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最後のドライブ

トリはSさんのお話。
 
以前勤めていた某自動車ディーラーでの体験談との事です。
 


 
お客さんが車の中で亡くなり、(自殺だったらしいです)、もう乗らないから売却したいと遺族から申し出があり、
 
その車を引き取りに行かされたのが、当時まだまだ駆け出しだったSさん。
 
嫌々ながら車を回送してきて、地下の駐車場の一番隅に置いたそうです。
 
 
翌日、出勤してみると、先輩方が何やら騒いでいる。「どうしたんですか」と訊ねると、「お前、例の車、地下に
 
置いたよなあ」と聞いてきます。「はい、確かに置いたじゃないですか」と答えると、先輩は、「でも、そこに、ある
 
んだよ」と言う方を見ると、あっ、確かに、あの車が、表の駐車場に停まっています。出勤してきた全員に問い
 
質しても、誰もその車を移動したおぼえはないと言います。そりゃ、車内で人が死んだ車を用もないのに動かす
 
物好きはいないでしょう。
 
 
とりあえず、誰かの悪戯だろうと言う事になって、またSさんが地下駐車場に戻す羽目に。
 
その日の閉店時、地下駐車場の電気を消しに行った人は、その車が隅に置いてあるのを確認しています。
 
しかし、翌日も、朝来て見ると、またその車が表に出ている。改めて社員全員に問い質しても、やはり誰も
 
そんな事はしていないと言い張ります。念の為、セキュリティー会社に連絡して、閉店後の入館記録がないか
 
と調べてもらっても、誰も入っていないとの返答でした。
 
 
その車、本当は自社でオークションに出品する予定だったのですが、次の開催日までまだ間があり、
 
気味悪がった店長が懇意の業者を呼んで即日引き取らせたそうです。
 
 
その時業者さんの対応をしていたSさんが気付いたのは、その車の走行距離が伸びていた事でした。
 
引き取った時、査定書を作って走行距離もチェックしていたですが、その時の距離より、何十㌔か、増えて
 
いたのだそうです。その事実は、誰にも言わなかったそうですが。
 
 
「たぶん、亡くなったお客さんが、最後のドライブをしてたんでしょうねぇ…」とは、Sさんの締めくくりの言葉です。
 
そのまま、このお話のタイトルにしました。
 
 
お次はOさんのお話です。
 
Oさんの友人に、長距離トラックのドライバーさんがおり、その方の体験談を話してくれました。
 


 
 
ドライバー仲間の間では「出る」ので有名なサービスエリアやパーキングエリアと言うのが全国にいくつかある
 
そうですが、関西の、あるパーキングエリアもそのひとつ。
 
 
そこは、トイレと自販機しかなく、大型車・小型車がそれぞれ数台停められる程度の、小さなPAだそうです。
 
周囲に墓地が多いためなのか、昔から「幽霊が出る」と言われていたらしいです。
 
ドライバーさんの同僚のうち何人かもそこで奇妙な体験をしていたそうです。
 
 
そのドライバーさんは、普段はそのPAに寄る事もなく、いつも通り過ぎていただけなのですが、ある夜、
 
荷物を積んで東京に戻る途中に、少し眠くなったのでそのPAに入ったそうです。
 
丁度休憩をとるタイミングで、普段なら手前のSAに入るのですが、その時は何となくそのPAに入ったとか。
 
「出る」と言う噂は知ってはいましたが、別に本気で信じている方でもないので、怖いとかそんな気持ちは
 
なかったそうですが、大型トラックの先客が1台停まっているのを見て、やはり少しホッとしたようです。
 
 
トイレを済ませて、缶コーヒーでも飲もうと自販機のある場所に行くと、先客のドライバーらしき男がやはり
 
飲み物を買っているところでした。
 
その男を見たドライバーさんはギョッとしました。
 
 
自販機の前の男の背後のから、やたらと細長い腕がにゅーっと伸びて、首を掴んでいるのです。
 
その腕は青白く、女のもののように見えましたが、長さは2mほどもあったそうです。
 
二の腕のあたりからは、闇に溶け込むようにして、見えません。
 
 
男は、何も感じていないらしく、極々普通に振舞っています。
 
ドライバーさんは、何も見なかった事にして、そそくさとそのPAを後にしたそうです。
 
 
件のPAは、それからしばらくして閉鎖されたとの事で、仲間内では「あまりに幽霊の目撃が頻発したから
 
立ち入り禁止になったのだ」と、まことしやかに言われたそうです。
 
 
 

車中泊

昨夜、同僚数人と飲んだのですが、時期柄か怪談話大会になったので、いくつかネタを仕入れてきました。
 
まずは、Hさんの語ったこんなお話。
 


 
Hさんが若い頃、友人と二人で車で旅行に出かけた時の事。
 
宿はとらず、夜は車の中で寝ていたそうです。
 
 
何日目かの晩、山の中の、.道路脇のちょっとしたスペースに車を停めて、そろそろ寝ようとしていた時。
 
助手席の友人がHさんを呼ぶので、「何?」と答えると、「何も言ってない」と言います。
 
空耳だったかと思うと、またしばらくして呼ばれたので、「どうした?」と言うと、また「呼んでないよ」と言う。
 
呼ばれた、と言うより、くぐもった男の声で、何と言ってるか良く聞き取れない感じだったそうです。
 
「でも、今、声がしただろ?」と聞きましたが、友人には聞こえてないようでした。
 
そのくぐもった声はその後何度も聞こえ、それがだんだん呻き声のようになってくると、さすがに友人にも
 
その声が聞こえるようになりました。
 
 
動物の鳴き声か何かだろう、と言いつつも、一応車を降りて周囲を見回しますが、やはり誰もおりません。
 
そして、来た時には気づかなかったのですが、真新しい看板が立ててあるのが目に入り、良く見るとそれは、
 
「死亡事故発生現場」の黄色い看板でした。
 
 
「うわ、みろよ、これ」
 
「やべぇ、こんな場所で寝ようとしてたのか」
 
Hさん達はさすがに薄気味悪くなり、寝場所をかえる事にしました。
 
そして、車に戻って走り出そうとした時、
 
「待ってくれぇ…」
 
と、今度は大きく、はっきりとした男の声が、背後から聞こえてきたそうです・・・。
 
Hさん達が全開ダッシュでその場を離れたのは、言うまでもありません。
 
 
 

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