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第3章 標(症状)は本(病の本体)を明らかにする標(しるべ)
最後に、今までの考察を、漢方医学における「標治と本治」という視点からまとめ、放射能時代における花粉症への正しい対処法について提言してみたいと思います。
【症状は病の本体にアプローチするための道標】
病気の様々な症状は、漢方では「標(ひょう)」と呼ばれています。標は、「本(ほん)」すなわち症状をもたらす原因である病の本体(深部の病巣や本質的な病態)についての手がかりを与えてくれる標(しるべ)だと言うことが出来ます。
なお、「本と標」には、「原因と症状」という意味以外にも、「先行疾患(本)と続発疾患(標)(たとえば、癌の原発病巣と転移病巣など)」「深部の疾患(本)とより表層部の疾患(標)」といった意味もありますが、ここでは主として「原因と症状」というポイントに絞って話を進めます。
漢方の診断においては、標としての症状のメッセージに耳を傾けることで、病の本体を明らかにすることができます。つまり、標は、病の本体に到達するための道標(みちしるべ)なのです。
したがって、漢方の治療においては、原則的には西洋医学のように標(症状)を無くすことを主な目的とする治療(対症療法)は行いません。
標(症状)は、取り除くべき敵ではなく、本(病の本体、原因)についての貴重な情報をもたらしてくれる味方だからです。
【標治と本治】
治は本に求むべし
漢方においては、「治を求むるには、すべからく本をもってすべし」という大原則があります。
標としての症状を手がかりにして本(病の本体)としての原因を明らかにしそれを是正することで生体のバランスが回復すれば、その役目を終えた標(症状)は、自然に消えていくからです。
急なれば標を治す
もっとも、漢方治療の原則としては、「急なればその標を治し、緩なればその本を治す」「標本同治」という言葉もあります。
「急なればその標を治し、緩なればその本を治す(緊急の場合は標治を優先する)」とは、どういうことを言うのでしょうか?
例えば、動脈硬化を原因として心筋梗塞が起きた場合は動脈硬化が「本」であり、心筋梗塞が「標」です。その場合は、心筋梗塞の急性期には当然心筋梗塞の治療すなわち「標治」を優先します。
しかし、いったん急性期を脱したら、動脈硬化の治療(本治)を優先することで心筋梗塞の再発や動脈硬化を原因とする他の疾患(脳梗塞、認知症など)の発症を予防することをめざすということです。
標本同治
「標本同治」とは、「標と本を同時に治療する」すなわち「対症療法(標治)と原因治療(本治)を同時に行う」ということです。
西洋医学における実例を挙げるなら、心不全で肺水腫が起きている場合に、利尿剤などにより肺水腫の治療(標治)を行いながら、強心剤などによって心不全を治療(本治)することが標本同治の一例だと言えます。
ただ、漢方治療では、「標本同治」を採用する場合でも、最終的な目的は本治すなわち病の本体を治療することにあります。
つまり、「標を治す(標治)」と言っても、近代西洋医学の治療でしばしば行われるような「原因を悪化させる対症療法」ではなく、「急性症状を制御することに重きをながらも同時に原因をも改善する効果をもった治療を行う」ということです。
【花粉症の標治と本治】
花粉症のケースを考えてみると、西洋医学の薬(抗ヒスタミン剤など)で花粉症の症状を制御することは「標治」であると言えます。
花粉症の症状のうちクシャミや鼻水は、漢方的には「水滞」(水の滞りと偏在)という本(証すなわち漢方的な病態)からもたらされる標(症状)であることが少なくありません。
したがって、一般的な漢方的な考え方によれば、水滞を改善する薬である小青竜湯による治療は「本治」であると言えます。
もっとも、水滞を改善することでクシャミや鼻水も即効的に改善されるので、水滞の治療薬の内服は本治であると同時に標治でもある(標本同治である)とするのがより正確かもしれません。
ただし、クシャミや鼻水などの症状(標)の原因(本)は水滞証であることが多いですが、水滞を標(より表面的な病態)とした場合、その標をもたらす本(より本質的な病態)が存在する場合も少なくありません。
そういったケースでは、水滞の治療である小青竜湯の内服は「標治」ということになります。
【花粉症の究極の本治とは?】
しかし、前回の投稿で考察したように、もし花粉症という疾患に、大気中の有害化学物質や放射性物質の取り込みを少なくするという役割があったとしたら、花粉症のより深い本(本質的な原因)は、個人の身体の異常にあるというよりも、大気汚染や放射性物質の大気中への放出にあると言えます。
もしそうならば、花粉症の真の本治は、個々の花粉症患者が水滞を改善する漢方薬を服用することによってではなく、人類全体が大気中への放射性物質の放出をもたらす原子力発電を廃絶することによってもたらされると言えるでしょう。
これは、あくまで私自身の個人的な直感的印象にしか過ぎませんが、福島原発の事故以前は、少なくとも私個人に関しては小青竜湯の内服は花粉症の改善に即効的・確実な効果を感じることができました。しかし、近年は、小青竜湯の内服によっても花粉症がなかなか改善しないことが多くなっているような気がします。
また、近年は花粉症の症状が酷い時も小青竜湯を飲む気がしなくなっている(小青竜湯を美味しく感じなくなっている)のです。
つまり、原発が地球上からなくなるまでは花粉症(花粉粒子に対する免疫反応)を治療しない方がいい、そして私の身体はそのことを直感的に感じ取っているということが言えるのかもしれません。
【放射能時代における花粉症への正しい対処法】
それまでは、(西洋医学の薬だろうと漢方薬だろうと)薬によって症状の改善をめざすより、以下の様な手段によって、花粉やPM2.5など「放射性物質と結合した大気中微粒子」の体内取り込み総量を減らすべく努めることが最も正しい花粉症への対処法だと言えるのではないでしょうか[1]。
① 花粉の飛散季節には、不必要な外出を控え、外出時はマスクや花粉防護メガネをかける。
② クシャミや鼻水が生じた時は、放射性物質などから身を守ってくれることに感謝しながら大いにクシャミをして鼻水をかみまくる(症状を抑える薬は飲まない)。
③ 外出から帰宅したらアーユルヴェーダの浄化法であるジャル・ネーティーやジャル・カパラヴァーティ(いずれも微温の食塩水による鼻孔洗浄法)に励み鼻腔粘膜に付着した放射性粒子や有害化学物質の排出に努める。
④ 室外から花粉粒子(およびそれと結合した有害化学物質や放射性物質)を持ち込んでしまった場合は、空気清浄機などを活用して室内空気の浄化に努める。
これからは、花粉症の人の方が癌など重大な疾患にかかるリスクが減り長生きできるのかもしれません。花粉症の人は、自らが花粉症であることに感謝し、そのメッセージに耳を傾けようではありませんか。
花粉症さん、ありがとうございます!
[1] ただし、(少なくとも東洋医学には)「鼻腔に吸入された有害物質を除去する」という花粉症のもつ肯定的な役割を阻害することなく、花粉症の症状によってもたらされる苦痛を緩和する方法は存在します。たとえば、くしゃみや鼻水などは抑制しないほうが良いと思いますが、鼻詰まりや目のかゆみなどを軽減するのは問題ないでしょう。
それについては、また別途解説したいと思います。
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東洋医学と西洋医学
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第2章 花粉症の症状がもたらすメリット
【花粉症の症状によるカパ・ドーシャの排出】
前回の投稿に引き続き、花粉症を例にとって、疾患の症状がもつ肯定的な意味と症状を抑えることに重きが置かれがちな近代西洋医学のアプローチの問題点についてさらに掘り下げてみたいと思います。
実際、カパ体質の人が圧倒的に花粉症にかかりやすいですし、カパ・ドーシャが増悪する春先に悪化します。
アーユルヴェーダのカパ体質は、漢方的な体質分類である「水滞寒証」と多くの共通点を有します。例えば、寒さに弱い、水分が(部分的もしくは全体的に)過剰になりやすいという点で、カパ体質と水滞寒証は一致しています。
つまり、カパ体質の人は水滞寒証になりやすく、水滞寒証の人はカパ体質であることが多いと言えるのです。
体質的に水滞寒証が多い日本人に花粉症が多いというのも、花粉症がカパの蓄積により発症することを裏付けていると言えます。
ともあれ、くしゃみや鼻水など花粉症の主要症状は、上気道からカパ・ドーシャを排出することを目的とするパンチャ・カルマの「ナスィヤ(経鼻法)」と同質のプロセスだと言えるでしょう。
【浄化を妨げる西洋医学的治療法】
そのため、花粉症の時に、蓄積されたカパ・ドーシャを排出することなく西洋医学の薬によりくしゃみや鼻水などの症状を抑えてしまうと、本来花粉症がもつ肯定的な目的を妨げることになります。
【カパ・ドーシャとヒスタミンの関係】
カパ・ドーシャは人体内の生理活性物質であるヒスタミンの作用と密接な関係にあると考えられています。カパ体質の人は、ヴァータ、ピッタ体質の人たちに比べて血液中のヒスタミンの量が多いとする研究報告もあります。
花粉症の主要症状であるくしゃみ、鼻水、目のかゆみなどは、主としてヒスタミンの働きが亢進することによりもたらされるとされています。
つまり、ヒスタミンの量が多いとされるカパ体質の人が花粉症に罹りやすいことは、生理学的にも理に適ったことなのです。
したがって、ヒスタミンの作用を抑える抗ヒスタミン剤の内服には、花粉症の根本治癒をめざす浄化療法(ショーダナ)にはならないと思いますがカパの作用を抑えることで症状を軽くする鎮静療法(シャマナ)としての意味はある程度あるのかもしれません。
それでも、抗ヒスタミン剤の内服により誘発される眠気やだるさはカパの過剰によりもたらされる典型的症状の一つですから、カパの作用を抑えるだけでなくカパを強める方向にも働く結果となり、やはりカパの過剰を根本的に是正する治療ではないと言えるでしょう。
なお、抗ヒスタミン剤の副作用である口渇や胸焼けは、アーユルヴェーダのドーシャ理論的にはカパの作用を抑制しすぎ(「火」の要素が司るピッタが亢進し)たことによりもたらされると考えられます。
【花粉症が近年増加している一因】
花粉症は、人体にとっての異物たんぱく質である花粉を体外に排出する免疫反応です。くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの花粉症の症状は、花粉粒子などの抗原と結合したIgE抗体が肥満細胞のIgE受容体を刺激し、ヒスタミンやロイコトリエンなどのケミカル・メディエーター(生命情報を伝達する化学物質)の分泌を促進することで引き起こされると考えられています。
IgE抗体は、もともと寄生虫などの病原体に反応して体外に排除することを主な任務としていたとされています。
しかし、衛生環境が改善して寄生虫がいなくなり失業状態に置かれたIgE抗体(と肥満細胞)が、暇を持て余して(?)本来は人体に対する実害をほとんど及ぼすことのない花粉に対して過剰な反応をするようになったことが、近年花粉症が急速に増えている一因だと説明されることが一般的です。
実際、私がネパールに在住し海外協力活動に携わっていた間は、おそらく腸内寄生虫がいたと思われます(青年海外協力隊の任期終了後に帰国した時は、便中よりランブル鞭毛虫、大腸アメーバ、アメーバ赤痢が検出されています)が、ヒマラヤ杉などが自生し、杉の花粉が少なくない環境にいたにも関わらず花粉症の症状は一切出現することはありませんでした。
【花粉症は人類への救いの手か】
つまり、花粉症は、本来の役割を果たす必要がなくなったIgE抗体が、持て余したエネルギーを制御できずに非行に走ったことによりもたらされているようなもの(すなわち、不適切もしくは過剰な免疫反応)であると一般には説明されているのです。
しかし、大気汚染による微粒子が大気中に多い地域では花粉症が悪化しやすい事実を考えると、現代社会における花粉症には、「大気中から鼻孔を通して吸入される有害化学物質を排出する」という重要な役割があるのかもしれません。
特に、放射性物質と結合した花粉などの微粒子を体内に吸い込むことは内部被曝のもとにもなります。
花粉症の症状を持つ人は、くしゃみや鼻水などにより大気中の微粒子の排出が促進されます。また、マスクをする・花粉飛散時は外出を避けるなどの吸入回避行動を取るので、結果的に放射性物質の採り込み量が軽減されることになるわけです。
実際、チェルノブイリの原発事故直後のヨーロッパでは花粉症患者が急増したという報告がなされています。
原発による大気中への放射性物質の放出が常態化してしまった現代社会で花粉症が異常に増加しつつあることは、種の保存のための人類全体の適応反応の一つなのかもしれません。
すでに述べたように、花粉症は、アーユルヴェーダの体質分類ではカパ体質の人が罹りやすいとされています。カパ体質は、アーユルヴェーダの三つの体質分類の中では一番長寿の人が多いと言われています。
カパ体質の人は、一般に免疫機能が発達していて様々なアレルギー疾患に罹りやすいとされています。放射性物質など人体に有害な物質が満ち溢れている現代社会では、時として過剰とも思える免疫反応によって異物を排出するシステムが発達しているカパ体質の人は、生存にとってより有利であると言えるのかもしれません。
【花粉症の(体質的)根本治療によるデメリット】
くしゃみ・鼻水などによる大気中の微粒子の排出機能が亢進する花粉症の症状や、花粉が飛び交う季節に外出時にマスクをしたり外出を控えたりする行為には、癌を始めとする深刻な疾患を引き起こす原因ともなる大気汚染物質や放射性物質を体内に取り込むリスクを下げる効果があると言えるでしょう。
そうなると、西洋医学における減感作療法、あるいは(今後開発されることが予想される)遺伝子治療などの最先端医療により花粉症を体質から根本治療してしまうことは、人類に差し伸べられた自然からの救いの手を自ら振りほどくことになるのかもしれません。
(その3に続く)
アーユルヴェーダの入門書などの中では「(生命)エネルギー」として説明されることも多いですが、(精神的な働きも含めた)生理現象の性質を決定する要素で、「生命エネルギーそのもの」と言うよりも、「生命エネルギーの働き方を決める要因」の方なのです。
「生命エネルギー」を水にたとえると、その形を決める容器あるいは性質を決める温度などの環境要因の方であると言えるでしょう。
また、ドーシャは「体質・気質」と訳されることもありますが、「体質・気質」そのものと言うよりも、体質や気質を決定する要因の方なのです。
ドーシャは、特定の臓器などに局在することもありますが、基本的には(密度の差はあれ)全身にくまなく存在する普遍的な要因です。
西洋医学の生理学の概念の中では、人体の生理現象をコントロールするケミカル・メディエーター(生命情報を伝達する化学物質)との関わりが強いのではないかと私は考えています。
ドーシャには、ヴァータ、ピッタ、カパの3種類がありますが、そのうちカパは、地水火風空という五大元素(宇宙を構成する基本的な要素)のうちの地と水の要素から成り、生理機能では粘液分泌や免疫反応などを司るとされています。
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第1章 パンチャ・カルマ(五つの浄化法)と風邪の治療法
【アーユルヴェーダの浄化療法】
アーユルヴェーダには、パンチャ・カルマ(五つの作法)と呼ばれる浄化療法があります。
① ヴァマナ(催吐法)…嘔吐により主としてカパを排出する。
② ヴィレーチャナ(瀉下法)…下剤内服による人工的な下痢で主としてピッタを排出する。
③ ヴァスティ(浣腸法)…主としてヴァータを排出する。
④ ナスィヤ(経鼻法)…点鼻・吸入などにより薬剤を経鼻的に摂取しクシャミや鼻水などを誘発し上気道より主としてカパを排出する。
⑤ ラクタ・モクシャナ(瀉血法)…主としてピッタを排出する。
ゴマ油の経口摂取とオイル・マッサージには、油溶性の毒素を細胞から溶かし出し、マハースロータス(中央脈管)すなわち消化管、大血管、気道など物質循環の大きな通路に集める効果があります。
【シャマナ(鎮静療法)とショーダナ(浄化療法)】
アーユルヴェーダには、シャマナ(鎮静療法)とショーダナ(浄化療法)という二種類の治療法が存在します。
シャマナ(鎮静療法)は、ドーシャのバランスを整えることで症状のコントロールやより表面的な病態の改善に優れた力を発揮します。
それに対し、ショーダナ(浄化療法)は、増悪したドーシャ、アーマ(未消化物)、マラ(老廃物)を排出することで本質的な病態を改善し蓄積された深層の歪みを是正することを目的としています。
パンチャ・カルマは強力なショーダナ(浄化療法)であり、長い間の不適切な生活習慣や毒素の蓄積の結果引き起こされる病気、すなわち、動脈硬化、糖尿病などを含む慢性疾患や癌、神経難病などを含む深刻な疾患の治癒に有効であるとされています。
【パンチャ・カルマと他の医学の浄化療法】
漢方でも、パンチャ・カルマに似た治療法(汗法、吐法、下法、消法)が存在します。また、鍼灸・指圧按摩療法などにおける瀉法は、血流やリンパ循環などを刺激することで浄化を促進するとともに、微細エネルギー(気)レベルでのショーダナ(浄化療法)だと言うことができるかもしれません。
なお、パンチャ・カルマの中の瀉血に関しては、現代の漢方治療や近代西洋医学では(特定の血液疾患の治療法として以外は)行われていませんが、19世紀以前の西洋医学の主流であったユーナーニー医学の中では盛んに実践されていました。
現代でも、ユーナーニー医学や民間療法の一部(吸い玉療法、ヒル療法など)では実践されています。
また、ある疾患の症状を引き起こす天然物質を希釈した薬をとることで治癒を促進するホメオパシーは、浄化プロセスを促進するショーダナ(浄化療法)の一種だと言うことができるのかもしれません。
【風邪は天然のパンチャ・カルマ】
風邪にかかった時の主な症状である(発熱に伴う)発汗、くしゃみ、鼻水、咳、(胃腸風邪になった場合の)嘔吐、下痢などは、すべて邪気(ウィルス等の病原体や毒素、蓄積されたドーシャなど)を排出する生体の合目的的な反応であると言えます。
パンチャカルマは、言わばこれらの浄化反応を人工的に引き起こす治療法であり、人体に生まれつき備わった自然浄化システムを後押しする療法だと言うことが出来るでしょう。
逆に言えば、風邪の様々な症状には浄化プロセスを促進する役割があり、天然のミニ・パンチャカルマだと言うことができるのかもしれません。
つまり、 毒素や生体の機能の歪みなどが蓄積されるたびに風邪などの疾患にかかることで定期的に適切な体内浄化が行われたなら、あらためてパンチャ・カルマを受ける必要もなく、癌や慢性疾患などの深刻な慢性病にかからなくて済むという可能性もあります。
実際、「王様の治療法」とも呼ばれるパンチャ・カルマは、もともと贅沢な食生活や運動不足などの偏った生活習慣により体内毒素や生体機能の深い歪みが蓄積されやすい王族や貴族などのために開発された治療法です。アーマ・パーチャナ(毒素排出法)などを日常的に実践していれば受ける必要はないものとされています。
私も、マレーシア在住中にアーユルヴェーダの名医の方に(私が)パンチャカルマを受けることは有益かどうか尋ねてみたところ、”Panchakarma is not for you“(パンチャカルマはあなたには向いていない、あるいは必要ない)と言われたことがあります。
【風邪の正しい治療法とは】
浄化の促進による劇的な治癒
私は、数年前自分がかなり感染力の強い風邪にかかった時、漢方薬、マッサージ、入浴による発汗などを総合的に活用しながら、「風邪(ふうじゃ)と蓄積されたドーシャの排出」というポイントにフォーカスした治療法を行ったところ、みるみる症状が改善し、わずか数時間内にすっかり完治するという体験をしたことがあります。
現代西洋医学の治療法は薦められない
西洋医学の薬により風邪の症状を抑えることは、ただ治癒までの期間を長引かせるだけでなく、本来風邪がもっている浄化プロセスという役割を妨げ、化学物質というさらなる毒素(邪気)を蓄積する結果に終わります。
生命の危険が差し迫った時は別ですが(通常の風邪でそのような状態に陥ることはまずないと思いますが)、それ以外の時は西洋医学の風邪薬を飲むことはやめたほうがいいでしょう。
証に合った漢方薬、ハーブティー、適切な食養生(場合によっては絶食)などを必要に応じて活用しながら、浄化プロセスを促進することが治癒の近道ですし、お薦めです。
(その2に続く)
この場合の「蓄積されたドーシャ」の物質的な側面を西洋医学的な概念で考えると、毒素そのものというより、生体の生理的バランスが崩れた結果体内に過剰に産生されたケミカル・メディエーター(生体情報を媒介する化学物質)、たとえばアドレナリン、ヒスタミン、アセチルコリンなどを指し示したものと推測されます。
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序章 風邪は、毒素や歪みが蓄積した生体に風邪(ふうじゃ)が侵入して発症する
【野口晴哉先生の「風邪の効用」に触発されて】
以前Facebook上で見つけた以下の投稿に触発されて、「症状のもつ肯定的な役割」について考察した文章を書いてみました。
【風邪(かぜ)は風邪(ふうじゃ)の蓄積による疾患である】
野口整体の創始者である野口晴哉先生は、「風邪の効用」の中で、次のように述べておられます。
早く風邪を治そうとして熱を下げようとしたり、咳を止めようとしたり、そういう中断法ばかり講じていると、風邪を治そうとしながら体が硬張り、治療しながら体がだんだん鈍くなるというようなことになる。
とにかく、天然の体をできるだけ天然に保たなくてはならない。そうなるといろいろな治療行為よりは、却って風邪を上手に引き、上手に経過するということの方が意義があるのではなかろうか。
だから風邪というものは治療するものではなくて、経過するものでなくてはならない。
【漢方医学における風邪(かぜ)の原因】
漢方では、風邪(かぜ)は、文字通り風邪(ふうじゃ)の侵入によりもたらされる疾患であると考えられています。
「風邪(ふうじゃ)」とは、外邪(体に影響を及ぼす気候変化。風、寒、署、湿、躁、火(熱)の六種類があるので「六邪」とも言う)のうちの一つで、風や空気によるもののことです。風邪(ふうじゃ)の特性の一つに「変化しやすい」ということが挙げられます。
急激な気温の変化に晒されると体温調節が上手く行かずに風邪を引くことがあります。風邪(ふうじゃ)の正体を西洋医学的に解釈すると、その一つは「気温の変化に対する体温調節の失敗」ということになるでしょう。
また、ウィルスなどの病原性微生物、アーユルヴェーダでいうところの蓄積され増悪したドーシャをも「風邪(ふうじゃ)」に含めるべきでしょう。
すなわち、風邪(かぜ)を引き起こす様々な要因(環境要因、体質要因、病原体など)をまとめたものが風邪(ふうじゃ)であると言っていいでしょう。
したがって、風邪の正しい治療法は「風邪(ふうじゃ)を追い出す」ということになります。
今回のシリーズ投稿の第一章では、「風邪の症状は、風邪(ふうじゃ)を排出するための浄化作用である」という視点から、風邪に罹った時の正しい対処法について、アーユルヴェーダの浄化療法であるパンチャカルマと比較しながら考察してみたいと思います。
さらに、第二章では、花粉症を例として症状のもつ意味と正しい治療法について考察を深め、第三章では、漢方の「標治(対症療法)」と「本治(原因療法)」という概念をもとに第一章と第二章での考察をまとめ、グローバルな環境問題への対処も含めた花粉症の究極の本治法について提言します。
その1(第一章)に続く。
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【電磁的フィールドである人体は電磁波の影響を受けやすい】
科学者を自称する人の中には、あるいは中途半端な科学知識に囚われている一般人の中には「電子機器などから発生する電磁波が身心に悪影響を及ぼす」という主張を「非科学的な迷信だ」もしくは「杞憂にもとづく妄想だ」と一蹴する人たちもいます。
しかし、神経細胞の情報伝達だけでなく、筋肉の収縮や細胞内外の物質のやりとりなど、人体の生理活動の多くには、何らかの形で電気的な活動が関わっているものが少なくないのです。 電磁波は、たとえ微弱なものであっても外部から人体に電気磁気的な力を及ぼす波動ですから、人体の生理活動に電磁波が多かれ少なかれ影響を及ぼすことは間違いないと言えるでしょう。
「脳波」とは、脳の神経細胞の電気的な活動を波形として記録したもののことです。このことからもわかるように、脳は絶え間なく微弱な電流が流れる無数の脳神経細胞同士が複雑なネットワークを形成している電磁的なフィールドであり、繊細な電子精密機器と同様に電磁波の影響を受けやすいのは当然のことだと言えます。
もちろん、どの程度の電磁波がその影響を無視できないほどの深刻な影響を私たちの身心に及ぼすかということについては科学的にはまだ十分明らかになっていないとは言えます。 いたずらに電磁波を怖れることは、大きな精神的ストレスになり神経系に負担をかけることでヴァータを乱すという面もあるので、過剰に心配しすぎることはかえって身心の健康にとっていいこととは言えません
しかし、「私たち人間は電磁波の影響を受けない」と決めつけることは非科学的な迷信だと言えるでしょう。
では、私たちは、電磁波が身心に及ぼす悪影響に対して、どのような態度でもって臨むべきなのでしょうか?
【ヴァータの乱れにはピッタとカパの特性を活かして対処する】
電磁波の影響を過剰に心配するのも、逆に「電磁波によって身心の健康が脅かされるなどというのは非科学的な迷信だ」と軽々しく思い込むことも、「不安や恐れの感情に流されやすい」、あるいは「物事の表面だけに囚われやすい」というヴァータの負の側面が強く出た場合の反応です。
ヴァータの乱れがもたらすそれらの知性や感情の誤りに対しては、まず科学的な事実を踏まえた上で論理的・理性的に考察するというピッタの肯定的な特性を活かして対処することによって修正することが有効です。 また、すぐに安易な結論に飛びつかず、冷静にじっくりと調べたり熟考しながら物事の本質を明らかにする努力を怠らないというカパの特性を活かす対処法も同じように有効だと言えるでしょう。
私は、先天的にピッタとカパの力が強いピッタ・カパ体質(気質)なので、ヴァータが陥りやすいいずれの極論にも流されることなく、冷静かつ理性的に電磁波の問題と関わることができているようです。
【反対はその反対で治療される】
特定のドーシャが増悪したことでもたらされた不調に対しては、その反対の性質をもった行為により全体のバランスを回復することによって、中庸の状態に近づけることができます。 これは、アーユルヴェーダでシャマナ(鎮静療法)と呼ばれ、治療の根本原則の一つとされています。
ヒポクラテスも、「反対はその反対で治療される」という原則を唱えたと言われています。生体のバランスが崩れることで病が生じ、そのバランスを元に戻すことで病を治し健康になることができると考えていたのです。
Medicine(医学、薬)という英単語はmiddle(真ん中)、moderation(中庸、節度、節制)などと同じ語源をもち、両極端に偏らず「ほどほど」の状態にとどまること、すなわち中庸こそが健康への近道であると昔の人は考えていたことがわかります。
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