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平成22年度東海口腔衛生学会例会は,石川 昭氏を学会長として、去る平成22125日(日)、三重県四日市市の「じばさん三重」にて、約60名が参加して開催された。当日は、三重県へき医療総括特命監・三重県地域医療研修センター長 奥野正孝先生「へき地は医者をステキにする」によると題した特別講演が行われ、離島の人々の生活に溶け込んで得られた、医療提供の術を、体験談を加えながら、わかりやすく説明していただいた。非常に楽しく、公衆衛生的に興味深い内容であった。その他,5題の口演発表があり活発な議論と意見交換が交わされ盛会であった。
 
特別講演
へき地は医者をステキにする」
奥野 正孝
三重県健康福祉部へき地医療総括特命監・三重県地域医療研修センター長
 
 医師になって間もない時にへき地で経験を積むと必ずや将来役に立つとの信念の元、平成214月三重県地域医療研修センターを三重県の南端にある紀南病院内に開設しました。
地域医療を学ぶ場を紀南地区に持ってきた理由は、この地区には、病院はひとつ、医師会もひとつ、保健所もひとつ、消防本部もひとつ、病院を支える行政機関も一部事務組合立でひとつととてもシンプルで、互いに意思疎通は図りやすく、元来互いに助け合わなければいけないという意識がとても強いものがあり、さらに、住民は穏やかで、病院職員は明るく親しみやすく、へき地医療のさらなる展開を行うには好条件がそろっていたからでした。
そして地域医療研修の目的を、「地域を知る。地域に生きる人を知る。地域の医療を知る」と、意識して、地域を知る・地域に生きる人を知る、医療を知ることより上位に位置づけました。
現在行っている病院外での研修プログラムとして、できるだけ沢山の地域を訪れる地域内探索、近くのへき地診療所で学ぶ診療所実習、無医地区巡回診療への同行、健康相談や学校で授業での発表体験、自治会の集まり等の市町の行事への参加、市町・医師会・消防とタイアップして行っているタウンミーティングへの参加、地域の消防署の皆さんを知り救急の実態を知る救急車同乗実習、地域の開業医の皆さんを知り地域連携を知るため医師会会合への参加、患者さんの故郷を訪れるふるさと訪問などを行っています。毎週金曜日には、一緒に食事をしながら一週間を振り返り、研修医の考え・意欲に沿って以降のプログラムを考えたり、生活をより快適に過ごしてもらうため改善点を聞き取ったりしています。研修期間の最後には、病院職員や町の人達を前にして発表形式は全く自由とした研修報告会を行っています。形式を自由にすることによって、研修医それぞれの個性が現れ、それぞれの気付く点が異なることがわかり、逆に我々が地域の意外なことに気付かされたり、職員たちが研修の意義をわかってくれたりと、様々な効果があがっています。
また、地域医療研修センターからの発信をするためにブログを開設しました。(http://www.kinan-hp-mie.jp/kensyu/)研修センターに関わる人達の日々の生の声を書いてもらって、研修センターや病院の雰囲気を感じ取ってもらおうというものです。
地域医療研修センターの活動は緒についたばかりです。地域医療は地域が作り出し、地域によって形作られるものですから、当然研修も当然そうならなければいけない。そのためには病院を飛び出して地域を up-to-date に感じ取り、更なるアイデアを加えて、常に研修にフィードバックしていかなければならないと考えています。
 
 一般口演
1. マニラ市内の1公立小学校で試行したフッ化物洗口について
 加藤一夫、前澤亮子、新井歌織、中垣晴男(愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座)
 
 20045月、AGUDAA-V-フィリピンによる活動の一環として行ったSan Vicente地区(Quezon City, Manila)の歯科検診から、児童における永久歯未処置齲蝕の急速な増加が推測された。そこで、20058月、同地区の公立San Vicente小学校にて、先ず1学年を対象に、週1回法によるフッ化物洗口を2年間実施し、そのプログラムの効果を確認しながらフッ化物洗口を順次拡大する計画を提案した。洗口対象は2005年入学の1年生とし、学校を通じて保護者の承諾を得た後、11月より洗口を開始した。対照群は、 2006年入学の1年生とした。2年間のΔDMFTを比較したところ、プログラム参加群1.60歯、対照群1.45歯となり、プログラムによ る抑制効果を確認することができなかった。その理由として、コンプライアンスの問題に加え、高率のドロップアウト(プログラム参加群38%、 対照群60%)が考えられた。
 
2.「岐阜県歯・口腔の健康づくり計画」における成人・高齢期の歯科保健目標の達成状況の評価と今後の取組について
盒興徳1水野明広2松村康正2青木雅敏2大橋たみえ3、磯崎篤則31岐阜県健康福祉部医療整備課2岐阜県歯科医師会3朝日大学歯学部社会口腔保健学教室
 
 岐阜県では、平成21年度県成人歯科疾患実態調査結果等を基にして歯科保健医療関係者の連携、協働により「歯・口腔の健康づくり計画(H14H22)」の成人・高齢期の目標達成状況について評価し、今後の取組について検討した。
歯の健康面では、「80歳で自分の歯を20歯以上保有する者」は39.5%、「60歳で24歯以上保有する者」は64.4%となり、目標に対して大幅に改善したが、「40歳、50歳の進行した歯周疾患罹患者」はそれぞれ41.4%、55.8%と横ばい、「80歳で噛むことに満足している者」は53.8%と悪化しており、これらの改善の必要性が示唆された。行動・意識・環境面では、「60歳、70歳の定期的に歯石除去や歯面清掃を受ける者」はそれぞれ57.4%、60.4%、「70歳の定期的に歯科健診を受ける者」は61.1%と目標を達成し、「50歳の歯間部清掃用具使用者」は51.7%、「40歳、50歳の定期的に歯石除去や歯面清掃を受ける者」はそれぞれ52.4%、53.5%、「40歳、50歳、60歳の定期的に歯科健診を受ける者」はそれぞれ50.9%、47.1%、54.3%、「かかりつけ歯科医を決めている者」は86.5%、「歯周疾患検診を実施する市町村」は83.3%となり、目標に対して大幅に改善した。しかしながら「40歳の歯間部清掃用具使用者」は46.5%、「喫煙と歯周疾患との関係を知っている者」は66.2%と若干改善し、「月1回以上は歯や歯肉をセルフチェックする者」は51.1%、「8020運動を知っている者」は55.4%となり、横ばい傾向を示しており、今後の歯周疾患の減少や歯の喪失防止目標達成のためには、目標達成が低かった項目についての対策が必要と示唆された。
 
3.3歳児歯科健診で見られた色素沈着と口腔状況との関係
石川 昭1、坂本友紀1、久保田友嘉2、荒川浩久21浜松市健康増進課口腔保健医療センター、2神奈川歯科大学口腔保健学分野)
 
3歳児歯科健診において、歯の色素沈着を歯の汚れとして気にしている保護者を見かける。しかし、この色素沈着が見られる幼児は、う歯が少なく、歯の衛生状態は良好であるように感じる。また、この色素沈着がおこるには、単にお茶を飲んでいるだけというより、日常的な口唇の閉鎖状況の違いも影響しているように思われる。今回、この色素沈着を通して見えてくるう蝕罹患や口唇閉鎖などの口腔状況を探ってみることとした。
調査対象は、浜松市において実施した3歳児歯科健診の受診者328名であり、通常の歯科健診に加えて各歯における色素沈着の有無と口唇閉鎖不全の有無を診査した。また、同時に幼児のお茶等の飲物の摂取に関する質問調査を実施した。
その結果、よく飲むお茶としては、麦茶が一番多く、次が煎茶であった。お茶以外では、牛乳が一番で、次が果実系飲料であった。色素沈着歯数が多いほどう蝕有病者率は低い傾向がみられた。よく飲むお茶に煎茶を選択する子は、色素沈着する傾向が有意に高かった。逆に、よく飲むお茶に麦茶を選択する子は、色素沈着する傾向が有意に低かった。また、口唇閉鎖不全がある者は色素沈着が見られる割合が高く、開咬を認める割合も高かった。
この結果から、色素沈着を持つ子においては、う蝕活動性という面ではリスクは低いと言えるが、口腔機能の発達という面では注意を要することが示唆された。
 
4.今求められている障がい児(者)への歯・口の健康 〜「みえ歯ートネット」事業〜
杉原信久1、中井孝佳1、芝田憲治1、峰正博1、芝田登美子2、石濱信之31社団法人三重県歯科医師会2三重県健康福祉部健康づくり室3三重県伊勢保健福祉事務所
 
地域で障がい児(者)が安心して充実した歯科診療を受診できる体制整備のため、アンケート調査を行った。その結果から障がい児(者)の歯・口の健康について求められている点は、①障がい児(者)を診る診療所が増えることにより、かかりつけ歯科医が近くにあるようになること、②受け入れ可能な医療機関の情報が充実すること、③ヒューマンパワー、設備、環境等から関係者が役割分担すること、④歯科医療従事者が正しい知識、技術、コミュニケーション能力を身につけ、当事者と一緒に考えること、の4点に整理することができた。それに応えるため「みえ歯ートネット」事業を立ち上げ、協力歯科医院、障害者歯科センターとの歯科診療ネットワークを構築するとともに、施設向け歯科保健指導、障がい者歯科研修会を開催した。また「みえ歯ートネット」のHPを作成しインターネット上で最新の情報や協力歯科医院の名簿等を確認できるようにした。
 
5.三重県内の病院における口腔ケアの実態
芝田登美子1、杉原信久2、中井孝佳2、芝田憲治2、峰正博21三重県健康福祉部健康部健康づくり室 2社団法人三重県歯科医師会
 
最近では、入院患者への口腔ケアの実施によって、疾病治療に伴って起こる口腔内の様々な合併症を減らすことや、患者のQOLを向上させることで、その重要性が認められてきている。しかし、県内の入院患者に対する口腔ケアの実態が把握できていないことから、その現状と病院のニーズを把握し、実施者としての歯科医療関係者の供給体制の整備について検討するために調査を行った。
本調査により、病院での口腔ケアは、ほとんどの病院がその重要性を理解し実施しており、その効果についても評価されていると考えられる。しかし、歯科医療関係者の介入の機会は少なく、実施内容についても時間や人手の確保等の問題点から、患者一人にかける時間も少ない等、十分な口腔ケアの実施が困難な病院が多いことが示唆された。
今後、患者の心身状態の回復、維持のために切れ目のない歯科医療や口腔ケアの提供のための体制整備が重要であることから、歯科・医科連携体制の構築に向けた取組を進めていく予定である。

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