車に纏わる怪

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最後の客

冷たい雨の降る夜。

終電を降りると、タクシー乗り場に向かいました。

6畳程の広さの待合室には、タクシーを待つ客が数人、ベンチに腰をおろしています。

自分の後には、女の人が一人来たきりで、それで客足は途絶えました。

どうやら、白いコートを着たその女の人が、最後の客になる様です。


1台、また1台とタクシーがやってきては、客を拾って走り去って行きます。

自分の番になり、タクシーに乗り込んで行き先を告げます。

運転手さんは待合室の様子を伺い、「お客さん、ちょっと待ってて下さい」と言い残して、車を降りて行

きました。


運転手は待合室の電気を消し、戻って来ます。

(そう言えば、最後の客を乗せたら、電気を消すんだったな…)

以前、何度か自分が最後の客になった時、同じ光景を見た事を思い出しました。

(でも、まだ一人残ってるのに…)

暗くなった待合室の中には、さっきの白いコートを着た女の人がじっと座っています。


運転手さんは、車に戻るや、無線を取り「○○駅前、終了しました」と報告しています。

「ちょっと、運転手さん、まだ一人お客さんがいますよ?」

見かねて声をかけると、運転手さんは怪訝な顔をして「え、どこにです?」と周囲を見回します。

「いや、ほら、待合室の中に…」

待合室を見ると、女の人は立ち上がり、するするとこちらに歩いてきます。

いや、歩いていない。

足を動かさず、氷の上を滑るように、近づいてくる…。


「い、いや、いいです!!早く出して下さい!!」自分の声は震えています。

気配を感じ、窓を見ると、女がタクシーのドアに手をかける寸前でした。


振り向くことも出来ず、シートの上で固まっていると、こちらの様子をちらちらと見ていた運転手さん

が、ぼそりと言いました。


お客さん、もしかして、見たんですか…?



解説)

同僚の一人が体験したお話です。

彼も運転手さんに言われて思い出したのですが、そこでは数年前に、深夜一人でタクシーを待ってい

た女性が、強盗に殺されたと言う事件があったそうです。

運転手さんによると、それから頻繁に白い服の女の霊が現れる様になったとか…。

その夜以降、彼は一つ手前の駅からタクシーに乗る事にしているそうです。

川沿いの道

人気のW店長ネタです。


W店長は、自分の霊感は、「感じる」けど「見えない」程度だと仰います。

しかし、店長の親父さんは相当「見える」方だそうです。

店長の霊感は家系の様です。



店長が親父さんを後席に乗せて、夜の道を走っていた時の事。

川沿いの道でした。

後席では、親父さんが幾度となく後ろを振り返っています。

妙にそわそわしているので、「どうしたの?」と訊いても、「何でもない」と言うばかりです。


その内、後ろを見ながら、親父さんは「おい、もう少し早く走れ」と言い出します。

「こんな狭い道で、スピード出せない」と言うと、「どこか、違う道に行け」と言います。


(ははーん、何か、見えてるんだな…)と悟った店長は、遠回りにはなりますが、国道に出ました。


しばらく押し黙っていた親父さんは、やっと口を開きました。

今のは凄かったぞ。最初は鬼火がついてくると思ってたら、その内ぶよぶよに膨らんだ生首になって、

ずっと追いかけて来てたんだ。ありゃ、川で死んだ奴だな…

鑑識写真

警察関係の方から聞いたお話です。


その人が、ある殺人事件を担当していた時の事。

捜査の甲斐あって、犯人が乗り捨てた車が発見され、鑑識が出動。

写真を担当していた鑑識員が、「こんな写真が撮れたんですが…」と、一枚の写真を持って来ました。

「他の写真は、異常無いのですが…、何故か一枚だけ、こんな…」


正面から車を撮影したその写真を見た瞬間、思わず声を上げたそうです。

な、何で被害者が写ってるんだ!?

―助手席に、殺された被害者が座っていたそうです。




(おまけ)
その人の話では、ベテラン鑑識員に言わせると、「そういう事は稀にある」そうです。

例えば、閉じている筈の遺体の目が開いている写真や、ベランダから室内を覗き込む人影が写り込んだり

と、過去何度かそう言う写真を見た事があると…。

おっと、危ない

日が落ちて暗くなった頃、車で外出していた事務のKさんが、ぷりぷり怒りながら帰って来ました。

「ちょっと聞いてよ!あそこの○○がある通りでさあ、急に人が飛び出てきてさぁ。危うくはねる所よ。

危ないったらありゃしない!!」

聞くと、子供連れの黒い人影が、いきなり目の前に現れ、すんでの所で避けたそうです。

「絶対、はねたと思ったんだけど、私の反射神経も捨てたもんじゃないわよね。」


Kさんには言えなかったのですが、知っている者同士で囁きあいました。

そこってさあ、この間、交通事故で親子が死んだ所…だよね…?

カーラジオから…

以前、幾つかW店長体験した怖いお話を記事にしましたが、また一つ話を聞けたので書いて見ます。


何年か前、W店長が独りで深夜の東名高速を下っている時の事。

霧が濃く、何となく陰鬱な雰囲気になってきたので、景気付けにカーラジオのスイッチを入れました。

ラジオから流れる、タレントの取り留めの無いトークを、聞きながしながら走っていました。


車が日本坂トンネルに入ると、タレントがリスナーからの投稿を読み始めました。

「〇〇市の◇◇さんからのお葉書です…。おっと、これは少し怖い話ですね〜。『先日私が車で東名高速

を走っている時。真夜中だったんですけど…。静岡の日本坂トンネルの中で、ラジオから急にゲラゲラと

笑い声が聞こえてきたんです…。』」


(おいおい、今まさにそこを通ってるんだよ…勘弁してくれよ…。)


気味悪くなったW店長が、局を変えようとラジオに手を伸ばそうとした時…。


突然ラジオから、大音量で、大勢の笑い声が響いてきました


びっくりして反射的にラジオを消したのですが、笑い声は消えずに、延々と続きます。

笑い声には、女や子供の声も混ざっています。


何度スイッチのオン・オフを繰り返しても、笑い声は止みません。


ところが、車がトンネルを抜けた瞬間、笑い声はピタリと止まり、ラジオからは軽妙な音楽が流れてきま

した。


W店長が言うには、「後から考えたら、その番組、怪談なんかを読む様な奴じゃなかったんだよね。

何だったんだろうね、あれ。」

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