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・王とアーロンのホームラン競争の思い出
物心ついた時からの王選手ファンを自負している私としては、選手時代の思い出が多くある。
その中で学生時代に観に行った後楽園球場での「王とアーロンのホームラン競争」は、特に爽やかな思い出として残っている。
当時、東京のお茶の水にあった大学に下宿しながら通っていた私は、後楽園球場が通学途中にあったことから、ここぞという試合などは、地の利を活用して観に行くことが出来た。
中でも「長嶋の引退試合」と「王とアーロンのホームラン競争」を生で観戦できたことは、野球ファン人生の中で最もラッキーな出来事の一つとなっている。
さて、ホームラン競争だが、確か日米野球の試合前の丁度西日がまぶしくなってきた頃、両雄の簡単な練習のあと、何回かに分けて、合計20回のスイングで何本スタンドインするかを競ったと思う。
このとき、最初に驚いたのは、ホームラン打者と言うのは、打てるコースに球を投げてくれれば八割方ホームランを打てるということを二人の競争前のフリー打撃で知ったことだ。
そして球場全体が固唾を飲むような緊迫した雰囲気で始まったホームラン競争。
アーロンの打撃投手はその時来日していたメンバーの中でコントロールが良くて素直な球を投げるキャッチャーを人選し投げさしたような記憶がある。
王の投手は専属の打撃投手。
お互い2スイングに1本中段以上まで届くようなきれいなホームランか、打ち損じはアーロンがライナー性の当たり、王がフェンスに当たる後1メートル足りないような打球が多かったように思う。
途中で王独特のポールをまいた特大のホームランをMLBからきていた主審がファールと判定する場面が2度ほどあったが、競争はお互い譲らず、最後の2スイング辺りまで勝敗は分からなかったと思う。
15分か20分足らずの時間だったが1球、1スイング、1ホームランを重ねるごとに球場全体の緊張が高まっていった。
特に打撃投手は大変だったと思う。
スイング単位となっているため、打撃投手はホームランになりそうな球を投げ続けねばならない。
途中どちらの投手も緊張してうまく投球出来ない場面もあったように記憶する。
結局、先攻の王が20スイング中9本で最後のステージを終え、アーロンが最後のステージで10本となった時点でアーロンが王に握手を求めてこの世紀のホームラン競争は終わった。
終わった瞬間、緊張で静寂していた球場全体がホッとしたような安ど感に変わり、すぐに拍手の渦に包みこまれた。
結局、王選手は公式には負けたが、ポール際の幻のホームランもあり、実力的には引けを取らない事が証明されたことになり、悔しさはあまりなく、逆に誇らしい気持ちにさえなった。
また、この時代にMLBのプライド関係なしにこうしたチャンスを実現してくれたアーロンの人間性にも感銘を受けた。
私同様、他の観衆も同じような思いだったようで二人に惜しみない拍手を送っていた事が印象的で、非常に爽やかな「世紀のホームラン競争」だった。
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