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もう何度目か分からない。
こんな場面に出くわすのは・・・。
「百目鬼君、好きです。付き合って下さい!!!」
「悪い。」
簡潔すぎる答えに相手の女の子が絶句する。
凄く可愛い子だった。
多分自分に自信もあって、断られることなんて考えていなかったんじゃないだろうか・・・。
自分が振られたことが信じられないという表情を浮かべていた。
俺だって何であんなに可愛い子をアイツは一言の元に振る事ができるのか不思議だが、彼女は更に不思議だろう。
かといって問い詰めるにも相当の勇気がいるに違いない、何しろ相手は鉄仮面の強面だ。
まぁ、好きな相手なんだから気にならないかも知れないが、彼女のプライドが高ければ高いほど大人しく引き下がる率も高いかもしれない・・・、あぁ〜稀に逆もあるけど・・・。
まぁ大概は・・・。
「オイ」
「俺は『オイ』じゃねぇ!!って百目鬼!!!」
「何だ」
「何だって・・・。お前なぁ〜ハァ〜〜〜。なぁ〜んでコンナのがもてるんだか・・・。」
「俺に聞くな」
「ムカツク!ソレより、さっきの彼女は?」
「もう行ったぞ」
「あ、っそ」
「何か言いたそうだな」
自分では全く気にしてないフリでそっけなく言ったつもりで、それなのに百目鬼にこうやって問い返されることが結構ある。
何時もなら無理やり誤魔化して終わらせる会話の流れだが、今日は何故か言葉に出したい気になる。
「お前さ、振った相手から理由とか聞かれたこと無いの?」
「無いな」
簡潔な答えである。
「聞かれても答える気はないしな」
それは予想外の言葉だった。
百目鬼なら「誠意をもって返答する」とか言いそうな気もするのに・・・。
いや違うか・・・。
さっきの台詞はもしかすると凄く百目鬼らしい台詞かもしれないということに思い至る。
百目鬼が一言で即座に断ることで相手は理由など聞く気にもなれないのかもしれない、そしてそれが百目鬼の”誠意”の現し方なのではないか?
「どうした?」
グルグルと考えていたせいで無言になった俺に百目鬼が声を掛けてくる。
「お前さ・・・好きな人でもいるのか?」
「いる。」
「え?ウソ」
「ウソを言ってどうする」
百目鬼に好きな人が居る。
その一言が何故か重く圧し掛かってくる。
淡々とした横顔を凝視しながら言いようの無い嫌な気分に陥ってくる。
それが何故かは分からない。
でも、そう『迷子』の気分と言えば分かりやすいかもしれない。
『不安』なのだ。
嫌いな相手にコンナ感情を持つなんてオカシイと自分でも思うのに、それでも一番今のモヤモヤとした感情を表すのに近いのではないかと思う。
そしてある考えが浮かんできて気分が落ち込んでくる。
もしかして、自分は物凄く自己中かもしれない。
きっと百目鬼に恋人ができて俺と行動することも少なくなって、それでまた「アヤカシ」に四六時中襲われる様になることに『不安』を感じているんだ。
嫌いな相手にコンナに依存して、しかも自分の事しか考えていないなんて最悪だ。
「オイ、四月一日。」
「俺はもうお前と一緒に行動するのを止める!」
「アホウ、いきなり何をバカな事を言い出すんだお前は。」
「何だとっ!俺はお前のことを思ってだなぁ〜!!!」
「どこが俺のことを考えているって?」
普段から低い声を更に一段低くして百目鬼が問い返してくる。
「だから!!お前は好きな人と一緒に居ればいいだろっ!!」
「・・・アホだアホだと思っていたが、本当にアホだな。」
「んな!!このバカ目鬼!!!人がせっかく」
「俺はお前が好きなんだ」
コイツイマナンテイッタ?
オレノコトガスキ?
冗談・・・ダヨナ?
「おま、お前何言ってんだっ!」
「お前が好きだ、だから余計なことするな」
「な、なんで・・・」
「理由なんかあるか、馬鹿」
「だ、だってお前、オレは男だぞ・・・。」
「関係ないな」
百目鬼がオレを好き。
だからオレと一緒に居てくれる。
言いようの無い安堵が胸のうちに広がっていくのを感じて、自分の現金さにまた落ち込む。
「それで?」
「は?」
「返事」
返事?
返事って何だ?
はっ?!!
これってもしかして『告白』か?!
ってどうすりゃいいんだよ?!
ジッと見つめてくる百目鬼の視線が痛くて、心臓が痛いくらいドキドキして、普段は声を聞くだけでムカムカして姿を見るだけでイライラしていたのに、今はなんだか違う。
「お前が俺の事を嫌っているのは知っている、無理はしなくていい。ただ今まで通りにさせてもらうだけだ。」
勝手にオレの答えを決め付けて話を進める百目鬼にムッとする。
オレはまだ何にも言ってないのに!
「俺の事をお前が嫌っていても、コレは譲れないか 」
「嫌いじゃない」
「は?」
「だから!俺は嫌いじゃない!!!」
そう言った瞬間、強い力で引き寄せられて弓を引く逞しい腕の中に居た。
「好きだ」
「うん」
「離れるなんて二度と言うな」
「ゴメン」
抱きしめられて囁かれているウチに”ストン”と感情が落ち着いていく。
オレハ百目鬼ガスキナンダ。
どんなに「アヤカシ」が俺たちを引き裂こうとしても、百目鬼は絶対に俺を離さない。
そんな確信が生まれてきて、百目鬼に対して初めて素直な気分になっていく。
「百目鬼、スキだ」
「あぁ、俺もだ」
新しい俺たちの関係はきっと侑子さんを楽しませるんだろうな・・・、と百目鬼の腕の中で考えて『いまさら』かと考え直す。
引き寄せられた腕の中で顔を上げて、百目鬼の唇に触れるだけのキスをするとアイツは目を見開いて・・・
「ヤラレタ」
と呟いた。
それが面白くて、幸せで二人で笑った。
コイツに告白した女の子達、コイツを好きな女の子達ゴメンネ。
俺の告白は成功しました。
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