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第二話 迫りくる影
都内有数の進学校、私立濱崎高校(はまさきこうこう)。 その二階にある廊下の窓際を歩いている四人の少年たち。
「ふぁあ〜。平和だな〜」
欠伸をしながら伸びをしたのは波岡健司。
「ま、平和なのはいい事だろ」
穏やかな態度をとりながら、身なりを整える多上紅輝。
「そうそう。こんな時にこそ、体を休めなきゃ」
校則すれすれの長い茶髪に、整った目鼻立ち。どんな女性も思わず見とれてしまう、俳優のような顔立ちの少年。彼の名は白鳥純一(しらとり じゅんいち)。
「白鳥の言う通りだぜ。ここの所、波岡の失敗が目立つからな」
参考書から顔を上げ、皮肉を利かせながら言ったのは小柄な少年。その言葉に、負けず嫌いな健司が反論する。
「この前のは俊輔(しゅんすけ)、お前が仕留めそこなったからだろうが!」
「フン、あの時多上が来なかったらやられていただろうな」
「なにを!」
健司と口論している彼は、村上俊輔(むらかみ しゅんすけ)という名前である。
「まあまあ、落ち着きなよ二人とも」
純一が止めに入る。
「まったく、こんなクソ暑い日に終業式なんて・・・」
そう。このうだるような暑さの中、彼らは一学期の終業式を迎えていた。体育館での校長の話も終わり、教室に戻っているところである。
教室に帰った四人は、担任から通知表を受け取った。
「さて、今日で一学期が終わりになるが、夏休みだからと言って遊んでばかりだと、波岡みたいになるぞ」
あちらこちらで笑いが漏れる。
「けど、しっかり勉強すれば村上みたいにもなれる。どっちに転ぶかは自分たち次第だ。以上!」
「痛烈な皮肉だったね」
帰り道、純一が健司に言った。
「純一までそんなこと言うのかよ」
紅輝、健司、純一、俊輔の四人は一緒の帰路に就いていた。
「あんなこと言われたらしょうがねえよな。それより・・・純一、携帯鳴ってるぞ」
「ありがとう・・・っと、もしもし?あ、加奈ちゃん?」
電話の相手は原谷加奈のようだ。話し込むうちに、純一の顔が険しくなる。
「うん。・・・うん・・・了解」
純一は携帯電話を折り畳んだ。
「みんな、ワームが出現したそうだよ」
「よし、すぐに行こうぜ!」
健司が駆けだそうとしたその時、ザアッという音と共に、純一の体から砂が溢れ出してきた。
その砂が、一つの姿を形作る。
「モモタロス!どうしたの?」
「純一、イマジンの匂いがするぜ」
「本当に?」
「ああ。しかも二体だ」
「どうすんだよ!?」
健司が紅輝に問いかける。
「よし、俺と純一がイマジンの所に行く。健司と俊輔はワームを頼む」
「わかった」
「行くぞ、波岡。遅れるなよ」
「お前こそ!」
「多上くん、僕たちも」
「ああ、行こうぜ純一」
四人は二手に分かれた。
「ここか・・・」
「どこにもいないぞ、ワームなんて」
俊輔と健司はワームの出現場所に来ていたが、その姿はまったく見られなかった。
「何かこの前もあったな、こんな展開」
健司がぼやいたその時、
「「!!」」
二人は、溢れ出てくる気に身を固くした。
「いるな・・・」
「ああ・・・」
二人が言葉を交わすと、その声に反応したように10体ほどのワームが出現した。
「行くぞ!」
「おう!」
二人が右手を空に突き出すと、二つの昆虫メカが飛んできた。一つはクワガタ型のガタックゼクター。もう一つは蜂型のザビーゼクターだ。
「「変身!」」
二人は、ゼクターを腰のベルトと左腕のブレスにセットした。
<HEN-SHIN>
健司は仮面ライダーガタックに、俊輔は仮面ライダーザビーに変身した。
「ギャハハハハ!壊せ壊せ!」
夕暮れ時のオフィス街。しかし、そのビルの内の一つはほとんど倒壊している。その原因は、出現した二体のイマジンである。
マシュマロを重ねたような体に、ガム玉のような手足。そして棒状飴の二本の剣。
「兄ちゃん、今度はあのビルも壊しましょうよ!」
「そうだな、やるか!」
この兄妹のイマジン、スウィートイマジンが、平和な町を崩壊させようとしていた。その時、二人の前に現れた二つの人影。
「そこまでだぜ!」
「これ以上の破壊活動は許さないよ!」
紅輝と純一である。
「なあ純一、あいつらって・・・」
「うん。どうやら『ヘンゼルとグレーテル』みたいだね」
「おい、何者だ、お前ら」
兄のスウィートイマジン・ヘンゼルが尋ねる。
「これを見ても分からないかな?」
純一と紅輝が差し出した手には、パスが握られていた。
「まさかアンタら、電王とゼロノスかい!?」
妹のスウィートイマジン・グレーテルが驚いた。
「その通りさ、行くぜ!」
純一がデンオウベルトを、紅輝はゼロノスベルトを腰に巻き、スイッチとレバーをそれぞれ押した。そしてカードとパスを構えながら叫んだ。
「「変身!」」
パスがセタッチ(セット&タッチ)され、カードがアプセット(挿入)される。
<ソードフォーム>
<アルタイルフォーム>
純一は仮面ライダー電王ソードフォームに、紅輝は仮面ライダーゼロノスアルタイルフォームに変身した。
「俺、参上!」
「最初に言っておく。俺はか〜な〜り強い!」
「うおりゃあ!」
ガタックが飛び膝蹴りを繰り出した。しかしワームはそれをガードし、逆にガタックを突き飛ばした。
「おわっ!?」
ガタックはなんとか堪えた。
「こいつら、いつもより強くないか?」
そう呟きながら横をチラリと見た。その視線の先のザビーも彼と同じようにも苦戦を強いられていた。
二人は背中併せになった。その二人を囲むようにワームたちも集まってくる。
「で、どうする?秀才の俊輔君よ?」
「チッ、お前の力を借りるのは気に食わないが、仕方ない。あれでいくぞ」
「よし!」
ガタックは肩のバルカンを構え、ザビーは足に力を蓄える。
「オラァ!」
ドドドド・・・という音と共に、バルカンが発射され、ガタックは撃ちながら半円を描くように動いた。その威力に押され、ワームたちは押し戻され始めた。
「今だ、波岡!」
ザビーが合図を出すと、ガタックは撃ちながら勢い良く振り向き、それと同時にザビーは思い切り高く跳んだ。それをガタックは視界の端に捉えた。これにより、ワームたちとの間隔が開いた。ザビーがスタッとガタックの横に着地する。
「波岡!」
「わかってる!」
二人はゼクターに手を掛けた。
「「キャストオフ!」」
<CAST-OFF>
大きな装甲が弾け飛び、二人はライダーフォームに変わった。
<CHANGE WASP>
<CHANGE STAGBEETLE>
「いくぞ!」
「っしゃあ!」
二人は、再び戦いの中に飛び込んだ。
その頃のオフィス街。二体のイマジンと二人のライダーが戦っていた。
「どうしたどうした?さっきの勢いは?」
兄妹であるからか、二体のスウィートイマジンは阿吽の呼吸でライダーたちを翻弄していた。一方電王とゼロノスは、電王の中にモモタロスが入り込んでおり、戦闘が大好きな彼は協力することは考えていない。何とかゼロノスが援護射撃しようとするが、電王の動きも把握しながらになるので、どうしても狙いが甘くなってしまう。その隙に兄妹が攻撃してきた。態勢を整えるために二人は一度距離をとった。
「チッ、面倒な奴らだぜ」
「モモタロス、俺達も協力して・・・」
「そんな事できるか!」
その時、ゼロノスがあることを思いついた。そしてそれを電王に耳うちする。
「・・・これでどうだ?」
「なるほど、それでいくか!」
二人は相手に向き直り、同時に走りだした。
電王は兄のヘンゼルに、ゼロノスは妹のグレーテルに同時に剣を叩きつけた。すると、二人の間にデンライナーとゼロライナーが突進してきた。
「なに!?」
二台の電車は、ライダーとイマジンを分断した。
そう。イマジンたちをバラバラにすることがゼロノス、つまり紅輝の作戦であった。
ワームと戦う二人のライダー。ガタックとザビーは、再び背中併せになっていた。さっきと違うのは、追い込まれているのではなく、ワームを一掃するためであった。
<ONE>
<TWO>
<THREE>
ガタックはゼクターのエネルギーをチャージアップし、同時にザビーはゼクターのボタンを押した。
「ライダーキック!」
<RIDER KICK!>
「ライダースティング!」
<RIDER STING!>
ガタックがジャンプして飛び回し蹴りを放つと同時に、ザビーはワームの間を走り抜けて針で次々と刺していった。
ドーン!という大きな爆発音と共に10体のワームは消え去った。
電王は剣を振り下ろし、ぶつかったヘンゼルから火花が散った。
「へっ、一人だけなら楽勝だぜ!」
ゼロノスも次々と剣を繰り出し、グレーテルを追い詰めた。
「くっ」
「止めだ、いくぞ電王!」
「よっしゃあ!」
ゼロノスがボタンを押し、電王はパスをセタッチした。
<FULL CHARGE>
デンオウベルトからエネルギーが溢れ、デンガッシャーへと伸び、ゼロノスがベルトから抜き取ったカードをゼロガッシャーのスロットに差し込み、エネルギーを充填した。
「いくぜ、俺の必殺技パート1(ワン)!」
二人は力を込め、イマジンに向けて同時に高エネルギーの剣を叩きつけた。
「「うおりゃあ!」」
ズバッ!
「ぎゃあぁぁ!!」
イマジンから爆発が起こり、火の粉が舞いあがった。
「やったぜ!」
電王がこぶしを握った。しかし。
「ぐ、うぅぅ」
グレーテルは呻き声を上げながら立ち上がった。
「な、なに!?」
電王は驚き、ゼロノスもたじろいだ。
グレーテルの前には、ヘンゼルが膝立ちになっていた。その肩には二つの傷跡があった。
「兄ちゃん!」
グレーテルがヘンゼルに駆け寄った。グレーテルは息も絶え絶えだった。
「兄ちゃん、どうして?」
グレーテルは呻いた。
「あいつらに、一矢報いてやれ・・・」
ヘンゼルの足元でグレーテルは爆発した。
一瞬の沈黙。
次の瞬間、ヘンゼルからとてつもない殺気が立ち昇った。
「・・・消えろ」
ドウン!!
ヘンゼルの掌から青白い高密度のエネルギー体、つまりビームのような物質が発射された。
「ぐあぁぁ!」
何発ものビームが連続して発射される。電王もゼロノスも必死に避けた。
「消えろ!消えろ!!消えろ!!!」
叫びながらビームを乱射するイマジンは、もはやグレーテルではなかった。頭にある二本の角、体は剣のように鋭くなり、そして一番目立つのは背中から生えた大きな翼。スウィートイマジン・グレーテルは、魔女のようなスウィートイマジン・ウィッチに姿を変えた。
スウィートイマジン・ウィッチは空へ飛び上がり、両手を前に突き出した。その掌に青いエネルギーが集まり、一度に無数のビームを乱射した。
「はあぁぁ!」
電王とゼロノス目掛けて幾つもの光線が飛んで行く。二人は避け続けたが、長時間の戦闘による疲労が限界に達していた。二人の足元がふらついた一瞬を見逃さなかったウィッチは、強力な一発を放った。
「ぐわあぁ!!」
二人は地面に叩き付けられた。その上空にウィッチがゆっくりと接近した。
「これで終わりね・・・」
ウィッチは両手を空に向けた。その手の上でエネルギーが球状になって集まっていた。最初は野球のボールぐらいだったエネルギー体はだんだんと大きくなり、バレーボールほどになり、車のタイヤほどになり、遂には両手では抱えきれないほどの大きさになった。
「死にな!」
ウィッチは腕に力を込め、動けない二人のライダーに向けて腕を一気に振り下ろした・・・。
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