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いつの頃でしょうか。忘却の彼方に埋もれておりますが、―たぶん幼稚園か小学校も低学年か。 そんな頃の朧げながらの記憶ですが。 その子を、しずちゃんと呼んでいたのか。そんな憶えがあります。 同級生と言うか、近所の女の子と言うか、まあ、その両方なのですが。 しずちゃんのお父さんとお母さんは、理髪店を営んでおり、私の両親の言によると、私もその当時はそこ で髪の毛を誂えていたそうです。 ―実際にそんな事があったのかどうか。 本当に朧げな記憶なのです。 でも、その光景ははっきりと憶えている。 確か、しずちゃんから黒い種を貰ったのです。紡錘形を少しひん曲げた様な。 何の種か、貰う時に聞いたはずなのですが、さすがに憶えておりません。 でも、その時のしずちゃんの笑顔は、今でも想い出せる程なので、確かに種を貰ったのでしょう。 庭と言うにはあまりに狭い自宅の庭に、その種を捲いた筈です。 しかし、飽きっぽい子供だった私は、そんな事はすぐに忘れてしまいました。 それから1年も経った頃でしょうか。 しずちゃんが亡くなりました。 事故か病気かは憶えていません。と言うよりは、大人達からは、しずちゃんは天国に行ったんだよ…と そう言う風な抽象的な言い方をされ、何となく納得していたのです。 幼かったせいなのか、私は泣きもせずにただただしずちゃんの葬儀を傍観しておりました。 その晩か、それとも何日も何ヶ月も経った晩なのか、よく憶えていませんが。 夜にふと庭に出た時の事を憶えています。 庭の片隅に美しい花が咲いているのに気付きました。 私の身の丈程の茎に、見慣れぬ美しい白い花が咲いていたのです。 あそこは確か…しずちゃんから貰った種を捲いた所だ。 あまり草花などに興味が無かったので、しずちゃんから貰った種が、こんなにも大きく成長している様を 今まで見ていなかったのです。 その白い花は、夜の帳に包まれながら、そこだけ白く切り抜かれた様に際立っておりました。 その花は、大人びた気品がありました。 私は、幼心に、しずちゃんも大人になったらこんなに綺麗になったのかもしれないと思い、そう思った 途端に涙がぼろぼろと出てきました。もうしずちゃんは大人になれない。もうしずちゃんはこんなに綺麗 になれない。もうしずちゃんに会えない。もうしずちゃんに… いつの間にか、大声で泣いていた私の元に母が来て、私と白い花を見比べたのでしょう。 母はその時、何も言わず、私をぎゅっと抱きしめてくれました。 そんな記憶があります。 |
子供の頃の怪
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ああ、病弱だった君は、学校に行けず、この部屋でずっとすごしていたんだね お母さんも働きに出ているのは、自分の治療費が高いから、それでお母さんも働かなくてはいけないんだ と、そう思って、一人ぼっちで寂しいのを我慢していたんだね それで、ずっとハーモニカを吹いていたんだね そして、君は死んじゃったんだね とっても、じょうずだよ。君のハーモニカ でも、じょうずだけど、ちょっとかなしい音色だね 君のハーモニカ もう、僕がいっぱい聞いたから とてもじょうずで 感動したから 君が寂しかったのがよくわかったから もう天国に行きなよ そして 生まれ変わって また ハーモニカ吹きなよ 今度はもっと 楽しい曲をさ バイト君の弟ネタです。以前、引越した先で、誰もいない部屋からハーモニカの音が聞こえると家族の中 で騒ぎになり、当時小3だった弟さんが一晩一人でその部屋に寝て、それ以来ハーモニカの音は聞かれな くなったそうです。 |
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ベタなタイトルで恐縮ですが。こんなお話を聞きました。 「私の実家は、某有名な温泉地にあります。といっても、親族で温泉旅館をやっている者は無く、 大体が、農家や林業を営んでおりますが。昔は養蚕もやっていたそうです。 親族の慣わしで、盆や正月、法事の時等には、本家に一族が集り、一泊すると言う物がありました。 私が、まだ小学生の1〜2年生位の時の思い出なのですが、やはり、法事か何かで、本家に泊まった事が ありました。夏の盛りでした。 何せ、親族の数が多く、子供だけでも30人は下らなかった。 それだけの子供が集ると、昼から夜から大騒ぎをします。 よって、夜は子供達は、離れの大広間に布団を敷き詰め、雑魚寝させられておりました。 本家は所謂、豪農で、離れと言っても小さな体育館ほどの大きさがあり、一階は広い土間の納屋になって います。2階には幾つも座敷部屋があり、その中に、40畳程もある広間があるのでした。 何でも、一階は昔は蚕から絹糸を紡ぐ作業場で、大勢の女工さんを雇っていたとの事です。 その女工さん達の中には家が無い人も多く、2階はそんな人達の住居だったそうです。 さて、その夜、遅くまで騒いでいた私達も、やがて一人、二人と眠りに落ちていきました。 何時頃でしょうか、私は、尿意に目を覚ましました。真夜中です。 トイレに行きたいが、そこは子供の事、怖くて一人では行けません。 何しろ、トイレは1階にあり、そこに行くには2階の長い廊下を抜け、下の真っ暗な土間まで降りて行か なくてはなりません。 (誰か、起きないかな…、誰もトイレに行きたくならないのかな…) 私は、布団の中で聞き耳を立てますが、すやすやとした寝息や、ずずずと言う鼾しか聞こえてきません。 我慢すればする程に尿意は高まります。 この世の中で、起きているのは自分だけじゃないか…と言う、変な孤独感も持ち上がり、私は泣きそうに なりました。 その時、スーッと誰かが枕元を過ぎていく気配を感じました。 布団を跳ね除けると、男の子が一人、そーっと布団の間を歩いていくのが見えました。 暗くて、誰だか判りませんが、私は急に心強い仲間が出来た気分になりました。 『トイレ、行くの?』私が小声で声を掛けると、その子は『うん』と小声で応えます。 『一緒に行こ!』私もそそくさと布団を抜け、その子の後について行きました。 さっきまでの恐怖感も何処へやら。べそを掻きそうになっていた自分が可笑しくなりました。 その子は、怖がる様子も無く、落ち着き払っていたので、私も余計に安心したのだと思います。 廊下の電気も消されているので、窓から入る月明かりが頼りです。 ギシ ギシ ギシ と、廊下がびっくりする程大きく軋みます。 私は、月明かりに照らされるその子の背中に向かって話しかけます。 『怖いねえ…』あんまり、その子が淡々と廊下を歩いていくので、わざとそんな事を聞いてみました。 『うん』 『トイレ、2階にあったらいいのにねえ』 『うん』 何を言っても、その子は うん と言う生返事しか返しません。 (この子、どこの子だろう?)私は頭の片隅でぼんやりと思っておりましたが、何せ従兄弟の数が多く 全員の顔と名前も一致しない程だったので、余り気にはなりませんでした。背格好は、私より1つか 2つ位、年上の様でした。 階段を下りると、真っ暗な土間の隅に、そこだけぼんやりと裸電球の灯った、トイレに着きました。 トイレの前で、その子は立ち止まったままです。 『入らないの?』 『うん』 『じゃあ、先に入っていい?』 『うん』 既に限界だった私は、トイレに飛び込みました。 外にあの子が居てくれるので、怖くはありませんでした。 トイレを出ると、その子に『いいよ。ここで待ってるからね』と言いました。 その時初めて、裸電球に照らされたその子の顔を見ました。 目の大きな、おかっぱの様な髪型をしています。 『うん』 その子はすっとトイレに入りました。 その子の用足しを待っている間、私は(今の子、さっきまでいたかなあ?初めて見る子だなあ…。) と思っておりました。 (―あ、もしかして、皆が寝てしまった後に着いた家の子かもしれない。) 昼間、大人達が、東京に出ている一家が夜遅くに来る、と言っていた事を思い出したのです。 ―それにしても、長い用足しです。 私はだんだん心細くなってきました。真っ暗な土間は、シーンと静まり返っています。 物陰から、誰かが見ている様な…。不意に顔や手が飛び出てくるんじゃないか…。 心細さは、徐々に恐怖へと変わっていきます。 あの子は、一向に出てくる気配がありません。 もしかして、中で倒れてるかも…心配になった私は、『ねえ、大丈夫?』と声を掛けました。 返事はありません。 トントントンとドアを叩いても、反応が無い…。 10秒ほど戸惑った末、私は思い切ってトイレのドアに手をかけました。 『開けるよ…』と言いながら、きいいい とドアを開けると、トイレの中には… 淡く光る、オレンジ色の人魂が浮かんでいました。 人魂は、ふわふわと漂いながら、私の左脇を通り抜けていきました。 『〇×△*+!!』後から聞くと、私は奇声を発しながら気絶して倒れたらしく、 気が付くと、トイレの前で、従兄弟達に抱き起こされておりました。 私は、皆に介抱されながら、2階まで連れて行かれました。 一番年長の従兄が、『お前、どこ行ってたんじゃ!?皆で探したんじゃけど、どこにもおらんから、 母屋のオヤジを起こしに行こうかと相談しよった所よ。そしたら…』私の悲鳴が聞こえたので、慌てて駆 け下りて来た、と言う事でした。 私が事の顛末を話しても、皆口を揃えて、真っ先にトイレを見に行ったが、誰も居なかったと言います。 そもそも、何故私を皆が探したかと言うと…。 ある従兄弟が、ふと目を覚まし、オレンジ色の人魂の後に付いて広間を出て行く私を見たと。 驚いて、皆を起こして…と、そう言う話でした。 結局、あの夜、何が起こったのかは良く判りませんが…そう言えば、本家のお婆さんが、こんな事を 言っていました。 『お盆じゃけ、変なモンも集ってくるから、皆尻の穴に力入れて、気を張っとけよ』 ―アレが、お婆さんの言う、変なモノ、だったんですかねえ…。」
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Fさんが子供の頃、転校生のIさんと仲良くなり、良く遊ぶ場所なんかを案内して廻っていました。 Fさんの住む町の、町外れの一角には、旧い農家の廃墟があります。 「ここにはあんまり来ないほうがいいよ。そこに、井戸があるでしょ。今は埋められてるけど、昔、女の 人が殺されて、この井戸に投げ込まれたんだって。だから、幽霊が出るんだって。」 Fさんの言葉を、Iさんは、 ふ〜ん とそっけなく聞いていました。 同窓会の時、久しぶりに会ったIさんと、そんな事もあったねえと、その井戸の話が出てきた時。 「あの時さあ…」Iさんが言いました。「井戸の中に女の人が、立ってたんだよ…」 (そう言えば、Iちゃん、霊感があるって言われてたよなあ)と、Fさんは今更ながらに思い出し、 鳥肌が立ったそうです。
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最初は、気付かなかったそうです。 運動会の写真に写った、その5人の人影には。 ある日の休み時間に、家族が撮ってくれた写真を友達同士で持ち寄って、見せ合いっこをするまでは…。 前回もネタを提供してくれた、保険会社のKさん。Kさんが子供の頃のお話です。 Kさん達小学校6年生が、運動会で組体操をした時の写真。 背景に写る校舎の屋上に、5人の男達が立ち、手すりに寄りかかって運動会を見物しています。 よく見ると、5人の男は作業着の様な服を着て、2〜3人は工事現場のヘルメットを被っています。 屋上は、当然立ち入り禁止です。 工事でもしていたのかな?でも、運動会の日に工事なんてしてなかったし、する訳ないよ、と皆で 不思議がり、他の写真も見ましたが、何故か屋上に人影が写っているのはその1枚だけでした。 そこに担任の先生が来たので、「せんせ〜、運動会の日に、学校で工事か何かしてた?」 と聞いてみると、先生は「ン?してないぞ。わざわざ運動会の日に工事なんてする訳ないだろ?」 と、予想通りに答えました。 「でも、これ…」と、その写真を見せると、先生は「う〜ん、これは…。」と頭を掻く。 先生は、不審者が入って来た可能性を心配したのか、「ちょっと、この写真を貸してくれ。他の先生に も聞いてみるから」と、その写真を胸ポケットにしまいました。 後日、その写真はKさんの元へ返却されました。 先生は「たぶん、塗装業者の人が、下見に来たんだろう。もうすぐ、校舎の壁を塗り替えるから…」と、 何となく曖昧な事を言っておりました。 確かに、校舎は古く、そう言う事かと納得。 子供の事ゆえ、既にその写真には興味を失っていたので、それ以上の詮索もしませんでした。 ―さて、Kさんが大学生の頃、その先生が定年退職するので、久々に同窓会が開かれました。 席上、先生が思い出話のついでに、Kさん達にあの写真の事を語り始めました。 「あの時は言わなかったけど、あの写真は俗に言う『心霊写真』かもしれんぞ。 実は、あの日は工事も下見も入っていなくて、職員室でもちょっとした騒ぎになったんだが…。 念の為に屋上を調べても、鍵はしっかりかかったままで、人の入った形跡が全く無くてな。」 Kさん達は忘れかけた話を鮮明に思い出し、唾を飲んで先生の話に聞き入ります。 「―あの校舎、あの棟だけ3階建だろ?他の棟は4階建てなのに。 お前らは知らんだろうが、昔、学校を建設する時には、あそこも当然4階建てにする予定だったが、 4階の工事をしている時に、立て続けに事故が起こったそうだ。それも、常識では考えられない様な 事故が。それで、5人の死者が出て、4階部分の工事は中止されて、結局あそこだけ3階建てになった そうだ…。」 ―では、あの写真に写った5人の人影は…。 家に帰ったKさんは昔のアルバムをひっくり返して探しましたが、何故かあの写真だけが見当たらない。 例の校舎も今では綺麗に立て替えられて、既にこの世から消えてなくなったそうです。
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