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その人は九州のとある町の出で、実家は、築100年以上を経た、旧い広い家だそうで、
まあ、色々と不思議な出来事があったとか。
とりわけ、幼い頃に不思議だったのは、祖父母よりも老いた老婆が家の中をウロウロしていた事。
粗末な着物を着てはいるが、温和な顔の老婆。
廊下を歩いていたり、階段を上ってたり、部屋の隅に座ってたり、台所に立ってたり。
そして、いつも、いつの間にかいなくなっている。
朝昼晩にかかわらず、何度も何度も、その姿を見ていたのですが、傍にいる大人達は、老婆の姿が
見えているのかいないのか、すれ違っても、うしろにいても、全く意に介していませんでした。
たまに、「あの婆ちゃん、誰?」と聞いても、祖父母や両親には、「何言うとるとね、そな人おらん」
とはぐらかされる。
物心ついた時からそうだったので、何と無くスルーしているうち、中学生の頃には、その老婆を見る事も なくなったそうです。
その人も、大学から東京に来て、就職して、結婚して、今や小学生のお子さんが二人。
今でもその屋敷は、ご両親共々健在で、去年だか一昨年だかに家族を連れて久しぶりに帰省した時の事。
家の中にヘンなお婆さんがいる‼と、子供達が騒いだそうです。
とっくに祖父母は他界し、今では両親がお祖父ちゃんお祖母ちゃんになっているのに、あの婆さんは
まだここにいるのか。ーそう思うと、無性に懐かしさが込み上げ、そして、その姿が見えない自分に、
大人になってしまったつまらなさを感じながら、その人は、こう言ったそうです。
「何言ってるんだ。そんな人はいないよ」
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2013年04月23日
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