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嫌な話

すごく嫌な話を聞いたんですが、記事にしようかどうしようか数日間迷った挙句、記事にします。
 
すごく嫌な話なので、あんまり読まない方がいいと思いますので、読まないで下さい。
 
 
読むなと言うなら記事にしなければ良いのですが、迷った挙句、あるきっかけがあって、記事にする訳です。
 
だからと言って、当ブログにご訪問頂いたあなたが、この記事を読む義理も義務もないので、
 
読まないで下さい。
 


 
先日、ある人がこんな事を話してくれました。
 
 
 
すごく、怖い体験をしたんですよ。TOさん聞いてくれます?あなた、好きでしょ、そう言うの。
 
―その時、私はホームにいたんです。
 
新幹線のホームです。
 
「こだま」しか停まらない駅です。無味乾燥な、灰色のホームです。
 
待ってたんですよね、列車を。でも、「こだま」って、なかなか来ない。判ってるんで、のんびり待ってました。
 
その時私は、ホームの一番端のベンチに座ってました。
 
左隣には、母娘連れがいました。赤いジャンパーを着た女の子はまだ4・5歳でしょうか。
 
二人して手遊び歌を口ずさみながら、楽しそうに遊んでおりました。
 
左前には、若い男が立っていました。髪は金髪で、赤いジャケットを着て、イヤホンをつけて、立ってました。
 
 
灰色のホームに、幼女と男の着る赤い服の色が目に染みこむようでした。
 
 
私の周囲にはもう一人、私の前に立つ、若い女もいました。
 
黒いハーフコートの下から伸びる脹脛はすらりとしており、黒光るハイヒールを履いています。
 
後からなので顔は見えませんが、全身から「いい女オーラ」が漂っていました。
 
セミロングの髪はウイッグなのか、その様に色を変えているのか判りませんが、見事な銀髪でした。
 
女は、携帯を左耳に押し当て、熱心に何事かを話し込んでいます。
 
 
見るともなく見ていると、女は、コツコツとヒールを鳴らして、何となくホームの縁に歩み寄っていきます。
 
ホームを、真っ直ぐ軽やかに、線路に向って歩く女の後ろ姿を眺めながら、その時、私はふと思いました。
 
 
近頃、新幹線のホームには、必ずや柵とホームドアがあるのに、この駅にはないなあと。
 
田舎の駅なので、まだ改装工事の手が廻ってないのかなあと。そう言えば、この駅、何駅だったっけと。
 
名前も憶えられぬほどに、何て事のない、田舎の駅なんだなぁと。
 
 
いや、それはそうと、今や女はもう、白線も跨いでしまいました。
 
 
向かい側のホームに人影はなく、「間もなく、列車が通過します。ご注意下さい」と、無機的な女性音声が
 
空しく響いています。
 
隣の母娘の歌声が途切れたので、ささっと周りに目をやると、赤いジャケットの若い男も、赤いジャンパーの
 
幼女も、その母親も、声もなく女の後姿を注視しています。
 
 
 
妙な静寂があたりを包んでいました。
 
 
 
女は、相変らず携帯と熱心に話しながら、そのまま、すとんと線路に降りました。
 
無言のまま、固まって見守る、ホームの人間。
 
 
 
さらに、静けさが増したような気がしました。
 
 
 
女は、何でもないように、携帯を耳にしたまま、そのまま向かい側のホームへと、線路を渡って歩いて行く。
 
 
若い男が、あ、あぶねえ…と、呟きました。
 
ほぼ同時に、スピーカーが割れるほどの大音量で、危険です退去して!!列車が通過…!!
 
ほぼ同時に、ピィー!!と疳高い警笛と共に、列車が突っ込んで来ました。
 
隣では、母親が、見ちゃ駄目!!と叫びました。
 
私はその声につられて、母娘の方へ、反射的に顔を向けました。母親が娘の顔を抱きしめています。
 
若い男が、わあぁ!! と叫んだ瞬間。
 
ぱん!!
 
と、大きな風船が弾けるような音が響きました。
 
あっ!!轢かれ…!!と、思った私の右の頬に…
 
べちゃっ
 
と何か生暖かい、真っ赤な、粘液質のようなモノが貼りつき、私はうわああああああ!!と叫んで。
 
 
−目が覚めました。寝汗で、ぐっちょりでした。
 


 
 
 
 
…な、なあんだ。夢、だったんですかぁ。いやあ、ビビッた。凄くリアルに話すんだもん。
 
聞き入っていた私は、逆に安堵しながら、そう言いました。
 
―そうなんです。夢だったんです。けど、生々しくて、リアルな夢でした。
 
 
ある人は、苦笑いとも照れ笑いとも、判別つかぬ表情を見せました。
 
そして、少しばかり間を置いて、真剣な眼差しを向けながら、私にこう言いました。
 
 
―でも、ですね、TOさん。目が覚めたのは会社に行くにはまだ早い時間だったんですが、嫌な汗かいてるし、
 
心臓はバクバクしてるし、二度寝をする気にもなれなくて、シャワーを浴びようと、風呂場に行って…。
 
今度は本当にうあーて、叫んじゃいましたよ。…だって…。
 
鏡見たら、左の頬に、べったりと血がついていたから。
 
―慌てて、洗い流しましたけどね…。
 
吹き出物が破けたのかとも、かみそり負けした所から血がでたのかとも、思ったんですけど、そんな跡は
 
全く無くてね。
 
ともかく、気味が悪い、体験でしたね…。
 
 


 
 
―と、まあ、そんなお話でした。
 
もし、ここまで、お読みになった方がいらっしゃったとしたならば、お詫び致します。
 
何だか、すごく、嫌な話ですよね。胸がムカムカしますよね。
 
 
で、最後に、何でこんな嫌な話を記事にしたかと言う、そのきっかけをお話します。実は。
 
 
昨夜、私も、全く同じ夢を見たんです。
 
 
まあ、それは、そう言う事もあるでしょう。
 
聞いた話が、インパクトがあって、その影響で、同じような夢を見た…と言うような説明はつきます。
 
 
でも、ですね。
 
 
顔を洗う時に鏡を見たら、左の頬に、べったりと、血がついていたんです。
 
そう。私の左の頬にも。
 
無論、吹き出物も、かみそり負けも、何にもないのに。
 
 
この事実は、どう説明したら、いいのでしょうか。
 


 
ここまで、この記事を読んで頂いた方がいらっしゃるとしたら、お詫び申し上げます。
 
本当にごめんなさい。
 
もし、今晩、あなたが、田舎の新幹線の駅の夢を見たらどうしよう、と心配でなりません。
 

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