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憎しみ

啓祐とは高校の頃の大親友だった。
頭がよかったが、すぐに右の耳たぶを触る妙な癖があった。
二人ともパソコンが得意で、一晩中語り合ったこともあった。
二人で勉強して、プログラミングの会社を興そう。そう、約束した。

大学は別の学校に進学した。
同じ学校でなぁなぁに学ぶより、違う環境でしっかり学ぼうと話し合って決めた。
卒業までは互いに連絡を取らず、厳しい環境に身を置こうと決めた。
だが、私はサークルに夢中になってしまい、いつしかその約束を忘れていった。

啓祐の名前は時々聞こえてきた。M大学にプログラミングの天才がいると。
私の心は痛んだが、だらけた生活を変えることは難しかった。

そんなある日、啓祐の噂が聞こえてきた。
「M大の山田啓祐ってさぁ、なんか会社興したらしいぜ。学生なのにやるよなぁ」
・・・!?
私は耳を疑った。
そんなはずはない!啓祐が私との約束を破るはずがない、と。
だが、その噂は方々から聞こえてくるようになった。
私は本人に確認しなかった。これだけ話題になっているのだ、間違いであるはずがない。
アイツもきっと私の噂を聞いて、私のことを捨てたんだ。
アイツは裏切ったんだ。
アイツには、負けない!

その時から、私は変わった。
もう一度、一から勉強をやり直した。
がむしゃらに勉強を続け、多くの資格を取り、卒業後に会社を興した。
そこに、共に誓った啓祐はもちろんいない。
私の会社にはあちこちからプログラミングの依頼が舞い込み、あっという間に業界最大手までのし上がった。
逆に、啓祐の会社は、ついに名前すら聞くことがなかった。


「今回も大成功でしたね、会長」
「ああ、息子もだいぶ成長したし、私もそろそろ引退だな」
私は今、とある会社のパーティー会場にいる。
もう60を過ぎたが、まだまだ現役で頑張っている。
新興の会社のシステムの構築を依頼され、それが先日完成した。
パソコンの素人でもだいぶ使いやすく仕上がっている。
気分のよくなった私は、酔いを醒ますため、会場の外へ出た。
「あの・・・」
そんな時、一人の老人が話しかけてきた。老人は目が見えないようで、杖をつきながら少しずつ近づいてくる。
「おめでとうございます」
言いながら、老人は右の耳たぶを触った。
「??」
そして、それだけ言うと、また少しずつ遠ざかっていく。
「けい・・すけ?」
呼びかけるが、老人は止まらない。
私は、老人の前に廻りこみ、老人の肩をつかんだ。
「啓祐だろう?おまえ、目、どうしたんだ?」
老人は静かに答えた。
「学生の頃にな、ちょっと酷使しすぎたよ。約束、守れなくてすまない」
「ちょっと待て。だって、おまえ会社を興したって・・」
「・・・おまえ、だいぶ腑抜けになってるみたいだったからな。いい刺激になったろう?」
啓祐は、そういうと、また右の耳たぶを触った。
「じゃあ、頑張れよ」
そして、啓祐は去っていった。
私は呆然と、その場に立ち尽くしていた・・・


「会長!どうして経営から抜けるんですか!」
常務がうるさくまくし立てる。
「もう、高広で充分だろう。私は私のやりたいことをやる。昔の約束があるんでね」
60を過ぎた二人が興す会社。しかも片方は盲目ときた。いったいどうなることか・・
前途多難なのに、私の心は今、少年のように湧き立っている。

閉じる コメント(1)

やはり、友情ってすごいですね〜。

2006/7/6(木) 午後 10:20 [ 水牙帝 ]


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