あるスーフィー巡礼者の日記 A diary of a sufi

思い込みや見かけにだまされず、本質を見極めましょう。

音楽・芸術・文学

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  【著作とはすでにあるものを「あらわす」ことである】
 
仏師たちは、仏像を製作するとは言わない。「木の中におわす御仏をお迎えする」と表現する。
 
「著作」を意味する「著す」という行為も、創造行為とは考えられてこなかった。それは、もともと存在するものを「現わし」「顕し」「表わし」「露にする」行為なのである。
 
アッラーこそが「あっらー」わす方である。

これは単なる駄洒落ではない。アラビア語のAllahとは、顕現した宇宙という幻想を消滅させ非顕現の真実在を明らかにする音であるとともに、非顕現なるものを顕現させる(プラトン風に言えば「イデアを具象化する」)音なのである。(拙ブログ「ハズラット・ニザームッディン・アウリヤー聖者廟巡礼記」の「アッラー(Allah) についての解説を参照されたい)

http://blogs.yahoo.co.jp/abdullah_khan_nizami/7670039.html

アラビア語の言霊(ことだま)と、日本語の言霊は同一の言霊である。「アラビア」とは「あらわれる」美に感嘆する音である。
 
 
【本歌取りにみる芸術行為の本質】
 
日本の和歌の世界には「本歌取り」の伝統がある。
 
>本歌取(ほんかとり)とは、歌学に おける和歌の作成技法の1つで、有名な古歌(本歌)の1句もしくは2句を自作に取り入れて作歌を行う方法。主に本歌を背景として用いることで奥行きを与えて表現効果の重層化を図る際に用いた。
例えば、
「三輪山の しかも隠すか 春霞 人に知られぬ 花や咲くらむ」
「三輪山の しかも隠すか 雲だにも 心あらなも かくさふべしや」
 
>この、2作品を比較すれば明らかなように、貫之は額田王の第1句・第2句をそのまま採用して第3句以後を自作としている。
 
(以上、Wikipedia「本歌取り」からの引用)
 
【連歌は宇宙の真理を示す】
 
和歌の伝統には「連歌」というものもある。「連歌」とは、前の人の下の句を受けて上の句とし、それに下の句を付けて詠む。次の人は、その下の句を上の句とし、新しい下の句を詠む。そのようにして次から次へと言葉をつなげていく。長いものでは、100句に及ぶものもあったという。
 
「詠む」は「読む」であり、すでに存在するものを解読することである。
 

連歌は単なる心の慰みや社交のためだけではなく、諸神へのや祈願、祝言、追悼、あるいは夢想の句を得た場合などにも行われた。その種類もさまざまで、普通の連歌のほかに、いろは47文字や神仏の名号などをそれぞれの句の句頭に詠み入れた冠字(かむりじ)連歌…(中略)…なども行われていたYahoo!百科事典「連歌」より)

 
連歌は日本文化の本質、そして芸術行為の本質をあらわした優れた芸術である。この伝統文化は、先行する伝統を受けてそれに新しい価値を加えて繋げていくという伝統文化そして「道」の本質を示す芸術なのである。
 
下の句が上の句になるとは、結果が原因となり新たなる結果を生み、その結果がまた原因となり新たなる結果を生む、原因と結果の連鎖だけが存在しそれを選択する個人は実在しないという宇宙の真理を示したものである。
 
 
【本歌取りされない芸術には普遍的な価値がない】
 
以前の投稿でも述べたことだが、本歌取りは、もとの和歌の深い理解にもとづき、その味わいを生かした風雅を加えなければならない。教養に裏打ちされた芸術的素養が必要とされ、本歌取りの中にはもとの歌よりも高い評価を得ているものさえある。
 
東西の様々な古典文学を下敷きにした作品を数多く残した手塚治虫は本歌取りの名手であった。一時ディズニー映画の「ライオン・キング」が手塚の「ジャングル大帝」の盗作ではないかという疑惑が取りざたされた。だが、それが手塚の作品を下敷きとしたものであったとしても、手塚自身が得意とした「本歌取り」であると言うべきであろう。
 
もし上海万博のテーマ・ソングが偶然によるものでなく(私は偶然だと思う。岡本真夜の歌には、わざわざ盗作するほどのオリジナリティーはないからである)、岡本真夜の歌を下敷きにしたものであったとしても、全く新しい歌詞を付与したのだから「本歌取り」と言っても十分通用する。
 
いずれにせよ上海万博のテーマ・ソングは、それ自身の芸術性がある作品であると言えよう。
 
本歌取りされることは名誉なことである。だが、それを「盗用」「流用」としてしまったときに、もとの作品は「本歌取り」される価値もない普遍性のない芸術ということになるのである。
 
 
【「おくりびと」は納棺夫日記の本歌取り】
 
第81回アカデミー賞外国語映画賞および第32回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した「おくりびと」は、 富山在住の作家青木新門氏の「納棺夫日記」の本歌取りと言うべき映画である。
 
「納棺夫日記」をインドのガンガ(ガンジス川)の畔で読み感動した本木雅弘は、 青木氏に、同作品を映画化することの許可を求め一たんは映画化の許可を得る。
しかし、出来上がった脚本を氏に見せた時、舞台が 富山から山形になっていること、物語の結末の相違、日本人の宗教観が反映されていないなどを理由に映画化を断られる。
 
「やるなら、全く別の作品としてやってほしい」という青木氏の意向を受け、「納棺夫日記」とは全く別の作品として映画化された。映画公開に先立って、小学館さそうあきらにより漫画化されている。
 
 
【青木氏は誇りと自作品への愛を選び、真夜は経済的利益を選んだ】
 
青木氏は、原作使用料という経済的な利益より、芸術家としての心意気と自分の作品への愛を選んだ。
 
岡本真夜には、「『本歌取り」してもらえて光栄です。上海万博のテーマ・ソングは、私の歌とは別の作品ですから、使用料などいただく必要はありません」ぐらいのことは言って欲しかった。その方が、「盗作」と認めるより、遥かに名誉なことなのに…。「本歌取り」という日本が世界に誇る伝統文化についても世界の人に理解してもらえただろうに…。もっとも岡本真夜は「本歌取り」について知らなかったのかもしれないが。
 
岡本真夜は、自分の作品に対する誇りと愛より、経済的な利益を優先してしまったのだ。
 
 
【本歌取りは、もとの作品への愛である】
 
私も、最初の大学生時代に高村光太郎の「レモン哀歌」を本歌取りした「レモン讃歌」という詩をつくっている。それにどれだけの芸術的価値があるかは分からないが、私が光太郎の「レモン哀歌」を愛し高く評価していることは確かである。本歌取りとは、もとの作品を評価し愛する行為なのである。
【贋作の名人が語る贋作の秘訣】
 
モディリアーニ、ゴッホなど15人の巨匠たちの贋作を行ってきたジョン・マイヤット師は、贋作の秘訣を次のように語る。
 
「その画家の人生観や交友関係を調べ、その人の気持ちに成り切るのです。」
 
 
【「真似ること」は、宗教や芸術など「道」の奥義】
 
ヒンドゥー教のバクティ・ヨーガの極意は、「真似をして、成り切る」ことである。信仰する神や聖者の真似をして成り切ることで、聖者の精神そして最後は神そのものと一つになることができると考えられている。
 
インド古典舞踊でも、同様の行為が行われる。「シヴァ神の舞踊」では、踊り手は自分がシヴァ神そのものであるとイメージする。その人の気持ちがシヴァ神そのものとなった時、実際にシヴァ神が降臨し、シヴァ神自身がその踊りを踊るとされている。
 
スーフィー(イスラーム密教)の道でも同様である。スーフィーたちは、預言者ムハンマドの足跡を辿り預言者ムハンマドが行った行為を真似する。「真似する」行為の中で預言者ムハンマドの心情を想像しそれと同一化することで、万人に内在する「内なる預言者性」が露になるのである。
 
イスラームの道では、コーランの詠唱が不可欠な行である。ムスリム(イスラームの徒)の最も大切な行は礼拝(サラート)である。その中では、定められた動作の中で、コーランの詠唱が繰り返される。「コーラン」とは、預言者ムハンマドにもたらされた神の啓示である。それは、唯一神が預言者ムハンマドを代表としたすべての人類に対して語りかけた言葉である。その言葉を自ら声に出して唱えることで、自分に語りかける神の気持ちを体得し、神と一つになることができるのである。
 
キリスト教(神秘主義)でも同様である。イエズス会の創設者の一人で初代会長だったイグナチオ・デ・ロヨラは、「キリストに倣(なら)いて」という本を著した。キリスト教神秘主義では、「霊操」という瞑想が行われる。それは、イエスの受難を観想し、イエスの心情を想像し、イエス・キリストに成り切る修行法である。
 
日本の浄土教における念仏も同様の修行法である。念仏には観想念仏称名念仏がある。前者は、浄土経典に描かれた浄土や阿弥陀仏のイメージをありありと心に描く行法である。後者は、阿弥陀仏の名前を称えることである。一般には称名念仏が「念仏」であると考えられている。だが、正確には「念仏を唱える」というのは間違いなのである。
 
「となふれば われもほとけも なかりけり なむあみだぶつ なむあみだぶつ」(一遍上人)
 
念仏とは「今の心」が仏そのものであることに気づくための行法である。
 
 
【想像は現実を創造する】
 
「創造」の本質とは「想像」である。「想像」の中で、始めから存在するものが形を露にする。SF(空想科学小説)作家が様々な予言を行い、そのうちの多くが現実のものとなるのは、彼らが想像行為の中で真理を直観するからである。それは同時に、SF作家たちが現実を創造したことを意味する。
 
原子爆弾は、ウェルズのSFをもとに発想され現実のものとなった。(書庫「宗教と文化を超えた真理」の「もはやこれは預言者と呼ぶしかないH.G.ウェルズの生涯(1)(2)」を参照いただきたい
http://blogs.yahoo.co.jp/toruikebuchi1960/10664957.html
http://blogs.yahoo.co.jp/toruikebuchi1960/10665069.html

そして、今やタイム・マシーンや透明人間も現実のものとなろうとしている(その詳細については、近日中に別稿にて紹介したい)。
 
 
【模倣からオリジナリティーが生まれる】
 
近日中に65歳になるマイヤットさんは「これからは巨匠の真似をするのは止めて、自分のオリジナルな作品を書こうと思います」と語る。
 
もしマイヤットさんが、巨匠の真似をしていなかったら、オリジナルな作品を作る技術も動機も獲得できなかっただろう。
 
私は、小学生の頃、作文の授業が嫌いだった。それは意味のない授業だと考えていた。私は、教科書に出て来る模範文をわざとそっくりに真似することで、先生に怒られることを期待した。そのことで、逆説的に作文という授業の虚しさを示したかったのである。
 
だが私の意図に反して、私の作文は優秀な作文として褒められてしまうのが常であった。
 
先人の文章を筆写することが、プロの作家たちの文章上達法であることを知ったのは、大人になってからである。
 
写経とは、仏教経典を筆写することである。写経は、経文の真髄を会得するための大切な行法であると考えられている。
 
絵画の世界でも、一流作品を模写することは、芸道に熟達する上で不可欠なプロセスである。
 
日本人は何でもすぐ真似をする民族であると批判されることがある。だが、「倣う」ことは「習う」こと、「真似ぶ」ことは「学ぶ」ことである。「学習」とは、真理を会得するための普遍的な道なのである。
 
WONDER×WONDERの最後で、ゴッホ風に描いたぐっさんの肖像画に、マイヤット氏は、次のような署名を入れた。
 
Toぐっさん
正直な贋作
ジョン・マイヤット
 
マイヤット氏は、創造行為の本質を会得していた。
 

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 「ライ麦畑でつかまえて」のサリンジャーが亡くなった。彼が東洋思想の影響を受けていたことはあまり知られていない(その根拠は、「ライ麦畑でつかまえて」を熟読すればわかります)。

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 龍の話の続きである。

 龍を題材にした絵画といえば、やはり横山大観であろう。彼が描く豪放磊落な龍は、大観自身の自画像であると言えるかもしれない。
 横山大観は、岡倉天心らとともに、ラビンドラナート・タゴールらアジアの知性との対話を進め東洋文明の復興に一役を買った芸術家である。

 タゴールはアジア人最初のノーベル文学賞の受賞者として有名だが、彼の果たした業績はそんなちっぽけなものではない。

 タゴールは、若き日のハイゼンベルグ(「不確定性原理」で有名な量子力学のパイオニアの一人)と対話し、その思想形成と量子力学の発想にも大きな影響を及ぼしている。

「過去数十年の間に、日本の物理学者たちが物理学の発展に対して大きな貢献をしてきたのは、東洋の哲学的伝統と、『量子力学』が、根本的に似ているからなのかもしれません」(W.ハイゼンベルグの言葉)〜Wikipediaより転載

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