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 平成21年度日本口腔衛生学会東海地方会例会および臨時総会は,小澤亨司氏を学会長として去る平成211213日(日),愛知学院大学楠元キャンパス薬学部棟において,約70名が参加して開催された.当日は,6題の口演発表と特別講演が行われた.特別講演には愛知学院大学心身科学部学部長・教授 佐藤祐造先生をお迎えし,『糖尿病予防と歯科の役割』と題し,糖尿病の発症メカニズムや歯周病との関連性をわかりやすく説明していただき,歯科における糖尿病予防の役割を具体的に提示していただいた.口腔衛生にたずさわる学会員にとって,非常に興味深く,また今後の活動に大いに参考となる講演となった.
 
<特別講演>
糖尿病予防と歯科の役割」
                            愛知学院大学心身科学部 学部長 佐藤祐造 教授
 21世紀の現在,文明化された日常生活による身体運動量の減少は,欧風化した食生活と相まって,運動不足と過食をもたらし,糖尿病を代表例とする「生活習慣病」を増加させている.すなわち,運動不足は筋におけるインスリン抵抗性を招き,糖・脂質代謝異常を来し,糖尿病および糖尿病合併症を増加させるだけでなく,最終的に動脈硬化性心血管障害を誘発することが判明している.
近年,歯周病は単に局所の炎症にとどまらず,歯周病菌由来内毒素(LPS)が強力な免疫原性を有し,肝に作用し,クッパー細胞からTNF-αを産出させ,インスリン抵抗性を招来,肝細胞よりIL-6を産出,CRPを上昇させる事実が見出されている.一方,糖尿病は歯周病の危険因子となっており,歯周病治療により糖尿病に伴うインスリン抵抗性や糖尿病の病態を改善させうるというエビデンスも報告されている.
食事の適正化と身体トレーニングの継続は,内臓脂肪を効率的に減少させ,個体のインスリン抵抗性改善を介し,2型糖尿病をはじめ,インスリン抵抗性関連のメタボリックシンドローム/生活習慣病の予防・治療に有用である.
また,メタボリックシンドロームに着目した特定健診・保健指導が平成204月より開始され,食事・運動指導に歯科医も一定の研修を受ければ参入できることとなった.
食事指導の実際
摂取エネルギーを制限する.②栄養素の配分:炭水化物55%,蛋白質20%,脂質25%を目標とする.③食物繊維には,血中コレステロール低下,肥満防止,便秘改善などの効果があり,野菜を豊富に摂取させる.④食事の摂取方法:朝食抜きは肥満傾向を助長する.食事の量的,質的制限に加え,ドカ食い,孤食を避け,食べる速度も遅くするという食生活のパターンも重要である.
 運動処方の実際
①軽・中等度の運動(4050歳代で脈拍数:120/分)を1回1030分,週3〜5日以上行う.②運動の種類としては,散歩,ジョギング,水泳,自転車,ラジオ体操など全身の筋肉を使う有酸素運動が挙げられる.高齢者では,レジスタンス(筋力)トレーニングも併用する.③日常生活が多忙で,特に運動を行う時間がない場合,エレベーターの代わりに階段を使うなど,生活習慣の中に運動を組み込むよう指導する.また,食事療法も併行して教育する.運動前後の準備・整理運動の実施,スポーツシューズの着用,水分補給なども指導する.
 
<一般口演>
1市販キャンディ類のスクロース,グルコース,その他の糖の含有量とpH
  小木冴理1),犬飼順子1, 2),中垣晴男2),向井正視1)
            1)愛知学院大学短期大学部専攻科,2)愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座
 市販キャンディには代用甘味料が含有されているものが増加したものの,スクロースやう蝕に関連する代用甘味料などが含有されている.本研究ではキャンディとう蝕原性の関係を明確にするため,25種の市販キャンディ類に含まれる糖類含有量とpHについて比較検討した.試料を蒸留水で10倍希釈し,全糖度は手指屈折糖度計を,スクロース・グルコースはバイオケミストリ・アナライザーを用いて測定した.その結果,フルーツ系はスクロース,グルコースとも含有量が多く,のど飴はその他の糖が多く含まれていた.また,糖類含有量はばらつきが大きかった.pHはほとんどの試料で5.4を下回り,フルーツ系が最も低かった.したがって,キャンディを摂取する場合ノンシュガー等表示されたものを選択する必要があると考えられる.しかし,スクロース値が低いものでもpH値が低いため摂取方法には注意が必要であり,適切な間食の指導が必要である.
 
2歯科衛生士養成校における学生の教育の現状と職業観の国際比較
  白木典代1),犬飼順子1,2),高阪利美1),中垣晴男2),向井正視1)
            1)愛知学院大学短期大学部専攻科,2)愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座
 歯の健康度,健康観が高い欧州と日本の,歯科衛生士教育の現状とその学生の職業観を比較する目的で日本(愛知学院大学短期大学部),デンマーク(オーフス大学),イギリス(リーズ大学)の臨床実習内容や職業観について質問形式による調査を行った.その結果,国別に特徴がみられた.「臨床実習期間が長すぎる」とした者は愛知学院大学が他国と比較して有意に多かった.また「生涯,歯科衛生士の仕事を続ける」とした者は,愛知学院大学が有意に最も低かった.さらに「習得したい技術」は,リーズ大学が全ての項目で有意に高く,技術の習得に対する意欲が認められた. そして,就職先を決める理由で「仕事内容が良い」とした者は,愛知学院大学が有意に最も低かった.今後,日本の歯科衛生士は高度な知識やコミュニケーション能力が必要とされ質の高い人材教育が重要になるとされているが,国際間で歯科衛生士の教育の現状とその学生の職業観は違っていた
 
3歯科臨床研修医におけるデンタルフロスの普及意識
  中村文彦1),田澤明子1),森田一三1,2),外山敦史2),中垣晴男2
       1)愛知学院大学歯学部附属病院総合診療部,2)愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座
 本研究は歯科臨床研修医におけるデンタルフロスを患者に勧める頻度及びその普及に対する意識と関連する要因を明らかにすることを目的として行った.
対象はA大学歯学部附属病院総合診療部の歯科臨床研修医108名とした.調査は無記名,自記式の質問調査法を用いて行った.その結果,デンタルフロスを患者に必ず勧める,大抵勧めると回答した者の合計は38.7%であり,デンタルフロスの普及は必要不可欠,とても必要と回答した者の合計は39.8%であった.デンタルフロスを患者に勧める頻度と相関を示していた項目は,デンタルフロス使用による痛みなしのイメージ(r=0.300, p<0.01),デンタルフロスの普及に対する意識あり(r=0.296, p<0.01) ,口臭予防効果ありのイメージ(r=0.295, p<0.01)であった.デンタルフロスの普及に対する意識と相関を示していた項目はデンタルフロスのう蝕予防効果ありのイメージ(r=0.659, p<0.01),歯周病予防効果ありのイメージ(r=0.642, p<0.01),口臭予防効果ありのイメージ(r=0.593, p<0.01)であった
 
4COの事後措置に役立てる保健調査票づくり
  石黒幸司,根崎端午,佐々木晶浩,柘植紳平,奥村明彦
                                                 恵那歯科医師会
 H7年度に学校保健法施行規則が改正されCOが導入されたことにより,早期治療勧告から健康づくりをめざした健康志向へと学校歯科健康診断の在り方が変わってきた.岐阜県E市においては,S62年度よりCOを導入してきたが,現時点でのCOの判定には当該歯のみの診断で行われており,口腔環境,生活習慣などのリスク因子を観察しながらの判断がなされていない.またCO歯は,健全歯扱いにされてはいるが,軽度なCOから進行したCOと歯質脱灰状態に幅があり,一律の事後処置を行うには問題があるように考えられる.そこで,保健行動の有無とう蝕との関連を評価し,事後措置に役立てる保健調査表を作成した.これにより,CO保有者をう蝕罹患リスクの低い要観察者とリスクの高い要管理者に分け,事後措置に役立てる試みを行った.
 
5市町村合併による歯科保健事業の変化
  盒興徳1),磯崎篤則2)
                 1)岐阜県健康福祉部医療整備課 2)朝日大学社会口腔保健学教室
 住民への身近な歯科保健事業は,平成9年の地域保健法施行により市町村の実施主体に移譲された.岐阜県における市町村数は平成14年度まで99市町村であったが,平成1517年度の市町村合併の進行により,3年間で42市町村に減少した.そこで今回,市町村歯科保健事業(母子や成人・高齢者等の歯科保健事業:歯科健診,歯科保健指導等)が市町村合併によってどの程度,変化したかについて調査,検討した.その結果,歯科保健事業項目の大部分が,市町村合併により実施率が増加していた.母子歯科保健事業では,妊産婦の歯科健診や歯科保健指導の約35%増加,2歳代や4〜5歳のフッ化物塗布の約23%増加が顕著であった.成人・高齢者等の歯科保健事業では,60代や70代の歯科健診の約50%増加,歯科保健指導の約30%増加,70代の歯科相談約45%の増加が顕著であった.事業の実施方法については,市町村によって異なり,特に合併市町村数の多かった市では母子保健事業の実施場所が,旧町村から市の保健センターでの集約実施に変化したことや成人歯周疾患検診事業が,集団実施から歯科医療機関委託による個別実施に変化していたが,常勤歯科衛生士設置している市では,旧町村の母子歯科保健事業の増加により,在宅歯科衛生士の活用が増加したことや成人歯周疾患検診事業が,集団実施から歯科医療機関委託による個別実施に変化したことが明らかになった.
 
6医療安全とリスクアセスメント
  金山敏治
                                      日本労働安全衛生コンサルタント会
 平成18年の改正労働安全衛生法(第28条の2)で,職場の労働災害防止にリスクアセスメントの導入が努力義務となりました.
 医療現場では,患者に対する医療事故防止の安全対策は良く取り扱われているが,医療スタッフに対する安全対策は遅れがちです 安全職場と思われている歯科医療現場にも製造業と同様に数多くのリスクが存在し,医療機器等の使用による重傷災害の報告もあります歯科医療スタッフの安全の向上を目的に,岡崎労働基準監督署管内のリスクをオニに例えた「岡崎地域安全オニ退治運動」に参加し「医療機器・作業等による傷害0」を達成したリスクアセスメントの成果を報告し,医療現場で働く人々の安全確保対策の必要性を発信しました

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