こんなんdeたんか

連載長編小説 『絵画きのバラッド』(仮)スタートしました。普段、小説を読まない方にこそ読んでいただけたら幸いです。

400字小説 vol.10

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         400文字ぴったりで書かれた物語です。

                  空白は含まず、文字と記号のみをカウントしています。
                    全タイトル読み切りです。1分ほどで読めます。
                    わずか原稿用紙1枚の小説をお楽しみください。
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ケン・ギュウの何故                                            モチーフ:七夕

 アルタイルの惑星改造は最終段階に入っている。
 D123地区の農地改良作業を終えたケンとタロスは環境省のスタッフルームに帰還した。

「あー、疲れたぁ。オレ頑張りすぎ。何でこうも毎日頑張って働いてんだろね」
 ケンは休憩用の重力軽減空間に設置された浮遊ソファに身を投げた。

『息子よ』

「何か言った?」
 ケンの言葉にタロスは首を振る。

『動機も忘れおったか?』
 サムシンググレートの声が直接、ケンの言語中枢に届く。

「働く動機?」
 語りかけを理解したケンは記憶の海に潜る。

「姫に逢うためじゃん。しかも今日が七夕! やべぇ」
 ケンはソファを飛び降りた。

「これも運命なんかな」

『運命など戯れ言。何故、年に一度しか逢えなくなったのか忘れたわけではあるまい。己の因果じゃ』

 ケンは天に向けてウインクした。

「じゃ、行ってくるわ」
「姫によろしく」
 タロスが応える。

 ケンはゲイトと呼ばれる小部屋に入り、ほどなくアルタイル中央宇宙港へテレポートした。
それはねぇ?

 嘘だと思うんだったら試してみな。

 取って置きの情報だ。まだ誰にも言ってねぇ。
 まず断っとくけど俺、無神論者だから。腐りきったこの世界に神も仏もねぇ。
 じゃなきゃ、ここまでひでぇ奴ばっかな訳がねぇだろ。
 皆がみんな、オノレの薄汚ぇ欲望を満たすことしか考えてねぇ。
 お前の上にいる奴らをよく見てみろ。人の顔してるか?

 そんなケダモノみたいな奴によ、こないだこっぴどくヤラレちまってはらわた煮えくり返ってた訳よ。
 夜も眠れやしねぇ。
 そんな時によ、言葉がどっからかスッと降りて来たのよ。

 南無阿弥陀仏。
 聞いたことあるだろ、ナムアミダブツだ。

 十回言ってみたら何か落ち着いて来た。
 二十回言ってみたら、怒りなんてどっか行っちまってた。
 そんで三十回言ったら、何か知らんハッピーになって来たのよ。

 そんな訳がねぇ?
 信じらんねぇ?
 ばか、俺自身が一番信じらんねぇんだよ。
 とにかくハッパもハーブも目じゃねぇぞ。

 嘘だと思うんだったら試してみな。
茫洋の密命

 ゴーリキーパークよりも綺麗な水深二百メートルの密閉された空気が、急激に密度を増した気がした。

「艦長、やはり私には出来ません」
 水雷長が決意の顔を私に向けた。

「我々は軍人だ。命令は遂行する為にある」
「戦時下でもないのに、なぜ商船を攻撃せねばならないのですか」
「ラニコフ少尉、君は知る立場にはない」
「彼らは無関係な民間人です」
「作戦は大統領名での発令だ」
 動かぬ少尉の表情に冷却タービンの微かな唸りが時間を付与した。

「セルゲイ上長、今から君が水雷長だ。攻撃準備に入れ。ラニコフ少尉は下がってよし」

 軍人ではなく一人の人間に戻ってしまった少尉はこの艦には必要ない。

 発射された魚雷は目標の真下で炸裂し、発生したバブルパルスは確実にコンテナ船の竜骨を破壊するだろう。彼らには何が起こったのかも解るまい。脱出の時間は充分にある。しかし、積み荷は海の藻屑となる。

 米国製の武器弾薬がシリアに届いてはならんのだ。何が何でも。
さめた子ら

「お代わり、一番乗り」
 雄大は席から駆け出した。

「走る」なよを言う前に雄大はすっ転んだ。持っていた器は見事に転がり、教室の端まで行ってぱたんと半球の安定を見た。
 堪らず腹を抱えて笑った。まるで芸人のお約束だ。
 ひとしきり笑って気付いた。子供たちは誰も笑ってない。

「おっかしいよなぁ」
 円く机を並べた向かいの子に振ってみる。

「かわいそう」
「大丈夫? 町田君」
「へーき、へーき、なぁ雄大」
 みんな同調するのか?

「みんなとは笑いのツボが違うみたいだな」
「先生、ひょっとしてテレビとか観る人ですか?」
 宮田が訊いてきた。

 教室中がざわつく。全員のマイナス感情が俺を向いている?



「いい加減にしろっ」
 怒鳴った瞬間に後悔が這い上がって来る。その後悔を飲み込むよりも早く礫が投げつけられた。

「お風呂をですか?」耕介の声だ。

 俺の一喝で静まり返っていた教室がどっと沸いた。



 いつまでも止まない笑い声につられて、俺もいつの間にか笑っていた。
翼を手に入れろ

 ついてないなぁ。本降りになりそうだ。

 田舎道にひょっこり現れたバス停小屋に寄せてバイクを停める。
 中に入るなり、ヘルメットとグラブを脱いだ。外の雨を眺めながらグラブを絞ると、コンクリ床に涙染みが広がる。

「おじさん、雨好き?」

 心あたりのない声に驚き、振り返る。薄暗くて気付かなかったが、隅っこに女の子が座っていた。
 それにしてもおじさんって。社会人一年生なんですけど。

「バイクだからねぇ。あんまり」
「バイクって、どこまで行けるの?」
 250とは言え、ウイングマークの付いたスポーツ車だ。
「ガソリンさえ入れればどこまでだって」
「ふーん。自由なんだ、おじさん」

「自由なんか……」
 生活のために朝から晩まで働いて、自由に出来る時間なんか幾らもない。


「心はどこへだって行けるんだよ」


 足元に薄日が射して来た。外を見ると雲が切れている。
「行けそうだな」
 言いながら女の子のほうへ顔を向ける。




 そこには薄暗い空間があるだけだった。

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