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MIWA-WALL〜我が家のクライミングルーム
フリークライマー大場美和。スポーツビズ所属。tokiwa_dc@yahoo.co.jp
先週から続いたTNFC 2019についてのブログも、今回で最後です。
最初は準決勝と決勝の2回で終わる予定でしたが、倍もかかってしまいました。
ここまで読んでくださっている方々、ありがとうございます。最後までお付き合いください。
では、さっさと本題に入ります。
THE NORTH FACE CUP 2019 Division 1 決勝のスタートです。



先週から続いたTNFC 2019についてのブログも、今回で最後です。
最初は準決勝と決勝の2回で終わる予定でしたが、倍もかかってしまいました。
ここまで読んでくださっている方々、ありがとうございます。最後までお付き合いください。
では、さっさと本題に入ります。
THE NORTH FACE CUP 2019 Division 1 決勝のスタートです。


6人の選手が壁の前に現れ、名前を呼ばれると、すっと片手をあげて観客にアピールしていきます。最後に呼ばれた井上祐二選手は勢いよく両手をあげて、屈託のない笑顔で声援に応えます。すると井上選手のお茶目な動きに、観客や選手も笑顔がこぼれました。

そんな井上選手から第1ラウンドが始まります。
1課題目は大きなハリボテ(多くは木でできている、壁から張り出すようなホールド)がいくつも並んだ、インパクトのある課題。見た目のシンプルさとは裏腹に、どう登るかぱっと見では分かりづらいです。

井上選手の1トライ目。

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1手目の一際大きなハリボテを両手で下から抱え込むようにして持ちます。しかしその体勢をキープするだけでもつらそうで、次の1手を出せるようには見えません。それでもなんとか右手を出しますが、重力に耐えきれずフォール。

落ちた後すぐに、スタート位置から、そして正面から1手目と2手目のハリボテを見て次にどう動くかを確認します。1トライ目でした動きでは登れる可能性がないと感じたら、他に手がないか考えなければいけません。

井上選手は、スタートから右手と左手を同時に出してそれぞれ1手目と2手目を取るという選択をしました。

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今度は一瞬止まる気配をみせます。
井上選手も、このムーブで登れそうだと思ったのでしょう。そこからは動きの精度を上げるために何度も同じムーブでトライします。
左手の取る位置を変えるなどして、なんとかこの1手を止めようと手を尽くしますが、2手目をとらえきれないままタイムアップしてしまいました。


続いては準決勝の最後のトライで完登し、ギリギリで決勝進出を決めた楢崎智亜選手。
1トライ目、井上選手の時と同じように1手目を両手で抱えます。
そして同じように落ち、同じようにすぐに違うムーブを見つけ、飛び出します。
かなり惜しい動きでフォール。これでコツをつかんだのか、次のトライで軽やかに2つのハリボテをつかんで止めます。

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2人の選手、全く同じ動きで飛び出しているように見えますが、飛び出した先のホールドをつかむまでの体の軌道に差があり、それが成功と失敗の分かれ道となっています。

井上選手は体を横に振って勢いをつけた後、垂らした左腕を下から左上へと弧を描くように振りながらホールドを取りに行きます。それに合わせて上体も左へ引っ張られて、手がホールドに到達したときには体が少し横に傾いた状態になります。
体は左に出てきているのに足は右に残ったままになってしまうため、足を左のホールドに移すまでの移動時間に耐えられず落下してしまいます。

一方楢崎選手は、体を横ではなく下に少し沈ませてから一直線に飛び出しホールドをつかみます。すると手でホールドをとらえたときには足が体の真下にあり、降られも最小限に抑えられ、短い時間で左足を置くことができます。よく見ると、楢崎選手は飛び出す瞬間、左腕を一度体の方に力強く寄せているのがわかると思います。これも、真上に飛び出すための助けになっています。

さて、2手目を止めた楢崎選手は次の左上に位置するハリボテを取ろうとします。何度目かのトライでなんとか左手でとらえますが、体をあげきれず落ちてしまいます。

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3人目は当日、20歳の誕生日を迎えた原田海選手。
原田選手は、唯一最初から正解ムーブで登り始めた選手です。オブザベーションの段階では、誰も飛び出す動きを想定してるようには見えませんでしたが、出番を待っている間に思い至ったのか登り始めてその場で感じ取ったのか、正しい動きでトライを続けます。

しかしなかなか止めきれず、井上選手と同じ高度でクライミングタイムが終了します。


続いて韓国の招待選手、チョン・ジョンウォン選手が登場します。
ワールドカップでの優勝経験も何度もある、有名選手です。

原田選手とは逆に、最後まで正解ムーブにたどり着けず、高度を伸ばすことができませんでした。

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ホールドを下から持つときには、足を高い位置にして体を上げていかないと次の動きに繋げられないのですが、この課題は体を上げていける位置に足がありません。両手で1手目を下から抱えるように持ったとき、手は肩の辺りに来て、体が伸びてしまい、そこから動いていけなくなってしまいます。

そのため、これまでの選手は落ちながら手を出すのがやっとで、次のホールドをつかめる可能性を感じることができず、新たな動きを探す運びになっていましたが、チョン選手は身長が高く、1手目を両手で持ったとき、他の選手よりも体が上がった状態になります。
チョン選手の強靱なパワーも加わって、次のホールドをとれそうな惜しいトライをします。選手自身も可能性を感じてこの動きでなんとか登ろうと何度も挑戦します。

強いが故に、ほかの選手はすぐに諦めてしまうムーブから抜け出せなくなってしまうのです。
もしチョン選手のあのパワーで正解ムーブを選択していたら...と考えてしまいますね。

結局高度は井上選手、原田選手と同じところで終了です。


笑顔を浮かべて登場したのは緒方良行選手。
まずは1手目を両手で抱えます。このムーブでは登れないと判断すると、次のトライで飛びつくように1手目と2手目を同時にキャッチして止めます。
観客からは今までため込んだ力を爆発させるように、途切れることなく歓声が沸き上がります。

勢いに乗って、一瞬で楢崎選手の高度まで来ると、肘をしっかり固定して足が離れたときの振られに耐えて楢崎選手を超えます。

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このまま完登かという勢いで駆け上がりますが、最後の距離のある1手が止められず落ちてしまいます。
それでも、力強い登りでトップに躍り出ました。

緒方選手は最初の飛び出しの際、両手で体を引き上げることで体の軌道をまっすぐ上に調整していました。

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ほかの選手は体を振ることでできる遠心力を利用して体を上げていましたが、緒方選手のフィジカルを持ってすれば握って引けばできるということでしょう。
1度で決める、勘の良さも素晴らしいです。


第1ラウンド最後の選手、藤井快選手もやはり1トライ目は1手目を両手で持つ動きを選択します。しかしすぐに飛びつくムーブに切り替えトライを続けます。

止まりそうな気配を何度も見せますが、耐えきれずに落ちてしまいます。
藤井選手も身長が高い選手です。飛び出して距離を出すような課題では有利に見えますが、この課題は取り先の2つのホールドの間隔が近く、力を入れづらくしてあるため、リーチの長い藤井選手はより力を発揮できなくなります。

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体の位置などは正確で、止められる体勢に持ってこれているのに、ホールドを持った瞬間うまく力を伝えられず滑り落ちてしまいます。

最後のトライで一瞬耐えますが、惜しくも止めることができず高度は伸びません。

井上選手、原田選手、チョン選手、藤井選手と高度が並び、準決勝の順位が上だったチョン選手と藤井選手が上位扱いとなり、緒方選手と楢崎選手に加えて2人が次のラウンドに駒を進めます。


第2ラウンドは全員が同じ、4+という高度でした。これは4手目のホールドから次のホールドへ手を出したということです。
高度が同じ場合、そこに至るまでのトライ数で順位を決めますが、今回の最終結果が、私には疑問の残るものでした。このブログを読んだ方で、答えを出してくださる方がいらっしゃればぜひ教えていただきたいです。

まず1人目の楢崎選手。1トライ目でゴールに手が届くかというところまで登りました。

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ゴールの手前の大きな半月状のホールドには、下の面の左右に2つのホールドがついています。
楢崎選手は半月の前のホールドから左手で半月ホールドの左寄りについたホールドを取ると、足を上げてそのままゴールに手を伸ばして落下しました。
その次のトライでは、同じように左手で半月左のホールドを持った後、右手で半月の右寄りについたホールドを保持したところで足が滑ってフォールします。
3回目のトライで、同じところまで来ると今度は足をしっかりホールドに乗せ、ゴールに手を伸ばして落ちました。

楢崎選手の最終結果は4+に行くまでに3回かかったというものでした。
ということは半月の左についたホールドが高度3で、右についたホールドが高度4ということだと推測できます。

続くチョン選手と緒方選手は2人とも1トライ目で半月左をつかみ、右もつかみ、ゴールに手を出して落ちたので成績は当然1トライで4+までいったということになります。

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そして4人目の藤井選手。1トライ目の動きを細かく説明します。
半月左を左手で取りに行くところまではほかの選手と同じですが、藤井選手は左を保持した後一度戻り、半月の一つ手前のホールドを持ち替えるとそこから右手で半月右のホールドを保持します。そして足を上げ、右手を出してゴールのホルドを取りに行きますが届かずフォールします。
楢崎選手の登りと結果から、半月右が高度4だと推測していたので、それを持って次のホールドに手を出した藤井選手は1トライ目で4+の高度を獲得したのかと思いましたが、最終結果では藤井選手の成績は4トライ目で到達したとなっています。

藤井選手は2トライ目と3トライ目は下部で落ちてしまい、4トライ目でほかの選手と同じように半月を両手で持ち、ゴールを取りに行っていました。
1トライ目のクライミングで4+と認められないということは半月の左が高度4のホールドなのでしょうか。
しかしそれなら楢崎選手の1トライ目で4+の成績が出ないのが不思議です。
半月についた2つのホールドを両方保持した状態でゴールに向かうという動きが必要いうことなのでしょうか。
どなたか教えてください...。


とはいっても、私も後から映像を見返して疑問に思ったので、リアルタイムではこのときチョン選手と緒方選手の最終ラウンドを興奮しながら待ち構えていました。

2人はオブザべを終えると、笑顔でグータッチをしてチョン選手はクライミングの準備を、緒方選手は壁の裏に戻っていきました。
いよいよ優勝者を決めるというときにこういった行動ができるのはクライマーらしいです。

第3ラウンドはあっという間でした。
登り始めたチョン選手は1手目に飛びつきます。体が回転して背中が壁に当たるほど振られても手を離しません。そしてゴール手前、少し迷いのある動きを見せますがすぐに飛び出し、なんと1撃で3課題目を登ってしまいました。

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このパフォーマンスに会場は今までで一番の盛り上がりを見せます。

興奮冷めやらぬ中、緒方選手のクライミングがスタートします。
最初のランジ、体をうまくコントロールして振られを後ろに逃がすことできれいな動きで止めました。

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緒方選手の1撃の期待が高まり声援が大きくなります。
それに押されるように、緒方選手が止まることなくゴールまで登り切るとその瞬間会場はさらに大きな歓声に包まれて、緒方選手の雄叫びもかき消えるほどに盛り上がりを見せました。

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チョン選手の完登によって大きなプレッシャーをかけられたはずの緒方選手ですが、競技後に話を聞くと、
「もう順位とか関係なく、楽しもうという気持ちだった。最後のムーブはオブザベの段階ではわからなかったけど、自然と体が動いた。ゴールしたときはめちゃくちゃ嬉しかった。」
と、純粋な気持ちで課題に向き合っていたことを話してくれました。


2人の選手が完登したことで、スーパーファイナルが行われることになりました。

最後の課題、見るからに持ちにくそうなホールドが並んでおり、圧倒されるような課題です。

チョン選手はスタートから1手目に右手で入り、離れた左足をすぐに左のホールドに繰り出すと同時に左手は右手の後を追うように1手目をつかみにいきます。

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しかしなかなか止めることができません。
耐えて耐えて、体をコントロールしようとしても、ギリギリのところで落ちてしまいます。
チョン選手ですら1手目も止められないとは、どれほど難しいのかと恐ろしくなってきます。
何度も諦めずにトライを続けますが、結局1手目をとらえきれず最後のクライミングタイムが終了します。大きな拍手の中、チョン選手は壁の前を後にしました。


そして登場する緒方選手。THE NORTH FACE CUP 2019最後の最後、締めくくりのクライミングです。

緒方選手の1トライ目、なんとチョン選手が1度も止められなかった1手目を見事止めてしまいました。
会場は再び興奮を取り戻し大きく沸きます。

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得意のピンチをわしわしつかんで歩くように登っていきます。

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しかし上部の大きなハリボテが並んだセクションでは、為す術がないといった様子で落下してしまいます。

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その後数トライ、最初の一手が決まらず、もどかし様子の緒方選手。諦めずもう一度トライ。すると今までとは全く違うムーブで1手目をキャッチします。
ここに来てムーブを変えるのは勇気のいる難しいことですが、緒方選手はやってのけ、また上部へと登っていきます。

そして2つのハリボテまで来ると、またさっきとは違う動きをひねり出してきます。
足を先に上に上げてしっかり固定してから手を動かしていく戦法。

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このダイナミックな動きにまたしても会場が沸き上がります。
祈るような声援で緒方選手のクライミングを見守ります。
苦しそうに耐えつつ数手進めますが、力尽きるように落下してしまいます。
観客も一緒になって悔しそうな声を上げ、ラストトライへの声援を送ります。

熱い歓声の中、力を振り絞って1手1手登っていきますが、途中でフォール。
しかし観客からの声は途切れることなく、最高のパフォーマンスを見せてくれた緒方選手に拍手を送ります。

緒方選手はやりきったという表情でエリアを出でいきました。


最後のムーブについて緒方選手に訪ねると、
「1回目の動きでは絶対無理だとわかり、ほかのムーブを考えた。足先行ののムーブはワンチャンあると思ってやってみた。」
らしい。最後まで本当にクライミングを楽しんでいたんだと思いました。


今回この大会には5歳から59歳の選手が参加した。それぞれの歩幅でクライミングを楽しみ、自分の限界へ挑戦する面白さを感じられたでしょう。
その全選手の頂点に立つクライマー達は本当に素晴らしいクライミングを見せてくれました。もっと見ていたいと思わせる登りでした。
4月から始まるワールドカップがますます楽しみです。

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前回に続いてノースフェイスカップの決勝の様子をお伝えします。

今回はWomen's Division 1とDivision 1についてです。

2日間にわたり過去最高の盛り上がりを見せたTHE NORTH FACE CUP 2019。
そのラストを飾るこれらのカテゴリーが始まったとき、見ている人たちはみな、いよいよだ、という気持ちだったでしょう。


1人目のクライマーは田嶋あいか選手。
最初の1手、ランジ(遠いホールドに飛びつくようにして取りに行く動き)が決まらず、焦ってトライを重ねすぎているようにも見えますが、1回1回何か改善して、少しずつ正しい動きを見つけ出そうとしていました。
田嶋選手はランジはあまり得意ではないので少ないトライで登るのは難しいと考え、アテンプト数(トライした回数)がかさんででも完登しようとしていたのでしょう。
1手目で落ちるということは、体力の消費も少ないので何度もトライできるのです。

試行錯誤の末、トライ7回目にして正確な動きで見事ランジを決めました。
迷いながらも正解ムーブで中間部を抜けようとしますが、右手がすっぽ抜けるようにしてフォール。
その次のトライでは腰にチョークバッグをつけていたのを見ると、ぬめって(手に汗をかいて)落ちてしまったのかもしれません。

残り時間が少なくなり、休憩する時間を確保できないため、ここからの完登は体力的にきつくなっていましたが、もう一度ランジを決めると、クライミングの途中で腕を振って体力を回復させ、このルートを上りきるコンディションが整うと、意を決したように登り始め、ゴールホールドまで気持ちを途切れさせず登り切りました。

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準決勝終了直後、決勝に残ったのは運がよかったからと話していた田嶋選手ですが、完登に対する思いとそこに持っていく実力は本物であると証明するクライミングでした。


2人目の森秋彩選手も1手目で苦労していました。
保持力、持久力、安定感に優れ、乱れのないクライミングをする森選手ですが、この1手はなかなかうまく動けていない印象でした。
その原因のひとつは飛び出すときの左足にあります。

森選手の癖なのか、スタートポジションに入るため左右の手でスタートホールドを持ち、左足をホールドに置き体を引き上げる瞬間、左足の膝が内側に回転しているのです。そのまま体を右下方向に沈め、左上に伸び上がろうとしますが膝が内に入っているせいで左の方に体重移動ができず、ホールドをつかんでも体は右に残った状態なので振られが大きくなります。加えて左に体重移動できないことで体が壁から離れてしまい、結果振られた体は大きな輪を描くようになり、コントロールしきれず落ちてしまうのです。
しかし持ち前の保持力と徐々に修正された軌道によって8回目のトライで1手目を捕らえることができました。

そこからはさすがの安定感で、何が難しいのかわからないというような動きでゴールまでたどり着きました。

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3番手の伊藤ふたば選手。
少し慎重に、様子を確かめるような1トライ目の後、すぐさま2回目のトライに入り、よく狙いを定めながら1手目をとめると、あっという間に完登してしまいました。

16歳ながら数々の大会で決勝の舞台を経験しており、貫禄を感じさせるパフォーマンスで会場を沸かせました。
このノースフェイスカップには8年前から参加していることもあり、観客からの声援も多い中それに応えるように完登後に手を振る姿にはどこか余裕を感じさせ、大会を心から楽しんでいるようでした。

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今回韓国からの招待選手であるキム・ジャイン選手、サ・ソル選手など、ワールドカップで活躍する選手が多く出場するなか、3位で準決勝を突破し注目を集めた菅原亜弥選手。
決勝での登りに期待が高まる中、カーテンの奥から姿が見えたと思ったらマットに足を引っかけ、勢いよく転倒しながらの登場。
照れくさそうに笑う菅原選手に、客席から温かい声援がかかりながら、競技がスタートしました。

身長が167cmある菅原選手はそのリーチを生かし、かなりゆっくりとした動きで1手目のホールドをつかみますが、その後のフラれに耐えられずフォールを繰り返してしまいます。
高身長であるが故に、右手と左足がかなり遅い段階までスタート位置のホールドに残ってしまい、次のホールドを止める体制に移れていませんでした。

しかし冷静に、諦めずトライを続け、残り時間1分のあたりで動きが修正され始めました。残り時間20秒で可能性のある動きを発見し、そこから2回のトライをしました。時間ぎりぎりでスタートした最終トライは一瞬止まったかと思うほど惜しい動きでした。

悔しそうな表情を浮かべながらも、観客の方を見て一礼し、ノースフェイスカップ初の決勝の舞台を終えました。


登場とともに客席に向かって手を振り、堂々と現れたのは野口啓代選手。
これまでの選手とは異なった方法で1手目をとめました。

両手で1手目のホールドを取りに行き、左に振られる体を左足で押さえるという登り方をしていた前出の選手に対し、野口選手は左手のみで1手目をつかみ、右足で振られを抑えて登りました。

片手でとめる動きは、菅原選手が何度も挑戦して失敗していたので、難しいのだろうと思っていた矢先、1トライ目でとまりかけ、2トライ目で成功させたのを見て驚きました。

左に飛び出るということは最後左足で踏み切ります。そして左足で振られを止めるとなると、一度両足が完全に離れ、腕で体を支えなければいけなくなります。
しかし野口選手がやったように左足で伸び上がり右足をクロスさせれば、常に足で体を支えつつ、バランスをとりつつ動けるのです。

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上部までぐいぐいと力強く登っていった野口選手ですが、ゴールのホールドを捕らえる位置が下過ぎてしまったため、出した右手は滑るようにゴールホールドから離れ、完登を目前にして落下してしまいます。
そしてその後なかなか1手目がうまくとめられず、見ている側もひやひやしてきましたが、なんとか1手目をとめ、少し苦しそうに上部まで登ると、今度はしっかりとゴールをつかみました。


準決勝1位通過の野中生萌選手が大きな歓声を受けながら、笑顔で登場しました。
クライミングタイムが始まり、動きを確認して登り始めますが、やはり1手目に苦しめられます。トライ数が増えていくと、観客の応援に熱が入ってきます。次のラウンドでも野中選手の登りが見たいという気持ちの表れでしょう。
ヒートアップしていく観客とは裏腹に、終始落ち着いた振る舞いでクライミングを続ける野中選手。一拍おいて登り始めた5トライ目、左手で1手目のホールドをキャッチすると、両足が宙に浮いて体が大きく左に振られます。そのまま遠心力に引っ張られていくかと思いきや、左手と左足のみで振られに耐え、何事もなかったかのように淡々と登り続けます。

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両手で振られに対抗するでもなく、足運びで振られを抑えるでもなく、なぜ野中選手は1手目をとめることができたのでしょうか。

左手でホールドをつかみ、足が離れた後、すぐに左足をホールドに置いている訳ではなく、少しの間左手のみで振られに抗っていることから、まず野中選手のずば抜けた保持力が可能にした動きだということは疑いようがないでしょう。
それによって生じた0.数秒の落下までの猶予の間に、とっさに左足を自分が振られに耐えうる位置に置き、体全体で左手にかかる力を最小限に抑えることであの衝撃のムーブが完成したのです。

ゴールを取るときも、勢いをつけて手を出し、それにつられて足が浮いてしまっていた他選手に比べ、野中選手は踏みづらいフットホールドをしっかりとらえて少しも離れず余裕を持って動いていました。惚れ惚れするほど力強い登りでした。


ここで、第1課題を完登した5人の選手が次のラウンドに進むことがきまりました。


第2課題も、序盤で横に振られる動きのある課題です。右に大きく振られるのを耐えて登るポイントは2つ。
飛び出す前の左足と、飛び出した後の左手です。

田嶋選手はまず左足の正しいポジションを3トライ目で発見し、そのトライで左手の使い方のヒントを得ると、4トライ目で振られを止めました。
上部では、得意なカチ(とても薄く、指先でしか持てないホールド)で軽やかな登りを見せますが、滑りやすい形状の左足に乗り切れずフォールしてしまいます。

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その後も高度を伸ばすことはできず、最終的な順位は5位となりました。


森選手は1トライ目で飛び出す前に左足をいろいろな位置に置いてしっくりくるところ探り、ここというところを決めると柔らかい動きで飛び出します。しかし左手を動かす判断が一瞬遅れて惜しくもフォール。
3トライ目には見事に成功し、課題の後半部分へ突入します。
この課題でも森選手の、膝が内側に入る癖が現れ、動きが制限されてしまい、田嶋選手と同高度の、球体の下側についたホールドをつかんだところで落下。アテンプト数で田嶋選手に勝ち、4位となりました。

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伊藤選手は迷い無く左足を正解ポジションへ設置して飛びますが、左手は正確な位置を捕らえきれませんでした。続く2トライ目には左手の使い方に修正を入れ、しっかり決めてきました。
その勢いのまま球体の下についたホールドをつかむと、右手でホールドを押すようにしてからだを上げ、球体を両手で抱えるような体制まで持っていきます。

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4トライ目にもう一つ先のホールドをとらえ、現時点の最高高度をたたきだしました。
その後、ラストトライでも粘り強く完投を目指しますが、さすがに疲れてそれ以上の高度は出せませんでした。


続く野口選手は序盤の2つのポイントを押さえずとも、力でホールドを抑えれば登れることを教えてくれました。これまでの選手とは違った、ゆったりとした動きで上部まで登り、1回目のトライで伊藤選手の記録を抜いてしまいました。この時点で、野口選手の最終ラウンド進出が決定しました。
そしてゴールに手を伸ばし、指がわずかに触れるところまでいきましたが、球体に押し出されるようにして落下してしまいました。

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1分以上のレストの後、2トライ目も完登することはできず、ラストトライに賭けるかと思いましたが、そこでトライを終了しました。


最後に登場した野中選手。この成績次第で、最終ラウンドに進むもう一人の選手が伊藤選手か、野中選手かが決まります。

1トライ目、スタートからよどみなく、2つのポイントを押さえつつさらに余裕のある動きで序盤を切り抜けました。そして球体のしたのホールドをつかみ、右手で押すようにして体をひきあげました。いよいよ野中選手の最終ラウンド進出が見えてきたその瞬間、足が滑ってフォールしてしまいました。

落ちた後、しきりに左肩を気にする野中選手。残り時間がどんどん減っていく中、野中選手はなかなか登る気配を見せません。
そして残り時間が40秒をきったとき、首を振って競技エリアから去って行ってしまいました。

フォールしたとき、左肩を痛めてしまい、競技を続けることができなくなってしまったのです。

4月から始まるワールドカップにも、復帰できるめどは立っていないようです。
多くの人が、野中選手の登る姿を見るのを楽しみにしています。
早くけがが治り、競技に復帰できるのを祈るばかりです。

野中選手は、田島選手、森選手と高度で並びましたが、そこまで1回のトライでたどり着いた野中選手が3位という結果になりました。



そして迎えた最終ラウンド。
勝ち抜いたのは伊藤選手と野口選手。
壁の前に現れた二人は、笑顔で会話しつつオブザベーションを終え、最終決戦に臨みます。

オブザベ前から登る直前まで腕を振って、なんとか回復を図ろうとしていた伊藤選手。第2ラウンドのラストトライから、かなり疲労しているようすでした。
そんな中で、最後の課題は傾斜が強くパワーが求められる課題。
伊藤選手はふっと息を吐いて気合いを入れ、集中し直し、競技開始です。

スタートから負荷の高い動きが続き、3手目のダイナミックなムーブで振り落とされてしまう伊藤選手。様々な動きを試し、可能性を感じる動きを見つけると、何度かその動きで挑戦しますが、対応しきれません。
ラストトライ、観客のあおって声援を味方に味方につけます。
披露が色濃くなり、1手目から体が壁から引きはがされそうになるのをなんとか耐えるといった具合で3手目まで手を進めますが、応援に背中を押されるように、一番惜しいトライを見せ、競技終了となりました。

最後に、客席に向かって笑顔で深々と頭を下げ、温かい声援に対するお礼をしました。


気迫を感じさせる面持ちで登場した野口選手。
ルート全体を見据え、静かにスタートを切ると、集中したクライミングで3手目までたどり着き、鮮やかな動きでダイナミックムーブを制しました。

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続く4手目も力強くとめますが、次の1手をとらえきれずフォール。
少し焦った表情を見せますが、すぐさま動きの修正に入ります。頭の中でイメージを整えると、自信に満ちた表情で観客を煽ります。その表情に引っ張られ、観客はより一層の声援を野口選手に向けます。
しかしやはり同じところでフォール。

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残り時間を確認し、もう一度イメージを組み直します。
そして最後の力を振り絞るように1手1手進み、手を伸ばしますが届かずフォール。

しかし観客からは優勝者に対して盛大な拍手が送られ、野口選手はそれにお辞儀をし、手を振ることで応えてTHE NORTH FACE CUP 2019 Women's Division 1は幕を閉じました。


競技後、野口選手に話を聞くと、
「第2ラウンドで、ゴール取りまでいった時点で、最終ラウンドには確実に残ったと考え、ラストトライはしなかった。最終課題は完登するつもりで臨んだが、予選から積み重なった疲労が思ったよりも大きく、完登できず悔しい。」
と話していた。
サドンデス方式の特性を理解し、会場の雰囲気を感じ取り、優勝するための最善策を実行する。こういった計算は長年の経験のなせる技なのだろう。

第1戦で活躍し続ける日本のエースの、勝負に対する強い思いを肌で感じる大会だった。



次回Division1です。

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THE NORTH FACE CUP 2019 決勝

3月10日15時から4時間半にわたり12カテゴリーの決勝が行われました。

その中でもU-8(小学2年以下)、U-10(小学3・4年)、U-12(小学5・6年)、Division 1(男性の最上位カテゴリー)、Women's Division 1(女性の最上位カテゴリー)について書いていきたいと思います。

Division 1とWomen's Division 1の決勝はサドンデス方式で行われますが、それ以外のカテゴリーは1課題のオンサイト方式で行われます。
オンサイト方式について説明します。選手は事前にアイソレーションルームという、外の情報から遮断された部屋に入り、決勝の課題などの情報を一切知らない状態でウォーミングアップなどをします。時間になったらまずオブザベーションをして、競技順が1番の人から順に登っていきます。2番以降の選手は一度壁が見えないところまで戻り、他選手の登りを見ることはできません。見たらどうやって登るのかわかってしまうので。そしてそれぞれの選手の到達高度とそこに行くまでにかかった回数で順位が決まっていきます。
サドンデス方式も似たようなルールですが、ラウンドを重ねるごとに下位選手は脱落していきます。


決勝はU-8からスタートしました。
このカテゴリーは全員高度が同じでした。

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準決勝1位通過の長崎選手と3位通過の斎木選手は1回のトライでこの高度までいきましたが、2位通過の河本選手は4回かかってしまったため、順位を落としてしまいました。

河本選手はスタートから1手目を取るところで3回落ちてしまっているのです。準決勝を2位で通過する実力がありながら、なぜそんなに苦労してしまったのでしょうか。
それはスタートの体勢の足を置く位置にあります。
ほかの2人の選手は足をホールドの比較的高い位置に置いて1手目を取りに行っているのに対し、河本選手は低い位置に置いてしまっていました。
そのためなかなか距離が出ず、加えてホールドの角度も踏みづらい角度だったため負担が大きくなってしまったのです。

しかし河本選手は全員が止められなかった1手を一瞬とめかけていて、会場を沸かせていました。トライ数は多くなってしまったけれど、完登に一番近かった選手だと思います。もしあの一手を止めていたら一気に1位に躍り出ていたのです。

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余談ですが2位の斎木選手はイボルブのシューズを履いていました。将来のイボルブクライマー...?

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続いてはU-10です。

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U-10の選手はみんな登りが軽く、3位の波多野選手の、この大きく振られる一手を止めたときは観客から歓声があがりました。
かなりつらそうでしたが、それでも耐えて登っていく姿を見ると応援したくなりますね。
上部までじわじわと高度を上げた波多野選手ですが、ゴールの一つ手前のホールドを取りに行ったとき足がホールドから外れて惜しくも落下してしまいました。

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その後もトライを重ねますがこの1手を止められず時間切れとなりました。

2人目に登場した竹柴選手。
あれよあれよという間にものすごい勢いで完登してしまいました。
重力を感じさせない登りは、楢崎選手を彷彿とさせるものがありました。

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ガッツポーズすら速かった。

ゴール手前のホールドを止められなかった波多野選手との違いは2つあります。
1つ目は、飛び出すときの足です。波多野選手は右足だけで乗っていましたが、竹柴選手は両足で乗って手を出していました。左足は取り先のホールドにより近い位置に乗ることができるため、体が振られるのを軽減できます。
もう1つは、とる前のホールドを両手で持ったことです。これによって竹柴選手は手を出す前に体を引き上げることができ、振られに十分耐えられる体制で次のホールドを取りに行けます。

さらに驚きの3人目、吉野選手。
子供とは思えない安定した登りで、最後までひやっとする場面がありませんでした。
中間の大きく振られる1手も完全に体をコントロールしていました。
問題のゴール手前ではなんと左足を左手で持っているホールドに乗せて(手に足といいます。)ゆっくり余裕を持って動いていました。

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これは保持力が強くないとできない動きです。テクニックもフィジカルもある吉野選手。これからが楽しみですね。


U-12も面白い展開でした。
核心部のムーブが全員違っていました。

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1番手の安楽選手は途中の大きなホールドから、次を右手でとろうと何度かチャレンジしますができず、4トライ目で左手を出すと安定した状態でホールドをつかむことができました。

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おそらくオブザベーション(登る前の下見)の段階では左手を出す動きは想定していなかったのではないでしょうか。何度も登って自分の体の声を聞いて正解にたどり着いたように見えます。

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そしてバランスをとりながらゆっくりと左手を出してゴール。

2番目に登場したのは藏敷選手。
最初から決めていたかのように、大きなホールドの横についている小さなホールドを右手で持ち、体をあげると安楽選手が何度やってもできなかった、右手で次のホールドを取りに行く動きで登っていきました。安楽選手が使っていなかったホールドを使うことで可能になった動きです。
そしてホールドを持ち替え、ゴールも右手でキャッチ。

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最後は通谷選手です。
リスキーな初手をあっさりこなし核心部分に突入します。大きなホールドの横にある小さなホールドを持ち、藏敷選手と同じムーブになるかと思いきや止まることなく左手を出し、そのまま流れるように右手でゴールホールドをつかみました。

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ムーブを正確に読み解く能力とそれを実現させるクライミング能力が備わった選手なんだとわかります。


準決勝の競技中、実況の方が、完登できなくても最後までやりきって楽しんでほしいと言っていました。
決勝の舞台で、小さな選手達はそれぞれベストを尽くし、登れなくても最後までゴールを目指してチャレンジし続けました。
最高に楽しい時間だったと思います。



また長くなって読むのも疲れてくると思うので、次回にDivision 1のお話を。

この記事に

3月9日、10日にTHE NORTH FACE CUP 2019 本戦大会が開催されました。

昨年8月から今年2月にかけて、全国12カ所で行われた予選大会には、合計2000人もの選手が参加しました。その予選を勝ち抜いた、12カテゴリー600人以上の選手と数名のゲスト選手が、埼玉県入間市にあるClimb Park Base Campで熱い戦いを繰り広げたわけです。


まずはルールの説明です。知っている方は読み飛ばしてください。
9日におこなわれた本戦の予選。
各カテゴリー10本ずつ課題が設定されていて、制限時間内にいくつの課題が登れたかで順位を決めます。課題の中間にゾーンと呼ばれるポイントが2つ設けられており、登れた本数が同じ場合はゾーンの数が多い方が順位が上になります。

1時間ほどの間に、10本のルートをとにかくたくさん登ればいいのです。

この競技の形式を「セッション方式」と言います。
セッション方式は、選手が互いに登っている姿を見ることができるのが特徴です。前に登っている選手の登りを参考にしたり、選手同士でどうやって登るかをその場で話し合ったりできます。

10日は準決勝と決勝です。
準決勝に進める人数は、今回はカテゴリーごとに違い、10〜20人ほどでした。形式は予選と同じセッション方式ですが、課題数は8本です。

決勝のルールも特殊で、最も上位のカテゴリーである Division 1 の決勝は「サドンデス方式」で行われます。これはラウンドを重ねるごとに下位選手が振り落とされ、最後は一対一の勝負になる方式です。今回Division 1 は決勝に6人進み、決勝1ラウンド目は6人で、2ラウンド目は4人、次が2人で最終決戦。そこで順位がつかなければスーパーファイナル、もう1ラウンドという形で進行していきます。



さて、このように、本大会はジャパンカップなどの公式大会とは異なるルールで行われるので楽しみにしている選手がたくさんいます。
準決勝前のオブザベーション(課題の下見)の時間もリラックスした様子で、選手同士で動きを確認している姿が多く見受けられました。

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競技中も話したり笑い合ったりする姿が見受けられ、ここに集まったなじみ深い強者達とのクライミングを楽しんでいる雰囲気が伝わってきました。

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印象深い登りをしたのはまず野中選手。競技が始まってすぐ、ダイナミックな動きの課題をいとも簡単に完登しました。セッション方式では多くの課
題を効率よく攻略していく必要があります。体力的な負担も大きいですし、精神的にも、他選手の登りが見れる分、結果を比べて焦ってしまってパフォーマンスを引き出せないなんてこともあります。
最初のトライで見事な登りをした野中選手は、自分のクライミングも勢いづけられ、他選手へプレッシャーを与えることもできたのです。

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野中選手はユース時代の似たような形式の大会でも最初にばっちり完登をして、その勢いに乗って次々に完登を決めていっていました。周りに流されず、自分のペースを作るのがとてもうまいのです。また勢いに乗るための最初の課題選びも絶妙です。


ダイナミックな課題で勢いに乗った野中選手と対照的に、繊細な動きを必要とされる課題を最初に選び、確実に完登していたのが野口選手。
こういった課題は後半、体力と時間が少なくなり焦った状態でトライすると上れる実力があってもミスを繰り返して完登を逃してしまう場合もあります。
そういった課題を先に片付け、ダイナミックな動きのものは、体が温まってきてからやろうという判断だったのでしょう。
野口選手も、その後も着々と完登数を伸ばしていきました。

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セッション序盤でほかに印象的だったのはE課題を登る村井隆一選手。

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この課題は最終的に一番完登者が少なく、難易度が高い課題です。競技開始から何人もの選手が課題の中間部あたりで振り落とされていました。
そんな中、村井選手はそれまで誰もやっていない動きで中間部をクリアしたのです。
そのトライで完登まではいきませんでしたが、その後のトライで見事完登していました。
村井選手の登りを見て、中間部で苦労していた周りの選手達も上部まで突破できるようになりました。

もし他選手の登りが見れない形式だったらこの課題を完登できていない選手もいるかもしれません。
いろんな人のクライミングを敏感に観察しながら登るのもセッション方式で登るうえでのテクニックです。


一方女子の最難関課題も同じくEの課題。

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ここからゴールのホールドを取りに行くところでほとんどの選手は落ちてしまいます。
手、足すべてのホールドが縦、または下を向いており、上への推進力が作り出せないのです。

この課題を最初に完登したのは滑り出しから調子の良い野中選手。
右手をロックして体を支え、左足で挟むようにしながら上へ伸び上がります。さらに右足のスメア(壁に足の裏を押しつけ、摩擦によって体を支える動き)で体の回転を押さえつつサポートします。

野中選手も何度もゴールで落ちますが、トライを重ねて少しずつ力のバランスを調整して完登にたどり着きました。

その後、野口選手も苦労しつつも完登。

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結局この課題を登ったのは2人だけでした。


そして準決勝で最も印象に残り、最も会場が沸いたのが楢崎選手のラストトライ。

ラストトライとは、競技時間が終了した時、課題にとりついていればそのトライは認められるというものです。

競技終了直前、楢崎選手は決勝に残る順位にいませんでした。
注目度の高い選手なので、観客の間では楢崎選手の準決勝敗退を予感して困惑した雰囲気が漂っていました。
準決勝終了10秒前、登り始めた楢崎選手はそのままラストトライに突入。集中したトライで完登し、その瞬間順位が入れ替わり決勝進出が決まりました。

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会場は興奮に包まれ、次々に驚きの声が上がっていました。





世界で活躍するトップ選手のパフォーマンスの前、驚きのクライミングを見せていたのはまだまだ小さな体の子供達でした。
小学校2年生以下も出場できるこの大会は将来コンペティターを目指す子達にとって最高の舞台です。
小さいながらも、競技に臨む姿は真剣そのもので、登りの面でも足使いや体の使い方などは洗練された印象を受けます。

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こんなに強い子がいるのかと驚かされ、今後さらに選手層が厚く、有力選手がたくさん出てくるだろうと楽しみになりました。

また、親御さんの協力的な姿も印象的でした。自分の子供と一緒にエリアを移動し、応援しつつ、登る姿を漏らさず動画に納めていました。

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選手はそれに答えるように集中した表情で目の前の課題に向き合っていました。

しかし競技が終わると選手達は子供らしい顔つきに戻り、あこがれの選手にサインや写真撮影をお願いして、はしゃぐ姿も見られました。
有名選手と同じ会場で時間を共有できるのも、子供達にとっては貴重な瞬間です。




今回、ルートのセットは1週間も前から行っていたそうです。たくさんのカテゴリーがある中、すべての課題が魅力的でした。豪華なセッター、豪華なホールド。


コンペらしい課題に触れるのは、普段の練習ではなかなか難しい場合もあります。
ワールドカップで活躍していた選手でも、久々のコンペではハリボテやランジに対応できないと漏していました。
それでも高いパフォーマンスを見せられるのは、今までの蓄積があるからです。

これから世界に羽ばたいていく選手達にとって、今大会の課題を登ったことは経験として自身に蓄積されたと思います。



長ーくなってますので決勝の様子は次回です。


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映画「笠置ROCK!」
いよいよ地元岡崎で上映です。

11月11日(土)から11/24(金)
ぜひご覧ください!

初日11/11(土)は舞台挨拶付きの上映があります。馬杉監督、古舘佑太郎さん、尚玄さんとともに登壇予定です。

11/11(土)の上映時間
1回目 9:25〜10:30
2回目 13:50〜15:10
上映後舞台挨拶(登壇時間14:40〜15:10)
3回目 17:50〜19:10
上映前舞台挨拶(登壇時間17:50〜18:20)
4回目 20:35〜21:40

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