あるスーフィー巡礼者の日記 A diary of a sufi

思い込みや見かけにだまされず、本質を見極めましょう。

ヨーガとアーユルヴェーダ

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生理現象を気象になぞらえて理解する

 

天人相応原理にもとづいた医学

 

四象医学のもう一つの特色は、人体(小宇宙)で起きる生理現象を自然界(大宇宙)における気象の営みになぞらえて考えるというところにあります。これは、大宇宙と小宇宙それぞれで起きる現象は相似する(天人相応)、もしくは本質的に同一である(天人合一)という、東洋思想の基本的な世界観にもとづいた考え方です。

 

前回の投稿(「夏の食養生」最終章・前編)の冒頭で予告したように、今回は、ややこしい理屈が多くなります。しかし、次回で採り上げる予定である秋の養生法の原理を理解するための基礎となる考え方を提供することを目的としています。イラストを活用してなるべく理解しやすくなるように努めますので、しばしおつきあいいただければ幸いです。

 

南高北低(上低下高)の気圧配置により北向き(上向き)の風(気の流れ)が起きる

 

まず、暑さで冷たい飲み物を飲みたくなるのは、ちょうど喉(および頭部全体)に熱気を帯びた気団(自然界の大気では、「熱帯低気圧」や「温帯低気圧」に相当します)が停滞しているためと考えられます。

 

そこで、冷えたビールなどの冷たい飲み物を飲むと、確かにそれが喉を通り抜ける時は、一瞬の間は喉(や頭部)が冷やされ、「冷たくて気持ちいい」と私たちは感じます。「ビールは喉越し」と言われるように、冷えたビールを美味しく感じるのは、消化器官ではなく喉です。暑い季節に冷たいビールを飲み過ぎてしまうのは、最終的にそれを引き受ける消化器官の気持ちを省みずに、喉の感覚にふりまわされることで引き起こされるのです。

 

しかし、喉が冷たくて気持ちよく感じるのは一瞬の現象で、喉や頭部はすぐにまた熱くなります(喉元過ぎれば涼しさ忘れる)。高温の大気よりなる低気圧(温暖高気圧)、すなわち「暑邪もしくは熱邪」が引き続き停滞している状態です。

 

一方、腹部は、冷たい飲み物によって冷やされ、低温の大気からなる高気圧(シベリア高気圧もしくはオホーツク海高気圧などの寒冷高気圧に相当します)、すなわち「寒邪」が停滞している状態になります。

 

大気は高気圧から低気圧に向かって移動します。これは、空気は気圧の高い空間から低い空間へ移動するからと考えることもできますし、寒冷高気圧では下降気流が起き地表近くでは空気が外側に押し出され、温暖低気圧では上昇気流が生じるため地表近くでは中心に向かう風が生じるためと考えることもできます。


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いずれにせよ、低温の高気圧から高温の低気圧に向かう風が生じるように、人体では低温の腹部から高温の頭部に向かう気の流れが強くなるのです。つまり、「南高北低(下高上低)の気圧配置により北向き(上向き)の風(大気の流れ)が起きる」と言うことができます。

 

上熱下寒は気逆を引き起こす

 

この状態は、漢方では「上熱下寒(じょうねつげかん)」と呼び、上半身に向かって気が昇るため、「のぼせ」あるいは「気逆(きぎゃく)」(本来の気の流れと逆方向に気が流れる状態)を引き起こしてしまう病的な状態であると言えます。


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日本では、昔から「頭寒足熱」(漢方では、「上寒下熱(じょうかんげねつ)」と呼びます)が健康に良いと言われています。上寒下熱であれば頭部から腹部の方向へ、すなわち上半身から下半身に向かって気が流れ上虚下実(上半身よりも下半身の方にエネルギーが集まる)の状態がもたらされます。上虚下実は、心身が安定するので本来の望ましい形です。


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冷たい水分の多飲は気逆を悪化させ悪循環を形成する

 

冷たい飲み物を大量に摂ることによってもたらされる「頭部を熱気が満たし腹部を寒気が満たし、腹部から頭部(すなわち下半身から上半身)に向かって気が流れている」状態は、「気逆」と呼ばれる、気が逆流してのぼせ上がっている状態なのです。そうなると、心も落ち着かなくなり、気を落ち着けようとさらに冷たい飲み物が欲しくなります。気逆による精神の不安定が水分不足による合目的的な口渇(身体の水分摂取への欲求)を修飾してしまうわけです。

 

しかし、冷たい飲み物を摂れば摂るほど、上熱下寒の状態が悪化して行きますので、さらに気逆が増悪し、もっと冷たいものを飲みたくなるという悪循環が生じます。

 

もちろん、水分を摂取すると循環血液量の絶対量は増えますので、基本的には口渇感は減少します。

 

発汗などで体内の水分が失われ、循環血液量が減少すると、大脳の視床下部の口渇中枢が浸透圧の上昇(血が濃くなったこと)を感知することで口渇感を引き起こします。そこで水分を摂取すると循環血液量が回復しますので、口渇中枢の活動は抑えられ、口渇は抑えられます。しかし、水分の摂取が循環血液量の増加に反映されるまでにはある程度の時間が必要です。

 

気逆によってもたらされる精神の不安定は、そのタイムラグの間に、言わばヤケ飲み(精神的ストレス緩和のために冷たい水分を多量に摂る行為)を引き起こすので、結果的に身体の要求以上の水分を摂ってしまうことも少なくないのです。

 

水分の過剰摂取を防ぐには、適切な水分摂取を誘導することにより身体の水分不足を解消するために引き起こされる生物として合目的的な口渇と、気逆による精神的不安定から引き起こされる渇望感を混同しないことが大切です。

 

腹部を温めることで気逆を収める

 

上熱下寒による気逆(のぼせ)の状態に陥ってしまった時は、冷たいビールや清涼飲料水などよりもむしろ温かいもの(お茶やスープなど)を食べたり飲んだりして腹部を温めた方が、頭部から腹部に向かって(下方)に向かう気の流れが生まれ、気が鎮まり(気逆が解消され)心も落ち着き、喉の渇きも収まってくるようになります。

 

もしどうしても冷たいものが欲しいときは、口の中でよくかむことで温め、体温に近い温度になったものを飲み込むようにすれば、腹部の冷えを防止することができます。こうすれば、冷たいものを口中に長く含むことで頭部の熱は冷ますことができ一石二鳥です。

 

非暴力不服従の精神を掲げたインド独立運動の指導者ガーンディーは、養生の秘訣として「水でも百回噛んで飲め」と言う言葉を残しました。冷たい飲み物を摂りすぎないことは、40℃前後で最も効率的に作用する消化酵素の働きを保つために消化器を冷やさないと言う意味でも大切ですが、上熱下寒によりもたらされる気逆を防ぐ上でも有益な助言であると言えるでしょう。


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 (次回「秋の養生法」に続く)
 
 
日中の残暑への対処と秋の養生法の理解のために
 
季節はすでに秋になりました。ただ、秋口であるこの季節は、朝晩はかなり涼しくなったとは言え、日中はまだまだ暑い日も少なくありません。そこで、今回の投稿では、暑い夏に冷たい飲料を必要以上に飲み過ぎてしまう理由を、韓国の伝統医学の一つである「四象医学」の原理から解き明かしてみたいと思います。
 
そして、健康な身体状態と病的な身体状態を対置させて解説し、健康な状態を実現する為の東洋医学の叡智について解説しようと思います。
 
今回の記事は、後編はちょっと理屈が多くてややこしい内容になりますが、次回に予定している「秋の養生法」の元となっている理論を理解する上でも役に立ちますので、おつきあいいただければ幸いです。
 
夏に冷たいビールを飲みすぎてしまう理由
 
熱い季節に喉が渇いている時には、冷えたビールなどの冷たい飲み物を飲みたくなりますね。しかし、飲めば飲むほど喉の乾きが増して、飲み過ぎてしまったという経験を持つ方も少なくないことでしょう。なぜそういうことが起きるのでしょうか?その理由を漢方的な視点から、それに韓国の四象医学の考え方を加味して考えてみたいと思います。
 
朝鮮人医師イ・ジェマが確立した四象医学
 
四象医学とは何か
 
四象医学とは、朝鮮王朝末期(19世紀後半)の朝鮮(韓国と北朝鮮を合わせた地域)において、韓医学(古代中国の伝統医学を源流とし、朝鮮半島で独自の発展を遂げた伝統医学。日本の漢方に対応します。日本では「韓方」と呼ばれることもあります)をベースに朝鮮人医師李済馬(イ・ジェマ)によって確立された医学です。(下記の二つの写真は、イ・ジェマの肖像画です)


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「朝鮮人」という表現に違和感を覚える方がいらっしゃるかもしれません。「朝鮮人」は差別用語だとする人もいるでしょう。でも、当時の朝鮮半島は、現在のように北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と韓国(大韓民国)に分離していませんでしたから、「韓国人」という表現は不適切です。そこで、あえて「朝鮮半島に住んでいた人」という意味で「朝鮮人」という表現を使わせていただきました。差別的な意図はまったくありませんので誤解のなきようお願いいたします。
 
四象医学とは、人間を大きく四つの体質(太陽人、少陽人、少陰人、太陰人)に分けて、それまでの伝統的な韓医学(朝鮮半島自生の生薬を活用した独自の処方も使いますが、基本理論は古代中国伝統医学とほぼ同じです)の治療をベースにしながら、それに体質の違いを加味して、体質ごとに漢方薬や鍼灸・食養生などの治療法を使い分けるという医学です。


 
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太陽人であったイ・ジェマを主人公とした韓流ドラマ
 
つい先日まで、彼の生涯を描いた韓流ドラマ「太陽人イ・ジェマ」がBSフジで放映されていました。彼が四象医学の発想に至った経緯なども描かれ、四象医学の基本的な考え方もわかり、なかなか興味深いドラマでした。医学的な考証もしっかりとなされているようで、処方や養生法など四象医学の具体的な診療法についても勉強になります。レンタルビデオ店にもおいてありますので、この方面に興味のある方は、ぜひ視聴してみられることをおすすめします。
 
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ドラマでは、イ・ジェマを、患者のことを心から思う熱血漢だが、自己主張が強い自信家気の強い人物として描かれていますが、これはまさしく太陽人(陽の力がとても強い人)の性格を示したものです。
 
(最終章・後編に続く)
 
 
これからの季節は、日本列島に台風が訪れることが多くなりますね。今回の記事では、台風によりもたらされる人間心理の変化を、アーユルヴェーダの理論をもとに解説し、台風の季節の過ごし方についても言及してみたいと思います。

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台風はヴァータを増大させる
 
子供の頃、「台風が来る」と聞くと、妙にワクワクした経験はありませんか?その理由は、アーユルヴェーダのドーシャ(生命原理)理論によって解明することができます。
 
ここで、ドーシャ理論についておさらいしておきましょう(以前投稿したブログ記事を一部改変したものです)。
 
【アーユルヴェーダの三ドーシャ説】
 
アーユルヴェーダでは、生命現象をヴァータ、ピッタ、カパという三つの濁素(ドーシャ)のバランスのもとにとらえます。濁素(ドーシャ)とは、サンスクリット語で「濁り始めたもの」という意味です。純粋意識(プルシャ)が現象界を体験するための粗雑化の過程で生まれた根本原質(プラクリティ)を三つの要素に分けて考えた概念です。放っておくとどしゃどしゃっと土砂のように溜まる性質があるので「ドーシャ」と呼ばれています(これは、単なる駄洒落でなく、言霊の性質にもとづいた説明です)。
 
ヒポクラテスが実践していた古代ギリシャ医学における体液(constitution:構成要素、気質と訳されることもあります)に相当する概念だと言えるでしょう。
 
ヴァータは「風」(と「空」)に象徴される運動循環の力、ピッタは「火」(と「水」)に象徴されるエネルギー変換の力、カパは「地と水」(あわせて粘土と考えると分かりやすいです)に象徴される結合安定の力を示しています。漢方には、相当する概念はありませんが、気・血・水(透明な体液)がそれぞれヴァータ・ピッタ・カパに対応すると言う人もいます。両者は完全には一致しませんが、人体を構成する基本的要素に対する類似した捉え方であると言えます。
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ヴァータは、風(ふう)に象徴される「動き」、風(ふう)と空(くう)に共通する「軽さ」などの性質をもったドーシャですので、私たちの心理状態にも、動きや軽さに彩られた変化をもたらします。すなわち、そわそわと落ち着かなくなったり、妙にワクワクした気持ちになったりするのです。
 
大人の場合は、台風が来ると聞くと不安を感じるようになる人も少なくないと思います。自宅を台風から守ったり交通機関の影響などに対処しなければいけないので、不安の種が増えるという具体的な理由もあると思いますが、それだけでなく、人間の心の中の不安を高めるヴァータの影響もそれに拍車をかけると言えるでしょう。
 
二通りにわかれる台風に対する反応
 
台風がやってくると、子供たちは室内で過ごさなければいけなくなりますが、室内で静かに絵本を読んだりして落ち着いて過ごす子供と、妙に活動的になりやたらと動き回る子供がいますよね。前者は、おそらく先天的にカパ・ドーシャの働きが強い子で、後者は、ヴァータ・ドーシャの働きが強い子でしょう。


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すでに述べたように、台風は基本的にヴァータの要素を強く持っていますが、雨ももたらすので、水(すい)の元素の働きを通してカパ・ドーシャを増やす面もあるのです。先天的にヴァータ体質の子供の場合は、風(ふう)の働きによりヴァータの活動的で落ち着かない性質が強調され、カパ体質の子供の場合は、水(すい)の元素の働きにより安定の性質をもったカパの側面がさらに強調されると考えることができます。
 
大人でも、台風の時は室内に閉じこもり静かに過ごす人もいれば、わざわざ雨風の中を荒れ狂う海を見に行ったりする人がいますね。とくに、ヨット乗りやサーフィン乗りの中には台風となると喜び勇んで海に出かける人が少なくありません。前者は、カパの働きが強い人で、後二者は、ヴァータの働きが強い人なのでしょう。
 
ドーシャごとの台風の過ごし方
 
ヴァータ体質の人は、あまりはしゃぎ過ぎないように(地の要素を増やすように)気をつけましょう。具体的には、静かな音楽に耳を傾ける、甘いものや油分の多い温かい食事をとることで過剰になったヴァータの働きを鎮め心身を落ち着ける、といった方策が有効です。
 
一方、カパ体質の人の中には、台風の影響でカパの働きが強くなり過ぎて落ち込む人もいます。そういった人たちは、温かくて辛味や塩味の効いたちょっと刺激的な食べ物を食べる、情熱的な音楽を聞く、知的好奇心をかき立てる読書にいそしむなどして、ピッタ(火)の働きを強めるように心がけましょう。
 
そうすれば、台風の季節も楽しく過ごすことができるようになるでしょう。

アメリカで生活習慣病が減少している理由

 

冷たい清涼飲料はアグニを低下させカパを増やすことで肥満の元となる

 

アメリカでは、ハンバーガーやフライド・ポテトなどにはコーラなどの冷たい(さらに大量の白砂糖が入れられた)清涼飲料がつきものですね。これは、アグニを低下させアーマ(未消化物)を増やしてしまう食習慣だと言えます。また、寒性のドーシャであるカパを増やします。いずれも、以前の記事の中で述べたように肥満のもととなります。

 

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アメリカ人に肥満の人が多い原因の一つは、ハンバーガーやフライド・ポテトなどの高カロリー・高脂肪フードに加えてコーラに代表される冷たくて甘い清涼飲料水を一緒に飲むというアメリカ特有の食文化にあると言えるでしょう。


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ダイエットコーラを飲むとかえって太る

 

ダイエットコーラなら太らないと考えている人もいるかもしれません。しかし、米国で行われた疫学調査によると、ダイエットコーラを飲む人は、普通のコーラを飲む人よりも肥満になりやすいという結果がでたそうです。

 

その理由は、人工甘味料は砂糖よりも(カロリーこそ低いものの)肥満を来しやすい性質があることに加え、ダイエットコーラを飲む人は、普通のコーラを飲む人より、飲むコーラの絶対量が多いからだとされています。

 

肥満になるかどうかは、ただ単に総カロリー摂取量だけで決まるわけではないと言えるでしょう。

 

アメリカでは飲食習慣の改善で生活習慣病が減少している

 

なお、最近は、アメリカでも冷たい清涼飲料水の代わりに、常温水やコーヒーなどを飲む人が増えてきました。

 

近年、アメリカでは肥満率が低下し、心臓病や高血圧などの生活習慣病が大幅に減少しています。これは、肉食中心で高カロリー・高脂肪の食生活を見なおし、野菜と穀物と魚介類を中心とする日本食などが好んで食べられるようになった食習慣の改善によるとされています。

 

しかし、それだけでなく、食事中に冷たい清涼飲料水を飲むことを止めたことも大きく寄与していると思われます。

 

インドを始めとするアジア諸国で生活習慣病が増えている

 

インドでは生活習慣病が急増している

 

対照的に、アーユルヴェーダの本場であるインドを始めとするアジア諸国で、近年、急速に肥満や心臓病などの生活習慣病が増えているのは皮肉なことだと言えます。

 

その大きな原因は、とくに都会の中流階級以上の人々の間で、アーユルヴェーダにもとづく伝統的な食習慣から、大量の肉の摂取を中心とした高カロリー・高脂肪の食事に加えて、冷たい清涼飲料水とともに食事をするという欧米型の食習慣が広まってきたことにあると言えるでしょう。

 

伝統医学が息づくケララ州は平均寿命が長い

 

南インドのケララ州は、インドの中でも平均寿命が長いことで知られています。その理由の一つとしては、識字率が高く衛生教育が普及していることがあげられます。もう一つの理由は、近年西洋医学が大きな力をもつようになったインドの中でも、ケララ州では未だに伝統医学のアーユルヴェーダが息づいていて、人々の日常の生活で実践されていることにあると思われます。

 

例えば、町中の安食堂では、水の代わりにハーブで出した薬草水(Medicated Water)が供されています。また、ケララ州の庶民の食卓に供される南インド料理は、野菜と穀物(とくに米)と新鮮な魚介類が中心で、調理に油脂をあまり使わないなど、健康的な料理であることもその一例であると言えるでしょう(南インド料理の魅力と健康的な特性については、後日改めて投稿を行う予定です)。


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伝統文化の叡智を見失った帰結

 

しかし、インド全体では、生活習慣病が確実に増加しています。西洋的な教育を受けた中産以上のインテリ階級にその傾向が強いようです。

 

近年では、欧米的な生活にどっぷり浸かった結果生活習慣病に苦しめられている上流階級の一部では、逆にアーユルヴェーダへの回帰が見られます。西洋医学があまり普及していない田舎でも、アーユルヴェーダは日常の健康維持や簡単な病気の治療に活用されています。

 

しかし、人口の大部分を占める都会では、人々の多くはアーユルヴェーダよりも西洋医学に頼っていますし、生活習慣病などの慢性疾患が急速に増えています。

 

インドの人たちは、自分たちの伝統の素晴らしさを見失い、欧米(西洋)の文化を盲目的に取り入れてきた為に不健康になりつつあると言えるのではないでしょうか?

 

そして、同じようなことは、私たちの国日本でも起こりつつあると言えます。日本一の長寿県だった沖縄で、特に若い世代を中心として平均寿命が急速に短くなりつつあることはその典型であると言えるでしょう。

 

沖縄の人の身体と心を蝕むアメリカ文化の影響

 

その転落の原因は、沖縄の伝統食からアメリカ型食文化への急速な転換と、自動車に依存しきった生活による慢性的な運動不足によるものだと言われています。

 

さらに、個人主義の台頭により、沖縄の人々を結びつけていたコミュニティーの絆(結:ゆい)が失われたことも大きな要因の一つでしょう。社会的な絆を失った孤独な生活は、免疫力の低下によって寿命を短くしますし、地域コミュニティーの崩壊により沖縄の若者の自殺率が急増している(日本最高となっている)からです(人と人の絆の中で生きてきた人たちにとって、個人の利益のために生きなければならない個人主義的な生活は、精神的なストレスが多い生活なのです)。

 

伝統医学による体質改善や根本的な治癒よりも、近代西洋医学による目先の症状の解消や延命を優先し、免疫系の機能を始めとする自然治癒力が失活し、生命力が低下したことも一つの要因でしょう。

 

これらは、いずれも、伝統文化の価値を見失い、アメリカが主導しグローバルスタンダード化を図っている西洋的な諸思想(人と人の絆よりお金を優先する資本主義や個人主義の価値観、民主主義、西洋の物質文明など)を無批判に受け入れてきたことによりもたらされたものだと言えます。

 

沖縄で起きつつあることは、日本全体で起きつつあることのひな形であると言えるでしょう。

(その10に続く)

スイカやキュウリにも岩塩と温性のスパイスがかけられる

 

また、アーユルヴェーダでは、スイカを食べる時も、(とくにカパ体質の人は)岩塩と胡椒や唐辛子など温性でアグニを高めるスパイスをかけて食べることを勧めています。日本でも、昔はスイカには塩をかけて食べるのが常識でした。塩をかけると、甘さが引き立つとともに、アグニを保つのに役立つという効果がもたらされます。


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インドや亜熱帯地域のネパール南部などでは、長距離バスの乗客に対して、かごにのせたキュウリ(日本のものより太くて大きい)を売りに来ることが多いですが、このキュウリにも岩塩温性(熱性)のスパイスである赤唐辛子の粉がかけられています。

 

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キュウリは、水分を多く含むとともに身体を冷やす(のぼせを解消する)性質をもっていますので、熱中症や脱水の予防にもってこいの野菜です。キュウリを岩塩や赤唐辛子とともに食べるのは、体を冷やし水分を補給しながら消化力を落とさないための生活の知恵だと言えるでしょう。

 

サトウキビ・ジュースにも岩塩が入れられる

 

なお、岩塩は、インドやネパールの暑い地域で売られている冷たいサトウキビ・ジュースにも加えられることが常識になっています。岩塩を入れるとサトウキビの甘さがグッと引き立ち、またサトウキビ汁だけを飲んだ時のように甘ったるい味ではなく引き締まった味となり、とても美味しくいただけます。

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岩塩入り冷飲食物は脱水症の予防にもなる

 

また、岩塩はナトリウムの補給にもなりますので、岩塩をふりかけたスイカやキュウリ、岩塩を入れたサトウキビ・ジュースは暑い気候の中の脱水症の予防にも最適だと言えます。サトウキビ・ジュースに岩塩を入れて飲むと喉の渇きが一層癒されるのは、電解質(ナトリウム)が補給されること(を身体が感じ取ること)によるのでしょう。

 

スイカやキュウリには、カリウムが多く含まれていますので、スイカやキュウリに岩塩をふりかけて食べると、電解質をバランスよく摂ることができます。ナトリウムには尿量を少なくし(循環血液量を増やし)血圧を上げる作用があり、カリウムには利尿を促し(循環血液量を減らし)血圧を下げる作用があります。したがって、血圧を正常に保つ為には、両者をバランスよく摂取することが大切です。

 

日本の伝統飲料にも脱水を予防する智慧が隠されている

 

日本にも、暑い季節に梅番茶、塩昆布茶、梅昆布茶などを飲む習慣がありました。

 

昆布などの海草類は身体を冷やす性質(寒性)をもち、梅干しには身体を温め消化力を上げる性質があります。梅自体の性質は「平性」(身体を温めも冷やしもしない中間の性質)ですが、天日に干すことで太陽エネルギー(陽気)を吸収し、「温性」に変わります

 

また、梅には疲労回復物質であるクエン酸が豊富に含まれているので、梅番茶や梅昆布茶は、夏バテ防止にも有効です。昆布は、血圧を下げる作用を持つアルギン酸ナトリウムを豊富に含んでいますので、血圧を上げる塩化ナトリウム(塩)も含む塩昆布茶は、血圧をちょうど良い状態に保つのに良いと言えるでしょう。

 

これらの日本の伝統的飲料も、暑い季節に消化力を保ち、かつ汗で失われた電解質を補給脱水症を予防するための優れた生活の智慧だったと言えます。


適量の自然塩(岩塩や海塩)は健康に有益

 

なお、塩化ナトリウム(食塩)単独では、血圧を上げる方向にしか働きませんので、塩分の摂り過ぎには注意が必要です(そのため、健康の為には塩分摂取を少なくすすることが一般的に推奨されています)。しかし、天日塩(海塩)や岩塩などの精製していない自然塩に含まれるニガリには、血圧を下げる作用があることが動物実験によって確認されています。したがって、ニガリを含む自然塩を摂るようにすれば、高血圧を引き起こす心配が少なくなると言えます。

 

適量のナトリウムは人体にとって有益ですし、すでに述べたように岩塩にはアグニを高める(消化力を上げる)作用があります。岩塩には、他にも頭痛の解消、疲労回復、殺菌解毒など様々な薬効がありますので、適量摂取することは健康に良いと言えるでしょう。

 

なお塩の四性(寒涼温熱の区分)は、中医学(中国伝統医学)や漢方では「寒性」(身体を冷やす)とされていますが、アーユルヴェーダやユーナーニー医学(イスラム伝統医学)では、「温性」(身体を温める)とされています。これも、ジャルジーラについて解説した投稿のミントの薬性についての補足説明の中で述べたように、産地による違いかもしれません。いずれにせよ、消化力を上げる(食欲を増進する)作用があることは共通しています。

  

消化力を保つ日本の伝統健康飲料「冷やし飴」

 

かつて(関西地方を中心とした)日本の夏の清涼飲料の定番だったものに「冷やし飴」があります。麦芽を抽出したものと水飴(や米飴)を湯で溶き、生姜搾り汁や卸し生姜を加えた飲料を冷たい状態で飲むもので、香り付けにシナモンを加えることもあります。さしずめ日本版ジンジャーエールと言ったところでしょうか。


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これも、生姜シナモンなど温性でアグニを強める成分を含んでいるので、暑い夏に身体を冷やしながら消化力を保つ日本伝統の健康飲料の一つだったといえるでしょう。

 

なお、冷やし飴の原材料を湯で溶いて作った直後のものや、冷やし飴として市販されている商品を加熱したものなど、温かいものは飴湯と呼ばれています。

 

冷やし飴は、缶入りやビン入りの清涼飲料が普及するとともに町中で見かけることは少なくなりましたが、今でも、関西地方では、縁日の屋台、お好み焼き屋、うどん・そば店、喫茶店などで供されることがあります。

 

(その9に続く)

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