旅の怪

[ リスト | 詳細 ]

日常から離れた旅の空。怪異はそこにも潜んでいました。
http://x4.obunko.com/bin/ll?049439107
アクセス解析
http://philosophy.blogmura.com/paranormal/img/paranormal88_31.gif
にほんブログ村 哲学・思想ブログ 超常現象へ(文字をクリック)
記事検索
検索

全19ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 次のページ ]

出る。

同僚に、都内の某有名ホテルで働いていた人がいて、彼はあまり幽霊だなんだに関心がなさそう
 
だったので、ついぞ今までそんな話をした事がなかったのですが。
 
職場でちょっとそんな話になった時に水を向けると、つまり「出たりした?」と聞いて見ると、至極あっさり
 
「ああ、幽霊?出ます出ます。普通に出ますよ」と。
 
 
座にいて、私がこんなブログをやってると知る者は、『アッ!!TOが食いついた!!』と言う目で見てますが、
 
そんなの関係ない。「どどど、どんなのが???」と、思いっきり食いつきました。
 
 


 
その名を出すことはできませんが、誰もが知る有名一流、いや、超一流ホテル。
 
 
そのへんの 小金持ちから始まって 芸能スポーツ文壇の 有名人や実力者 高級官僚政財界
 
外タレジャリタレ肉のタレ 鳴くよウグイス平安京 そんな前から続いてる 高貴な家柄お人柄
 
やんごとあったりなかったり そんなこんなのお得意様が 大勢沢山いらっしゃる。
 
場所はと言うと、四谷赤坂麹町 ちょろちょろ流れるお茶の水 粋なねえちゃん立ち小便   
 
それとも銀座か日本橋 そんなあたりの有名ホテル。 とだけ申し上げておきましょう。
 
 
そのホテルは、さすがその歴史の中で幾多の修羅場やドラマが繰り広げられ、人死にが出るのも
 
年に何回十何回の恒例行事いや、いわゆる日常茶飯事であり、隠しきれない時はマスコミに出て、
 
隠しきれる時は隠す。
 
 
そのホテルでくたばる人も、自殺しようが殺されようが、それが病死であろうとも、やっかいなのが大多数。
 
生と性 金と権力 その他諸々魑魅魍魎 いわゆる俗世の欲にまみれた連中が多かったそうなので、
 
「出る」のも、自己主張が強かったようです。
 


 
「例えば?」
 
「うーん、僕は霊感なんてないんで、あんまり見たことないんですけど…。それでも色々見ましたけど…。
 
一番ヤだったのは、点検口からぶら下がる奴でしたね〜。」
 
「点検口?」
 
「ほら、そこに(事務所の天井を指す)あるみたいな、天井にある、蓋のとこですよ。そこから、逆さまに
 
ぶら下がる奴がいたんです。客室(係)の女の子が何人も見てますよ。僕も、チーフやってる時に、
 
女の子から『ででで出ましたぁ!!』って泣きながら呼ばれて、行ったら、まだぶら下がってました。」
 
「ひいい。―こんな感じ?」
 
 
 (↓)再現想像図。イメージ 1
 
 
 
「ええ、まあ、こんなんです。その時は、先に他の部屋やろうと言って、ほっておいたら消えました(笑)。」
 
「そんなもんなの?」
 
「そんなもんですよ。ホテルって忙しいんだから。実はその部屋、以前ある企業の社長が自殺した
 
部屋で、粉飾か知りませんが景気よく見えてたけど、内実火の車で、資金繰りに詰まって、検口開けて
 
その中のダクトに紐くくって首吊ったらしいんです。
 
TOさん知ってます?ホテルの部屋って、首吊りできないようにさりげなく造ってあるんですよ。
 
でもさすがに天井開けて…までは考えてないかったみたいです(笑)。
 
こないだ、ホテル時代の仲間と飲んで、『○○○○号室のあれ、まだ出る?』って聞いたら『出る』って。」
 
「そんな部屋、お客さんからクレーム出ないの?」
 
「いや、何故か、お客さんの前では出ないんで、良しと言う事になってました。」
 

 
「TOさん、でも、その手のクレーム出る部屋ってありますよ。昨日人が死んだ部屋なんて、大抵お客さんから
 
ありますよ。『寝苦しい』とか、『嫌な感じがする』ので、『部屋を替えて』とか。」
 
「昨日死んでも、今日お客さん入れるの?」
 
「入れます。ホテルって稼働率ですから。他に部屋が空いてればそこにしますが、週末なんて大抵一杯
 
なので、そんな余裕ないです。
 
でも、他殺とか以外では、ホテルの部屋で死ぬ人ってあんまりいないんですよ。自殺なんかは、こっちが
 
異常を察知して、すぐ救急車呼びますから。死んだのが病院だったら、その部屋はクリアですから。」
 
「なるほど。俺の友人の元ホテルマンもそんな事言ってた。」
 
「でも、それでも、翌日泊まったお客さんから、クレームが来るんですよね〜。」
 
 
ちなみに、ホントにその部屋で事切れても、それが有名人でニュースに載らない限りは、
 
シーツとか枕カバーとかは全て破棄処分にして、軽く塩まいて、翌日は普通に稼働させるそうです。
 
「○○プリ○スとか、芸能人とか政治家が自殺して、週刊誌に部屋番号まで出ちゃうと、あれ、
 
辛いですよね〜。ほとぼり冷めるまでその部屋”回せ”ませんから。同情しましたよ…。」
 

 
「他にも、他にも、何かある?」
 
と聞く私に、色々なネタを披露してくれた彼。
 
聞いてると、怖いというより、笑ってしまうほど、出まくっていました。
 
いやもう殆どお化け屋敷レベル。このホテルに出る幽霊だけで1冊の本にできるほど。
 
 
例えば、白昼堂々、微妙に浮きながら廊下を歩く母子霊とか。これは多くのお客さんも見てるらしい。
 
(↓)再現想像図。
イメージ 2
 
 
そのホテルに就職するまでは、幽霊だのお化けだのなんてバカバカしくて…だった彼が、
 
そこで働いてると、いつしか、それがあって当たり前になったそうです。
 
 
という訳で、彼から聞いたハナシは、またちょいちょい記事にします…。
 

 
いや、この記事とは全く関係のない (という事にしておきます) 、有名ホテルの商品ですが…。
 
確かに美味しそうではあるが、これがホントに、こんな値段なのっ!!??
 
話すと長くなりますが、長く話す気もないので手短に言うと、飲み屋で仲良くなったおっさんから聞いたハナシ。
 
そのおっさんは若い頃、仕事で旅に明け暮れていたそうで、お前は寅さんか!!とツッコミたくなりつつも、
 
よく考えれば私の若い頃もそんな感じだったので、そんな土壌もあって、仲良く飲めたのかも知れません。
 
そのおっさんが、二十年だか三十年だか前だかに、どこかの地方に仕事に行った時の事。
 
だそうです。
 
 


 
 
でね。その夜は、どこ行ってもモテたんですよ。
 
当時の、田舎の街なので、東京から来た、と言えばそれなりに持ち上げてくれるんですが、
 
そんなんじゃなく、普段どこ行ってもそんなにモテるって事がなかった私が、まじ今までなかった程、
 
行く先々の飲み屋の女の子達にモテた。
 
(TO:食っちゃった?)
 
いや、食わない、食わない。新婚でしたしね、女房に義理立てしてですね。
 
それでも、気分良く、宿に帰ってですね。
 
まあ、普通のそこそこの、ビジネスホテルですよ。
 
部屋に入ると、どっと疲れが押し寄せて。せっかく24hの大風呂もあるし、部屋にも内風呂もあるし、
 
ひとっ風呂浴びて寝よう…と思ったんですけど、そのまま、着替えもそこそこに、ベットにドサリですよ。
 
 
そのまま眠りこけて、ふと目を覚ましたのは、何時くらいだったんでしょうか。
 
シャーって、シャワーの音がするんです。ぼんやり、隣の部屋の音かなと思いながら
 
しばらくまどろんでいたんですが、いつまで経ってもそのシャワーの音が止まらない。
 
もしやと思って、もぞもぞ起きて、ションベンついでに自室のトイレ兼バスルームに入ったら、
 
やっぱり、シャワーが出てるんですよ。
 
 
―あれ?おかしいな と。
 
 
酔ってはいたけど、記憶なくす程でもなかったし、確かに部屋に入って、トイレも行かず、
 
もちろん風呂にも入らず寝ちまったのは間違いない。
 
つまり、その時初めてこの部屋のトイレ兼バスルームに入ったんですけど。
 
まあ、部屋の掃除をする人が知らずにシャワーのコックを押して、ずっと出っぱなしだったんだけど、
 
私もそれに気づかずだったんだろう…と思って、シャワーのコックをあげて、止めて。
 
そんで、ションベンして、またベットに入ったんですわ。
 
 
でも、何か目が冴えて、眠れんのです。寝付きはすこぶる良い方なんですが。
 
仕方ないんで、枕元の灯り点けて、明日の仕事の資料か何か引っ張り出して、チラチラ読んでたんです。
 
ベッドにうつ伏せになってね。そう、大体、午前2時半とか3時とか、そんな時間でした。
 
 
すると、しばらくして、どこからか、チリチリチリ…って、鈴の音のような、電話の音のような、そんなのが
 
かすかに聞こえてきたんです。耳を澄ますと止まるけど、またしばらくすればチリチリチリ…って。
 
今なら、携帯の音なんでしょうけど、当時そんなのなかったしね。
 
あんまり気にしてなかったけど、そのチリチリ…が、だんだんはっきり聞こえてきてね。
 
何か、この部屋の中から聞こえて来るような気がしてきてですね。
 
いや実際、かすかに聞こえてたのが、だんだん…そん時ゃ、すぐそこで聞こえてるような感じで。
 
 
さっきのシャワーと言い、気味悪いなぁ…と思って、いや、こんなの気のせいだと思って、水でも飲んでと、
 
ガバっと起きると、目に入った部屋の鏡に、映ってたんです。
 
(TO:―映りましたかッツ!!?? な、何が??)
 
ええ、映ってたんです。女の姿が。
 
しかも、裸。
 
(TO:はっはは、裸ッツ!? いい女でした?)
 
ええ?ええ、そりゃぁいい女…だったのかなぁ??? 
 
でも、怖いとか、いい女、とかよりビックリしたのが先で、うわっ!! って固まってたんです。
 
でも、今思っても、恐いって感じじゃなくって、なんでかと言うと、髪の毛金々のケバい感じの女で、
 
そこそこ、年はいってる感じ?だったけど、あんまり、全然、オバケっぽくなかったんですよ。
 
 
―そしたら、その女が、そのまま、ぶわっと、鏡から出てきて。
 
 
何か私に言ったんですけど、早口で良く聞き取れなくて。でも、怒ってるような口調でした。ええ。
 
しかし、私としては、訳が分からず、おどおどしてたら、消えちゃったんです。ふ〜っ…と。
 
 
(↓)再現想像図。
イメージ 1
 
それきり、何もなくなって、静かなもんで、私もやっと眠れたんですけどね。
 
よく考えたら、安眠妨害でしょ?
 
夜の夜中に、ケバい女の幽霊だか何だかに出られて。訳もなく怒られてさぁ…。
 
(TO:同情します。)
 

 

車中泊

昨夜、同僚数人と飲んだのですが、時期柄か怪談話大会になったので、いくつかネタを仕入れてきました。
 
まずは、Hさんの語ったこんなお話。
 


 
Hさんが若い頃、友人と二人で車で旅行に出かけた時の事。
 
宿はとらず、夜は車の中で寝ていたそうです。
 
 
何日目かの晩、山の中の、.道路脇のちょっとしたスペースに車を停めて、そろそろ寝ようとしていた時。
 
助手席の友人がHさんを呼ぶので、「何?」と答えると、「何も言ってない」と言います。
 
空耳だったかと思うと、またしばらくして呼ばれたので、「どうした?」と言うと、また「呼んでないよ」と言う。
 
呼ばれた、と言うより、くぐもった男の声で、何と言ってるか良く聞き取れない感じだったそうです。
 
「でも、今、声がしただろ?」と聞きましたが、友人には聞こえてないようでした。
 
そのくぐもった声はその後何度も聞こえ、それがだんだん呻き声のようになってくると、さすがに友人にも
 
その声が聞こえるようになりました。
 
 
動物の鳴き声か何かだろう、と言いつつも、一応車を降りて周囲を見回しますが、やはり誰もおりません。
 
そして、来た時には気づかなかったのですが、真新しい看板が立ててあるのが目に入り、良く見るとそれは、
 
「死亡事故発生現場」の黄色い看板でした。
 
 
「うわ、みろよ、これ」
 
「やべぇ、こんな場所で寝ようとしてたのか」
 
Hさん達はさすがに薄気味悪くなり、寝場所をかえる事にしました。
 
そして、車に戻って走り出そうとした時、
 
「待ってくれぇ…」
 
と、今度は大きく、はっきりとした男の声が、背後から聞こえてきたそうです・・・。
 
Hさん達が全開ダッシュでその場を離れたのは、言うまでもありません。
 
 
 

紅海の少年

エインゲディーのYHを出る時には、同室の連中は皆それぞれどこかに旅立って終った後だった。
 
もう少し急げば8:00のバスに間に合ったのだが、あたふたしても仕方ないので、次の11:30のに乗る事にして
 
死海の朝をゆっくり楽しむ。
 
食堂では、今日は朝飯を食う奴が少なかったのか、料理がたっぷりと残っていた。
 
お陰で3食分ほどたらふく平らげ、今日は寝るまで飯はいらない。
 
10:00にはバス停に出て、のんびり日光浴。1月の日差しもイスラエルでは暖かく、風もないので、
 
今日あたりは死海の「浮かび日和」だ。
 
岩に凭れてウトウトしていると腕時計のアラームが鳴った。11:25。
 
イスラエルの長距離バスは殆どきっちり時間を守る。エイラット行きのバスもオンタイムで陽炎の彼方から姿を
 
現した。何故かエイラット行は運賃が高く、学生IDを示しても14シェケルもとられた。
 
やや混んでいるバスの、後の方の窓際に落ち着くと、やがて車窓をマサダが通過し、しばらく死海の沿岸を
 
走る。おおよそ自分とは縁のなさそうな高級ホテル群や、ソドムの死海工業社の工場が後に流れ、やがて
 
バスはネゲブの砂漠に入った。砂漠と言っても、岩石砂漠と言う奴で、ガツガツと乾ききった岩が無数に広がる
 
薄茶の荒野だ。その向こうには、ヨルダンの山々が荒々しい肌を晒している。
 
途中のガスステーションで休憩し、ファラフェルを食った。6シェケルもとられたが、こんな荒野の中では
 
仕方がない。再び走り始めたバスの中は、エアコンが故障しているのか、温室のようになり、うだるような
 
暑さだ。車窓にはいつまでも同じ景色が続く。風景のアクセントと言えば、何もないように見えた砂漠の中から
 
突然の轟音と共にIDF(イスラエル国防軍)のF-15戦闘機が飛び立っていった事くらいだ。
 
景色にも飽きて一眠りして目を醒ますと、バスはかなり走ったらしく、エイラットまで20Kmの標識が見えた。
 
道路にコンクリート製の大きなブロックを置いてシケインにした軍の検問所を抜けると、前方に青い海と町並みが
 
見えた。イスラエルの南端の町、紅海に面するエイラットだ。
 
窓を開けると、乾ききった風の中に、ほんの少しだけ潮の香りが混ざっているような気がした。
 
 
バスは、そうごみごみもしていない小ぢんまりとした町の、小ぢんまりとしたバスセンターに辿り着いた。
 
バスから降りる客は、横腹から荷物を出す間もなく、安宿の客引きに群がられる羽目になり、私の所にもチリチ
 
リ金髪の兄ちゃんが言い寄ってきた。
 
ドミトリーで10シェケル、キッチンもホットシャワーも使えるョ!!と調子のいい事を言ってくる。
 
見て嫌だったら断ってくれてもいいョ!! と言うので、彼の襤褸車に乗り、宿まで連れて行って貰った。
 
そこは、これほど町外れもない町外れで、インフロントオブ荒野!!とういうトンでもない所だった。
 
平屋の小さな宿には看板一つ出ていない。たぶん、チリチリ金髪の兄ちゃんが引いてきた客でまかなっている
 
のだろう。
 
中に入ると、ナイトライダーのマイケルそっくりの宿主が満面の笑みで出迎えた。部屋はドミトリーとはいえ広く、
 
部屋もトイレもシャワーもキッチンも綺麗だったので、とりあえず1泊頼んだ。すると、明日は金曜日だから安息
 
日の明ける週末まで泊まらなきゃ何処へもいけない。3泊しろ、とマイケルが言い出す。いや、1泊でいいよと言っ
 
ても、お前エイラットに何しに来たんだとまくしたてるので、何となく3泊する事になった。マイケルは、これから1時
 
間掃除を手伝ったら1泊分まけるてやると言われたが、断った。
 
 
とりあえずすることもないので、町のインフォメーションに行って地図でも貰おうと外に出た。地の果てみたいな
 
宿だが、小さな街の事、10分も歩くと商店街もある町の中心に出られた。町のすぐ脇に飛行場があり、今しもプ
 
ロペラの旅客機が着陸しようとしている。インフォメーションで地図を貰い、そう言えばマイケルはインフォはしま
 
ってるから地図なら安く売ってやると言っていたが、奴が大嘘つきだと言う事がこれでバレた。
 
 
通りのベンチでさてどうしようかと座っていたら、あそうだ、換金しなきゃと銀行に行ったら開いていたので50ドル
 
ばかり両替した。出国時はシェケルからドルへの換金は難かしいようなので、チェンジのタイミングも考えないと。
 
そうこうしているとヨルダンの山並みがオレンジ色に染まり、乾いた熱風もやや涼しさを感じさせる。宿の近くのス
 
ーパーで安息日対策の買い出しをして、マイケルの宿に戻った。マイケルは、明日掃除したら10シェケルだぞ〜
 
と、言うがそれを背にしてキッチンでスープにピタ、フルーツの質素な夕飯をつくって食う。その後、シャワーを浴
 
びたらぬるかった。嘘つきマイケルめ。
 
 
部屋に戻ると、他に客は入っておらず、がらんとした8人部屋は独占できそうだ。
 
陽が落ちて気温は急速に下がりつつあり、海に面していながらもここは砂漠の気候なのだと改めて思い至った。
 
 
さて、翌朝、ゆっくり寝ていると、ガーガーとけたたましい掃除機の音で叩き起こされた。
 
何だ何だとむっくり起きると、見たところ12〜3才のの少年がドイツ製の大仰な電気掃除機をかけている。
 
枕もとの腕時計を見ると、もはや昼前だった。
 
もそもそする私にお早うと声をかけ、少年はまた掃除機に集中する。
 
ははあ、マイケルの奴、宿泊客に掃除させる事を諦め、そのへんの小僧を小遣銭で雇ったかと、そう思って
 
またぞろシーツに潜り込んだが、掃除機の音がうるさすぎて、寝るのを諦めた。暑かったせいもある。
 
あ、そうだ。せっかくだから紅海で泳ごう、と思って、がば、と飛び起きると、
 
いつの間にか、少年は掃除機もろとも姿を消していた。
 
すばしっこいガキだなとおもいつつ海パンを穿き、Tシャツをかぶり、ジーンズを引っ掛けて、どやどやと廊下を
 
歩いていると嘘つきマイケルがいた。
 
 
マイケルがまたしつこく掃除したら云々と言うので、小僧を雇ったんだろ?俺の出る幕ないよ、と返すと、
 
キョトンとしている。いや、だって、さっき、子供が掃除してたじゃないかと言うと、マイケルはアーハーンと
 
両手を広げ、ああ、そりゃゴーストだと言う。また、出たかと。
 
何言ってんだホワットドゥーユーセイと訊くと、つまりはこう言う事だった。
 
 
お前が見たのは、むかしここに住んでいた子供の幽霊だ。
 
むかしはここは、金持ちの別荘で、その息子がヨムキプルの戦争で死んだそうだ。
 
死んだのは20何歳かだったらしいが、何故か子供の頃の姿で出てくる。
 
俺も何度か見てるが、たいていの場合、掃除してるな。わっはっは。
 
 
―ああ、そうですかと、今更嘘つきマイケルの話を信じる気も無かったが、ヨムキプル戦争(第4次中東戦争)
 
で死んだ人の幽霊とは、いかにもイスラエルらしいと言えばらしい。
 
その後、この地が気に入ったので、掃除を請負ながら2週間ほどただでその宿に滞在したが、その間、他の客が
 
入ってくる事も、あの少年が出て来る事もなかった。そう言えば、客引きのチリチリ金髪の兄ちゃんにも会う事は
 
なかった。その2週間、掃除以外、何をしていたか、良く憶えていない。
 
 
しかし、宿を去る時、マイケルがこう言って見送ってくれたのは朧げに記憶している。
 
「ホントにここが平和になったら、また、来てくれ」と、彼はそう言っていたような気がする。
 
もしそうなった時、また、あの少年に遭えるのだろうか。嘘つきマイケルにも、チリチリ金髪にも。
 
そんな風に思いながら、私は、小さなバスセンターを10:00に発つテルアビブ行きのバスに乗った。
 
走り出して間もなく、砂漠に入ったバスから振り返ると、紅海の青も、エイラットの町も、立ち昇る陽炎の
 
中に見えなくなっていた。―幻のように。
 
 
 
 
【後日談だが、私は泊まった宿のカード(宿の名前と住所・電話番号・略地図などが印刷された名刺みたいな
 
もの)は必ず保管していたのだが、あの嘘つきマイケルの宿のものだけが見当たらないのだ。】
 
 
 
 
 
 

借り傘

友人が、ある有名な温泉地の老舗の旅館に泊まった時。
 
元々は、江戸中期に近くの寺院に参詣する客を泊めていた小さな宿だったらしいが、何代目かが
 
戦後の高度経済成長期の波に乗って、百何十年だか続いた母屋を取り壊し、「近代的な」味気ない
 
コンクリート造りにしたのも、もう40年も前の事。味気なかった近代建築も今やそれなりに風合いを醸し出す。
 
そんな旅館だったとか。
 
それでも、老舗らしく、70にもなろうかと言う女将がお出迎えをしてくれる、そんな旅館だったとか。
 
 
 
午後遅く宿に入り、早速熱めの温泉に浸かり、浴衣に丹前、下駄をつっかけカランコロンと小ぢんまりと奥深い
 
温泉街を散策へ出かけたのは夕方近く。山際に消える間近の夕陽が通りを橙色に染めている。
 
狭い路地様の通りには所狭しと、温泉饅頭、漬物、名物のなんとか焼きなどの食い物から、骨董品、木工細工、
 
器、塗り物、仏具等を売る店が軒を連ねている。
 
自分と同じ様に、思い思いの浴衣姿の人波は、喧騒と言うには落ち着いており、温泉街の情緒を点描する。
 
山に遮られて夕日も早く落ち、腕時計の時間よりも薄暗くなると、表通りから透かして覗く裏路地には毒々しげ
 
な原色で小さなネオンが灯りだす。
 
そんな中を、一人旅の気ままさ、勧められて買った饅頭をかじりながら、カラコロと彷徨う。
 
ふと見た酒の張り紙に惹かれ、入った店は小料理屋。
 
ほんの一杯が二杯三杯で、遂には宿の夕食の時間を過ぎてしまった。
 
しかしながら、小料理屋でそこそこに美味い料理でそこそこに腹が満たっていたのでまあいいと。
 
ぼつぼつぼつと飲んで、ああそろそろ部屋に帰えらねばと、やや遅い時刻にその店を出た。
 
 
ほろ酔いで、カランコロンと、石畳とアスファルトがないまぜの道を宿に戻って歩く時には、
 
並ぶ店々も軒並み暖簾を降ろして堅く閉ざされている。それでも、ふらふらと温泉客が三々五々に歩いている。
 
そうして心細くもなく歩いていると、ぽつりぽつりと、雨粒が落ちてきた。
 
ずぶ濡れになる程でもない、宿まで歩いて十分かそこら。多少濡れても、また風呂に入り直して、あたらしい
 
浴衣で寝ればいい。と、高を括ってカランコロン。
 
ところが、不意に天の底が抜け、ざんざんざんとの土砂降りになり、慌ててそこいらの軒先に雨宿り。
 
あははは。参ったなあと気楽に構えてタバコに火を点け、それが三本四本になっても、
 
雨は一向に止む気配はない。吐き出した薄紫の煙が、雨の街灯に照らされながら夜の帳に消えるだけ。
 
いつしか、通りにはそぞろ歩きの客並みも消え、雨に煙る中を見透かしても、ここらあたりで途方に暮れている
 
のは自分独りらしい。
 
急に淋しくもなり、いっそ走ろうかと思った時。
 
 
初老の女性が番傘をさして通りすがったそうな。
 
その薄紅の古風な和装は、街灯に照らされるまでもなく、艶やかに雨の中、浮いて出て見えた。
 
女性は、通り過ぎてふと振り返ると、もしや。うちの宿にお泊りではと訊いてくる。
 
見ると、古風な番傘にはやはり自分の宿が墨書で黒々とあったと言う。
 
ええ、ああ。そうですがと応えると、この雨の中お困りでしょうに、これをお使い下さいませ。
 
と番傘を手向けてくる。
 
いえ私はすぐそこに家がありましてね。いえいえこれから濡れると言っても大層な事はございませんの。
 
さあさあどうぞお使いになって下さいませ。
 
 
そうして、やんわりと番傘を押し付けられ、有難うございます、いや、でも…
 
と返した時には薄紅の和装はいつの間にか雨の中滑るように通りを下り、その翳は雨の帳に薄くなりつつ。
 
 
その後姿に軽く頭を下げ、借りた番傘で宿まで帰る。
 
当直なのか、番頭風の老齢男性が出迎えてくれたので、傘を返しつつ件の女性に謝意を述べると。
 
ははあと。老番頭はその見事に刈り込まれた白髭を撫でながら、一時何やら思いに耽る。
 
そして、それは、先々代の女将でしょう。お役に立てて何よりでしたと。
 
そう言ったそうです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

全19ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 次のページ ]


.
TO7002
TO7002
男性 / O型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について

ブログバナー

過去の記事一覧

1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
検索 検索

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
10/31まで秋の行楽キャンペーン実施中
衛生対策製品クレベリンの姉妹ブランド
クレベ&アンドハンドジェルが新登場
今だけ。お試しキャンペーン実施中!
抽選で150,000名様に当たるチャンス!
マツモトキヨシで期間中何度でも使える
100円引きクーポン<Yahoo! JAPAN>

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事