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坂の上の雲の三人の主人公の一人 正岡子規が亡くなりました 原作、文庫本全八巻では、三巻目に当たります。 小説世界においても子規のファンだった私は、 五巻を残しての訃報に、ア然としたものです 明治35年(1902)9月19日午前1時 ひっそりとこの世を去りました。享年36歳。 「子規逝くや、十七日の月明に」 臨終の夜、子規庵で当番にあたっていた高浜虚子が、この句を読んだのは まさにその時でした。 子規の死を持って 司馬遼太郎先生の小説世界は、文学の世界を離れて、 日露戦争一色となります それはもう、苦しいほど… さすがにドラマは そこまで極端ではないでしょう。 ドラマに不可欠なロマンスに関しては、 小説では殆ど登場しなかった、女優陣の活躍に、期待したいです。 特に今回は 子規の妹を演じられた、菅野美穂さんが素晴らしかったです。 香川さん演じる瀕死の子規も、もちろん迫真の演技でした!! が、今回は菅野美穂さん演じる律さんにスポットを当ててみたいです。 重病人となって明日の命も危ないながらも、 益々活動旺盛な兄。 その兄のわがままに振り回されながら、 看護婦 おさんどん 秘書 接客…と 朝から晩まで働く日常の、憮然とした目と、疲れきった表情が とてもリアルでした。 自分の時間もなく ストレスも溜まるでしょう 笑顔でニコニコなんて、ありえないんです。 見舞にきた真之に 「うちはいかん妹なんじゃ。 兄さんもういいよ、と心の中で思ってしまう。」 と涙を流すシーン 真之さんじゃなくても、肩を抱き寄せたくなるでしょう 子規の臨終、お葬式の演技もうるうるしましたが 特に秀逸だと思ったたのが、ドラマ最終の場面です。 過労で入院した秋山真之を見舞いに行ったとき、 既に女性の先客がいて華やかな病室をそっと覗き、何も伝えず桃を置いて去った、後日。 真之がその事を気にして、職業学校へ律さんを訪ねたシーンです。 はかま姿で校門から出てきた律さんは、真之へ 「一回りも年取った、女学生じゃ・・・ でも、うち、毎日が、本当に新鮮なんじゃ。」 と語るその笑顔がすがすがしく、瞳がきらきら輝いていて、心が洗われるようでした。 兄の看護に明け暮れた日々、兄の為だけに生きた日々から開放され 自分の為に生きることを決意した、新しい「明治の女」の姿がそこにありました。 史実の正岡律は、子規の死後、32歳で共立女子職業学校(現・共立女子大学)に入学し 卒業後は、母校の裁縫の教師となり、自立した女性として生きたのです 菅野さんの、めりはりの効いた演技が、冴えていたと思います (「ギルティ」と同じ女優さんとは思えません!) 正岡子規が、命を削ってまでも創作活動に打ち込んだ、俳壇、歌壇の革新運動は 多くの文学者に刺激を与え、日本文学の活況を生むことになります 子規の死後、俳誌「ホトトギス」は高浜虚子によって受け継がれ 明治33年(1900)に、ロマン主義派の与謝野鉄幹が「明星」を創刊。 北原白秋や石川啄木を輩出します。 そして与謝野晶子が「君死にたまふことなかれ」を「明星」に発表したのが 明治37年(1904)。 日露戦争真っ只中、 旅順へ出兵する弟の命を願った詩は、物議をかもしました 女性が自分の考え(反戦)を堂々と発表したことが、「事件」となったのです。 また、子規の親友であった夏目漱石が「吾輩は猫である」を「ホトトギス」に発表したのが 明治38年。 また現在でも書店に並んでいる「中央公論」は、明治32年創刊。 歴史的な雑誌の一つであります。 このように、秋山兄弟の活躍した時代は、日本文学の興隆期と、重なっているのです。 さて、 正岡律さんが、自立した明治の女へと脱皮した一方、 対照的な人生を歩んだのが、乃木静子さん。 乃木希典の奥様です。 最後の武士とも呼ばれる乃木将軍の妻として生き、して夫とともに自決した女性です 演じる真野響子さん、ぴったりの配役です! 去年の感想でも書いていますが、 正直、柄本明さんの乃木希典は、今でも納得できていません。 柄本さん自身は凄い俳優さんですが、イメージが合わないのです。 しかし、真野さんは、静に座っている、そのたたずまいから、もう、静子夫人です。 台湾総督だった児玉源太郎が、日露戦争の準備のため、桂内閣の内務大臣として 日本に帰国します。 西南戦争を共に戦った乃木を、再び陸軍の神輿に担ぎ出すため、那須野へ訪ねたときから、 旅順攻略と203高地の悲劇が始まったと言っていいでしょう。 「このまま、ここ(那須野)で暮らせたらどんなにいいか・・」 静子夫人は、予感がしたのかもしれません。 なぜなら、旅順攻略と203高地の悲劇は、そのまま夫人の悲劇でもあったからです。 尚、乃木将軍と静子夫人の話は、以前記事にしておりますので 参照いただければ、幸いです 先日(12/18)、「防衛大綱」が発表されました。 「動的防衛力」という概念を明記し、 中国、北朝鮮を「仮想侵略国」と想定して、 日常的な情報収集や警戒監視の活動を強化し、突発的な事態に迅速に対応する事のようです。 なにやら、ロシアを仮想敵国として臥薪嘗胆、軍備の拡張を実現させた、 日露開戦前夜の空気と似てきたような、不安を感じます 日米同盟を最優先させるため、沖縄基地問題は棚上げとなり 沖縄県民の長年の苦悩は無視される見通しです 日本の国力が停滞したままで、中国や韓国に追い抜かれて国際競争力も失いつつあります それにリンクするように、景気の悪化から失業率は改善されず、就職氷河期が延々と続いています 自殺者は年間3万人以上、 明るい未来を描けない世論は、右翼発言で溜飲を下げいる有様です こんな時勢だからこそ 世論に流されることなく、与謝野晶子のように自分の信念を持ち続けたいです。 そして「無能な政策」で、自分の子供が戦場へ送られることなどないよう、 しっかりと見極めていかなければ、と思っています 「無職の指揮官は殺人犯なり」 秋山真之の言葉が、胸に突き刺さりました・・・・ 次回は、いよいよ「日露開戦」 独身主義者だった秋山真之さんも、とうとう身を固めます。 |
ドラマ「坂の上の雲」
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お陰さまで、テレビを観るのも楽しくなりました。ありがとうございます。
2010/12/30(木) 午前 9:32 [ 珍太 ]
そうおっしゃっていただければ嬉しいです!
分かりやすい記事をモットーに、
来年もがんばります(とはいえ、ぼちぼち更新のペースは変わりませんので、何卒。。ヨロシクお願いいたします。
2010/12/31(金) 午前 11:09