印マルチ・スズキ の工場暴動、低賃金労働力への依存に警鐘 [マネサール(インド) 6日 ロイター] スズキのインド子会社マルチ・スズキのマネサール工場(北部ハリアナ州)で7月18日に労働者が起こした暴動は、低賃金労働力に依存する製造業に警鐘を鳴らしている。
同工場のスーパーバイザーの1人であるラジ・クマール氏(43)は、鉄棒や自動車部品を持った労働者が暴れ回るなか、事務所に身を潜め、戦場と化した職場の事態を把握しようとしていた。
この日、彼の同僚の1人が焼死、数十人が骨折などのけがを負った。不信感に苛まれた工場で長年にわたる生産現場と経営側の対立が暴動へと発展したのだ。
警察が捜査を進め、マルチ・スズキが損失規模を把握しようとするなか、この暴動は、インドの経済界を揺るがし、低賃金労働力が製造業を支え、外資を呼び込んでいる同国の労働法が時代遅れで柔軟性に欠けていることを浮き彫りにした。
クマール氏は、暴動から約1週間後、閉鎖された工場入口の外に立ちながら、ロイターに対し、「常に強い不満が漂っていた。われわれは危険を感じながら日々過ごしている。彼らが示した暴力は信じ難い」と話した。
現代自動車やホンダなどインド国外の自動車メーカーもここ数年、インド工場での労働争議に直面しており、業界団体は柔軟性に欠く法律を見直すよう、政府にあらためて求めている。
米ゼネラル・モーターズ(GM)のインド部門バイスプレジデント、P・バレンドラン氏は、マネサールでの暴動について「明らかに誤ったメッセージを送っている。投資家は消極的になるだろう」と指摘。「柔軟な労働改革が必要だ。1956年からの規則を2012年に用いるわけにはいかない」と指摘した。
1920年代にさかのぼるものもあるインドの労働法の下では、大手企業は正規雇用者の解雇が困難なことから、大量の契約労働者採用を余儀なくされており、これが多くの労働組合との対立点となっている。
バレンドラン氏は「遅かれ早かれ、このような事態が起きると思っていた。今回スズキで起きたが、次はわれわれに起こるかもしれない」と語った。
地元住民や労組によると、マルチ・スズキのマネサール工場は現在、閉鎖されており、多額の損失を出している。一方、2500人を超える労働者は企業側や警察からの懲罰を恐れて逃亡している。
マルチ・スズキは、暴動は挑発によって生じたのではなく、予想外の事態だったとしている。ただ工場では長年、労働争議が起きており、生産ラインで働く労働者を代表する労働組合は、経営慣行により衝突は避けられないものになっていると訴えている。
同じ敷地内にある姉妹工場であるスズキ・パワートレインの労働者は「経営側は労働者を意識的に挑発してきた。彼らの計画は、労働者を挑発して過ちを犯させ、解雇することだ。経営側は労働組合に運営してほしくない」と指摘した。この労働者は職を失うことを恐れ、匿名を条件に語った。
マネサール工場の生産労働者の最高賃金は月2万5000ルピー(450ドル)。このうち、1500人の契約労働者の賃金はこの半分以下だ。前年度のマルチ・スズキの純売上高に占める従業員コストの比率はインド国内上位5社の中で最低の2.4%だった。
労組は暴動が起きたとき、今後3年間に月1万5000ルピーの賃上げを求めて交渉を進めていた。
交渉が行き詰まるなか、暴動の発端となった労働者と上司の口論が生産現場で発生した。マルチ・スズキは労働者が上司に暴力を振るってきたとし、労組は上司が労働者に軽蔑的な言葉を浴びせたとしている。ロイターは2人に連絡を取ろうとしたが、コメントは得られていない。
マルチ・スズキのS・Y・シディクイ最高執行責任者(COO)はロイターに対し、「彼らは経営側に大声で叫んだりして圧力をかけてくると思っていたが、このような野蛮な暴力を振るうとは思ってもいなかった」と語った。
<責任のなすり合い>
マネサール工場では現在、500人の警察官が警備に当たり、修復された監視カメラのデータや、襲われた幹部の発言内容などから暴動に関与した人物の特定作業が進められている。
ハリアナ州の警察当局者は、ロイターに対し、捜査では労組幹部に責任があり、少なくとも2000人の工場労働者には責任がないことが明らかになるだろうとし、「ごく少数で全員ではない。ただ、労働者に責任があることは疑いない」と語った。
マルチ・スズキのシディクイCOOは「捜査で労組に責任があることが判明した場合、法に委ねられる」とし、労組の終わりを意味すると指摘した。
一方、「労働組合の新しいイニシアティブ(NTUI)」の幹部、Gautam Mody氏は「スズキは大規模かつグローバルな工業施設の管理に失敗した。工場の安定維持への責任は彼らにある」と強調した。
29年前にインドで生産を始めたスズキの鈴木俊宏副社長は、スズキは従業員との意思の疎通を強化する必要があるかもしれないと指摘する。
同副社長は、可能な限り早期にこの状況を克服し、インドの人々に良い車を引き続き提供していくことを望んでいるとし、安全な環境を確保することが最優先されるとしたが、具体的な維持には言及しなかった。
NTUIなどの労組は、マルチ・スズキが正規雇用者の賃金を大幅に下回る水準で契約労働者を使用していることを批判している。一部の契約労働者の賃金は正規雇用者の3分の1以下だ。
一方、マルチ・スズキの広報担当は、契約労働者の利用は需要の季節変動を踏まえた標準的な慣行としている。
マネサールの産業福祉協会の執行委員会メンバー、Amina Shervani氏は「敵意や悪意、嫌悪感が漂っている。正義と透明性がもたらされなければ、平穏はないだろう。(暴動は)また起きる」と警鐘を鳴らした。
|
過去の投稿日別表示
[ リスト | 詳細 ]
全1ページ
[1]
全1ページ
[1]







