救命ボートをどう造ろう

2008年7月は歴史的なピークオイルの月でした。世界的不況の一因でしょう。

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 当面の全般的な考え方をまとめたものは、以下のまとめになります。『ん!』の方にもう3年も前に書いたものですが、大きな変更点はないかと。


「現状認識編「成長論者のパラドックス」」 初出 2006-11-25

 これは「パワーダウン」本からの翻訳ではありませんが、まあストーリーを書き直してみるとこんな風になるのでしょう。

●現状認識
1.今の日本政府は、「スループットの限界」については認識し始めている。

2.その対応として、財界のBauの延長路線の人たちは、自主開発の大幅増加という書き方で、石油&ガスの資源探索のみを「死に物狂いで?」増加させようとしている。
また、発電電力を得るために原発や石炭利用等を想定している。

3.しかし、ハーシュレポートが示すように主に起こる症状とは「液体燃料の欠乏」であり、これに正面から対応する概念としては、ようやくバイオエタノール生産の大幅拡大が一部の省庁から出始めたところ、しかし石油業界は反発中。

4.ピークオイル論の討議は「ストックの限界」つまり絶対的な成長の限界の認識へと進むため、成長路線の頭の中では討議は不可能です。
 (EOR&CCS/CTL&GTL/省エネ&自然エネなど、)どの分野であれ、今後の「死に物狂いの」大規模な投資が実施されないと、ハーシュのクサビのような需給の穴を埋める緊急プログラムにはなりえない。
 しかもハーシュのクサビが示しているのは、それら代替策全てを同時並行で走らせなければならないということであり、かつ成果が上がらなくなっていくので石油&ガスの資源探索からは撤退し、そちらからハーシュのクサビを構成する各対策へと投資資金を振り向ける必要がある。

「ストックの限界」を認識しなければこのような(高騰する石油の探索から手を引く)という投資態度に出ることはありえない。
(2010年の早期ピーク説では確実に、またたとえ2030年の後期ピーク説の認識が正しかった場合でも、成長論者のままでは危機が起こる20年前に緊急プログラムを開始できませんから、成長は続けられないと理解しないといけません。)

 これを成長論者のパラドックスと呼ぶことにしましょう。「成長論者が転向しなければ危機が到来して、従来の成長志向も続けられない」ことを指します。


「処方箋編:部分的な取組みのススメ」 初出 2006-11-25

●処方箋

1.なにも対応がとれないままのPOP=ピーク・オイル・パニックの到来を近い将来の現実として一人一人が認識する必要がある

 苦い薬なんだけれども、「シカタガナイ」と先の現状(現状認識編「成長論者のパラドックス」)全体を認識することなしではなにも始まりません。

2.今そこにある危機=地球温暖化対策名目は、POPが起こることのコンセンサスが取れるより前に行動を起こすいい口実になる

 とはいえ人の認識は一朝一夕に変わるものではないからには、すでに京都議定書の発効で浸透しつつある「温暖化対策」という名目を使って、大幅な前進を図るべきです。
 米国の中間選挙に伴う政界の変動は未来を予測させるに十分ですし、また2050年の60%削減、90%削減といった長期目標も出てきており、こちらはすでに「シカタガナイ」モードに入りつつあるといえます。

 また、緊急の課題としては、日本の古都の名前を冠した京都議定書を日本が達成できるかどうかが危ぶまれている状態です。2008年からの5年間という第一約束期間を目前にして、これからの1年間は最後の政策立案の正念場ですから、対策を先伸ばしすれば日本の面目は丸つぶれです。そのような政治の無能さの実績を積み重ねては、ピークオイル問題でも「何も」できないだろうというアパシーを呼び覚ますことでしょう。

3.全面的な取組みができない以上、部分的な取組みから始めるしかない

 1と2の同行二人、連れもて行こら、ということで、誰もが賛成でき、抵抗の少ない対策=省エネに膨大な投資をし始めることは、一番手近に実っている果実です。
省エネの場合は、これまで使っていた石油の節約分が個別企業の利益となるため取り掛かりやすく、石油高騰のトレンドはすでに行動への十分なインセンティブとなっています。高い価格で売り手となっている石油会社の側にはユーザー企業の行動を阻止できる口実はないでしょう。
 産業界は行動しない言い訳になっている、30年も前の石油ショック時代の取組み=しぼったタオル論は引っ込めてただちに「死に物狂いで」省エネ対策の実行に取り掛かるべきです。
(省エネ分野のみでは足りないことは承知の上で、やればできるということを実感できる分野はここしかないので。)

4.また救命ボート戦略に基づいて、リ・ローカリゼーションに動き出す自治体や国があれば、それらは世界市場の石油需要を削減してくれることなので大歓迎すべき (こちらも部分的な取組みの一部です。)

「自然エネルギー100%自治体」の取組みや「スウェーデン2020年脱石油社会」の取組みは、残りの世界にとっては棚ボタでもらえる危機管理対策となっています。
 とはいえ、持続可能性にもっとも近い地域こそが真っ先に救命ボート戦略に基づいて動くこと、人的資源が救命ボートに引き寄せられることもあり、残りの地域の持続可能性はより小さくなります。
 ここにフリーライダー戦略≒マジックエリクシール戦略を取る地域にとっての深刻な欠陥があります。

5. 4についての認識が行き渡れば、国単位や国際社会単位でのパワーダウン戦略≒持続可能な撤退(byラブロック)という議論を始めることができるだろう

 救命ボートも大きければ大きいほど安定するはずですから、動かせる一番大きな救命ボートこそが乗り込むべき船だということになります。
ということで、保険としての救命ボート戦略を実行しつつ、グローバルなパワーダウン戦略も追求するという二段構えの方針となるのでしょう。

注:
EOR(Enhanced Oil Recovery)=石油増進回収。CO2などを減耗した油田に注入することにより原油の生産量を維持する技術
CCS(Carbon Capture and Storage)=二酸化炭素の回収・貯留
CTL(Coal To Liquid)=石炭液化燃料
GTL(Gas To Liquid)=天然ガス液化燃料
省エネ=省エネルギー(利用の節約と効率向上の両者を含む)
自然エネ=自然エネルギー(新・再生可能エネルギーとほぼ同義)

−−−−

 当時書いた内容からの、現在の大きな変更点は、

1.すでにピークオイル危機は世界金融危機(に隠れて)の形で起こってしまったのかもしれない。=ピークオイル危機の発生。

2.米国のオバマ新政権が掲げるグリーン・ニューディール政策は、これらへの対応であるのかもしれない。=覇権国において、対応を取るというコンセンサスが出来上がった。

 どちらの仮説の場合でも、現在はすでにポストピーク時代に入っているという意味を持ちます。

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