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 平成20年5月18日(日),愛知学院大学歯学部において,約70名が参加して開催された.当日は,愛知県,岐阜県,三重県,静岡県ならびに名古屋市,浜松市からシンポジストを6名お迎えし,「どうする成人歯科保健」と題したシンポジウムが行われ,各地域での成人歯科保健,特に歯周病対策の具体的な取り組みや,今後の展望を講演していただいた。そのほか,一般口演3題の発表があった。

<シンポジウム>
「どうする成人歯科保健」

1.愛知県の場合 愛知県健康福祉部健康担当局健康対策課  井後純子
 愛知県では,県民が安心して成人歯科保健サービスを受けられるよう,歯周病の重症化予防の観点から環境整備をすることにした。
 具体的には,大きな2つの柱で進めていく。
一つは,糖尿病の合併症である歯周病の重症化予防を図ることにより糖尿病の重症化予防も期待できる,という視点から,『お医者さんと歯医者さんのネットワーク化』を患者さん主体で展開するモデル事業(平成20年度)を立ち上げた。さらに,特定健診・特定保健指導が始まることをふまえ,平成19年度から歯科診療所で歯科医師からの全身状況を視野に入れた歯科保健指導が可能となるような人材育成を愛知県歯科医師会にお願いをしている。
 もう一つの柱は,健康長寿のためには歯の健康が重要である,という共通理解を関係者のみならず県民が持てるような情報発信をしている。昭和63年度に愛知県が全国に先駆けて会議の中で8020運動を提唱したことを受け,平成元年度から愛知県歯科医師会が県民に向けた啓発事業として8020達成者の表彰事業をスタートさせ早20年が経過するが,「本当に8020達成者が活動的な85歳を謳歌しているのか」を8020達成者の追跡調査により明らかにした。8020運動が健康寿命の延伸に寄与しているか否か?特記すべき結果は,85歳の男性では,元気に趣味を持ち食生活も不自由なく生活していらした,ということである。このことを広く県民に周知することにより,より多くの県民が豊かな老後の人生設計をするために歯の健康を行政施策の中で十分に位置づけてほしい,との声が聞こえてくるかもしれない。
 このように,市町村が成人歯科保健事業を企画運営する上で効果的な推進ができるよう地固めをすることが県の役割であると考えている。

2.岐阜県の場合 岐阜県健康福祉部医療整備課  高橋秀徳
 岐阜県の成人歯科保健の課題については,平成18年度歯・口腔の健康づくり計画(H14〜22)中間評価報告書によると,健康面では「40歳や50歳の進行した歯周疾患の改善が低い」ことが明確にされている。
 その要因として行動面では「定期的に歯科健診を受けていない者」が40歳56%,50歳57%と多いこと,「歯や歯ぐきをセルフチェックしない者」が48%,「歯間部清掃用具を使用していない者」が40歳30%,50歳34%,意識面では「8020運動を知らない者」が45%と多く,次いで「喫煙と歯周疾患との関係を知らない者」が37%であること,環境面では「老人保健法に基づく歯周疾患検診未実施市町村」が31%,「禁煙プログラム提供未実施市町村」が74%と高いこと等が考えられ,その改善が課題となっている。
 このため,県ではその対策として8020サポーターの育成・活用による8020運動や歯周疾患予防情報の普及等事業を推進してきた。
 今後,成人の歯周疾患減少目標を達成のための新たな対策としては,平成20年度開始のメタボリックシンドローム予防事業の特定保健指導において歯周疾患セルフチェック票の活用と「要注意」「要治療」「要検査」者への指導の実施,関係機関(市町村や事業所等)へのセルフチェック票の集計分析・提供,内科歯科の連携した糖尿病患者の歯周疾患対策,市町村や事業所での歯周疾患対策推進のために歯周病予防教室の開催が必要と考えられる。

3.三重県の場合  三重県健康福祉部健康づくり室健康対策グループ 芝田登美子
 三重の健康づくり総合計画「ヘルシーピープルみえ・21」の中間評価において,歯科領域の指標は,70%の高い改善率であったが,歯周病に関する指標のみ悪化していた。そこで,三重県では歯周病予防対策を重点課題として取組を行っているが,市町が実施している歯周疾患検診受診者は少なく,企業での歯科検診も普及しているとはいえない状況にある。このため,三重県では地域で歯科保健活動に積極的に従事したいという意志のある歯科衛生士を「8020推進員」として登録,研修し地域歯科保健活動を実施する人材育成を行うとともに,歯科医師と8020推進員が県内の各種イベント等に積極的に出向き,歯周病予防知識の周知,歯間清掃用具の使用法や歯科健診受診の啓発等を実施している。さらに,歯科衛生士会が各地域の商店街や看護協会等と協働し,「歯の健康づくり得点」を用いてお口の健康相談を実施している。また,今後は,地域職域連携推進協議会などを通じて,企業や市町にも積極的に働きかけていく予定である。

4.静岡県の場合 静岡県厚生部医療健康局  中村宗達
 ○歯周病検診受診率の怪
「受診率が悪くて困っている」「原因は住民の歯科意識の低さだ」「だから,行政はもっとPRして人を集めて欲しい」 歯周病検診でよく耳にする会話だ。が,ちょっと待った。検診の受診率は確かに低いが,かなりの住民が一年の内に歯科医院を訪れているというデータがある。最近の本県各地での成人歯科アンケート調査によると,「ここ一年間に歯科医院にかかった者の割合」は,A市 B市 C町 ともにだいたい50%超となっている。これに,率は低いものの検診を受けた者を加えると,一年間に専門家のチェックを受けた者は約6割となり,これは上出来な数字ではないか。真の問題は,歯科医院に行っていながら歯周病管理を受けている者が2〜3割程度にとどまっていることだ。
 ○静岡県の歯周病対策
歯周病対策には,う蝕に対するフッ化物のような公衆衛生施策はない。そこで,個人衛生で攻めることになるが,今のところ筋良く思えるのは住民参加の推進であり,「自分たちの歯は自分たちで守る」システムを市町で整備することと考え事業展開している。名称をステーション構想といい,欧砲蓮屮肇奪廛札潺福次廚半里兄堋の首長等を訪れ理解を求めた。現在は本構想の一環として県歯科条例づくりに取組んでいる。

5.名古屋市の場合 名古屋市東保健所  柏木雅宣
 名古屋市は,健康増進法に基づき『健康なごやプラン21』を平成15年に策定し,本計画の目標達成状況を探るべく中間評価を平成18年度に実施した。また,平成19年11月には,食育基本法に基づく『名古屋市食育推進計画』を策定し“歯の健康”も取組の一領域としたところである。一方,医療制度改革により平成19年度まで市町村が行っていた成人基本健康診査が,特定健診・特定保健指導として医療保険者の実施として義務化されるなど平成20年度からの健康施策は大きく転換した。
 このような中,名古屋市が実施する“歯の健康づくり対策”について報告した。

6.浜松市の場合 浜松市保健所健康増進課歯の健康センター  石川 昭
 浜松市においては,妊婦から成人,高齢者に対する事業を成人歯科保健事業として位置づけ取り組んできた。具体的には妊婦に対する歯科教室,幼児(2歳児または3歳児)の保護者に対する歯科検診,歯周疾患検診(40歳以上),歯周病予防教室,歯科相談,健康教育などである。これらの公衆衛生的なアプローチから,歯科医院における臨床的なプロフェッショナルケアや治療につなげていくことで,成人歯科保健を推進していくスタイルをとってきた。今回これらの事業の内容を評価も含めて紹介するとともに,その中で出てきた課題やその改善に向けた取組みを示す。
 また,健康増進計画(健康はままつ21)の中間評価においては,成人期の歯周疾患予防についての目標数値が改善されていないことがわかった。今後,市の成人歯科保健事業を通じて,地域の歯科医師や市民に対して歯周疾患予防の啓発を継続して実施していきたい。

<一般口演>

1.小学生における歯列・咬合状態の追跡研究
 佐々木貴浩,佐々木晶浩,野々山 郁,柘植紳平,森田一三,中垣晴男(愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座)
 学校歯科保健における歯列不正・咬合異常のスクリーニング基準を明確化することを目的に,2002(平成14)年に新入学した小学校児童を対象として1年生から6年生まで6年間,延べ160名の歯列・咬合の状態について縦断的調査(追跡調査)を行った。17項目の歯列・咬合の状態ついて,1〜5年生の状態から6年生時の歯列・咬合の状態への予測性の有効性(敏感度+特異性)を求め,スクリーニングの条件を検討した。経年推移では経年とともに反対咬合は減少し,上顎前突・前歯部の叢生では増加した。使用したほとんどの判定基準でスクリーニングの有効性が150%以上で有意な高い値を示した。低学年では咬合異常,中学年では咬合異常と上顎前歯の叢生や正中離開,高学年では咬合異常と上下顎前歯の叢生や正中離開が主要な検査項目として有効であることが検証できた。

2.唾液の性状と歯石沈着量との関係について
 増田美恵子1,荒川浩久2,佐塚真理子1,矢部高子1(1静岡山水歯科衛生士専門学校,2神奈川歯科大学健康科学講座口腔保健学分野)
 日常臨床で用いられている齲蝕リスク判定の唾液検査および口腔清掃習慣の質問紙調査と歯石沈着との関連について分析し,歯石沈着の予測の可能性を検討した。
目的変数を歯石除去・歯面研磨の8週間後の歯石沈着とし,歯石沈着の「多い」グループ,「少ない」グループとに2区分した。説明変数は各唾液検査項目のそれぞれを同じく平均値を境界に2水準化した。
 その結果,齲蝕リスク判定の唾液検査と歯石沈着との有意な関係はみられなかった。しかし,唾液流出量および唾液pHにおいて,歯石沈着は刺激唾液より安静時唾液の影響が強く,唾液粘稠度では「さらさら」唾液のものに歯石沈着が多い傾向がみられた。歯磨き時間とに有意性はなかったが,デンタルフロス使用者では有意な歯石沈着抑制がみられた(p=0.009)。
以上から,高い精度の唾液検査が必要ではあるが,歯石沈着を予測することにより,歯周病リスクへの動機付けができる可能性が示唆された。

3.口腔内カメラモニターを用いた事業所健診 第2報 −3事業所の健診を終えて−
 戸田秀治,西村浩一,五明岳彦,片野雅文,筧 錦子,高田陽司,三尾秀典,青木雅俊,安藤彰悟,水野明広,岡田東洋志,睫擺汗機粉阜県歯科医師会)
 平成18・19年度に岐阜県歯科医師会は,8020運動推進特別事業の1つとして「事業所歯科保健支援事業」を県から委託を受け,3社(345人)の事業所歯科健診を行った。今事業では,受診者の口腔内の状態を視覚に訴える口腔内カメラ・モニターや位相差顕微鏡を用いて歯科健診・保健指導を行なった。歯周疾患については3項目(歯石付着・歯肉発赤腫脹・歯牙動揺)にて評価した結果,要検査・要治療の判定がそれぞれ17%・62%と高い数値を示した。また,健診前後に歯科保健に関するアンケート調査を実施したが,健診3ヶ月後のアンケート調査では,要検査・要治療指摘後の歯科医療機関受診率は31%で,歯磨き回数(34%増),歯磨き所要時間(53%増),お口のセルフチェックの頻度(39%増),禁煙率(3%増)など歯科保健行動の変容や,歯周病に対する意識の変化が認められたのでこれを報告した。

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