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「正義のゆくえ I C E 特別捜査官」の中で、
ハリソン・フォードが扮するのが、
ロサンゼルスの移民局I.C.Eに所属するベテラン捜査官のマックス。
不法滞在者を取り締まることが任務ではあるものの、
人情熱く、どちらかというと、不法滞在者たちに
「同情的」感情を抱いています。
つい最近も、逮捕されたメキシコ系の女性の息子を、
メキシコの実家まで、送り届けたりと、
逮捕後のアフター・ケアーまでしっかり面倒をみてしまうのです。
そんなある日、同僚の捜査官の妹が殺されます。
遺品の中から、偽装のグリーンカードを発見し、
独自に捜査を始めるマックスが掴んだ、衝撃的事件の真相とは。
ストーリーの内容からは、
人情系捜査官、ハリソン・フォードが、同僚の妹の犯人捜しに奔走するんだと、
つい思いがちですが、この作品は、あくまでも「不法滞在者」問題がテーマになっています。
最近公開された「扉をたたく人」という作品でも、不法滞在者のことが描かれていました。
現在のアメリカには、1100万人以上の不法滞在者がいるといわれていますが、
あの9・11同時多発テロ以降、アメリカは、この不法滞在者に対し、
大変厳しい規制を行っているといいます。
ハリソン・フォードが今回演じる、移民局I.C.E捜査官というのも、
そのテロ以降にアメリカ連邦政府から新しく編成された「不法滞在者」を取り締まる組織のこと。
確かに、移民の国、アメリカといわれるだけあって、これまでにも様々な人種が、
危険を犯し、あらゆる国境を越え、世界の中心地にやってきていたようですが、
やはり、テロ事件以後、「不法滞在者=テロ組織の一員」という考え方が強くなり、
このような厳しい体制をとるようになったようです。
しかし、そんな危険な状況にある、現在のアメリカへ、彼らはやってくるのでしょうか。
映画は、このマックスの人情の仕事ぶりと平行し、様々な国から、
アメリカへと、やって来た、不法滞在者の人たちの実情も映し出してゆきます。
オーストラリアから、女優になるためにやって来た若い女性と、
南アフリカから歌手になるためやって来た若い男性、彼らは、
グリーン・カード取得のために、奔走しています。
イスラム教徒の少女は、学校の授業で、「テロ事件」に関する論文を発表したことで、
「危険人物」とみなされ、彼女の家族はバラバラにさせられてしまいます。
市民権取得を目前に控えた、韓国人家族の一人、高校生の少年は、
同じ韓国系の不良グループから、危ない誘いを受け、断わることができないでいます。
夢と憧れを抱き、訪れたアメリカ。彼らは、このアメリカで、
どんな試練を受けることになるのでしょう。
監督のウェイン・クラマーは、この映画について、
今のアメリカが抱える移民問題をロサンゼルスに住む人々を通し、
描きたかったと語っています。特に、アメリカへの帰化、グリーン・カード、
9・11テロ事件後の移民とテロの関係や取調べの際に受ける扱いなど、
あらゆる角度から、これらの問題を描くことで、よその国の人たちが、
アメリカに移住し、市民権を取得するというのは、いかに大変なことなのか、
というを世界中の人たちに知って欲しかったとも、コメントしていました。
国を守るために、移民たちを取り締まらなければならない、しかし、
移民たちにも、それぞれ、国境をこえなければならなかった、それなりの事情があるはず。
映画は、アメリカ側と、不法滞在者側、両者の公平な立場から描き、
「今のアメリカ」の実情と問題点を真正面から捉えていました。
インデペンデント作品、初出演のハリソン・フォードもまた、
主役という立場でありながらも、決してでしゃばらず、
群像劇タイプのこの作品の一部にすっかり溶け込み、
少々地味ではありますが、「人情」と「正義」の間で揺れ動く、
味のある演技で、楽しませてくれました。
共演には、アシュレイ・ジャド、レイ・リオッタ、など、
演技派が脇を固めています。
この映画を観るだけで、現在のアメリカ事情がわかるので、是非観て下さい。
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