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★渡辺知明の「クロの話」
うちにもちょっと身勝手な猫が居る。
毎日毎日暖かい場所を見つけてはのん気にうたた寝。
たまに大きくあくびをして背中を伸ばし、すたすたとご飯を食べに、、
ご飯が少なくなると、こちらにきてぎゃ〜ぎゃ〜喚く。
ちょっと意地悪して無視していると前足で足元をがりがり、
そしてがぶりと噛み付く。
ご飯をもっと入れてくれと云っているのだろう。
ただあげるだけでは芸が無いのでご飯を足しても「待て!」で食べさせず、
「よし!」で食べさす。この繰り返しを毎日実行して見ると
なんとか覚えたようだ。してやったりかな。
次はなにを覚えさそう。。。
タイトル:「クロの話」
朗読者 :渡辺知明
第1章 クロという猫(約6分)
http://kotoba-hyogen.up.seesaa.net/mp3/tw-kuro01.mp3
子どものころ、私の家ではいろいろな猫を飼っていたが、いちばん最初の猫がクロだった。
クロは細く引き締まった体つきをしたメスの日本猫で、とくにみごとなのは長く伸びた黒いシッポだった。
その名前どおりに全身つややかで、まっ黒な毛並みの猫だったが、二ヵ所だけ白い部分があった。
第2章 父と母とクロ(約7分43秒)
http://kotoba-hyogen.up.seesaa.net/mp3/tw-kuro02.mp3
母の話によると、クロは私の生まれる一年前から家に飼われていたそうである。
新婚当時、父と母が村の雑貨屋の二階に下宿していたとき、母は近所の農家からちょうど掌に乗るくらいの
子猫をもらってきた。その農家では持参金がわりにカツオ節をつけてくれたという。
第3章 町で暮らすクロ(約7分58秒)
http://kotoba-hyogen.up.seesaa.net/mp3/tw-kuro03.mp3
私の育った町は古くから絹織物業の始まった土地として知られている北関東の市である。
その中心街から北に少し外れた静かな商店街に私の育った家はある。
市を南北に貫く県道に面した木造二階建ての借家だった。
もとは染めもの屋として使われていた家なので、柱の一部に濃紺の染料の染みのついた部分もあった。
第4章 クロの犯罪(約6分44秒)
http://kotoba-hyogen.up.seesaa.net/mp3/tw-kuro04.mp3
私はクロがときどき魚を盗んでくるのを知っていたが、実際に現場を見ることはなかった。
事件はたいてい母によって秘密のうちに処理されていたからである。
もちろん、父が事件を発見する場合もたまにはあったが、それよりも母がないしょで始末する場合の方が
はるかに多かった。
もし、父がクロの事件のすべてを知ったならば、とっくにクロは家を追われていたにちがいない。
第5章 クロの死とその後(約2分36秒)
http://kotoba-hyogen.up.seesaa.net/mp3/tw-kuro05.mp3
それから一年もたたないうちに、クロはじつにあっけなく死んでしまった。
二、三日クロの姿を見かけないと思っていると、近所の靴屋の頭のはげたおじさんが店に来て教えてくれた。
家の前の通りを渡った路地にクロらしい猫が死んでいるというのだ。たしか夕方のことで、私も母といっしょに
確かめに行った。
底本のテキストデータ
http://www.ne.jp/asahi/kotoba/tomo/kuronohanasi.html
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