修復

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修復と職業倫理と

堅苦しいお題になっちゃったけど。意外かもしれないけど修復の仕事に職業倫理はとっても重要。特に技術に自身があればあるほど倫理観も強くないととんでもないことになっちゃうから。

一昨日、このあいだ問題ありかもと書いた楽器納品してきた。そして私はこういう発見をしましたとお伝えした。勿論、お宅の楽器偽物じゃありません?とはいえないから以前こういう修理をしてあったようですが・・・みたいな言い方をしたけど。どちらにしろ私の前ではこれは素晴らしい修理をしてあるね、でもそれはこれがとてもいい楽器でその価値があったからのことで自分は間違いなくすべてがオリジナルだと信じている、というお答えをいただいた。実際、何十年も前のその当時たぶん世界で一番信用されていた楽器商の鑑定書もついているそうだ。私はなんとなく納得できなかったけれど。鑑定書は古くなればなるほど信憑性が落ちるのは周知の事実だし・・・ただ私の前では認めたくなかっただけで独りになったら思い悩んでるのかもしれない。

私は修復の仕事をしてるから、手を下す人間としていろいろなトリックを知ってる。それは多分多くの楽器ディーラーよりももっと詳しく。そしてトリックを知っているとそのトリックを見破るのは知らないよりも何十倍もたやすくなる。だから今回修理した楽器に残された痕跡が修理後とは言いがたく改造痕といった方が適して言うことも。

私はこの仕事が大好きだし、勿論自分のしていることに誇りを持っている。でもこの職業倫理って言うのに悩まされることも多々ある。修復をする人間にとって職業倫理とは偽者とか本物とかは関係ない。ただ多分もっと複雑でデリケートな問題を含んでいる。

以前イギリスの修復のマスタークラスに参加したときもこの職業倫理の問題が提起されたんだけれど、納得できることもあればできないこともありみたいな終わり方だった。
例えば、厚みの調整。結構いろいろなお店で「これはうちで厚みの調整もしましたから良く鳴りますよ」とか言われたことある人も多いんじゃないかと思う。私も売り文句として聞いたことがある。それはそのお店が他の製作家とは比べ物にならないくらい素晴らしい技術者を雇っていてその人が板を薄く削ったから違うレベルの楽器のように音がよくなっていると言いたいのか。それとも別の見方をすれば、今まで限りなくオリジナルに近い状態だったのにそれを削ってしまって決してもとには戻せないな状況にしてしまったと言うことなのか。私は基本的に板の厚みを変えてしまう作業には反対派だ。作った人に対する敬意もあるし、未来に対して責任もとれないから。実際、昔大量の楽器の厚みの調整をした職人の人が、昔やった楽器はその時はみんな良くなったけどほとんど今ではウルフが出るといっていた。その中にはイタリアンオールドやモダンの楽器も多く含まれている。彼はその経験があるから今は素晴らしい調整ができると自慢するけれどそれでは公害を撒き散らして自分だけ設ける企業のようなものだ。わたしはそうはなりたくない。イギリスでも私たちがならない楽器だからと厚みを変えてしまう必要はない。まず鳴る楽器なんていくらでもあるんだからディーラーは鳴る楽器を売ればいい、というところに落ち着いた。そして勿論、音楽家も見た目や名前で買って鳴らないから厚みを調整してくれなんていうのは他の楽器に買い換えればいい。

でもそんなに単純じゃない。多くの楽器がよりよくするためという名目で削られてきた。そして今も削られてる。それだけじゃなくて自分の持っている楽器はどこそこで削ってもらったとてもよくなった、削るのが良くない何ていうのは単にその技術がないだけだからだろうって言う人がいる。でも私のポリシーに反するからわたしはしない。そういっているし言い続けるつもりでいる。

本当はどんなとき楽器を作り変えるか書こうと思ってたんだけどそこに行き着く前にかなり長くなっちゃったからまた今度。

だまされた!

だまされてました、それも完全に・・・3ヶ月間も。ショック!

何があったかって言うと・・・それは

数ヶ月前、とあるディーラーから素晴らしい楽器があるからちょっと修理してくれないか、というお電話をいただいた。よく聞いてみるとその楽器は1億円位するイタリアのオールド。勿論私はすぐにお引き受けすることに。そのディーラーのところに行くとすでに表板ははずされて机の上に鎮座ましましていた。オリジナルニスはまったく残っていないものの結構綺麗vかなって印象。ただひっくり返してみるとかなり大掛かりな修理を一度していたようで大きなパッチがいくつも重なり合うように張ってあった。まあ300年の代償、しょうがない。ただそれだけ大掛かりな修理をしたにもかかわらずいくつかの割れが黒い線になってしまっているからそれを見えなくして欲しいといわれた。裏板はイタリアオールドならではの箔のある見事なもの。修理の必要もまったくない。そしてやりがいのある仕事は素晴らしいと行き勇んで家に持って帰った。

そしてこの数ヶ月間その割れの修理をすべてやり直した。見えなくする作業はとても難しい。割れを存在しなかったことにはタイムトリップでもしない限りできない。どうするか。まず徹底的に洗って完璧に付け直す。そして周りの色と同じような色をのせる。この色をのせるときに周りのニスの細かいむらとか反射の仕方とか帳面のぼこぼこさとかもコピーしていく。そのためには観察あるのみ。その観察の結果、この表板はオリジナルでなくほかの楽器から盗んで?来たものとわかってしまった。明らかにその楽器でないものを作り変えた後を見つけてしまった。オーナーは知っているのか?それとも知らずに買ってしまったのか。今の時点でオーナーはディーラーな訳だから楽器のプロ。知らずに買ったのなら彼の責任で終わりだけど。この先は音楽かなりコレクターなりがオーナーになるはずだけれど・・・

どうして表板はオリジナルではないのか?まずすぐに怪しいと思ったのは中央に1cmくらいの幅の木を新しくはさんでいること。これはよくF字孔どうしの幅が狭いときにするもの。そして1700年より前にできた楽器には意外とよくあるから気にしなかった。そして2つ目は木目がとても狭いこと。このとても狭いというのはドイツの楽器の特徴。そして3つ目はf字孔の形をかえていた。そして最後にすべてのコーナーを作り変えていた。3つ目と4つ目は修理の時の作り直すのと作り変えるのでは使うテクニックが違うからかな明白な楽器作り変えの証拠になる。

世の中にはいっぱい表板と裏板が同じ楽器のものではなかったのに無理やり一つの楽器にしてしまったものがある。ストラディバリ(表板はビヨームによって)とか、その逆とか。同じストラドのものでも表は1720年くらいで裏は1705年くらいのものとか。だから勿論この手元にある楽器もその一つに過ぎない。でもショック。今まで気がつかずに修理してたのもショックだし、この発見を伝えるべきか否かも問題だし。私は単に修理の依頼をされただけで余計なことを言う身分じゃない。でももしオーナーが知らないのなら次の被害者が出るのは必死だし。どうすればいいんだろう・・・

健康な楽器不健康な楽器、コンディションのいいもの悪いもの。いろいろ聞きますよね。楽器を買うときは健康な楽器を!とかこれコンディションが悪くて!とか。でも一体どういうこと?意外とこの定義難しい気がします。それによく言われる音に影響ありますか?っていうの。なだももさんにご質問いただいて私もちょっと考えちゃった。
まず健康な楽器=壊れてないもの(?)でいいのかなって思います。ちょっと学校の歯の検査思い出してみて!例えば治してない虫歯とか見つかったらだめ。でも昔虫歯になって治療ずみだったらOKっていうの。楽器も同じでちゃんと直してあったら修理の大きさを問わず健康といえると思います。そう考えると基本的に一般に売りに出てる楽器の多くは健康ってことになる。でもなんか納得できない人も多いかも。
それでちょっとアプローチをかえて考えてみようと思う。
例えばできたほやほや新作バイオリン。これは健康と断言して間違いないと思う。でもコンヂィションが良いと決まったわけではないんだけどね。。
次にいわゆるモダン。これは意外と過去のオーナーによって差が大きいもの。今まで弾かれたこと本当にありますかってくらいぴかぴかで割れどころかニスにもかすり傷すらないもの。これは新作と同じ。それからニスはところどころ磨り減ってるし指板もちょっとぼこぼこ。これも問題なく健康。最後になんらかの事情があって割れてしまったもの。これはモダンだと微妙。例えばF字孔のところがちょっととかだったら勿論直してあれば問題なし。でも魂柱のところが割れていてとかなると・・・つまり100年くらいしかたってない楽器ってそんなに壊れてない楽器も多いのね。なのにすでにそういう事故経験済みみたいなのはいまいちかも。魂柱割れがあると実際売買価格としても30%のマイナスになるし。それに魂柱割れって特に裏板だと修理が30年とか長くても50年とかしかもたないっていうし。これは不健康ですというほどじゃないけど持病もちくらいかな。
最後にオールド。これは難しい。単に壊れてるとかないとか修理してあるとかないとかの問題じゃないから。まず大前提として壊れたことのない楽器なんて存在しないということ。例えば去年修理した楽器でこんなのがあった。
ものすごく状態のいい楽器。パッチなし。魂柱割れなし。バスバーぞいの割れもなし。厚みもそこそこ。それでも小さな割れが38箇所あった。そんなものです。オールドなんて。
逆に虫食い楽器。ひどいのになるとくもの巣状に食べられてて指で押さえるとペコペコだったり。で、それが修理済みだと表面の木を残して全部パッチが貼ってあってオリジナル部分はニスのした0.5mmのみですみたいになってたり。勿論修理済みだったら壊れてるとはいえないけど・・・・これは心臓移植後みたいな感じ?
結局のところオールドで一番健康といえるのは。割れだけで一切パッチなくて厚みもきちんとある。この厚みもオールドでは重要。ものによっては製作者によってではなくて後から削られてしまっていて本当に髪みたいに薄いのもあるから。薄すぎるものは健康とはいえない。次はパッチの大きさに反比例して健康状態が下がっていくといって良いと思う。そして勿論虫食いも同じく。
ざっと健康状態ってこんなものじゃないかな?
また今度コンディションについてもかいてみます。

ぼろ!バイオリン

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写真はこの間イギリスのオークションで買ったの。1800年の前半位のドイツの楽器。こういう楽器はとにかく壊れまくってるのが多いんだけどこれはなんだか丁寧に扱ってもらってたみたい。1700年代とか1800年代の楽器って音楽家に売りに出すときは修理した後だからわからないけど表板なんか相当割れてたりするんだよね。これはこの年代にしては相当われが少ない方。写真でわかるかわからないけど4,5箇所しかない。普通はこの倍は割れてるからね。200年も300年もたったら当然かもしれないけど。表板の厚みなんて2,3mmくらいなんだし。100年以上たてば木だってからっからに乾燥してるし。
帰ってきてみたらあるディーラーから預かって修理してる楽器にそっくりであまりの似方にびっくり。こういうドイツのクロッツ系の楽器はみんなこんな感じだとは言えど・・・ちなみにクロッツって言うのは昔クロッツっていう一族がいてバイオリンを何代にもわたって作っていたのね。いいものは1700年の後半に作られてるので琥珀色のニスがごくごく薄くかかってるの。音もそこそこ良くて3から400万位で売られてる。
行ったオークションはすっごーく小さいところで楽器も数十台しかないようなところだったんだけど。来てた人も数人の顔見知りを除いては趣味の人っぽかったし。帰りに楽器についてきたぼろぼろのけーすおじいさんにあげたらすごい喜んでくれた。捨てるしかなかったからよかった。日本にそんなぼろのケースで持ち帰られないもの。しっかり持参の4台要りケースでお持ち帰り!ちなみになんだか爆発物騒ぎで厳しくなった手荷物だけど楽器はOKでした。

中から木を埋める

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この間の穴あきバイオリンの続き。くりぬいたところに新しい木を埋めてるところ。これ一応、名前があって魂柱パッチって言うのね。このパッチをするためにはなんと表板を一番薄いところでは0.5mmとかまで削っちゃうの。昔勤めてたところでは削っててニスが透けて見えてきたら十分薄い証拠だって言われたくらい。初めの頃はもうすっごくびくびくしながらやってたの。だって反対側までほんとに一削りって感じで。なんでそんなに薄く削るかって言うと新しい木に厚みがないとまたすぐに割れてきちゃうから。何しろ上からは駒が何キロもの圧力かけてきて下からは細い魂柱で押してきてすごい力がかかってる場所なの。だから半分以上割れた木じゃだめなのね。
でパッチ。これは根気よく表板と新しい木が完全にマッチするまで新しい木を削る。どうやるかって言うと、まず表板の方にチョークの粉をつける。そして上に新しい木をおいて粉がくっついたらその部分は表板に当たってるってこと。だからそこを削る。そしてまた上においてまた粉がついてるところを削る。これを4時間から8時間くらい繰り返してるとだいたい全体がくっつくようになるの。そうしたら出来上がり。これはまともにナイフが研げてノミも研げれば技術も何もなくただ根気の一言。私結構これ好き。ほんとに何にも頭使わずに機械的にやってれば必ずそのうちに終わるから。それに難しそうに見えるからすごいことしてるみたいに思ってもらえるし!


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