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ある暑い南の国に1匹のかまきりがいました。かまきりの住んでいるところは、 大地はひび割れ、木の1本も生えていないさびしい土地でした。あるのは地面の ひびの間にまばらに生えた雑草と、ちょっと遠くにある、みんなの水飲み場となっ ている小川ぐらいでした。その小川も、ここよりだいぶ低地にあるので、ここから は見ることができません。周りを見渡しても、見えるのは地平線ばかりです。 かまきりの他には、暑さに強い蟻やかげろう、小さな羽虫、それと体の大きな動物 たちが暮らしていました。 ある日、かまきりは思いました。 “あの地面の向こうには何があるんだろう?” 一度考え出すと、かまきりはどうしても地面の向こうへ行ってみたくなりました。 そして、とうとうかまきりは仲間たちに言いました。 「ボク、地面の向こうへ行ってみるよ。」 仲間のかまきりたちは、それを聞いて、地面の向こうには何もないと笑いました。 でも、かまきりの決意は変わりません。かまきりは、ただ、まだ見ぬ世界に夢を 見ていたのですから。 そして、かまきりは旅立ちました。 いくら進んでも、先にあるのはいつも見慣れたひび割れた地面ばかりでした。そ れでもかまきりはあきらめません。きっと何かあると信じてどこまでも進んでいき ました。 そして、朝と夜が10回もすぎてゆきました。 かまきりは、長旅の疲れのせいか、とても弱っていました。もう、ここで終わりか、 そう思った時です。横の方から、1頭のおおきな‘しまうま’がかまきりの方へ歩い てきました。 「やや、かまきりくん、こんな所でどうしたんだい。とても疲れているようだが・・・」 しまうまが問いかけます。かまきりは、 「地面の向こうには何があるのか知りたくて、ずっと旅をしてきたんだ。」 といいました。 「地面の向こう、そこに何があるのかは私にもわからないな。だが、身近にある 素晴らしいところなら知っている。つれていってあげよう。きっと疲れもとれるは ずだ。」 そういうと、しまうまはかまきりに背に乗るように促しました。かまきりは黙ってし まうまの背に乗り、高い視線からあたりを見まわしました。それでも、地面の向こ うは見えません。 やがて、しまうまの周りにはたくさんの動物たちが集まってきました。バッファロー やダチョウ、なかにはライオンの家族もいました。みんな、けんかをすることもなく 同じ方向へむかっていきます。 かまきりはいつのまにか眠っていました。よほど疲れていたのでしょう。どのくら い寝ていたのか、かまきりは、ふいにしまうまの声で起こされました。 「かまきりくん、ここがその素晴らしい場所だ。きれいだろう。」 かまきりは返事をする事も忘れて、辺りの景色を体を乗り出して見まわしました。 それこそ、しまうまの背から落ちてしまいそうなほどです。 そこは、オアシスでした。もちろん、かまきりはオアシスなんて知りません。 かまきりの目にうつったのは、大きな水溜まりに群がり水を飲んでいるたくさんの 動物たち、今までに見たこともないほど、背の高い草の下にできた日陰でやすむラ イオンの家族。これほどたくさんの動物が集まっているのを見たのははじめてです。 でも、かまきりの目に一番輝いてみえたのは、赤や黄色や白、その他かぞえき れないほどに色とりどりの、美しい草たちでした。その草の周りには、今までかまき りが見たこともないような、これまた美しい生き物が、風にゆられるように、ひらひら と舞っていました。 「しまうまさん、あれは何!」 「あれ?どれだい?」 「あの、いろんな色の草だよ。あれはなんていうんだい?ああ、きれいだなあ。」 「ああ、あれかい。あれは草ではなく、‘花’というんだよ。知らないのかい?」 「うん、僕の住んでいるとこにはないから・・・。じゃ、あっちの背の高い草は?」 「あれは、‘木’だよ。」 「じゃあ、あのひらひら飛んでいるのは何だろう?」 「あれは蝶というのさ。きれいだろう」 「じゃ、あれは、あれは・・・」 かまきりは、疲れなど吹き飛んでしまったかのような勢いで、あたりを駆け回り、 花や蝶・大きな水溜まりのこと、たくさんのことをしまうまに尋ねました。 その日、かまきりは一日をそのオアシスで過ごし、夜、お花畑の中で眠りにつき ました。 次の日、かまきりは仲間のところに帰る事にしました。みんなに、ここで見たもの の事を、早く教えたかったからです。 しまうまが家まで送ってくれるというので、それに甘えることにしました。帰り道に、 しまうまに、ここ以外にもたくさんのオアシスがある、ということを聞きました。 かまきりは何か考えていたようで、ふ〜ん、と答えただけでした。 そして、朝と夜が2回ずつすぎてゆきました。旅に出て、3度目の朝、もう仲間のと ころに帰ってきました。かまきりは、自分の見ていた世界の狭さを、つくづく思い知 らされました。しまうまはかまきりに別れを告げ、自分の家へ帰ってゆきました。 こうして、かまきりの旅は終りました。 今、立っているのはあのオアシスではなく、ひび割れた、見慣れた大地の上です。 なんだか、懐かしいような、寂しいような複雑な気持ちです。 しばらくすると、仲間たちが集まってきました。仲間たちは、地面の向こうに行けな かったかまきりを馬鹿にしましたが、かまきりのしたオアシスの話は夢中になって 聞きました。 大きな水溜まり、木のこと、花のこと、そして、蝶のこと。なかでも、花の話にはとり わけ熱がこもっていました。 そして、かまきりは話の最後に、こう言いました。 「ボク、花になる!あの、きれいな花に!」 仲間たちはとても笑いました。かまきりは大きくなってもかまきりです。花になれる はずがありません。 でも、かまきりは本気です。小川のほとりに行き、来る日も来る日も考えました。花 の真似をして、一日中、風に揺られてじっと立っていました。でも、花になれません。 色も、緑色のふつうのかまきりのままです。 「ボクと花、いったい何が違うんだろう?」 いくら考えてもわかりません。そして、朝と夜が何度もすぎてゆきました。 もう、お腹もすいて、喉もからからです。でも、花はごはんを食べていませんでした。 水も飲んでいないようでした。仲間たちは、なんどもやめるように言いに来ましたが、 かまきりは返事もしませんでした。花は、しゃべらなかったからです。 また、朝と夜がすぎてゆきました。 仲間の一人がかまきりのところへ行ってみると、すでに、かまきりは息絶えていまし た。仲間たちは、涙を流しながら、かまきりを小川のふちに埋めました。 そして、また、朝と夜が何度も何度もすぎてゆきました。 ある日、仲間のかまきりが、お墓参りにやってきました。 すると、どうでしょう。かまきりのお墓から、きれいな白い草が生えているではありま せんか!かまきりは、しばらくその草を眺めていましたが、すぐに気づきました。 これが、あのかまきりの言っていた、‘花’なんだ、と。 かまきりは、いそいで仲間のもとへと戻ってゆきました。 そうです、かまきりの夢は叶ったのです! その後、花になったかまきりは、ひび割れた大地を少しづつお花畑に変え、今では 蝶やみつばちなど、たくさんの虫たちが飛び交っているそうです。 あなたも、そのお花畑に行ったら見てごらんなさい。小川のふちに咲いた白い花の
まわりには、いまでも、きっとたくさんのかまきりたちが暮らしているはずです。 いつか、‘花’になることを夢見て・・・。 |
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ちょっと切ないお話だったけど、願い続ければ願いは叶う。。。心に残るお話でした。どうもありがとう!
2006/3/22(水) 午後 7:52 [ - ]
そう、夢は必ず叶うもの。強い気持ちを持ち続けることがもっとも大事です。それに、夢に向かって頑張っている人って素敵ですよね。夢はなくしたくないものです。
2006/3/23(木) 午前 9:04 [ sophia ]