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今朝友人から聞いた話。穏健派でやや左、自然環境の保存を愛する彼は、現存する理想的な国家について
次のように話し始めた。国家という言葉が適当ではないかもしれないが、とりあえずある国の話である。
そのKという国は、エネルギーをおもに地熱発電と太陽電池で賄っているという。
太陽電池はフィルム状になっており、工場、ビル、住宅の壁面および屋根は通常
すべて太陽電池フィルムである。構造物にぴったりと貼ることができ、ほとんど重量がないため建物への負荷がきわめて少ない。風にも熱にも強い素材であり、都市の住宅の必要電力量はこれで賄えている。
石油は医薬品や必要最低限のプラスティックなどの生産にしか使うこと許されておらず、
燃やすなどということは、資源の浪費、炭酸ガスの産生ということからこれも禁止されている。
すべて電気かといえば、一部天然ガスは使われているが、燃えても水にしかならない
水素ガスが主成分となっている。
合成された農薬は規制されており、基本的に病害虫防除は天敵昆虫と微生物によって
植物保護は行われている。
医薬品は合成品が多いが、二重盲検法により、プラセボ(偽薬、砂糖や小麦粉など成分の入っていないもの)にくらべ、治癒率が80%以上のものしか許可されていない。
また抗がん剤は、正常細胞にすこしでも影響のあるものは、認可されておらず、そのため
副作用に悩まされることもない。結果的に認可されている抗がん剤はほとんどない。
遺伝子治療によるガン対策がなされており、発ガン自体が減少している。
なによりも、注目すべきは、ヒトの遺伝子の末端にあるテロメアという部分を含む老化関係の遺伝子の解明がなされており、DNAのコピーの際の誤りを直す酵素とともに、遺伝子の老化防止が実現しており、任意に年齢を決めることができるということである。
それは老人が20代の若者になることも可能にし、あるいは35歳のまま同じ年代層に居続けることを可能にしている。
すなわち事故などによる死亡原因以外での死というものがなくなっているのである。
これにより、新生児数の減少が見られ、避妊技術の進化により、さらに出産数の減少が
起きている。
とはいえ社会における老人の比率は5%以下となっており、20代、30代が人口の
80%以上を占めるという若年層社会が現出している。
国家間の紛争は、激減している。その理由として、自動通訳装置による即時翻訳が
実現していること、および各国間の移動がいわゆるテレポーテイション、三次元電送が可能になったため、即時移動が日常的に行われているためである。
この際、電送が完了した後、一週間以内にどちらかの個体を消滅させることが義務付けられているという。同一人物が何人にも増加することを防ぐためである。
この技術により、出入国が自由であるため、国家間での人種の均質性が実現している。
とはいえ、熱帯や寒帯の人気が高いということはなく、温帯への人口集中が問題化しているようだ。
ただし過去に見られた人種的な差別、抑圧などは消滅している。なぜなら上述のごとく
遺伝子レベルでの改変が可能になったため、黒人から白人への変更する人が増えたためである。
もちろん整形手術なくして、顔の改変も可能なため、白人の金髪の美男美女が全世界の
人口の70%を占めているともいわれている。
ただしあまりに金髪の白人が多いため、それ以外の人種の人気も高まっているという。
また途中から人種を変更することも可能であり、外見による識別は不可能である。
このため、各個人は遺伝子改変の記録を全世界で管理する遺伝子管理センターに
自動的に通知されるため、遺伝子検査による個人の特定は可能である。
クローンによる自己の創出は一人に対して一人までは許されている。
男から女、女から男への性転換も上述の遺伝子改変により可能になっている。
その結果、女性の比率が上がっているとのことである。
性的に生殖行動が必ずしも必要でなくなっているため、交接はもっぱら幸福の追求という意味で行われているにすぎない。
そのようななかでも受精し、妊娠することを希望する女性、男性もいるが、受精後
一か月以内に体内より受精卵がとりだされ、試験管ベビーとして出産時レベルの体重に
なるまで養生チェンバーで安全に管理される。
労働については、労働自体が楽しみという観念が流布しており、後述するが、週5日、一日3−4時間の労働はむしろ娯楽と考えられている。
休暇は一年ごとに一年貰えるので、就業中は土日のみの休暇である。
通勤については、テレポーテイションを利用することはエネルギー浪費の上からも
実行している人はいない。
電車、自動車は存在せず、速度の違う段階的なエスカレータのような動く歩道、幅は10m程度であるが、歩道自体が動いており、どこからでも乗ることができる。
歩道の中央部に近づくとスピードが上がり、時速50キロ程度のスピードで移動が可能である。道路の両端は極めて低速で歩いて歩道から降りることが可能である。
高速部分には座席があり、風防もあるので、事前にセッティングすれば寝ているうちに
おろしてくれる。
このような歩道がすべての重要道路に施工されているので、公共交通機関が必要なくなっているのである。
動く変速歩道といわれており、屋根もあるので、きわめて便利である。
長距離移動は上述のテレポーテイションにより、行うが、一般的に1000km以上でないとエネルギー効率から実用性がないようだ。
時に電送に失敗することがあり、その場合は、電送された物、生物は自動的に廃棄される。
長距離はエネルギー効率の悪い航空機はもはや使用されていない。
可変する気球部分をもつ飛行船が主流である。 続く
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