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3月9日、10日にTHE NORTH FACE CUP 2019 本戦大会が開催されました。
昨年8月から今年2月にかけて、全国12カ所で行われた予選大会には、合計2000人もの選手が参加しました。その予選を勝ち抜いた、12カテゴリー600人以上の選手と数名のゲスト選手が、埼玉県入間市にあるClimb Park Base Campで熱い戦いを繰り広げたわけです。
まずはルールの説明です。知っている方は読み飛ばしてください。
9日におこなわれた本戦の予選。
各カテゴリー10本ずつ課題が設定されていて、制限時間内にいくつの課題が登れたかで順位を決めます。課題の中間にゾーンと呼ばれるポイントが2つ設けられており、登れた本数が同じ場合はゾーンの数が多い方が順位が上になります。
1時間ほどの間に、10本のルートをとにかくたくさん登ればいいのです。
この競技の形式を「セッション方式」と言います。
セッション方式は、選手が互いに登っている姿を見ることができるのが特徴です。前に登っている選手の登りを参考にしたり、選手同士でどうやって登るかをその場で話し合ったりできます。
10日は準決勝と決勝です。
準決勝に進める人数は、今回はカテゴリーごとに違い、10〜20人ほどでした。形式は予選と同じセッション方式ですが、課題数は8本です。
決勝のルールも特殊で、最も上位のカテゴリーである Division 1 の決勝は「サドンデス方式」で行われます。これはラウンドを重ねるごとに下位選手が振り落とされ、最後は一対一の勝負になる方式です。今回Division 1 は決勝に6人進み、決勝1ラウンド目は6人で、2ラウンド目は4人、次が2人で最終決戦。そこで順位がつかなければスーパーファイナル、もう1ラウンドという形で進行していきます。
さて、このように、本大会はジャパンカップなどの公式大会とは異なるルールで行われるので楽しみにしている選手がたくさんいます。
準決勝前のオブザベーション(課題の下見)の時間もリラックスした様子で、選手同士で動きを確認している姿が多く見受けられました。
印象深い登りをしたのはまず野中選手。競技が始まってすぐ、ダイナミックな動きの課題をいとも簡単に完登しました。セッション方式では多くの課
題を効率よく攻略していく必要があります。体力的な負担も大きいですし、精神的にも、他選手の登りが見れる分、結果を比べて焦ってしまってパフォーマンスを引き出せないなんてこともあります。
最初のトライで見事な登りをした野中選手は、自分のクライミングも勢いづけられ、他選手へプレッシャーを与えることもできたのです。
野中選手はユース時代の似たような形式の大会でも最初にばっちり完登をして、その勢いに乗って次々に完登を決めていっていました。周りに流されず、自分のペースを作るのがとてもうまいのです。また勢いに乗るための最初の課題選びも絶妙です。
ダイナミックな課題で勢いに乗った野中選手と対照的に、繊細な動きを必要とされる課題を最初に選び、確実に完登していたのが野口選手。
こういった課題は後半、体力と時間が少なくなり焦った状態でトライすると上れる実力があってもミスを繰り返して完登を逃してしまう場合もあります。
そういった課題を先に片付け、ダイナミックな動きのものは、体が温まってきてからやろうという判断だったのでしょう。
野口選手も、その後も着々と完登数を伸ばしていきました。
セッション序盤でほかに印象的だったのはE課題を登る村井隆一選手。
この課題は最終的に一番完登者が少なく、難易度が高い課題です。競技開始から何人もの選手が課題の中間部あたりで振り落とされていました。
そんな中、村井選手はそれまで誰もやっていない動きで中間部をクリアしたのです。
そのトライで完登まではいきませんでしたが、その後のトライで見事完登していました。
村井選手の登りを見て、中間部で苦労していた周りの選手達も上部まで突破できるようになりました。
もし他選手の登りが見れない形式だったらこの課題を完登できていない選手もいるかもしれません。
いろんな人のクライミングを敏感に観察しながら登るのもセッション方式で登るうえでのテクニックです。
一方女子の最難関課題も同じくEの課題。
ここからゴールのホールドを取りに行くところでほとんどの選手は落ちてしまいます。
手、足すべてのホールドが縦、または下を向いており、上への推進力が作り出せないのです。
この課題を最初に完登したのは滑り出しから調子の良い野中選手。
右手をロックして体を支え、左足で挟むようにしながら上へ伸び上がります。さらに右足のスメア(壁に足の裏を押しつけ、摩擦によって体を支える動き)で体の回転を押さえつつサポートします。
野中選手も何度もゴールで落ちますが、トライを重ねて少しずつ力のバランスを調整して完登にたどり着きました。
その後、野口選手も苦労しつつも完登。
結局この課題を登ったのは2人だけでした。
そして準決勝で最も印象に残り、最も会場が沸いたのが楢崎選手のラストトライ。
ラストトライとは、競技時間が終了した時、課題にとりついていればそのトライは認められるというものです。
競技終了直前、楢崎選手は決勝に残る順位にいませんでした。
注目度の高い選手なので、観客の間では楢崎選手の準決勝敗退を予感して困惑した雰囲気が漂っていました。
準決勝終了10秒前、登り始めた楢崎選手はそのままラストトライに突入。集中したトライで完登し、その瞬間順位が入れ替わり決勝進出が決まりました。
会場は興奮に包まれ、次々に驚きの声が上がっていました。
世界で活躍するトップ選手のパフォーマンスの前、驚きのクライミングを見せていたのはまだまだ小さな体の子供達でした。
小学校2年生以下も出場できるこの大会は将来コンペティターを目指す子達にとって最高の舞台です。
小さいながらも、競技に臨む姿は真剣そのもので、登りの面でも足使いや体の使い方などは洗練された印象を受けます。
こんなに強い子がいるのかと驚かされ、今後さらに選手層が厚く、有力選手がたくさん出てくるだろうと楽しみになりました。
また、親御さんの協力的な姿も印象的でした。自分の子供と一緒にエリアを移動し、応援しつつ、登る姿を漏らさず動画に納めていました。
選手はそれに答えるように集中した表情で目の前の課題に向き合っていました。
しかし競技が終わると選手達は子供らしい顔つきに戻り、あこがれの選手にサインや写真撮影をお願いして、はしゃぐ姿も見られました。
有名選手と同じ会場で時間を共有できるのも、子供達にとっては貴重な瞬間です。
今回、ルートのセットは1週間も前から行っていたそうです。たくさんのカテゴリーがある中、すべての課題が魅力的でした。豪華なセッター、豪華なホールド。
コンペらしい課題に触れるのは、普段の練習ではなかなか難しい場合もあります。
ワールドカップで活躍していた選手でも、久々のコンペではハリボテやランジに対応できないと漏していました。
それでも高いパフォーマンスを見せられるのは、今までの蓄積があるからです。
これから世界に羽ばたいていく選手達にとって、今大会の課題を登ったことは経験として自身に蓄積されたと思います。
長ーくなってますので決勝の様子は次回です。
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2019年03月11日
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