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2022年、タワマンの「大量廃墟化」が始まることをご存じですか

8/17(土) 8:01配信
現代ビジネス
 リタイア世代から外国人家族まで、さまざまな人が住むタワマン。最大のネックは「修繕費」の問題で、見て見ぬふりをしているうちにタワマンが廃墟になってしまった、という可能性もあるのだ。

いまマンションを「買っていい街」「ダメな街」を実名公開する
「修繕ラッシュ」が来た
 都心の最高級リゾートをあなたの手に――。

 東京湾を望む一棟のタワーマンション。歯の浮くようなコピーに夢を抱き、当時は購入希望者が殺到した人気レジデンスだったが、いまは見る影もない。

 築15年、400戸近いマンションに、現在の居住者は3割にも満たない。外壁に割れが目立ち、エントランス前は雑草が伸び放題になっている。

 ジムやバーなどの共用部は閉鎖されて数年が経つ。次のマンションの頭金にもならないほど資産価値は下がり、引っ越すこともできず、逃げ場を失った人たちがただ住んでいるだけ……。

 いま、タワマン人気はピークにある。不動産経済研究所の調査によると、'08年から'17年の10年間で、首都圏には341棟もの高層マンション(20階建て以上)が建てられた。戸数にして、じつに11万1722戸にのぼる。

 だが、そのタワマンが巨大な廃墟と化してしまう冒頭のような光景が、日本中に現れる事態を想像する人は少ない。

 不動産業界ではかねてから都心部の住宅の過剰供給がささやかれてきた。デベロッパーにとってタワマンはまさに「打ち出の小槌」であり、いまだ根強いタワマン人気に応えるように、フロンティア開拓は進んでいる。

 これまでタワマンといえば、豊洲や芝浦といったベイエリアか、武蔵小杉や川口など都心にアクセスしやすい郊外が人気を集めていた。近ごろ、デベロッパーは「第三の道」として、都心の再開発地域に目をつけ、新たな購入層の獲得に躍起だ。

 たとえば東京下町の代表格・月島の「もんじゃストリート」には低層建築のもんじゃ屋が軒を連ねるが、肩を並べるように地上32階建てのタワマンが建とうとしている。

 また、日本有数の商店街がある武蔵小山の駅前にも41階建ての巨大レジデンスが建ち、東京五輪直後の2021年に入居を控えている。

 そんなタワマンブームに火が付いたのは2000年前後のこと。当時建てられた超高層マンションは早くも15〜20年選手になろうとしているわけだが、ここにきて重大な問題が表面化してきた。

 それは、類を見ないほどの大規模で高額な「修繕」をどうするか、ということだ。

売り手はリスクを伝えない
 基本的にマンションは、12年から15年の周期で大規模修繕を行う。最初は外壁の修理などを行い、次にエレベーターや排水などの内部的な不具合を改修する。

 これはタワマンも同様で、目下第一次修繕ラッシュに突入しているが、なにぶん戸数が多いため、一棟の修繕計画は10年以上、2ケタ億円のカネがかかることもザラにある。

 高層マンションブームの先駆けとなったのが、川口にある「エルザタワー55」だ。

 '98年に竣工した総戸数650、地上55階建て、高さ185mのこの物件は、'15年にはじめての大規模修繕工事を開始し、2年がかりで完了した。総費用は約12億円。単純計算で1戸あたり約185万円の負担だ。

 修繕にいたる長い道のりを取材してきた住宅ジャーナリストの山本久美子氏は次のように語る。

 「超高層の工事は通常の足場だけではできないうえ、エルザタワーは低層・中層・高層でそれぞれ外観のフォルムが変化するデザインになっていて、工事は難航することが予想されました。

 そこで修繕は、マンションを建設した元施工会社に工法の提案を依頼するところからはじまったのです」

 管理組合に修繕委員会を設置したのは'07年のこと。施工の妥当性や料金を見積もるコンサルタントを募集したのは'12年になってからだった。

 「コンサルタント会社を1社に絞り、業務委託契約を締結したのが'13年。マンション所有者への説明会もきちんと開き、'14年に施工業者の決定にこぎつけました」(山本氏)

 途中3.11の影響もあったが、修繕完了までに10年。ただし、これは幸せなケースだ。エルザタワーのように投資目的の所有者が少ない物件は、管理組合もしっかり機能している。

 だが新しく建てられたタワマンのなかには投資用に購入されているものも多い。最初の修繕時期にあたる築15年を迎えるころには、すでに所有者が入れ替わっているケースが大半だ。

 しかも300戸をゆうに超えるようなタワマンでは、実際の入居者も子育て世代から外国人までさまざま。その全員が管理組合に協力的、ということはさすがに考えにくい。

 こうした状況をさらに難しくするのが、デベロッパーの態度だ。タワマンの売れ行きが好調な折、あえて15年後に訪れる修繕の難しさなど、口にするはずがない。

 オラガ総研代表の牧野知弘氏はこう指摘する。

 「これまで、デベロッパーは修繕積立金の費用負担を実際の想定以上に安く設定してマンションを販売してきました。

 タワマンは高層用のエレベーターやジムなどの共用設備が多く、修繕コストが膨らみやすい構造にあるにもかかわらず、『戸数が多いから一人あたりの負担が少ない』と販売元は説明するわけです。

 ところがいざ修繕となると積立金が足りず、住民のあいだで大モメになる。こうした事態がこれから頻発するでしょう」

住民の意見がまとまらない
 国土交通省は、ガイドラインで12年周期前後の大規模修繕を行うことを推奨している。

 大手デベロッパーが販売するマンションの場合は、長期修繕計画書を売り主か施工業者が作成することが多いが、ここに書かれた数字がデタラメだったというケースもある。

 管理組合向けコンサルティング会社・ソーシャルジャジメントシステムの廣田晃崇氏は次のような例を挙げる。

 「長期修繕計画書では、何年目の工事にいくらかかるか概算が記されていて、そこから積立金の月額を割り出します。

 ところが中央区のあるタワマンでは、基礎的な数値に間違いが散見されました。自動ドアの枚数が実際の半分だったり、消火設備の数も少なかったりして、30年間でかかる修繕費が5億円近くも過少に見積もられていたケースがあったのです」

 こうした明らかな見積もりの甘さには、デベロッパーの「売らんかな精神」があることは否定できない。住民側が問題に気づくためには、やはり結束力の強い管理組合が必要になってくるが、ことタワマンではそううまくいかない。

 首都圏にある総戸数600超の某タワーマンションでは、30年の修繕累計コストは50億円以上におよぶと見積もられている。ところが、その間に見込まれる修繕積立金は半分にも満たない23億円。

 今後どうやってその差額を埋めるのか、そもそも15年目の第一次修繕を終えられるのか。管理組合の議論は今日も続いているという。

 このマンションで理事の経験がある60代の住民の一人はこう嘆息する。

 「私は早期退職で入ったおカネで家を買い、終の棲家と思って住んでいますが、上層階には若いお金持ちや投資目的の外国人もいる。普段の生活では没交渉ですから、理事会での発議も実現しないことが多いです。

 たとえば、あるとき立体駐車場の共用部に重大な不具合が見つかり、1億円近くの費用がかかることがわかった。

 そこで理事会で一時金の徴収を提案したのですが、想像以上に反対意見が多く、ロクに話し合いも設けられないまま否決されてしまったことがありました。それぞれ、マンションについての見解があまりにも違うと感じましたね」

 実際、「私が住んでいるうちだけ大丈夫なら、あとはどうなってもかまわない」と考えたり、一方で共用部の破損で資産価値が下がることに神経質な人がいたりと、「コミュニケーションなき利害関係」がこじれがちなのがタワマンの現状といえる。

 さらにいま大量に建てられている新築のタワマンの管理組合は、これまでのタワマン以上に難しい問題を抱えている。

 「東京五輪に向けて上昇しているのは地価だけでなく、人手不足による人件費や資材費も同様。ですが、五輪後に地価の高騰が落ち着いたとしても、人件費や資材費は右肩上がりになる可能性が高い。

 五輪後、建物に大きなトラブルが露呈すれば、修繕積立金の値上げを余儀なくされますし、修繕しなければ資産性に大きな問題が生じるかもしれません」(前出・牧野氏)

 つまり、資産価値はこれから下がっていく一方なのに、修繕費は高騰を続けるのだ。

壊すこともできない
 はたしてタワマンを住居として修繕しつつ、維持し続けることは可能なのだろうか。

 「じつは、ほとんどの物件で長期修繕計画は30年分しか組まれておらず、その先はどうなるのか、国などでも問題視されています。

 30年以降の修繕となると、給排水管や電気系統、エレベーターなどの設備系の大規模改修も必要になってきて、その費用は1回目の比ではありません。

 いざ修繕積立金を値上げするとなると、投資目的でマンションを買い、人に貸している人は利回りが悪くなるので、なかなか首をタテに振らない。そうすると修繕の時期になってもおカネが用意できない事態に陥ります」(経済評論家の平野和之氏)

 修繕できないのなら、いっそ壊して新しくするという手もあるだろう。しかし、老朽化したタワマンに住んでいるのは、簡単に引っ越すことができない「取り残された人々」。

 そうした住民を立ち退かせたとしても、タワマンを壊すには、これまた膨大な費用がかかる。

 「大規模修繕ができていないタワーマンションは次から次へと売りが出る可能性がある。値段をどれだけ下げても、高い修繕積立金を肩代わりしなければいけない物件に買い手はつかないでしょう。

 結果、修繕されずに放置され続け、壊すこともできず廃墟と化したタワマンの誕生です。

 とくに心配なのは、武蔵小杉など、同じような時期にたくさんのタワマンが建った地域です。売りが売りを呼ぶ負の連鎖が街全体で起こる可能性がある。そう考えると、街が一瞬にしてゴーストタウン化するリスクもあります」(平野氏)

 一度建てたら、簡単には修理することも壊すこともできないタワマン。その姿はさながら「住む原発」といえる。

 ひとたびの建設ピークを迎えた'08年に建てられたタワマンが、15年目になるのは2022年。まさにこれからタワマンの問題は深刻化する。あなたは、それでもまだタワマンを買いますか? 
週刊現代
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最終更新:8/17(土) 11:05
現代ビジネス

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