによると、雑魚寝した仲からか、その後結婚したカップルがいると…。
 
 
「困るわ、だって異常な状況で結ばれた男女は長続きしないんだから」
 
とは映画『スピード』のラストシーンを飾るセリフですが、さて、大丈夫なんでしょうか???
 


 
ヘンなオチですんません。こんなんだから、「読むと良く眠れる怖い話ブログ」になっちゃうんですね〜。
 
でも、元ネタ自体はリアルですよ。

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