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またまたOさんからのネタです。
Oさんの後輩(いつもながら、Aさんとしておきます)が体験したお話です。
ジリリリーン、ジリリリリーン
―まただよ…。この電話のベルの音…。
眠りを破られ、Aさんはイラつきながら時計を見ました。
いつもの通り、午前1:30。
このアパートに越して来てから、毎晩決まってこの時間に隣の部屋の電話が鳴ります。
安アパートなので、電話の音がけたたましく響いて来るのです。
ぼそぼそとした話し声が聞え、ほんの30秒程で電話を切る音がします。
これも、いつもの通り。
Aさんはちょっとした事情があって、前に住んでいたアパートを出る事になりました。
急な事だったので、良い部屋を探す時間も無い。
とりあえず仮住まいとして、とにかく安い物件を見つけ、入居しました。
それが、この部屋です。
良い物件を見つけ次第に移るつもりでした。
顔も知らぬ隣人には、いつか文句を言おう、と思いながら、その晩はまた眠りに落ちていきました。
そんなある日、バイトから帰宅すると、Aさんのアパートの前が騒然としています。
見ると、パトカーや救急車が赤灯を廻しながら停まっていました。
いつも電話が鳴る自分の隣室に、何人かの警官や救急隊委員が慌しく出入りしています。
アパートの大家さんも来ていて、事情を聞くと、隣の人が死んでいた、どうやら自殺らしい…と。
隣室は、遺族の手によって程なく引き払われ、Aさんは少々気味が悪いながら、どうせすぐ引っ越すし、
夜が静かになっていいや…と思っておりました。
そして、ようやく良い物件が見つかり、Aさんは引っ越す事に。
荷物をまとめ、さあ出て行こう、と言う時に、Aさんは以前に本棚の後ろに小銭を落とした事を思い出し
ました。
その本棚は前の住人が残していったのか、Aさんが入居した時からそこにありました。
小銭を落とした時は、重い棚を動かすのが面倒で、そのままにしておいたのですが、荷物を出した
今なら、楽に動かせます。
早速Aさんは本棚を壁から離しました。すると…
本棚があった所の壁に、直径30センチ位の穴が開いていました。薄い壁なので、隣の部屋まで貫通
しています。
何だ、この穴を隠す為に、こんな物置いてたのか。やけに隣の電話の音がうるさいと思ったら、
これじゃあ、響く訳だよなあ…。と今更ながらに呆れてしまいました。
そして、壁の穴から、隣の部屋の床に何か黒い物が置いてあるのが見えました。
覗いてみると、それは昔ながらの黒い電話。
あの、古臭いベルの音の意味が判りました。でも何故、電話機一つだけ置いていったんだろう?
Aさんは少々気味が悪くなり、もう行こうとした時。
ジリリリーン、ジリリリリーン ジリリリーン、ジリリリリーン
黒い電話が鳴り始めました。
鳥肌の立ったAさんは、後も見ずに、部屋を出て行きました。
ジリリリーン、ジリリリリーン ジリリリーン、ジリリリリーン
Aさんの背後では、延々と黒い電話のベルが鳴り続けておりました。
次のアパートに移って半年ほど経ち、そんな事もすっかり忘れていた頃。
Aさん宅の電話が鳴りました。時間は真夜中の1:30。
ジリリリーン、ジリリリリーン
あの、黒い電話機の音でした。この電話の呼び出し音はプルルル…と言う電子音の筈なのに…
出るな、出るな!!心は止めるのですが、Aさんの手は吸い寄せられる様に電話機に伸びていきました。
そして、耳にあてた受話器から、しわがれ、搾り出した様な男の声が…。
「―さ・が・し・た・ぞ…」
電話を叩き切ったAさんは、友人宅に非難。
その後、またすぐに部屋を替えました。
幸いな事に、それからは特に変わった事はなかったそうです。
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