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新海誠監督の『君の名は。』が大ヒット中だという報道に接して、思い出したこと。

中学生のころからか、息子の勉強机には絵葉書サイズの絵が飾ってあった。
空と雲と駅の絵。
あまりアニメの絵が好きでない私だが、その絵はとても美しいと思った。
何かの機会に息子に聞いたら、それが新海誠という監督の映画(アニメ)『雲のむこう、約束の場所』の一場面で、その監督の作品がとても好きだということを教えてくれた。

時がたち、今から数年前に、私はたまたまネットで同監督の『秒速5センチメートル』が無料配信されているのを見つけ、観てみた。

日常のなんていうことのない風景、私にとってみればどちらかと言えば灰色でぱっとしない風景−例えば、駅の切符自販機−が細部に至るまでリアルなのに息をのむほど美しく描かれていて、軽い衝撃を受け、息子にそのことを話したら、不思議なことを話してくれた。

昔、初めて新海監督の映画を見たとき、自分と同じ風景が見えている人がいたんだ!と驚いた、と。
不登校だった中学2年生のころ、夜、近所の小さな池のそばを歩いていたら、突然頭の中で爆発が起こった、と。
その瞬間から、世界が信じられないくらい美しく見えるようになったんだ、と。
それは、まるで新海監督の描くそれそのものだった。
なにか多幸感にも溢れていた。
それは、中学3年になり、学校に戻った後もしばらく続いていて、段々とその感覚は薄れていったが、大学に通っていたころも、まだその片鱗が残っていた。
強迫性障害とうつ病になってからは、全く失われてしまったけれど、と。

当時、息子にそんなことが起きていたなんて全く知らなかった私は、本当に驚いた。
息子に起こったのが何だったのか、それが何を意味するのか、私にはもちろん、息子にも分からない。

ただ、こんなことがあったというお話。

息子の作ったおせち

昨年末、息子がおせち料理を作ると言い出した。
どうせ口だけだろうと思っていたら、本当に作ってしまった。

イメージ 1

    いり鶏・なます・八幡巻き・卵焼き・黒豆・栗きんとん・田作り
    (全部息子の手作りです。)

まだ、料理し始めてから一か月くらいだと思うのだけれど。
息子が小学校6年生の時に離婚して働き始めたときから、私は料理することを放棄した。
そのことが息子には、とてもショックで、ずっと手作りの料理を渇望していたのだと思う。
今回も、幼い頃食べた(母と私の)手作りのおせち料理を、もう一度呼び起こしたかったのだろう。

あまりのうちの崩壊っぷりに、夫を家に呼ぶことも出来なくなっていたが(夫は潔癖症)、片づけ、大掃除もなんとか年末には終わり、夫を家に迎えてお正月を過ごすというミッションもこなすことが出来た。

我が家の一つの時代が終わり、新しいときが到来しつつある、そんな気がしている年初である。
クリスマス。
昔は、イルミネーション輝く街を歩いているだけで、心浮き立ったものだ。
今は、特にどうということもない。
正確にいえば、興味がなくなってしまった。

それでも、今日はちょっとクリスマスっぽい食事をした。
ハンバーグ。温サラダ。コーンスープ。ケーキ。
ケーキは市販のものだけれど、あとの食事は、なんと息子が作った。
息子は私より料理に向いている。
少しでもおいしくしたいという執念がある。
その息子が作ったハンバーグは、ふっくらとしてとてもおいしかった。
(息子はどんな料理でも必ず肉に少量の赤酒を振りかけ、しばらく置いてから調理するのだが、それが良いのかもしれない)

少しずつ少しずつ、まともな生活を取り戻しつつある。
外食やコンビニ飯にうんざりして、お金も本当になくって、まずは私がご飯を作り、息子が洗い物をする生活を始めた。
でも、なかなかうまく回らず、でも、その役割を逆にしたら、結構うまく回り始めた。

強迫性障害のせいで、お店の中に入れなかったり、私が買い物するにせよOKな店がほんのわずかだったり、あれこれ触れなかったり、包丁に恐怖を感じたりしていた息子だが、少しずつ回復して、なんとか買い物したり料理が出来るようになった。
(洗い物の方がハードルが高いようだ。)
家事をする気力がなくなっていて、でもしないとどんどん家の中のものは汚れ、再スタートがどんどん難しくなる悪循環にストレスを募らせていた私も、息子が動きだすにつれ、少しずつ動けるようになった。

ここから抜けだすにはどうしたら良いのかと途方に暮れていたが、息子が道筋をつけてくれるという想定もしていなかった形で解決しつつある。
本当に、未来というのはいつも想定外だ。

メリークリスマス。
皆様が幸せでありますように。

今日、息子は電車に乗って、友人の家に泊まりに行った。
明日、アユ釣りに行くという。
(あんまり、関東の川魚は食べない方が良いと思うが、その点はさておき。)

なんか、すごいなぁと思う。
母が亡くなって、20日。
ここまで来たか、と思う。

息子が電車に乗るのは、多分1年半ぶりくらい。
強迫神経症のせいで、乗ることが出来なくなっていたのだ。
人がたくさんいるところがダメになっていた息子。
買い物も出来ない。
出かけるとしたら、よっぽどの田舎か高速道路上に車で行くしかない。
(私と息子は、食事をしたり買い物をしたりするために、しばしば高速道路のPAに出かけていた。)
それでも、外に出ること自体が大きなストレスになり、行った後はぐったりしてしまっていた。

母が亡くなり、葬儀を駅のすぐそばの葬儀場で行った。
それがそもそもの最初。
息子は、駅前などずっと行くことが出来なかったのに、あっさりと行くことが出来た。
おばあちゃんの死があまりのショックで、そんなことはどうでもよくなったようだ。
まさに、ショック療法。

それから、今日まで、驚きの連続だ。
わが家は、息子の強迫神経症のせいで、ひどい事になっていた。
ごみ屋敷、一歩手前。
息子のいる部屋は(2階に行けなくなっていたので、元おばあちゃんの部屋)、衣類が部屋一面に散乱し、飲み残しのあるペットボトルが、何十本も乱立。
(なぜか、最後まで飲みきれないのだ。そして、捨てることが出来ない。私が片付けるのもNG。)
玄関(靴を脱ぐところ)にも、そこにあるべきじゃないようなもの(ペットボトルや缶やペンとか本とかバッグとか小銭とか)を、他に移すことも出来ず、捨てることも出来ず、放置。
人を玄関に入れることさえ出来なくなっていた。
さらに、その状況のせいで、私のうつも悪化、掃除も出来なくなっていた。
台所の流しには、何カ月間も洗ってないお皿が放置されていた(これは息子のせいではなく、私のうつのせい)。

グループホームに置いてあった仏壇などを自宅に戻さなくちゃいけない、ということが目の前に出来、家の全面的な片づけを2人で始めた。
なぜか、今までどうしても出来なかったことが簡単に出来てしまう息子。
ペットボトルを全部洗い、台所のかびだらけの皿まで息子が洗った。
1階にあった自分の荷物を2階に運び、2階で寝るようになった息子。
私も、そこら中に散乱していた書類を片付け、床を掃除した。

精神的な病について身を持って知っている私は、息子について「こんな風にやれば出来るなら、元々気の持ちようだったんじゃないの?」などとは思わない。
今までは、どうしても出来なかったんだ、自分の意志ではどうにもならなかったんだ、というのが分かるから。
むしろ、こうやって出来ようになったことが奇跡のように思う。
(まだ、完治したわけではないけれど)

おばあちゃんはすごいなぁと思う。
息子と母は、ずっと特別な関係だった。
とても、深い縁を持っている2人だと思っていた。
夫を亡くして悲嘆に暮れていた母に笑顔を取り戻したのは、生れたばかりの息子だ。
私が出来た唯一の親孝行は息子を生んだことじゃないか、と思うくらいだ。
私には批判的でいつも怒っていた母だったが、息子(孫)には、めちゃくちゃ甘かった。
常にOKを出し、常に味方だった。
私が娘のことで手いっぱいでも、仕事でいなくても、息子にはいつも母(おばあちゃん)がいた。

息子は、強迫神経症で外出が出来なくなっても、娘と母に会うためなら、無理をしてでも出かけることが出来た。

息子は、「自分の病気が良くならなくても、おばあちゃんが生きていてくれた方が良かった」と言う。
でも、私は、母が息子を救ってくれたのだと思う。
もちろん、母は息子がそんな状態だなんて全く認識出来ていなかったけれど、何というか、魂のレベルで全て分かっていて、救ってくれたのだと思う。
母はすごいなぁと思うのだ。
ありがとう、と何回でも何回でも心の中で呟いている。

息子の血液検査の結果

息子が病院に行き、血液検査の結果を聞いてきた。
甲状腺は異常なし。
(ほっ)
他にも特に問題になるところはない模様。
どうやら高血圧は、うつ病、強迫神経症のせいらしい。
非常に緊張した状態に常にある、と。
「ここまで君のうつ病、酷いのか…」と先生に言われたとか。
ううむ。

息子は、俺は覇道を行っているのだ、と言う。
織田信長には次から次へと強い敵がやってきた。
俺にはうつ病がやってきた。
織田信長、別に好きじゃないんだけど。
だって。


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