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翌日曜日の朝9時、出勤するや即、Tは昨日子猫放置した場所へ急いだ。
子猫達の姿が消えている事を祈りながら。
事務所から店内へ。従業員しかいない店内は静まり返っている。
店内の売り場から二階の倉庫へ。
階段に脚をかけた時、気配を感じ取ったのか・・・・声が聞こえた。
「にーにーにーにー」
・・・・・子猫の鳴き声だった。
一気に階段を駆け上がり、子猫の様子を伺う。
子猫が夜中勝手に動き回らないようにと、軽く被せていた蓋が移動している。
そして、格子状に箱を覆っていた針金が一部拉げられている。子猫なら通り抜け可能なサイズに。
「?!」
子猫では蓋まで届かない、よしんば届いたとしても動かすには力不足。
増してや、針金の格子を拉げさせるなんて力技など不可能。
明らかに外的要因による結果。
しかし、箱の中では子猫が可愛らしい鳴き声を上げている。
子猫は、昨日と変わらず箱の中にいる。
1匹、2匹、3匹、・・・。
?、3匹?!
もう一度数える。
1匹、2匹、3匹、・・・。
やはり3匹しかいない。
箱の周辺を見回してみる。
手のひらサイズの子猫、更によちよち歩きでは移動距離など知れている。
しかし、子猫の姿は見当たらない。
その代わり、箱のすぐ傍、針金が拉げられている辺りで血痕らしき物を見つけた。
そして・・・箱の中の子猫達は、発見されてから20時間エネルギー摂取をしていない筈なのに、
ごそごそごそごそ、にーにーにーにー、がさがさがさがさ、にーにーにーにー。
「・・・・・元気だね〜・・・。」
導き出される1つの答え、それをより確実にする為に出勤している他の従業員、G、Nに確かめた。
「morni〜ng!今朝、子猫箱の蓋、動かした?」
二人とも一様に
「うんにゃ、動かしとらん。で、子猫、どうなとる?」
箱の蓋を動かすどころか、様子さへ見に行っていない反応。
君達、子猫ちゃんが心配じゃないのかね!!と軽く非難を覚える。
「そうかぁ、動かしてないとなると、やっぱり・・・」
「蓋が移動させられてて、針金格子が破られてて、その傍に血痕と思しきモノがあって、
ほんで、子猫が1匹おらへんねん。」
独り言の後、事実を告げた。
状況証拠から考えて、導き出された答えは
「ってことは、母猫が迎えに来たってことか?」
T、G、N3人の意見は一致した。
店内、レジの周辺で3人、顔を突き合わせて話していたその時、
「にーにーにー」
子猫達の鳴き声が2階の倉庫から聞こえてきた。
開店直後の静寂の中とは言えど、有線放送はかかっている。
明らかに、Tが様子を見に行った先ほどより鳴き声が大きくなっている。
「にーにーにーにー」
まるで、自分達の存在を位置を知らしめるかのように、母猫を呼ぶように。
慌てて2階倉庫に駆け上がるT。
すると、子猫の鳴き声が小さくなった。
おかしい・・・。
階下の売り場に下りてみる。しばらくすると、
「にーにーにーにー」
子猫達の鳴き声は大きくなる。
どうやら、母猫が近くに潜んで居るようだ。
2階倉庫の何処かに。おそらく、子猫達からそう離れていない場所に。
在庫のダンボール箱の影、隙間、若しくは蓋の開いている在庫の箱の中に。
確信を持ったTはGとNに母猫が潜んでいる可能性が高い事を告げた。
そして、3人が選んだ行動は、『母猫を探し出せ!!』だった。
住み着かれたら厄介だ、とにかく猫の親子を確保するべし。
処置はそれから考えよう。
さぁ、親猫探しだ!恐らく、消えた子猫は母猫と居るはずだ。
しかし、大いなる問題が1つ。
もう店は開店している。人手は3人の社員、T、G、Nのみ。
そして、店内には本日のお客様1号、2号が。
本来の業務を疎かにする訳にはいかない。
母猫捜索は、10時、パートさん達が出勤してから開始する事に決まった。
子猫の鳴き声を聞きながら、気を取られながら、通常業務をこなす。
そして、10時。
パートさん達が出勤。
母猫捜索が始まった。
猫事件4に続く。
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