|
バイオコントロール機関誌に投稿した私の原稿です。
ご興味のあるかたの参考まで。
西ヨーロッパにおける既存および新規の農薬の登録は1991年に制定された欧州委員会による指令(基準、法令と考えてよい)いわゆるEU Council directive 91/414/EEC に基づくものである。
このEU directive によって登録された農薬はEU加盟国間において各種のデータの読み替えなどができるという利点がある。一方で、この法令の施行以来、各種の安全性や生物効果試験などの成績を提出することができないという理由のため、EUにおける登録農薬数が減少していることも知られている。
この指令以前に欧州のいずれかの国で許可されていた農薬1000種のうち、許可されたもの(Annex Iに掲載されたもの)はわずか260種、不許可は70種、申請にまで到達しなかったか、撤退したものは670種と発表されている。
つまり現時点では26%しか使用が認められなかったということになる。
ただ現在かならずしもこのEU directive だけではなく、各国ごとに登録されている
農薬も存在することがあり、この個別の登録システムも並存していることも理解すべきである。
微生物農薬および植物抽出物などの登録状況
この指令は化学農薬だけでなく、微生物農薬、植物抽出物、フェロモンなどについても規定しており、微生物農薬については評価の順番としては一番あとのリスト4に含まれていた。そのため生物農薬のEUにおける登録の状態が評価中となり、一時期登録の行方を危惧する声もあったが、2009年9月現在、ほとんどの既存および新規の微生物農薬の有効成分が登録されたことが分かっている。これはフェロモンについても同様である。
なおよく天敵昆虫と天敵センチュウは欧州においては、登録する必要はない。米国においても天敵昆虫は登録の必要はない。
欧州委員会の微生物農薬、フェロモンについての登録姿勢は数年前まではきわめて不透明であったが、本年になり、かなり米国EPAのバイオペスティサイドを意識した、同等レベルの微生物剤、フェロモンの有効成分が許可されている。
要求される毒性データなども化学農薬に比べ緩和されている。
これまで欧州では微生物農薬の登録数が米国、日本に比べ少なかったが、今回の掲載により一挙に増加したといえる。
また下記の表には、加えていないが、クローブオイル、シトロネラオイル、ニンニク抽出物、tea tree 抽出物、胡椒、菜種油、スペアミントオイル、魚油、羊の油、アミノ酸、乳酸などが、忌避剤、殺虫剤、殺菌剤などとして許可されたことも特筆されるべきであろう。
なおこれらの剤の多くは米国でも生物農薬としてすでに登録されている。
有効成分が許可されることを一般にアネックスI(付表I)に掲載されるという表現を使うことが多い。
アネックスIへの掲載後、アネックスIII (付表III)に示されている製剤による生物効果試験などを各国に提出することにより各国ごとの農薬登録が実現することになる。
生物農薬の優遇策
下記の許可された微生物剤を見るとほとんどの既存微生物剤は許可されており、EU委員会も安全性の高いものを優先して許可していることがわかる。
日本においても、化学農薬の抵抗性出現の回避のためなどのためのみならず、上述欧米諸国と同様に安全性が高いと推定されるものについて、即ち、微生物剤、植物抽出物などのIPM資材が比較的簡単かつ低コストで登録できるようになることが強く望まれるところである。
欧州で使用を許可された既存微生物農薬(Annex I inclusion: アネックスI 掲載分)
(日本での登録の 有○ 無 ブランク、(菌)は病原菌に作用するもの。その他は主に害虫に作用する微生物。日本で登録があるものは代表的な商品名を記す。また用途も示した。)
微生物殺虫剤
BT剤
○ Bacillus thuringiensis subsp. Aizawai (ABTS-1857 and GC-91)=ゼンターリ
Bacillus thuringiensis subsp. Israelensis (AM65-52) 蚊・ブユ用BT剤
○ Beauveria bassiana (ATCC 74040 and GHA) = ボタニガード
○ Bacillus thuringiensis subsp. Kurstaki (ABTS 351, PB 54, SA 11, SA12 and EG 2348) = ダイポール
Bacillus thuringiensis subsp. Tenebrionis (NB 176) 甲虫類用BT剤
ウイルス剤
Cydia pomonella granulosis virus (CpGV)
糸状菌製剤
○Lecanicillimu muscarium (Ve6) (former Verticillium lecanii) =マイコタール
Metarhizium anisopliae (BIPESCO 5F/52) 微生物殺虫剤
菌Phlebiopsis gigantea 樹木の切り株用
菌Pythium oligandrum (M1) 土壌病害用
菌Streptomyces griseoviridis (K61) 土壌病害抑制
菌Trichoderma atroviride (IMI 206040) (T 11) (former Trichoderma harzianum)
= エコホープなどと同属同種
菌Trichoderma harzianum Rifai (T-22) 土壌病害抑制
菌Trichoderma polysporum (IMI 206039) 樹木の剪定傷害からの感染抑制
菌Trichoderma gamsii (formerly T. viride) (ICC080) 土壌病害抑制
菌Verticillium dahliae alboatrum (WCS850) Ophiostoma ulmi 抑制
新規微生物剤
菌Ampelomyces quisqualis strain AQ10 ウドンコ病抑制
○ 菌Bacillus subtilis str. QST 713 = インプレッション
○ 菌Coniothyrium minitans = ミニタン
菌Gliocladium catenulatum strain J1446 土壌病害抑制
○Paecilomyces fumosoroseus Apopka strain 97= プリファード
菌Pseudomonas chlororaphis strain MA342 土壌病害抑制
Spodoptera exigua nuclear polyhedrosis virus ウイルス殺虫剤
○Adoxophyes orana GV strain BV-0001 = ハマキ天敵の一成分
評価中のもの
菌Candida oleophila strain O 収穫後のアオカビなどの防除剤
Helicoverpa armigera nucleopolyhedrovirus (HearNPV) ウイルス殺虫剤
菌Paecilomyces fumosoroseus strain Fe9901 微生物殺虫剤
Pseudomonas sp. Starin DSMZ 13134 微生物殺菌剤
菌Pseudozyma flocculosa ウドンコ病剤
Spodoptera littoralis nucleopolyhedrovirus ウイルス殺虫剤
菌Trichoderma atroviride starin I-1237 土壌殺菌剤
○Beauveria brongniartii = バイオリサ・カミキリと同属同種
許可されなかった微生物剤
○菌Agrobacterium radiobacter K 84 = バクテローズと同属同種
Bacillus sphaericus 蚊の微生物剤
菌Bacillus subtilis strain IBE 711
Baculovirus GV
Neodiprion sertifer nuclear polyhedrosis virus = 核多角体ウイルス
次回は植物抽出物、フェロモン、食品添加物などについて報告を予定します。
|