千時千一夜

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 大沢滝神社(花巻市東和町砂子4-107)の紹介です。
 丹内山神社からほど近いところに(車で十分ほど)、この大沢滝神社があります(写真1・2)。ここは、古い参道を現在に残していて(写真3・4)、往時の信仰の厚さを現在に伝えています。
 丹内山神社には、八幡太郎義家(源義家)の勧請とされる八幡神社が境内社としてありますが(弟の加茂次郎義綱の勧請とされる加茂神社もあります)、大沢滝神社は、安倍氏の歴史悲話とともに、源義家による「瀬織津姫命」勧請を色濃く伝える社です。同社の境内に掲げられた由緒を読んでみます。

大澤瀧神社由来
一、祭神 瀬織津姫命、迦具土命
二、祭典 元旦祭 一月一日  春祭(火防祭)三月九日  例大祭 九月九日
三、由来
 康平五年(一〇六二年)陸奥守兼鎮守府将軍源頼義が、厨川柵を攻め滅ぼし、俘囚の長兼六郡の郡司安部(安倍とも…引用者、以下同)頼時の長男安部貞任を戦死させた。源氏の基盤を固めた前九年の役である。
 安部貞任が、一族の本拠地奥六郡から北の厨川へ、山峡を忍んで駒を進めたであろう、栄華の後の寂しい最後の逃避行となった。
 安部貞任の娘「真砂姫」が父貞任の後を追いこの地大沢の滝川にさしかかった。父の身を案じ、父の身代わりとの思いだったのであろうか、この滝川に身を投じてしまった。
 後に源頼義の子八幡太郎義家が「真砂姫」を哀れみ、現在の古滝大明神の地に社を建立して「瀬織津姫命」を勧請、姫の霊を弔ったと伝えられており、地区内外を問わず厚い信仰を集め今日に至っている。
 現在の社殿は文政年間(一八一八〜一八二九年)の建立で二度目の改築と伝えられ、「迦具土命」との合祀となっている。特に縁結びの神様として地域社会の心の結び合いの所縁として親しまれており、毎年九月九日賑やかに例大祭を行っている。
 なお、当地「砂子」の地名は「真砂姫」に由来するとの説がある。
附記
 この地は遠く縄文時代の三〇〇〇年前から、清水を求めて人が住み着き、東和町では数少ない弥生時代(天ヶ沢や八日市場)の遺跡も残されており、水と共に暮らす人々の跡を止めているところです。神の依代であった大桧木とともに、水に浮かぶ真砂姫の心を思い浮かべながらお参りください。                   平成十五年三月九日 大澤瀧神社

 安倍貞任の娘「真砂姫」は、厨川へと敗退する父・貞任を追って、この「大沢の滝川」までやってくると、父の身代わりとなる思いで滝川に投身(入水自殺)したとされます(写真5)。
 義家は、のちの後三年の役の主役の一人となりますが、藤原清衡とは同盟的な関係を結んでいたようで、さかのぼれば、安倍氏との関係も、単純な敵対的心情ばかりではなかったようです。それが、彼に、真砂姫の鎮魂・供養の行為をとらせているようにおもえます。
 由緒によれば、義家は、「現在の古滝大明神の地に社を建立して『瀬織津姫命』を勧請」したとあり、この古滝大明神も訪ねてみました(写真6)。境内には「早池峯大神」の石碑もありましたが、社殿(祠)はなぜか二つ並んでいて(写真7)、この並祭される祠の神の一神は「瀬織津姫命」にはちがいないものの、一方の祭神については、もうだれも覚えていないようです。
 それにしても、真砂姫の霊を弔う行為として、義家は「瀬織津姫命」を勧請したとされます。真砂姫の霊を供養するために、なぜ「瀬織津姫命」がここに勧請される必要があったのかが説明されておらず、この勧請行為には、どこか説明の飛躍があるようにみえます。
 真砂姫の霊と瀬織津姫命が深く関係づけられていることはわかるのですが、これを自然な流れとして理解するには、少し想像力を必要とするのかもしれません。
 以下に、その理解の試み(想像)をしてみます。
 早池峰山頂には、早池峰大神が鎮座することはいうまでもないのですが、ほかに「安倍貞任之霊神」もまつられています(大迫・『早池峯神社社記』)。また、貞任の母親が住んでいたとされる窟伝説なども早池峰にはあります。遠野郷には、厨川の戦い(前九年の役)のとき、貞任弟・宗任の妻子が遠野まで落ち延びてきた、その娘の一人「おはつ」が早池峰大神(瀬織津姫命)と「合祀」された、また、母親(「おない」とされる)にしても、死後、彼女は伊豆権現(瀬織津姫命)に「合祀」されたとする伝説もあります(『綾織村誌』、伊豆神社由緒)。
 これらは伝説の域を出ないにしても、安倍氏の女たちが信奉する神として、早池峰大神こと瀬織津姫命はあっただろうと理解しても、それほど無理ではないだろうとおもいます。北海道福島町では、川濯神でもあった瀬織津姫命は「女性守護神」として、土地の女性たちに厚く崇敬されていましたし、安倍氏の女たちにしても、同じ心性にあったとしてもおかしくはないでしょう。
 こう考えますと、安倍貞任の娘である真砂姫にとっても、その信奉する神が瀬織津姫であっただろうことは、じゅうぶんに考えられることです。義家は、おそらく、このことをよく知っていたゆえに、真砂姫の霊の弔いのために、彼女が信奉していた「瀬織津姫命」を姫の霊と一体のものとして、ここに「勧請」したのだろうとおもわれます。
 では、義家は、瀬織津姫命をどこから勧請したのかとなりますが、わたしは、義家とも縁あった丹内山神社ではなかっただろうかと考えます。
 丹内山大神の出現地は「瀧神社」(現在の滝ノ沢神社)の「瀧」でした。真砂姫は「大沢の滝川」に身を投じたとされます。この大沢滝神社という社名も、正確には、大沢の「瀧神社」という意味です。大沢滝神社が、「瀧神」(瀬織津姫命)と真砂姫(の霊)をさも同体かのごとくに重ねて祭神とみていることは、由緒がよく語るところです。
 大沢滝神社が、「瀧神」をいかに重視してきたかは、古い山門に掲げられた額字「瀧大明神」にも表れていますし、山門の境内側には、昭和八年という新しいものではあるものの、その扁額には「瀧」一字のみが記されていて驚かされます(写真8)。「瀧」一字の扁額などというのは、寡聞にしてほかに知りませんが、ことさらに「神」を記すまでもなく、「瀧=神」という、つよい思いのこもった額字なのでしょう。
 ところで、義家と真砂姫の間には、なにがしか親和的な関係があっただろうことを想像させる別由緒も境内には表示されています。多少、文学的に脚色された印象を受けますが、以下は、エピソード・地名譚付き真砂姫の悲話の全文です。

大澤瀧神社の由来
 大澤瀧神社には、次のような物語が言い伝えられている。
 今から九五十年ほど前、前九年の役と呼ばれる戦いで、安倍貞任[あべのさだとう]と源義家[みなもとのよしいえ]の軍が戦った。この貞任の娘「真砂姫[まさごひめ]」についての悲しい話である。
 義家の軍に追われ猿ヶ石川を渡った安倍貞任は、谷内峠から田瀬に越えると宮守の笹岡へと向かった。姫も父の後を追ってこの大沢の地までやってきたが、家来の直義のほか共に来る者もなかった。「今夜はここで休息しましょう。」という直義に対して、姫は「すでに父は戦いで死んだかも知れません。自分一人生きていてもどうなることでしょう。ただ、幼い弟・千代童丸の命だけは助けてほしいと義家公にお伝えして下さい。」と言って手紙を書き、切り取った自分の長い髪で義家からもらった一寸二分(およそ三・六センチ)の観音様を包むとそれらを直義に頼んだ。
 そのとき、姫が笠を掛けた松は今でも「傘[ママ]松[かさまつ]」と呼ばれている。
 それから姫は、自分が乗ってきた馬に「よくここまで私と共に来てくれました。これから先は自由に行きなさい。」と言った。するとその馬は涙を流しながら山の上まで行き、西に向かって二度鳴いてから倒れて死んでしまった。この馬の「大鹿毛[おおかげ]」という名前からその山を「大鹿山[おおじかやま]」と呼ぶようになった。
 そのあと姫は、大澤の瀧にある大石の上で法華経を唱えると、川の中に飛び込み姿が見えなくなってしまったが、滝壺の中から白い光が飛び出して東の空に消えたという。それは九月九日の夜の事だった。
 残された家来の直義は次の日、笹岡城へ行くと義家に昨夜の事を伝えた。義家が姫の事をあわれに思い、父である源頼義[みなもとのよりよし]に相談してみると、「大澤瀧大明神[おおさわたきだいみょうじん]として奉るのが良い。」と言われた。
 こうして、真砂姫の霊を「瀬織津姫神[せおりつひめのかみ]」としてはじまったのが大澤瀧神社であり、九月九日が祭りの日と決められている。
 また、真砂姫の名からこのあたりを砂子[いさご]と呼ぶ様になったと伝えられている。

 この由緒伝承では、「前九年の役と呼ばれる戦いで、安倍貞任と源義家の軍が戦った」とされますが、正確には、先の由緒も記すように、源氏側の棟梁は、このときはまだ義家ではなく、彼の父・源頼義でした。息子の義家は、心中、安倍贔屓[びいき]の思いを半ば引きずったまま厨川の戦いに臨んだようです。
 義家が、結果的には敵対することになる安倍氏(貞任)の娘・真砂姫に「一寸二分の観音様」をプレゼントしていたとは、ちょっといい話ではないでしょうか。前九年の役がもしなければ、義家は貞任の義理の息子になっていたという(文学的)可能性も、あるいはありえたかもしれません。

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