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塩山(山梨県)の自宅を出て約2時間。
ハンドルを握る私(当時41歳)の横で、高いびきをかいていた釣り仲間のSさん(当時67歳)が、もぞもぞと
動き出した。
「ふわぁ〜。よく寝たよく寝た。…おう、Mさん、今どの辺だい?早く竿振りてえや。沼津までまだかかるのか?」
「ちぇ、人に運転させといて、いい気なもんだなSさんは。今、山中湖を過ぎて、籠坂峠の手前だよ。時刻は、
え〜っと、午前3時だから、予定通り夜明け前には着くよ」
「ふうん、そうかい。じゃああともうちょっとだな。 ♪悲しさまぎらす この酒を 誰が名付けた 夢追い酒と〜」
Sさんは、その年流行の演歌を口ずさみはじめた。
私は苦笑いしながら、ハンドルを握り直した。国道138号に出るまでは、つづら折りの狭い峠道を注意深く
走らなければいけないのだ。街灯ひとつない真っ暗な山道を照らすのは、私の車のヘッドライトだけだった。
その時までは…。
「おや? こんな時間に、車が…?」 私は、バックミラーに反射する、後続車のヘッドライトに気がついた。
「♪夜の酒場で ひとり泣く〜ってか。 ン?ほんとだ。酔狂な奴もいるもんだな」
振り向いたSさんも後続車のヘッドライトを認めたようだ。
「自分の事は棚に上げて」…と、また苦笑する私に、後を向いたままでSさんは言った。
「ずいぶん、飛ばしてるなぁ。どんどん追いついてくるぞ」
Sさんの言う通り、余程急いでいるのか、その車は間もなく私達の車の真後ろに迫ってきた。
「追い越したいらしいけど…こんな狭い道じゃ無理だから、国道に出るまでもう少し我慢してくれ」
聞こえる訳もないが、私は後続車に向かって呟いた。何せ、この道はすれ違うのも困難なほどなのだ。
「あっ、危ないな!!無理やり抜こうとしてきたぞ!!」
Sさんの声にミラーを見ると、その車は私達の車の左側に割り込もうとしていた。
「無理だ!!こっちだって左側ギリギリを走ってるのに!!」
思わず声をあげた私は、次の瞬間、ウッと息を飲んだ。
その車が、道のない樹林の中を、私達の車の左側に並んで走っているのだ。
ハンドル操作を誤って、路肩から落ちたか!? ―いや、その車は、まるでそこに路面があるかのように、
何事もなく滑らかに走っている。ボディーカラーは白っぽかった。
「ニッサンの、510セダンだ」 と、助手席のSさんが言った。
2台の車のヘッドライトが照り返した510セダンの中には、黒っぽい服の若い男が一人で乗っていた。
「幽霊でも見ているのか」と思いながら、そのまま数十秒も並んで走っていたら、更に驚く事が起こった。
(↓)ニッサン ブルーバード 510系(画像はクーペ)。
510セダンは、左に方向転換すると、私達の車から離れて、なだらかな斜面を登って行ったのだ。
もちろんそこにも道などなく、510セダンはヘッドライトを点けたまま、樹林の上を滑る様に登って行く。
白い排気ガスも見てとれた。そして車は、樹林から離れ、夜空に飛び立ち、山の上の空間を加速して上昇し、
やがて消えてしまった。白いもやのような排気ガスだけが、虚空に残されていた…。
今見たものが信じられず、ともかく籠坂峠で国道に出て、逃げるように静岡側に下る私達。
晴れ渡った夜空に、富士山のシルエットがそそり立っている。
先ほどの出来事がショックだったのか、珍しく押し黙っていたSさんが、突然声を上げた。
「お、おい、Mさん!! あれは何だ、あれは!?」
Sさんが指し示す方を見ると、富士山をバックにして、6合目あたりの高さに、光体が浮かんでいた。
それは、満月の4分の1ほどの大きさで、オレンジ色の強烈な輝きを発し、少し揺らめいているようだった。
峠を下る間、その光体はずっと見えていたが、自衛隊のところで休憩しようと車を停めて外に出た時には
いつの間にか消えていなくなっていた…。
以上の、奇怪な事件は、昭和54(1979)年6月のある日に発生したとの事です。
元ネタは、有名なUFO団体である「日本GAP」の会報(『UFOcontactee』No.99:1987年冬季号)で報じられた
もの。TOが勝手ながらに大幅脚色しておりますが、粗筋はそのままです。
(↓)謎の510セダンとの遭遇現場。(当時は、東富士五湖道路はまだなかった。)
(↓)この辺らしい。
(↓)事件の再現図(『UFOcontactee』より)。
しかしまあ、いろんな素っ頓狂なUFO事件を見てきましたが、これはその中でも白眉な出来ですね〜。
全く訳が判らないところが、とてつもなく嬉しいです。
最後に謎の光体が出てこなきゃ、UFO事件と言うよりも、心霊現象に近い感じですし。
全体的には、小松左京の『果てしなき流れの果てに』のエピソードで出てきそうなハナシです。
映画『E.T』では、自転車が空を飛びましたが、まさか車まで飛ぶとはねぇ…。
こんな事件が起こるんだから、UFOファンはやめられません。いいなぁ、昭和なUFO話って。
いちいち、野暮な突っ込みを入れるのはやめといて、たまにはじっくり不思議なUFO事件をたのしみましょう。
夏だしね…。
(参考)日本のUFO遭遇事件
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