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ほら、太陽があるでしょう。 そこから右にいって、上にのぼってぐるっと回ったあと、左にいってその斜めうしろ。 ね、あるでしょ?昼間なのに、お星さま。 え?見えないって? やっぱり。僕だけなんだ、あれが見えるのは。 友達もみんな見えないって言ってたし。 だから、あれは僕だけの星。 ヒマなときは、小高い丘に寝転んでいつも眺めてたよ。 時には強く輝いて、時にはちかちか瞬いて、星も僕に見てもらえてきっと嬉しかったんだろうな。 僕はおじいちゃんと一緒に暮らしてる。 父さんと母さんは僕が小さいときに死んじゃったから。 僕は毎日泣いてたら、おじいちゃんが言ったんだ。 「悲しくても笑ってなさい。笑っていないと幸せが逃げてしまうよ。それに、おまえが泣いているとわしも寂しい。」 その日から、僕はなるべくおじいちゃんの前では笑っていることにしたんだ。 だって、おじいちゃんのことがすごく好きだったから、おじいちゃんにも悲しい思いをさせたくなかったし。 おじいちゃんはよく言ってた。 「人間は笑っているときが一番素敵で幸せなんだ。おまえも自分だけでなく、みんなが笑っていられるようにがんばりなさい」 そのおじいちゃんも、寿命がきて、天国に逝っちゃった。 僕はとうとう一人ぼっちになっちゃったんだ。 それから、僕は笑わなくなった。 だって、笑いかける相手がいなくなっちゃったんだ。 毎日暗い気持ちだったし、どうしたらいいのか分からなくって、父さんと母さん、おじいちゃんのところに行きたいって思った。 きっと、父さんと母さん、おじいちゃんも空にいるんだ。 そう思って、空を見上げた。 あの星が瞬いてた。 僕は星に語りかけた。 「なあ、僕の父さんたちはそこにいるのかい?」 驚いたことに、星も僕に語りかけてきた。 「残念だけど、ここにはいないよ。ここにいるのは私ひとり。そして、私に気づいてくれたのも君ひとり」 「一人っきりで寂しくないの?」 「そりゃ寂しいさ。でも、君がいるから。いつも私を見ててくれただろ?とても嬉しかった」 「僕は・・・まだ寂しい。友達もいるけど、やっぱり寂しい」 「・・・」 星はしばらく黙って、また語りだした。 「ひとつだけ、願いをかなえてあげるよ。どんなことでもいい」 「どんなことでも?」 「そう、死者を生き返らせることはできないけれど、一目会うぐらいならかなえてあげられる。それで君が笑顔になるのなら」 そのとき、おじいちゃんの言葉が耳に響いたんだ。 (人間は笑っているときが一番素敵で幸せなんだ。おまえも自分だけでなく、みんなが笑っていられるようにがんばりなさい) 僕は星に言った。 「一瞬でもいい。世界中のみんなを笑顔にしてくれないかい?」 「・・・おやすいごようさ」 そう言うと、星はひときわ大きく輝いたんだ。 そして・・・ 星はひとすじの流星となって落ちていった。 そのとき、世界中の人々が空を見上げ指差した。 「あ!流れ星だ!」 「ねえ、願い事しようよ!」 たしかに、その瞬間、世界中の人々が笑顔になった。 ・・・たった一人を除いては。 僕は走った。星の落ちたほうへ。 そして拾いあげた。なんて小さくて、弱々しい光。 星は、僕の片手に楽におさまるぐらい小さかった。 「ごめんね。君だけは笑顔にできなかった」 星はそう言うと、その輝きをとめた。 「ごめんね。ごめんね。ありがとう・・・」 僕は泣きながら言い続けた。 そして、決めた。これで泣くのは最後にしよう。 とある公園で一人の男が芸を披露している。
ジャグリングや手品など、男が何かするたびに公園には笑いが満ち溢れた。 時おり男はわざと失敗もし、和やかな雰囲気を作ることも忘れない。 一人の少年が聞いた。 「おじさん、すごいね。みんなこんなに笑ってる」 男は答えた。 「うん。でも、まだまだ。私の夢は、世界中の全ての人を笑顔にすることだから」 そういうと、男はポケットから石のかけらを取り出し、真昼の空にかざした。 太陽の光は、強く、その石を輝かせた。 |
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おはようございます。じつは今日2度目です。あまりにも自分と重なるところがあり。。。僕はむかしの私ではないか?。。。むねが詰まり・・・コメントできずに帰りました。良かったです。すごく良かった。
2006/5/9(火) 午前 9:59 [ - ]
星がその人の運命を変えたんですね。 面白いお話でした。
2006/5/9(火) 午後 9:44 [ 水牙帝 ]
ikko_dayoさん > 父や母、身内を失うのはとても悲しいことです。それでもずっと泣いていることはできません。どこかで振り切らなくては。ずっと笑顔でいること。みんなを笑顔にすること。それは、自分のための癒しでもあるんでしょうね。2度も訪問していただいて、ありがとうございました。
2006/5/10(水) 午前 8:18 [ sophia ]
waterfang_emperormageさん >きっと、これからは彼が「笑顔の星」となって輝いていくことでしょう。いつも読んでいただいてありがとうございます。
2006/5/10(水) 午前 8:19 [ sophia ]
笑顔でいること、いられること。。。簡単そうでとても難しく。。。でも『笑顔が1番!』
2006/5/11(木) 午前 6:48 [ - ]
笑顔でいること、はもちろん、笑顔を作り出せること、これができると素敵ですよね。 この作品は「世界の真ん中」という作品とつながっています。ブログ初期の頃の作品です。
2006/5/12(金) 午前 4:05 [ sophia ]
たった一つだけの願いを、世界中の人とおじいちゃんのために使ったぼくは、やっぱりどこか悲しげですね。ぼくのために散った星も、どこか悲しげです。物語にながれる悲しい風と、笑顔のギャップが素敵です。笑顔も、ただの笑顔なんてないってことを改めて感じました。みんなその裏にはいろんなものを抱えているはずですものね。その時は忘れているかもしれなくても。 あと、わたしはこの星のキャラクターが好きでした(^_-)
2006/5/14(日) 午前 1:18
今回のお話は、全体に悲しい感じを流れさせつつ、その先を明るく照らしだす。そんな感じで書かれています。星のキャラクター、気に入ってもらえてよかったです。今度、空を見上げたら探してみてくださいね。あるかもしれませんよ、真昼の星が。
2006/5/15(月) 午前 2:38 [ sophia ]
すてき!!!トールさん、すてきですそれ。探してみよう(*^_^*) ああ、そういうの、好きだなぁ。
2006/5/17(水) 午前 0:35
私は空を見上げると何か探す癖があります。何もないのは分かっているんですが。。みつけたら教えてくださいね!
2006/5/17(水) 午後 11:10 [ sophia ]