あるスーフィー巡礼者の日記 A diary of a sufi

思い込みや見かけにだまされず、本質を見極めましょう。

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生理現象を気象になぞらえて理解する

 

天人相応原理にもとづいた医学

 

四象医学のもう一つの特色は、人体(小宇宙)で起きる生理現象を自然界(大宇宙)における気象の営みになぞらえて考えるというところにあります。これは、大宇宙と小宇宙それぞれで起きる現象は相似する(天人相応)、もしくは本質的に同一である(天人合一)という、東洋思想の基本的な世界観にもとづいた考え方です。

 

前回の投稿(「夏の食養生」最終章・前編)の冒頭で予告したように、今回は、ややこしい理屈が多くなります。しかし、次回で採り上げる予定である秋の養生法の原理を理解するための基礎となる考え方を提供することを目的としています。イラストを活用してなるべく理解しやすくなるように努めますので、しばしおつきあいいただければ幸いです。

 

南高北低(上低下高)の気圧配置により北向き(上向き)の風(気の流れ)が起きる

 

まず、暑さで冷たい飲み物を飲みたくなるのは、ちょうど喉(および頭部全体)に熱気を帯びた気団(自然界の大気では、「熱帯低気圧」や「温帯低気圧」に相当します)が停滞しているためと考えられます。

 

そこで、冷えたビールなどの冷たい飲み物を飲むと、確かにそれが喉を通り抜ける時は、一瞬の間は喉(や頭部)が冷やされ、「冷たくて気持ちいい」と私たちは感じます。「ビールは喉越し」と言われるように、冷えたビールを美味しく感じるのは、消化器官ではなく喉です。暑い季節に冷たいビールを飲み過ぎてしまうのは、最終的にそれを引き受ける消化器官の気持ちを省みずに、喉の感覚にふりまわされることで引き起こされるのです。

 

しかし、喉が冷たくて気持ちよく感じるのは一瞬の現象で、喉や頭部はすぐにまた熱くなります(喉元過ぎれば涼しさ忘れる)。高温の大気よりなる低気圧(温暖高気圧)、すなわち「暑邪もしくは熱邪」が引き続き停滞している状態です。

 

一方、腹部は、冷たい飲み物によって冷やされ、低温の大気からなる高気圧(シベリア高気圧もしくはオホーツク海高気圧などの寒冷高気圧に相当します)、すなわち「寒邪」が停滞している状態になります。

 

大気は高気圧から低気圧に向かって移動します。これは、空気は気圧の高い空間から低い空間へ移動するからと考えることもできますし、寒冷高気圧では下降気流が起き地表近くでは空気が外側に押し出され、温暖低気圧では上昇気流が生じるため地表近くでは中心に向かう風が生じるためと考えることもできます。


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いずれにせよ、低温の高気圧から高温の低気圧に向かう風が生じるように、人体では低温の腹部から高温の頭部に向かう気の流れが強くなるのです。つまり、「南高北低(下高上低)の気圧配置により北向き(上向き)の風(大気の流れ)が起きる」と言うことができます。

 

上熱下寒は気逆を引き起こす

 

この状態は、漢方では「上熱下寒(じょうねつげかん)」と呼び、上半身に向かって気が昇るため、「のぼせ」あるいは「気逆(きぎゃく)」(本来の気の流れと逆方向に気が流れる状態)を引き起こしてしまう病的な状態であると言えます。


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日本では、昔から「頭寒足熱」(漢方では、「上寒下熱(じょうかんげねつ)」と呼びます)が健康に良いと言われています。上寒下熱であれば頭部から腹部の方向へ、すなわち上半身から下半身に向かって気が流れ上虚下実(上半身よりも下半身の方にエネルギーが集まる)の状態がもたらされます。上虚下実は、心身が安定するので本来の望ましい形です。


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冷たい水分の多飲は気逆を悪化させ悪循環を形成する

 

冷たい飲み物を大量に摂ることによってもたらされる「頭部を熱気が満たし腹部を寒気が満たし、腹部から頭部(すなわち下半身から上半身)に向かって気が流れている」状態は、「気逆」と呼ばれる、気が逆流してのぼせ上がっている状態なのです。そうなると、心も落ち着かなくなり、気を落ち着けようとさらに冷たい飲み物が欲しくなります。気逆による精神の不安定が水分不足による合目的的な口渇(身体の水分摂取への欲求)を修飾してしまうわけです。

 

しかし、冷たい飲み物を摂れば摂るほど、上熱下寒の状態が悪化して行きますので、さらに気逆が増悪し、もっと冷たいものを飲みたくなるという悪循環が生じます。

 

もちろん、水分を摂取すると循環血液量の絶対量は増えますので、基本的には口渇感は減少します。

 

発汗などで体内の水分が失われ、循環血液量が減少すると、大脳の視床下部の口渇中枢が浸透圧の上昇(血が濃くなったこと)を感知することで口渇感を引き起こします。そこで水分を摂取すると循環血液量が回復しますので、口渇中枢の活動は抑えられ、口渇は抑えられます。しかし、水分の摂取が循環血液量の増加に反映されるまでにはある程度の時間が必要です。

 

気逆によってもたらされる精神の不安定は、そのタイムラグの間に、言わばヤケ飲み(精神的ストレス緩和のために冷たい水分を多量に摂る行為)を引き起こすので、結果的に身体の要求以上の水分を摂ってしまうことも少なくないのです。

 

水分の過剰摂取を防ぐには、適切な水分摂取を誘導することにより身体の水分不足を解消するために引き起こされる生物として合目的的な口渇と、気逆による精神的不安定から引き起こされる渇望感を混同しないことが大切です。

 

腹部を温めることで気逆を収める

 

上熱下寒による気逆(のぼせ)の状態に陥ってしまった時は、冷たいビールや清涼飲料水などよりもむしろ温かいもの(お茶やスープなど)を食べたり飲んだりして腹部を温めた方が、頭部から腹部に向かって(下方)に向かう気の流れが生まれ、気が鎮まり(気逆が解消され)心も落ち着き、喉の渇きも収まってくるようになります。

 

もしどうしても冷たいものが欲しいときは、口の中でよくかむことで温め、体温に近い温度になったものを飲み込むようにすれば、腹部の冷えを防止することができます。こうすれば、冷たいものを口中に長く含むことで頭部の熱は冷ますことができ一石二鳥です。

 

非暴力不服従の精神を掲げたインド独立運動の指導者ガーンディーは、養生の秘訣として「水でも百回噛んで飲め」と言う言葉を残しました。冷たい飲み物を摂りすぎないことは、40℃前後で最も効率的に作用する消化酵素の働きを保つために消化器を冷やさないと言う意味でも大切ですが、上熱下寒によりもたらされる気逆を防ぐ上でも有益な助言であると言えるでしょう。


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 (次回「秋の養生法」に続く)
 
 

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気象の原理にもとづく生理現象の解説は理解していただけたでしょうか?

理屈を考えるのが苦手な妻も「理解できた」と言ってくれたので、おそらく多くの人も理解できる内容になったのではないかとほっとしています。

筆者も、若い頃、人体生理を気象になぞらえて解明するという四象医学の考え方に初めて接したときは、「なるほど」と深く合点したことを覚えています。

その考え方を紹介してくれた方は、(失礼ながら名前は忘れてしまいましたが)アイヌ自然医学も研究されている方でした。

それは、日本の気功の先駆者の一人である津村喬さんが主催された、「アイヌ自然医学の旅」の中の講演でのことでした。

2013/9/25(水) 午後 11:16 [ アブドゥッラー・ザ・ブッチ ]

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今回の投稿は、その講演の内容の記憶を、気象学の基礎知識や東洋医学の原理にしたがってその合理性を検証しながら再現したものにもとづいています。

2013/9/25(水) 午後 11:20 [ アブドゥッラー・ザ・ブッチ ]


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