大自然の怪

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非難小屋

山のお話です。父が山好きなので、山の怪談は良く聞かされました。其の内の一つです。
 父が若い頃、某山に単独行で登った時の事。途中、ルート上の非難小屋(無人の小屋で、辛うじて雨露凌げる、いわば山の簡易宿泊所。)で一泊する予定でした。通常、山では日のある内に目的地に着く様ペースを採るのですが、生憎その日は足が重く、暗くなり始めた頃にようやく目指した非難小屋に到着しました。狭い小屋に入ると、数人の先客で満員。仕方なく父は小屋近くにテントを張り、ビバークしたそうです。不思議と、先客達は小屋に篭り切りで、誰も出て来ない。そんな事もあるかと余り気に留めず、早寝しました。
 翌朝起きると、先客達は出立した後で、小屋は無人になっていました。見ると、小屋の床に線香を焚いた跡らしきものが幾つか並んでいる。何か嫌な感じがしたそうです。
 その日は有人の山小屋に泊まり、小屋の主に何気なく非難小屋の話をしました。すると、顔色を変えた主は、塩を持ってくると、父に振掛けます。驚いた父が訳を聞くと、主は「あの小屋は、悪天候で遭難死した5人パーティーの遺体を、一昨日まで安置しておいた所だ。天候が回復したので、昨日の朝にヘリで搬出したばかりだ。」と青ざめながら教えてました。
父もその事故のニュースは聞いていたので、まさかあそこが、と唖然としました。
そして、小屋の主は父に聞いたそうです。「その人たちに、足はありましたか?」

どうでしょう?怖いです?私は子供の頃から繰り返しこの話は聞かされていたので、今更、と言った感じなのですが。ただ、私も幼少の折から父に引きずられて幾多の山々に登りましたが、山に入ると何が起っても不思議でない、と言う気にはなります。今は私は登山から縁遠くなりましたが、これはお化けが怖いからではなく、重い荷物を背負って、ひーこら歩くのに嫌気が差したからです。(登山愛好家の方がいらっしゃったらゴメンナサイ。)

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