こんなんdeたんか

連載長編小説 『絵画きのバラッド』(仮)スタートしました。普段、小説を読まない方にこそ読んでいただけたら幸いです。

400字小説 vol.11

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         400文字ぴったりで書かれた物語です。

                  空白は含まず、文字と記号のみをカウントしています。
                    全タイトル読み切りです。1分ほどで読めます。
                    わずか原稿用紙1枚の小説をお楽しみください。
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うつつ世の札(ふだ)に賭したるあのよろし いざや還らぬあの世とやらへ

 住職が辞した居間は何だかがらんとしていた。

 湯飲みから立ち上る湯気を眺めるのは久しぶりだ。幼い頃から親しんだ知覧茶の芳香が、ささくれ立った心に沁みていく。

「七年、早いのね」
 お袋が親父の遺影を見上げて言った。

「うん」と言いながら、お袋もめっきり老けたなと思う。

「仕事、どう?」

「ぼちぼち、かな」
 言ってみたものの、その実、頭の中は社内のごたごたで一杯だった。昇進レースに派閥争い、消費者への裏切り行為。不甲斐ない俺自身にも嫌気がさすが、もう色々と限界だった。Uターンの文字さえ頭をよぎる。

「そうそう、この間、父さんの古いノートが出てきてね」
 お袋は腰に手をあて「あいたた」と辛そうに立ち上った。

 繰って見ると他愛ないメモだったが、最後に辞世の句が書かれていた。

「父さんらしいでしょ」

 戦後の混乱期を博徒として生きた親父らしい句だと思った。


 脇に一文添えてある。

『貴、母さんを頼む』


 俺は表情を変えない親父を見上げた。






                         十三回目の命日に記す。
溶けたかき氷

 捲れと誘うのは古いアルバムだった。

 でも、休みの間に片付けないと、来月には貴史と新居に越すんだから間に合わない。

 ま、いっか。お盆休みはまだ初日。片付けの道草は必然だ。

 天然水で作られたオキニのかき氷を器に移した私は、一人掛けソファに腰を落ち着けた。

 古ぼけた小さなスケッチブックみたいだった。
 色褪せた写真は、間違いなく幼い私自身だ。

 かき氷を口に運びながら、覚えはなくとも懐かしい写真に夢中になる。

 最後の頁で手が止まった。 あの人だ。
 奥底に封じ込んでいたはずの漆黒の感情が迫り上がって来た。
 私を捨てて蒸発した挙げ句、自分の幸せさえ掴めず死んじゃった、私を産んだ人。


 赤ちゃんだった私を抱っこしてる。
 眠ってる赤ちゃんを大事そうに両腕で抱っこしてる。
 初めて見るあの人の顔。


 ……なんて穏やかな優しい顔なんだろう。


 気が付くと、かき氷は白濁した水になっていた。
 キッチンに行きシンクに流す。


 礼服でなくてもいいかな? お墓参り。
多角的カメラワーク

 駅前に集う野次馬たちが見上げる時計台の針は、真上の位置で重なった。その十五メートル程の高さにある針の直下で男が大声を張り上げる。

「お前ら、余計なことすんなっ。俺はどうせ死ぬんだ。飛んでやるっ」

 男はネクタイを緩めて抜き、空中へ放った。意外な速度で落下するネクタイを覗き込んだ男は、背にした壁に摺り寄り、息を飲んだ。眼下の小さな野次馬たちがどよめく。

「待ってくれ。話しを聞かせてくれ」
 拡声器の声は恰幅の良い制服警官のものだ。

「俺なんか生きてちゃいけねぇんだ」
「どうしたんだ。教えてくれ」
「どうもこうもねぇ。仕事も住む所も取り上げられちまって、金もねぇし、生きてる価値なんてねぇんだよ、俺なんか」
「然るべき所へ保護を求めることも出来るぞ」


「うるせぇ。7月8日に生まれついた俺なんか、何やったって七転八倒するしかねぇんだよ」

 野次馬の一人が突然叫んだ。

「七転び八起きだろがっ」


 目を見開いた男の足元がぐらついた。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




和来紘太郎さまより題材をお借りいたしました。


ザ激似グランプリ (後編)            ※こちらは後編です。前編からお読みください。お願いします。

「じゃ、収録日に。宜しくです。それじゃね。ゆいちゃん」

 Pの浅井さんが促し、母子が席を立った時だった。
 糸の切れた傀儡のようにぷつんと女の子は倒れた。慌てて私達は駆け寄る。

「大丈夫ですから」
 母親は落ち着いて抱き起こし、何か飲ませたようだった。ほどなく女の子が気付くと、そそくさと母子は小会議室を後にした。

 ドアを閉めて元の席に戻る。

 資料を片付けていると、隣で『考える人』だった浅井さんが身を寄せて来た。
「マヤちゃん。あの子、実は芦田のぞみのクローンなんだ」
「べつに面白くないです」
 何を言い出すかと思えば。

「マジなの。本人も知らないけど。俺が他人には言えないルートから引っ張って来た。てんかんでもなくて突然気を失ったりするんだぜ……あんな似てる子いると思う?」


 突然、顔の前で光が弾けた。重力に抗えなくなった私は、床にへたり込む。

 急速に薄れる意識の中に昨日の武村君の声が聞こえた。


『でも、何で名前変えたの……』
ザ激似グランプリ (前編)

『高校の頃からずっと好きだったんだ。こんなところで会えるなんて』

 編成局で同期の武村君がそんなヒネりの利いた告白してきたのは意外だったな。
 彼は東北の出身で、私は汐留が庭みたいなものだったから接点ないのに。今度、堅そうな彼に訊いてみよ、ネタ元。


 アマンド手前の角を曲がった途端。来たぁ喪失感。思わずしゃがみ込む。

 炎天下の早足? 溜まった疲れ? はたまた電磁波の影響か。いつもの犯人探しに答えはない。

「お待たせ」
 ランチデートは二回目にして遅刻ならずっ と。

「ランチでいい?」
 武村君の手際良いオーダーに感謝。

「どう? 新人ADさんは。忙しそうだよね」
「もう、想像以上。くらくらしてる」
「今、特番の準備だもんな。ザ激似グランプリだっけ。あんまりだったら上に言いなよ?」
「うん。ありがと。大丈夫」

 優しい気遣いも出来るオトコか。

「ねぇねぇ、明日、午後イチから打合せ。芦田のぞみちゃんのそっくりさん。ホントに激似なんだって」



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