仮面ライダー小説

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10月中旬のある日の街中。オフィスビルが立ち並ぶその一角には、先月までの暑さが嘘のように冷たい風が吹き、身震いしている人も多い。
そんな中やってきた、ある集団。
「よ〜しみんな。ここで止まるんだ」
スーツを着た男が言うと、後ろの集団も歩みを止めた。彼らはおとなしい様子で目の前にそびえたつビルを見上げていた。口々に感嘆の声を上げている者もいる。
「すげ〜。ここがあの白鳥グループの本社か〜」
見るからに活発な様子がわかる少年が言った。すると隣に立っている少年が、
「何せ世界でも有数の大企業だからな。ま、これくらい当然だろ」
一見おとなしい様子だが、眼には大人も思わず怯むような鋭い光が輝いている。
「といっても、世界にはまだまだ大きな企業もあるけどな」
反対隣にいた小柄な少年が呟くように言った。
「そうそう。大きいとはいっても、中は大したことはないよ。ほとんどが実験室ばかりさ」
三人の前にいた長髪の少年が、振り向いて言った。
時は2007年。濱崎中学校三年生の生徒たちは、この白鳥グループの本社ビルに社会科見学のために来ていた。本来ならば中学三年生というと受験で忙しいが、濱崎学園は中高一貫であるので、三年生でもこのような行事を行うのである。
「全員揃ってるな。よし、行くぞ」
担任の教師の声に続いて、多上紅輝、波岡健司、村上俊輔、白鳥純一はクラスメイトと共にビルの中へ入って行った。



「これで、施設内の説明は終了です。何か質問はありませんか?」
職員による話を聞いた中学生の一団。
「では、無いようなので、ここで解散にします。皆さんご自由に見学してください」
職員が解散を宣言し、生徒は各自別々になった。
「さてと、じゃあ行こうか?」
純一が紅輝、健司、俊輔に向かって口を開いた。純一は三人を連れて白鳥グループの裏側を見せるつもりなのである。
「おう!」
三人は元気良く返事をした。



「あれ?」
紅輝がつぶやいた。
「しまった・・・。迷っちまった」
巨大なビルの中で、紅輝は純一達とはぐれてしまっていた。
「仕方ない。こっちから探しに・・・・・・」
角を曲がろうとした紅輝は、ある部屋に目が留まった。「第一研究室」と書いてある。その部屋は扉がわずかに開いており、紅輝はそこから中を覗いた。まわりには誰もいなかった。入ってはいけないと分かってはいたが、好奇心が理性を上回っていた。
「こんにちは〜・・・」
紅輝は物音を立てないようにこっそりと入った。幸い部屋の中には誰もいなかった。紅輝が周りを見渡すと、その部屋には大きなパソコンのディスプレイが何台もある。それぞれが眩い光を放っており、まるでスパイ映画か何かの司令室のようだった。
「すげーな」
紅輝は思わず唸った。そのまま彼は様々な機械の間をゆっくりと歩いて行った。すると、彼はあるディスプレイが目に止まった。
「ん?・・・・・・!!・・・これは・・・!」
紅輝の顔が強張っていく。彼は近くにあった空のデータチップを手に取り、それをスロットに差し込んだ。そのまま勢い良くキーを叩く。しばらくすると、画面に<LOADING>の文字が浮かんだ。
「まだか・・・」
紅輝はゲージが溜まるのを見ながらイライラとつぶやいた。ふと、まわりを見渡すと奇妙なベルトやケースがいくつも置いてあった。彼はそれらも手当たり次第に掴み、ほとんど何も入っていない自分のカバンに入れ、それでも入りきらなかったものは転がっていた袋に入れ、最後に残った一本のベルトは自分の腰に巻いた。
「これでよし、と」
そうこうする間にデータのローディングが完了した。紅輝はそのチップを抜き取った。
「よし。後はみんなと合流すれば・・・」
その時だった。ジリリリリ・・・と大きな音が建物中に響き渡った。
『第一研究室に侵入者あり!侵入者は機密データを盗んだ模様!繰り返す!第一研究室に侵入者あり!』
「やべえ!」
紅輝はチップをポケットに入れ、急いで部屋を飛び出した。



「多上くん!」
純一が紅輝を見つけて最初に言った言葉がそれだった。純一は健司、俊輔と離れ、一人で紅輝を探していた。
「もう、どこに行ってたの?ずっと探して・・・・・・」
「それどころじゃないんだよ!」
紅輝が興奮した様子で純一の言葉を遮った。
「どうしたの?」
珍しく取り乱した紅輝を見た純一は、怪訝そうに聞き返した。
「いいか?この会社は・・・・・・」
その時、数人の警備員がやって来た。それを見た紅輝は、
「まずい!」
と言い、純一の手を引っ張って走り出した。
「そこの君たち!止まりなさい!」
三人の警備員が二人を追って来た。
「多上くん!何か追われる事でもしたの!?」
走りながら純一が叫ぶ。
「後で話す!」
紅輝は全力で走った。



「はあはあ・・・」
二人は息を切らしながら走り続けていた。
「多上・・・くん、そ・・・こから・・・屋上・・・に」
「ああ・・・わか・・・った」
階段を駆け上り、一気に屋上に出た。
屋上は、青いビニールシートやドラム缶などがあった。
カチャカチャ・・・
紅輝が振り向くと、純一がドアノブと近くにあった柱を結び、さらに南京錠を掛けているところだった。紅輝も近くにあったドラム缶を押して、ドアに立てかけた。
「ふ〜。危なかった」
二人は崩れるように座り込んだ。
「それで、君は何をしたんだい?」
純一が紅輝に再び疑問をぶつけた。
「ああ。さっきの警報を聞いたろ?」
「うん。・・・!まさかその侵入者っていうのが、君なのかい?」
「そう。そのまさかだよ」
純一は、ハ〜とため息をついた。
「君、自分が何をしたかわかってるの?」
「そりゃ、普通はそうだろうさ。けど、これを見たらどう思うかな?」
と言って紅輝はポケットに入れたチップを取り出した。
「それは?」
「第一研究室にあったデータをコピーしたやつだ。純一、携帯あるか?」
「あるけど・・・・・・」
と言いながら純一は携帯電話を取り出し、紅輝から受け取ったチップをそのスロットに入れた。ブウンという機動音と共に、画面が明るくなった。しばらくそのままだったが、そのうちデータを読み取り始めた。そこに映っていたのは、様々な数値や名前が書いてある表かグラフのようなものだった。横の列には日付が書いてあり、縦の列には「死亡者数」と書いてある。
「これは・・・・・・」
グラフは日ごとに「死亡者数」を伸ばしており、今やその数は四ケタに到達しようとしていた。
「どういうこと?」
「その『死亡者数』ってのが増えてるだろ?」
紅輝が画面の「死亡者数」の所を指した。
「これはおそらく、そのままの意味だ」
「じゃあ・・・・・・?」
「そう。おそらくこの会社はいろんな事件と関連してる可能性が高いってわけだ。次のページにしてくれ」
純一はボタンを押した。ページが変わり、今度は「実験結果」とある。そこには「プロジェクトK」、「プロジェクトD」などが表示されていたが、ほとんどは「失敗」と書いてあった。
「これは?」
「さあな。けど、何かの実験に失敗して、まだ成功していない事ぐらいはわかる」
「うん。次、いくよ」
純一は再びボタンを押した。今度の題目は「ワームについて」と書いてあり、長い文章が書かれてある。
「『ワーム』?ワームって、虫って意味だよね?」
「ああ。けど、この場合は違うらしい。ほら、『地球外生命体であるワームは・・・』って書いてある。」
「地球外生命体!?それって宇宙人ってこと!?」
「ほら、5,6年前に結構大きな隕石が落ちたろ?あれがそうじゃないかと思うんだ」
「あの、一晩で消えたっていうやつ?それが何の関係があるんだろう?」
「わからない。けど、この会社がそのワームってやつらと手を組んで人を襲っているのは確実だな。世界征服か何かをたくらんでるかもな。それから、こんなのも見つけた」
と言って紅輝は自分のカバンを開けた。中からベルトやブレスなど様々なものが出てきた。
「これ、何に使うの?」
「さあな。でも、これがあればワームも倒せそうじゃないか?」
「うん。確かにね」
純一が言った時だった。
ドンドン!
「ここを開けろ!」
扉の向こうから声が聞こえた。
「へっ、やだね!」
紅輝が扉に向かって叫んだ。するとしばらくして扉が大きな音をたて始めた。警備員が扉を蹴り開けようとしているようだ。
「残念。そんなに簡単には開かないよ!」
紅輝が言った。だが、
ダン!
一際大きな音が響いたと思ったら、扉が勢い良く開いた。鎖が繋がれドラム缶が立てかけてある扉が、である。
「何!?」
二人は驚いて扉から離れた。その向こうから三人の警備員が現れた。
「チッ、ばれたか」
紅輝が短くつぶやく。
「おいお前、機密データを盗んだ者か?」
警備員の一人が聞いてきた。
「ああ」
紅輝は正直に答えた。
「そうか。ならば消えてもらう!」
男が言うと、その体が光に包まれた。
「!?」
驚く二人の前で、男が怪物に姿を変えた。緑色の大きな体、長い腕の先には鉤爪が付いている。最初の男に同調するように、残りの二人も姿を変えた。
「まさか、お前らがワームか!?」
紅輝は恐怖におののきながら言った。
「そうさ。この会社の秘密は外には漏らせない。だから死ねぇ!」
怪物――ワーム――は、二人に向かって突進してきた。
「危ねぇ!」
紅輝は純一を突き飛ばした。そこにワームが飛び込んでくる。
「ぐっ!」
紅輝はその攻撃をもろに食らい、そのまま吹き飛ばされた。
「多上くん!」
純一が紅輝を振り返る。
「ぐ・・・うう・・・」
立ち込める煙の中、紅輝はボロボロになりながらも立ち上がった。
「おうおう、友情愛か。泣けるねえ。・・・・・・だが、容赦はしねえ!」
ワームは再び紅輝に突進した。それを紙一重で避けた紅輝。しかし今度は残りの二体のワームの拳が腹に飛んできた。
「がはっ!」
紅輝はその場に膝から崩れ落ちた。その周りを三体のワームが取り囲む。
「終わりだな」
ワームが足を上げ、
「死ねぇ!」
振り下ろしたその時。
ブウーンという音と共に何かが飛び出してきて、ワームを次々となぎ倒した。
「ぐ・・・何だ?」
その何かは紅輝の手に収まった。
「これは・・・・・・?」
紅輝が手にしたそれは、赤いカブトムシ型のメカだった。その存在に呼応するように、紅輝が腰に巻いたベルトが振動した。
「そうか・・・・・・お前を使うんだな?」
紅輝はゆっくりと立ち上がり叫んだ。
「変身!」
そしてそれをセットした。
<HEN-SHIN>
ベルトから装甲が出てきて紅輝の体を包んだ。
「すげえ・・・・・・」
紅輝は仮面ライダーカブトに変身した。
「何!?」
驚いたワームに向かってカブトは走り寄った。
「しまっ・・・・・・」
カブトは斧を突き立て、そのまま残りの二体も斧で斬り伏せた。
次の瞬間、大きな音を立てながらワームは爆発した。
「すごい!」
物陰から見ていた純一がつぶやいた。
変身を解いた紅輝は純一に向き直り言った。
「なあ、純一?」
「うん?」
次に言った言葉に、純一は大声を出すことになる。



「俺達で、世界を救おうぜ」


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