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旗を立てた。笑顔の旗。 身寄りを全て失って初めて持った夢。 「世界中の人の笑顔を見ること」 どうすればいいのかは全然分からなかった。 毎日、公園で萎れた旗を眺めては考えた。 自分に出来ることは何だろう? どうすれば、みんなを笑顔に出来るんだろう? ある時、僕のほかにも旗を掲げた人に出会った。 拳の描かれたその旗は、力強く風に靡いていた。 彼は僕を見かけると、寄ってきて、言った。 「君はいつもここでしょげているな。」 「いつも?」僕は聞き返した。 彼は呆れ顔で言った。 「そう、いつも、だ。気付かなかったのか?俺も毎日ここでトレーニングしていたのに」 全然気付いていなかった。 だって、自分のことで精一杯だったから。 僕は彼の旗を眺め、聞いた。 「その旗、すごく素敵だね。僕の旗はこんなに萎れている。なんでだろう?」 彼は僕の旗を覗き込み、答えた。 「何もしないからだろ。俺はいつか世界チャンピオンになるんだ。その為にはただ腐ってちゃだめだ。駆けずり回って、自分で風を集めなきゃな、旗は靡かねぇ。お前の旗はただ風を待ってるだけだ。そんなに都合よく風が吹くもんか。」 僕は言った。 「でも、何をしたらいいか分からないんだ。世界中の人々を笑顔にしたいんだ。でも、どうしたらいいか分からないんだよ!」 彼は拳を顎に当てながら答えた。 「とりあえず、あれなんかどうだ?なんだっけ?サーカスのピエロとかがよくやる、ほら、あのボールをいくつもぐるぐる回す、あれだよ。まあ、なんだっていいだろ。とりあえずそんな顔してちゃ誰も笑わねぇぞ。まずは自分が笑顔にならねぇと。」 「・・・ジャグリングのこと?」 「そんなんだったっけか?ま、なんでもいいや。とりあえずなんでもいいからやってみろよ。言っただろ、自分が駆けずり回らなきゃ風は集まらねぇ。生半可な気持ちで掲げたんなら、そんな旗捨てちまえ。俺の見てる夢は布団の中で見る夢とは違うんだ」 「僕だって・・・!」 彼は僕の言葉なんか聞かずに、くるりと後ろを向いて行ってしまった。 僕は、帰りに雑貨屋でビニールのボールを4つ買って帰った。 それから、毎日家でジャグリングの練習をした。 でも、いくらやっても上手くならない。 3回、4回と続いても、すぐにボールは僕の手の届かぬところへ飛んで言った。 旗も、萎れたままだ。 毎日、毎日練習を続けた。 風よ、集まれ。 ある日、僕は久しぶりに公園へ出掛けて行った。
今日も、彼は旗の下でトレーニングをしていた。 彼は僕に気付くと、近づいてきて、言った。 「お、ちゃんとまだ旗を持ってるじゃねぇか。どうだ、なんか見つかったか?」 僕は、おずおずとボールを出して、言った。 「これを、やってみようと思って」 彼はボールを見て、にやりと微笑んだ。 「やって見せろよ」 僕は答えた。 「でも・・・まだまだ全然上手に出来なくて・・・」 彼はイライラした口調で言った。 「いいから、早く!」 僕は、彼の気迫に押されるように、ボールを操り始めた。 3回、4回、5回・・・今日は調子がいいみたいだ。 「お、やるじゃねぇか」 彼もじっと僕を見ている。 でも、だんだんとボールはあちこちに飛んでいき始めた。 ボールが僕の頭上を越えて、後ろに落ちようとした時、僕はそれを掴もうとしてそのまま後ろに倒れた。 「いたた・・・」 彼のほうを見ると、彼はお腹を抱えて笑っていた。 「最高じゃねぇか!いいんだよ、失敗したって。失敗も笑いの一つだぜ!逆に上手なだけじゃ笑えねぇ。お前、意外と素質があるのかもよ」 僕はきょとん、と彼を見上げた。 「後は、お前も、もっと楽しそうにやることだな。自分の笑顔で相手を引き込んじまえよ。精一杯なのは分かるけどよ」 僕の、笑顔・・。 「じゃぁな!」 彼は、唐突にくるりと後ろを向いて去っていった。 おじいちゃんが死んでから忘れてた、僕の笑顔。 僕が失敗した時の、彼の笑顔。 僕は、自分の旗を見上げた。 少しだけ、風に靡いた気がした。 |
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いいですね〜コレ!
元気が湧いてきそうですわ!!
最近寒いし、体調悪かったんで、ヘコんでたんですけど、ヤル気出てきそうなお話ですね♪
2008/2/12(火) 午後 8:18
どうも最近勢いで書くクセがついてしまって・・推敲もしないで一発書きです。読みにくい部分は申し訳ないです。個人的にこの主人公が好きで、急に浮かんできた作品です。元気を出してもらえてよかったです。
2008/2/13(水) 午後 11:20 [ sophia ]