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まさかとは思うが「ソフトバンク・ショック」はありえるのか?

6/14(金) 6:31配信
現代ビジネス
日本株は長期的には上昇を続けるであろうが
 筆者は、これまで、日本の株式の将来については、当サイト2018年10月6日の記事「今後4半世紀の間に日経平均株価は10万円に達することができる」、今年5月26日の記事「『この先、日本では不動産を買うな株を買え』といえるこれだけの理由」などで述べたが、長期的に強気の見通しを崩していない。

5年後、10年後に「生き残る会社・消えそうな会社」結果一覧

 また、米中貿易戦争=「第2次冷戦」の結果いかんによっては、短期的波乱も見込まれるが、5月29日の記事「世界経済低迷の最大原因・中国が退場すればデフレが終わる」で述べたように、長い目で見れば共産主義中国などを原因とする世界的なデフレを収束させる良い結果になるはずである。

 そもそも、現在の世界的な経済低迷の大きな原因は、2001年に中国のWTO加盟が認められたことにある。加盟申請そのものは、1986年に当時のGATTに対して行われたのだが、1989年6月4日の天安門事件などが起こり、共産主義中国を先進自由主義諸国の仲間に入れるべきかに関して、15年も議論が続いたのだ。

 加盟後の中国は、フェイス・ブック、ツイッターなどをはじめとするSNSを排除するだけではなく、国内産業を政府の力で保護し、進出する外資系企業に対して先端技術の提供を強要した。それにもかかわらず、先進諸国においてファーウェイのような共産主義中国のフロントと米国から糾弾される企業を通じて不公正な行いをやりたい放題であったことを考えると、2001年の中国WTO加盟は完全な誤りであり、トランプ大統領が現在その誤りを是正するために孤軍奮闘しているといえる。

 ただ、大きな改革・是正には痛みも伴う。そもそも、長期的に株価が上昇するといっても一本調子の右肩上がりではない。チャートで言えば、ジグザグな上下動を繰り返しながら上昇するのだ。

 したがって、これからも短期的な急落は何回もあると考えられるが、現在、筆者が最も懸念しているのは「ソフトバンク・ショック」を原因とする急落である。

ITバブル崩壊前夜と同じ状況
 筆者は、日本は素晴らしい国だと思っているが、過去株価に対していつも強気であったわけではない。例えば、1990年のバブル崩壊の直後に「日経平均8000円説」を唱えて周囲から馬鹿にされたが、20年近くの歳月を経て現実のものとなった。

 ちなみに、当時を知らない読者のために申し上げれば、バブルの高値は4万円近くであり、崩壊した後も2万円の底値はなかなか割れなかった。

 筆者の強気派への転向は2008年に、日経平均が8000円を割って、長期的にチャート(テクニカル)用語でいう「ダブルボトム=2番底」を形成してからである。

 それ以来、某会合で毎回のように「ブル(強気)・ベア(弱気)」対決をしている友人がいる。

 ベア(弱気派)のK氏は、自ら主宰する独立系のファンドで多数の企業を上場させた敏腕ベンチャーキャピタリストだが、先日珍しく意見が一致した。

 「Kさん、ソフトバンクかなりやばくないですか? 何かあったら、株式市場全体に影響が出ると思うのですが……」

 「僕もそう思って、空売りしたんです。珍しく意見が一致したね!」

 これまでも述べたように、筆者自身はカラ売りをしないので、もしかしたらとんでもないチャンスを見逃しているのかもしれないが、続けてこんな話もしてくれた。

 「米国IPOの総額がこの2年で2000億ドルを超えたんだよね。ITバブルが崩壊した2000年の2年前からの状況とまったく同じなのが不気味だね……」

 ソフトバンクの10兆円規模のハイテク投資ファンド(ビジョンファンド)は、2大出資者がサウジアラビアとアブダビの政府系ファンドだが、そのうちサウジアラビアは、カショギ氏のサウジアラビア大使館での暗殺で国際的非難を浴び、先進自由主義諸国から厳しい目で見られている。

 また、投資先のハイテク分野に関しても、K氏の述べるように、めぼしい企業はほぼすべて上場あるいは上場準備に入り、次に成長する「期待の星」が見つからないのは事実である。

 もっとも、ソフトバンクは運営手数料などでがっぽり儲けるから、投資先が不振で出資者が大損してもかまわないのかもしれないが……。

いまは大ぶろしき企業が強烈な逆風を受ける局面
 前述のベンチャーキャピタリストのK氏が成功できたのは、資金注入を求めるベンチャー企業に対して辛口だからである。徹底的にビジネスモデルを精査し、問題点があれば率直に指摘する。彼の厳しい目にかなった企業だけに投資をするから成功率が高いのだ。

 実際、ベンチャーキャピタルに出資依頼をする起業家の多くの考えが甘いことは、筆者も以前ベンチャーキャピタルの運営に関わった時に痛感している。資金さえ集めればなんとかなると考え、投資家から集めた資金でポルシェなどの高級車を購入して乗りまわすこともある。成功する前に自分にご褒美をあげるというわけだ……

 投資資金を集めやすい、ベンチャーバブルの時期には、このような企業も資金をなんとか調達しながら生き残ることも多い。

 しかし、K氏が指摘するように、これからは資金を集めにくい時期に突入するし、K氏のソフトバンクに対する懸念の大きな原因もそこにある。

 ソフトバンクは、前記のような甘い考えのベンチャーとは違うとは思うが、大量の資金を市場・金融機関から集め、リスクの高い事業(一種のばくちとも言える)に投資してきていることは、よく指摘されることである。

 しかも、ここ1〜2年は、がむしゃらに資金調達しているように思える。

 例えば、現在の市場では「好ましくない」と評価される親子上場を強行し、しかも、大量の資金を調達(使う必要があるはず)しているにもかかわらず、投資家には5%水準の配当をするという、タコが自分の足を食べるような行為を行っている。合理的に考えれば、無配あるいは低率の配当にしたほうが、調達した資金を有効に使えるにもかかわらずである。

 その他にも、アリババ株式の売却も含む資金調達は加速している。これまでも「大ぶろしきを広げて資金調達をしてきた」企業ではあるが、ここのところの一連の動きを見ていると「末期」に差し掛かっているように思える。どう考えても、資金繰りに窮した企業の最後のあがきである。

 GAFAをはじめとするIT関連業界が頭打ちになり、棚から牡丹餅式の利益を得ることができなくなれば資金繰りに窮するのは当然だ。

 借金だらけで、ばくちを打ってきても成功してきた企業の悪運の強さには驚かされるが、運の良さというのはいつまでも続くわけではない。

第2のファーウェイになるのか?

 ZTEやファーウェイに対する態度を見れば、米国政府が本気で共産主義中国のIT産業(サイバー攻撃・工作活動を行っている)をたたきつぶすつもりであることは疑いの余地がない。

 そしてその攻撃は、順次共産主義中国と密接な関係を持つ他の国や企業に対しても行われるであろうことも明白である。

 日本のIT・通信関連企業でその筆頭にあげられるのがソフトバンクである。

 創業者の孫正義氏は、これまでの経緯を見る限り、ビジネス上もっともつながりが深い国ののひとつが共産主義中国である。ただし、ビジョンファンドに中国と同じく深刻な人権問題を抱えるサウジアラビアからの出資を受け入れたことから、「金さえ出してくれればどんな国でもいい」のかもしれないが……。

 6月4日には、保有するアリババ・グループ株式の一部を資金化。デリバティブ負債の取り崩しも含め、2020年3月期第1四半期に約1.2兆円を税引き前利益として計上する見込みだと発表している。

 今回の取引決済後、ソフトバンクGと子会社が保有するアリババ株は6億7400万株となり、19年3月末現在のアリババの発行済み株式に対する比率は26%になるという。

 アリババグループの総帥であるジャック・マー氏は2018年9月に、会長の職を2019年9月に退き張勇(ダニエル・チャン)CEOを後継に据えると表明しているが、筆者はこれが中国が小平の改革・開放路線を終了させ「毛沢東暗黒時代」に回帰を始めた象徴的な出来事であると考えている。

 マー氏は、2018年に中国共産党に入党していることが人民日報で報じられており、ソフトバンクグループの取締役を現在も務めている。

 さらには、ソフトバンクが基地局にファーウェイ製品を導入しているとも報道されている。米国CIAは既にソフトバンクと共産主義中国の関係は調査済みであろうから、もしCIAが何か情報をつかんでいるのであれば、ファーウェイ問題にある程度の決着がつけば、次はソフトバンクに矛先が向くかもしれない。

 トランプ大統領が訪日した際に「孫氏が駆け寄った」ということをニュースにするオールドメディアが多数あったが、そもそもこんなことをニュースにすること自体、メディアがソフトバンクにどれだけ忖度していることの証明である。

 また、このような手法は怪しげな商人のゴマすりであり、トランプ氏は孫氏の顔さえ覚えていなかったかもしれないが、政治家として当然のごとく愛想を振り舞った。

 大相撲観戦の帰り際に、「トランプ大統領の方から」わざわざ手を差し伸べて櫻井よしこ氏ら保守派の論客と握手をしたことを考えれば、孫氏の存在がトランプ氏にとってどれほど軽いものかが分かる。

 それどころか、米国からのソフトバンクへの圧力は既に始まっているのかもしれない。

 昨年来、菅義偉官房長官が「携帯電話料金は4割程度下げる余地がある」と繰り返し発言し、実際に料金が下がり始めているが、これもソフトバンクつぶしの一貫かもしれない。

 そもそも、日本国の官房長官が民間の商品価格にこれほど具体的かつ強力に関与するのは異例である。何らかの隠れた意図があると考えるのが自然だが、この値下げで最もダメージを受けるのはソフトバンクである。

 膨大な借金の返済に、携帯電話事業の収益が貢献しているのは明らかだし、他社も料金を値下げすればソフトバンクの価格面の優位性は無くなる。

 かなりうがった見方だが、日本政府が異例の行動を起こすときには「米国政府への忖度」が理由であることが多いのは事実である。

 首切り屋に過ぎないカルロス・ゴーン氏は、再建の神様としてもてはやされたが、「ゴーン事件」で奈落の底に突き落とされた。孫正義氏もIT起業家としてもてはやされた時代は終わり、「ソフトバンク・ショック」で梯子を外されて転落するのも時間の問題ではないだろうか? 
大原 浩
4/4ページ
最終更新:6/14(金) 8:16
現代ビジネス

自己防衛のつもりが法律違反かも! ドライブレコーダーを自分で取り付ける際の注意点とは

6/9(日) 11:40配信
WEB CARTOP
DIY装着は可能だが取り付け場所には注意が必要!
 平成には「自己防衛」という言葉が流行ったこともあったが、マイカーの自己防衛手段として、ドライブレコーダーはいまや必須アイテム化している。ネット販売などで探せば数千円で見つけることもできるので、DIYで装着しているというユーザーも少なくないだろう。実際、マウントステーを両面テープで貼り付けるだけで、あとはアクセサリー電源につなぐだけで装着できるので、わざわざプロに頼むまでもないと思う人もいるだろう。

うっかりミスで80万円! 意外と知らないクルマの高額罰金6選

 しかし、フロントガラスには「車検シールと法令点検シール以外は貼れない」という話もある。果たして、DIYでドライブレコーダーを装着しても大丈夫なのだろうか?

 結論からいえば、一定の基準を守っていればドライブレコーダーをフロントガラスの内側に装着することは認められている。その基準について保安基準では次のように規定している。

◆車室内後写鏡により遮へいされる範囲等のほか、前面ガラスの上縁であって、車両中心面と平行な面上のガラス開口部の実長 20%以内の範囲又は前面ガラスの下縁であって、車両中心面と平行な面上のガラスの開口部から 150mm 以内の範囲

 前方に向けた『道路及び交通状況に係る情報の入手のためのカメラ』(ドライブレコーダーを保安基準的に表現すると、このようになる)は、運転手からするとルームミラーの影に隠れる場所、もしくはガラス上縁から20%以内の範囲であればどこでも装着可能だ。

 余談だが、ドライブレコーダーについては運転手を監視するタイプもフロントガラスに取り付け可能。そのほかADAS(先進運転支援システム)用のカメラやレーザー、オートワイパー用の雨滴センサー、オートヘッドライト用のセンサー、ETCユニット、各種アンテナ類、バックミラーといったアイテムがフロントガラスに貼り付けることが認められている。それぞれ基準があるので、どこにでも貼り付けてよいというわけではないが……。

夏の車内は過酷! 取り扱いにも注意したい
 さて、ドライブレコーダー選びにおけるポイントとして解像度を一番に考えるかもしれないが、じつは他の機器との干渉がもっとも気を付けたいポイントだ。とくにラジオやテレビにノイズが入ったり、GPSに影響してナビがズレたりしてはストレスだ。そうした部分で対策がしっかりしていて安心して購入できるのは純正アクセサリーのドライブレコーダーだ。さらに装着についても後付け感の少ないものが増えてきている。

 また、純正アクセサリーやカーオーディオメーカーが提案しているナビとセットになっているドライブレコーダーは、ナビの画面に動画を映し出すことができるなど便利な機能を持つものもある。数千円の製品でも十分にクリアな動画を録ることはできるが、AV機器とリンクした便利機能は慣れると、いまさら戻れないという気持ちになるものだ。

 ところで、DIYで取りつけている状態をみると、アクセサリーソケットからドライブレコーダーまで電源ラインがブラブラとしているケースも見受けられる。さほど視界を遮らないとはいえ、決してスマートとは言えず、そうした処理を考えても配線を隠すなどひと手間をかけることが大事だ。その意味でも、ディーラーやカーショップなどできちんと取り付けてもらうといいだろう。

 ドライブレコーダーに関する注意点としてはメモリーカード(SDメモリーやマイクロSDメモリーが多い)の品質やライフにも気を付けたい。ドライブレコーダーの装着されているフロントガラスの内側は夏場には80度を超えることもあるほど過酷な場所であり、メモリーが熱で壊れてしまうこともある。気付かぬうちに記録できていなかったということにもなりかねない。

 ドライブレコーダーのメモリーカードは入れっぱなしにせず、きちんと録画できているかを確認するほか、ある程度は定期的にフォーマットするなどしたい。また、基本的には消耗品といえる。気になるのであれば、たまには新品に交換することを考えるといい。
山本晋也
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最終更新:6/10(月) 13:05
WEB CARTOP

レギュラー・ハイオク・軽油! クルマに指定と違う燃料を入れるとどうなる?

6/14(金) 6:21配信
WEB CARTOP
軽油とガソリンの間違えはどちらもかなりのダメージに!
 一昔前だとコンパクトカーのような大衆車はレギュラーガソリン、輸入車やハイパフォーマンスなスポーツカーなどはハイオクガソリン、トラックなどの働くクルマは軽油というようなイメージが強かった。

バカでかいガソリンタンク容量をもつ国産車4選!

 しかし、最近ではコンパクトカーでもディーゼルエンジンのモデルも存在するし、トラックでもガソリンエンジンを搭載しているものがあるように、イメージだけで給油すると油種間違いを起こしてしまうことも(軽自動車だから軽油、なんてことも笑い話ではなく実際にあるようだ)。そこで今回は指定の油種と違うものを入れてしまったらどうなるかを解説していこう。
1)レギュラーガソリン仕様にハイオクガソリンを入れた場合
 レギュラーガソリン仕様のクルマにハイオクガソリンを入れた場合はとくに問題は起こらない。なかにはハイオクガソリンだからハイパフォーマンスでパワーや燃費も上がると思っている人もいるかもしれないが、ハイオクガソリンはオクタン価が高いガソリンという意味で、あくまでノッキング(異常燃焼)の起こりにくさを示す数値が高いだけなので、そもそもレギュラーガソリン仕様のエンジンに対してパワーアップの効果は望めないだろう。

 ただし、メーカーによってはハイオクガソリンには洗浄剤が入っているものもあり、たまにハイオクガソリンを入れると燃料ラインが綺麗になる効果があるため、まったく無意味と言うわけでもない。
2)ハイオクガソリン仕様にレギュラーガソリンを入れた場合
 ハイオクガソリンはオクタン価が高くノッキングしにくいという特性があると前述したが、ノッキングはエンジンの圧縮比が高いほど出やすくなる。そのため高出力なスポーツカーなどはハイオクガソリン仕様となっているというわけだ。ただ、一般的な車両には、レギュラーガソリンが入れられた時用のエンジンマネージメントプログラムも用意されており、出力の低下や燃費の悪化などの可能性はあるがレギュラーガソリンでも走れるようにできている。

 ただし、そもそもオクタン価の高いガソリンが使われている地域の輸入車や、本気のハイパフォーマンスモデル(例:日産GT-R)などはそもそもレギュラーガソリンに対応するプログラムが存在しないので、中長期的に見るとエンジンにダメージを与える可能性が高い。

3)ガソリン仕様に軽油を入れた場合
 ガソリン仕様車に軽油を入れた場合は、元のガソリンがどのくらい残っているかにもよるが、しばらくは普通に走れるものの、エンジンに不調をきたして黒煙がマフラーから出るようになり、エンジンが停止してしまうだろう。

 これはガソリンと軽油で燃えやすさに違いがあるためで、エンジン内部でそもそも着火しないためエンジンが止まってしまうのだ。そのため、万が一入れ間違えたとしても燃料系統の洗浄やフィルター類の交換で復帰できる可能性が高い(とはいえ工賃などを含めるとまあまあの出費となるが)。
4)ディーゼル仕様にガソリンを入れた場合
 ディーゼルエンジンは軽油が持つ潤滑性能を用いて燃料ポンプや燃料噴射ノズルを潤滑しているが、ガソリンには軽油ほどの潤滑性能がないため、燃料ポンプや噴射ノズルに大きなダメージを与えてしまう。そして白煙を吹いてエンジンが停止してしまうというワケだ。

 こうなると当然修理にかかる費用も莫大となり、場合によってはエンジン載せ替えということにもなりかねない。今回のなかで一番被害が大きいのはこのパターンとなるだろう。

 ただ、誤給油に気づいた段階で燃料の抜き取りを行えばここまでの被害にはならないが、給油するときは間違っているとは思っていないので、ほとんどの場合走行してしまって気づくというパターンになってしまう。そうならないためにも代車やレンタカーなど、普段乗らないクルマの給油のときは念には念を入れて油種の確認をしたいところだ。
小鮒康一
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最終更新:6/14(金) 6:21
WEB CARTOP

カネカ「育休明けの転勤」騒動に覗く戦時体制の残滓

6/12(水) 6:15配信
JBpress
 (中嶋よしふみ FP・シェアーズカフェ・オンライン編集長) 

 夫が育休を取得した所、育休明けに突然転勤を命じられた――。

炎上のきっかけとなったツイート

 6月1日の土曜日、ツイッターでこんなつぶやきが話題になった。その夫の妻を名乗る女性のツイートはあっという間に拡散し、執筆時点でリツイートが4万件超、「いいね」は5万件を超えている。女性も育休中で復帰寸前、家も買ったばかりで保育園もやっと決まった状況だという。

 そして少しでも良いから転勤の時期を遅らせることはできないか交渉したものの取りつくしまもなく、夫が退職を決意した後は有給の消化もできなかった・・・。

 社名こそ明記しなかったものの「カガクでネガイをカナエル会社」であると女性がつぶやいたことで、夫の勤務先は大手化学メーカーのカネカであることが判明する。

 この騒動により「カネカはとんでもないブラック企業である」と大炎上したが、一方で転勤を命じて赴任するまで1カ月もかけないことは大企業では日常的に行われている。「育休明けで、しかも家を買った直後に突然転勤させるなんて酷い」というコメントも多数見かけたが、では独身で賃貸住まいならば問題は無いのか?  そんな理屈は通らないだろう。

 この問題のキモは「カネカが酷いかどうか」という個別の問題ではなく、「突然の転勤がなぜ多くの企業で当たり前のように行われているのか?」という構造的な問題だ。

 そこには100年近くも前から続く「ある体制」が影響している。

SNSを知らないカネカ
 カネカの話題について、一旦整理しておこう。

 土日の騒動から、月曜日には「日経ビジネス」、「ハフィントンポスト」の両誌がツイートをした女性へのインタビューとカネカへの取材を掲載した。カネカ側は当初、当社に向けたツイートか確認できない、事実関係も含めてコメントしない、と言及を控えた。
 結局はその後、ツイート内容は当社の見解と異なる、といった社内メールや正式なリリースを出すに至る。リリースでは育児や介護など事情を抱える社員は他にも多数いるから特定の社員だけ特別扱いはしない、男性社員が育休を取得したことへの見せしめではない、転勤はむしろ余裕のあるスケジュールだった、という。そして転勤を延期してほしいという希望についても「希望を受け入れるとけじめなく着任が遅れると判断」して拒否し「当社の対応は適切」と締めくくっている。
(参照・当社元社員ご家族によるSNSへの書き込みについて|株式会社カネカ 2019/06/06 リリース)

 「育休明け直後に転勤は酷い」と炎上したことでカネカの評判は急落した。筆者が確認した限りでは、ヤフー! ニュースで「日経ビジネス」の記事が雑誌カテゴリの総合アクセスランキングで1位となった。「日経ビジネス」や「ハフィントンポスト」本体のサイトも含めれば、アクセス数は合計で数百万から1000万程度のPVを集めたのではないか。マイナスの宣伝効果に換算すれば数十億円に達しかねない。

 会社の対応からその後の広報対応まで、すべてが下手クソの一言に尽きる。一方で、会社側の対応を見ると、社員に辞めて欲しい事情でもあったのか、過剰なほどの強硬な態度は異様に見える。

 ツイートの通りであれば、退職が決まった後にも有給を消化させないなどおかしな対応も目に余る(これは違法行為にあたると指摘されている)。社員と企業間でトラブルでもあったのかと邪推したくなる状況だが、会社側として個人情報や業務に関する詳細な事情を詳しく出すことは無いだろう。今後真相が明らかになることは無いと思うが、炎上トラブルまで発展した時点で企業側の負けは確定している。

 最近の事例ではセブンイレブンの炎上を見ても分かるように、法的な正しさよりも消費者や従業員、取引先に対して「誠実かどうか」が炎上する・しないの境目となる。確かに転勤を命じること自体は決して違法ではなく、育児や介護の事情は配慮するようにという定めもあるが、これもサービス残業や最低賃金のように法律でキッチリと決められた決まりではない。

 しかしこのような対応が外部に漏れた時にどれだけマイナスの影響を与えるか、ネットやSNSを多少でも理解していれば素人でも分かる話だ。わざわざリリースで強調するような話でもない。

なぜ突然の転勤は発生するのか? 
 カネカが酷いという話を一旦横に置けば、このような転勤は大企業では決して珍しくない。大手企業ならば入社の時点で転勤があることは社員も納得の上で入社する。内示から1カ月もかけず転勤させることや、小さい子どもがいたり家を買ったばかりだったりといった事情が考慮されないことも、表沙汰にならないだけでごく日常的に行われている。

 表沙汰にならない理由は、当たり前すぎてわざわざ報じる程のニュースバリューが無いからだ。筆者の父親も、兄が生まれた直後に東京から金沢に転勤があったと聞く。今回の件がニュースになった理由はツイッターで炎上という目新しさがあったからだ。

 転勤の無い企業でも社員に滅私奉公を要求することは何ら珍しくも無い。つまり「日本の企業は多かれ少なかれカネカ的である」ことは紛れもない事実だ。

 そして転勤の拒否は解雇の理由にもなりうる。通常、解雇四要件といって解雇をする際は強い制約が加わり実質的に倒産寸前にでもならない限り解雇はできない。企業が行うリストラはあくまで退職者の募集、自主的な退職という体裁を取る。その実態が退職の勧奨であってもだ。しかしその一方で転勤の拒否で解雇可能というのはあまりにアンバランスに見える。なぜそんな仕組みになっているのか。

 もはや珍しくなくなったリストラ部屋や、外資系企業で話題となった自主的な退職に追い詰める退職マニュアル、そして社員をうつ病に追い込んで辞めるように仕向けろとブログに書いたブラック社労士など、解雇ができないことで自主的な退職に追い込むやり口はいくつもある。

 問題社員はうつ病にして辞めさせればいい、とブログに書いたブラック社労士は特に大きな話題となった。ブログの内容は「敬語を使えない問題社員を辞めさせるにはどうしたらいいか?」という内容で、就業規則の変更、指導の繰り返し、注意や処分内容を書面にして渡すなど、うつ病になるように仕向けろという部分を除けば様々な手順を踏むように書いてある。

 これは後から社員に解雇無効で訴えられないために必要な手順だ。「問題行動を起こして改善の余地がまったく無い社員をクビにするにはどうしたらいいか?」と真っ当な弁護士や社労士に相談しても同じアドバイスをするだろう。ここまでやらないと解雇をしても裁判になれば不当解雇で負けてしまう。

解雇以外の雇用調整が働きにくさを助長する
 「ブラック社労士とカネカが一体何の関係があるんだ?」と思ったかもしれないが、解雇ができない状況で、それでもなお雇用調整をするために仕方なく転勤が行われている。それがもっと酷くなれば無理やり、なおかつ表面上は合法的に追い出すためにリストラ部屋やブラック社労士になる。これらは無関係の話ではなく、それどころか密接に関係のある地続きの話だ。つまりいずれも雇用に関する構造的な問題と言える。

 カネカが「けじめ」という攻撃的な言葉を使ったように「会社の命令に従わない人は辞めてくれて結構、場合によっては解雇もいとわない、なぜなら解雇をしない代わりにそれ以外の無理は受け入れる約束で雇用は成り立っている、ワガママは許さない」というのがカネカ側のスタンスで、これも多くの企業にとっては説明するまでも無い常識となっている。そして転勤の拒否が解雇の理由になりうるように、一定程度の法的根拠もある。

 現在では女性が産休・育休・時短勤務を取得することは以前と比べてかなり容易になったが、なぜ昔は出産をきっかけに退職することが当たり前だったのか。それは社員が一時的に休んで復帰したり、時短で既定の勤務時間すら働けなくなったりする状況は企業の労務管理上、極めて面倒臭いからだ。

 解雇ができないから残業時間で雇用調整を行うほか無い。忙しい時は長時間の残業、平常時は残業が少ない、不況の時は定時で帰るといった形ならば、不況になってもギリギリまで解雇をしないで済む。そして東京で人が余って大阪で人が足りなければ、転勤で調整すれば解雇を避けられる。

 女性が敬遠されていた理由は、このような会社にとって都合の良い働かせ方ができないから、という理由による。男女雇用機会均等法ができて女性差別が表面上は禁止されて以降は、補助的な業務に限定して低い給料で雇う一般職ができた。かつて短大卒の女性が好まれた理由が、結婚や出産による退職までの期間が四年制の大学卒より二年長い、というから呆れてしまう。

終身雇用が終わった背景
 独立・起業をしている筆者からすると、このような状況は異常に見えるが、「社員は人生を会社に捧げて当然」という発想は日本企業で長らく常識だった。

 先日、「終身雇用は今後維持できない」と経団連会長やトヨタ自動車の社長がコメントしたことが報じられ強い反発があった。終身雇用は簡単に説明すれば新卒で入社した会社に定年まで勤めることを意味する。反発があったということは終身雇用をまだ多くの人が望んでいるのだろう。

 終身雇用の実態は、景気が長期間にわたって拡大していた時代に、ごく一部の企業で、そして男性だけに生まれた偶然の産物でしかないが、確かにクビにされず安心して働けることは大きなメリットと言える。一方で付随するデメリット・負の側面として、解雇の代わりに行われる長時間労働、突然の転勤、女性の排除といった深刻な問題が発生する。

 しかし現在では、長時間労働は良くない、女性が(男性も)子どもを産み育てながら働くのは当たり前、そして突然転勤なんて命令をされたらさっさと辞めますという働く側の意識変化と、これら雇用調整の手段が企業側にとって極めて使いにくくなっている。たとえ大企業であっても、人生を捧げるに値しないほど不安定な存在であることは多くの人がすでに知っている。

 終身雇用のオワリについては、入社した時点の事業が何十年も続かない、経済環境の変化が昔よりも早くなっている、だからトヨタのような大企業でも終身雇用は続けられない・・・と報じられている。間違いではないが、終身雇用の裏側にあるデメリットを受け入れたくない人が多数派になってきたことも、強い影響を与えている。これはカネカ騒動で社員側に共感した人がこれだけ多数にのぼっていることからも明白だ。

 現在は男性の育休義務化の話も出ているが、これが法律で定められれば終身雇用の維持は経営側からすれば「絶望的」と考えても無理はない。

 終身雇用のメリットと、長時間労働・転勤・女性排除のデメリットは表裏一体だ。なぜなら経済も企業経営もリスクを除外することはかなわず、どこかでリスクを吸収する必要があるからだ。景気や業績が良くなったり悪くなったりを完璧にコントロールすることはできない。そのリスクを引き受けるのが価格変動でリスクを引き受けるマーケット、市場だ。株式、為替、債券、商品、そして人材(労働)と、いずれも市場による取引がリスクを吸収させる。

 景気悪化や業績悪化のリスクを、解雇無しで乗り切るのか、解雇で乗り切るのか(労働市場で解消するか)。解雇が嫌ならば長時間労働や転勤を受け入れる必要があり、解雇を甘受するのであれば長時間労働や転勤はなくても会社は成り立つ。つまり「終身雇用が良いか悪いか?」という話は「雇用リスクをどのような形で受けとめるか?」とイコールだ。

 結局、「解雇は無いけど働きにくい社会」と「解雇はあるけど働きやすい社会」、どっちが良いですか?  という選択になる。解雇の有無と働きやすさは両立ができないトレードオフの関係だ。残念ながら「働きやすくて解雇の無い社会」は、経済や企業経営のリスクの大きさを考えれば、トヨタのように大儲けしている超大企業ですら無理ということだ。

日本はいまだに戦時体制
 終身雇用や社員を家族のように扱う日本型経営は日本の伝統である、というトンチンカンな言説を時おり目にするが、これは近代になってから人為的に作られたものだ。その土台には判例と法律が存在している。

 一つは判例で、解雇を極めて難しくしている「解雇四要件」、そしてもう一つが「1940年体制」と呼ばれるものだ。

 経済学者として有名な野口悠紀雄氏は著書『1940年体制 さらば戦時経済』(東洋経済新報社)において、日本の近代・現代の経済体制は戦時中に作られ、それが現在も継続していると指摘する。あらゆる資源・リソースを戦争へ注ぎ込むため1938年に作られた「国家総動員法」が、その目的を戦争から経済成長へと変えて継続しているという。

 これは戦前と戦後で大きな分断がある、敗戦をきっかけに日本は違う国へ生まれ変わった、という従来の常識とまったく異なる説明だ。

戦時中に出来上がった日本の経済システム
 本書では企業、金融、土地改革、官僚制度とあらゆる分野で1940年体制が影響を残しており、現在と戦中は地続きであると説く。

 企業や雇用に話題を限定すると、日本人は貯蓄率が高く、株による資金調達の直接金融よりも銀行の融資による間接金融が主流であるという状況も、戦前はそうではなかったという。直接金融から間接金融に変化した理由は、株主への配当が企業の内部留保を阻害し生産力の増強を阻害しているため、国家総動員法で配当に制限が加わり、株主の権利も制限された。そして貯蓄が奨励されて軍需産業へ資金を傾斜配分することで戦時体制をより強化した。

 その結果起きたことは、企業本来の姿である「株主のための企業経営」から「従業員の共同体としての企業経営」への変化、俗論として言われる日本型経営の誕生だ。日本の伝統は大昔から続くものではなく戦中に作られたことが分かる。

 そもそも戦前の従業員は一部を除いて月給ではなく日給で働く工員が多数派だった。短期間で職場を転々とすることが当たり前で、それが経済へ悪影響を与えていた。これを改善するために長期雇用、月給制、年功的賃金に変えることで安定を図った。これが職能や生産性、つまり能力に応じた賃金体制から、勤続年数を重視した生活給的なものへと変質をもたらしたという。多くの企業が終身雇用へ舵を切った瞬間だ。

 そしてなんと、1939年には初任給が公定されることになる。これは現在も多くの企業で初任給がほとんど変わらない状況として残っている。さらには賃上げも建前として抑制され、例外として認められたのが従業員一律の賃上げ、つまり定期昇給だ。

 素晴らしい制度変更だと思う人もいるかもしれないが、これらは従業員のために行われたわけではなく、お金を持っている株主だろうと優秀な従業員であろうと抜け駆けして儲けることを許さず、すべてのリソースを戦争へと配分するための仕組みだ。

 最近の話題として、ファーウェイは新卒で月給40万円とか、グーグルは新卒で年収1800万円など日本人の感覚では腰を抜かしそうな話をたびたび聞くが、給料は本来能力や成果に応じて払われると考えれば年齢や勤続年数で決まる方が異常だ。

 欧米は狩猟民族で競争が好き、日本人は農耕民族で和を重視するといった俗説を企業経営や働き方にあてはめる考え方も、日本は世界初の米の先物取引が江戸時代に成立しており、俗説とは真逆で極めて市場原理主義的な民族であるともいえる。

カネカ問題は日本の問題である
 これ以上は実際に同書を読んで頂ければと思うが、日本の高度経済成長期を支えた戦時体制は、一方でその後の平成に訪れた景気低迷の原因にもなっていると野口氏は指摘する。

 「終身雇用は日本の伝統」という間違った言説については、良い仕組みだから変えない方が良いという意味に加えて、伝統に基づいているから変えられないというあきらめ、二つの意味を含んでいる。

 しかし終身雇用は長時間労働、転勤、女性(例外)の排除と、多数の問題をはらんでいる。今さら後生大事に抱えて守るようなものではない。大きなデメリットがありながら終身雇用が戦後定着した理由は、高度経済成長という成功体験のみならず、五千円札の肖像にもなった新渡戸稲造が「武士道」で書いたように、我慢・忍耐を美徳とする日本人の伝統と偶然結びついたことが原因なのか、一時的とは言え根付いてしまっている。

 しかし現在、1940年体制はメリットよりもデメリットの方が大きく誰も得をしていない。長時間労働、転勤、女性排除と、一体何のために続けているのか、どんなメリットがあるのか、誰もまともに答えられない。

 野口氏は日本の経済体制はあくまで戦時体制がベースにあり、決して日本古来の伝統に基づくものではなく、人為的に近代になって作ったものなら自ら変えることができると指摘している。

 冒頭に書いた通り、カネカのやり方や制度が良いか悪いかという話はカネカの従業員とその家族以外にはほとんど関係の無い話だ。カネカを酷いと批判するより、なぜこのような問題が日本企業では当たり前のように起きているのか?  という部分こそが最も重要な論点である。
中嶋 よしふみ
4/4ページ
最終更新:6/12(水) 6:15
JBpress

パタハラ回避で50代が転勤? カネカ騒動が示した“辞令と家族”のリアル

6/14(金) 8:00配信
ITmedia ビジネスオンライン
 日本有数の化学メーカー、カネカの元社員の妻のTwitter投稿で広がった「パタハラ(パタニティ・ハラスメント)」騒動。2週間近くがたち、事態は微妙な方向に進んでいます。

【カネカもWebサイト上で文書を公表】

 妻のアカウントの過去の書き込みに「夫の起業準備」をうかがわせる記述があり、逆炎上しているのです。

 事の発端がTwitterですし、カネカ側の対応もWebサイトで展開されるなど、全てがネット上の情報なので、まったくもってわけが分かりません。が、ある意味、“これぞSNS”なのかもしれません。

 事実は一つしかありませんが、受け手が変わり視点が違えば、自ずと真実は様変わりします。人は観念の生き物なので、見えるものを見るのではなく、見たいものを見る。それは「人間の業」でもあります。

 ただでさえSNS上の情報は、事実の「一部」が切り取られたものですから、受け止め方はどうにでもなる。さらに、“そこに書かれた言葉”に皆が一斉に反応し、瞬間湯沸かし器的に真実がまるで一つかのごとく広がっていきがちです。

 でも、人が人である限り、誰が正しくて誰が間違いということはなく、人の数だけ「真実」は存在するのです。

 ただし、「事実」は一つ。今回の事例では「ある男性会社員が育児休暇を取り、その直後に転勤を命じられ、退職した」という事象はまぎれもない事実です。それ以上でもそれ以下でもありません。

 過去の投稿が明らかになり、元社員の妻をディスるコメントも散見されますが、カネカの初期対応はこのご時世で「適切」とは言い難いものでした。同社の株価が一時下落したことから鑑みても、その代償は大きかったとしか言いようがありません。

 カネカを批判する人、その後、擁護に回った人それぞれですが、個人的には今回の事案で、「転勤」という、本来であれば個人の成長につながる貴重なリソースが、リソースとして機能していないことを、とてもとても残念に思いました。

 と同時に、転勤問題は「育児」とセットで論じられがちですが、「介護」問題とも隣接していることを忘れてはいけません。ところが、前者は盛り上がっても、後者はいまひとつ盛り上がりに欠ける。誰もが老いるし、誰もが介護問題に直面するのに、介護問題は「冷たい雨に降られた人にしか、本当の冷たさが分からない」というリアルが、そうさせるのです。

 そこで、今回はあえて「介護と転勤問題」を取り上げます。どうか「自分はまだ関係ない」という方も一緒に考えてください。

ベテラン社員の“隠れ介護”と転勤
 親の介護問題が現実味を帯びる50代の会社員にとって、抜き差しならぬ事実があることを教えてくれたのが、某大企業に勤める男性です。

 男性いわく、「新手の追い出し部屋」とも思われる人事が、ベテラン社員の転勤の背後に存在するというのです。

 「うちの会社では50歳以上は本来、早期退職か、賃金減額でそのまま60歳まで働くか、賃金維持で転勤や出向を受け入れるか選ぶようになっていました。ところが、最近は先に転勤させ、そこで賃金減額か退職を選ばせようっていう魂胆が見え見えの人事が横行しているんです。つまり、本人が選択する年齢に達する前に転勤させてしまえば、転勤させたまま減額することが可能になります。

 でもね、問題は、ベテラン社員にとってこの人事が“単なる転勤”ではないのを会社が分かろうとしないことです。

 ベテラン社員の中には会社や周りには言わずに親の介護をしている“隠れ介護”が少なくない。私の部下もそうでした。転勤の内示を出して初めて、彼が親の介護をしていることを知りました。そんなことおくびにも出さないから、全く知らなかった。部下は『親の介護があるので転勤だけは勘弁してほしい』と泣きついてきましたが、人事が変わることはありませんでした。

 会社側も足元を見てるんです。子育て世代を下手に転勤させると、パワハラとか言われてしまう場合があります。世間の評判も怖い。でも、ベテラン社員は転勤の良い面も知っているので、会社に盾突くことはめったにありません。結局、会社にとって50代以上はお荷物でしかない。転勤が嫌なら、会社をやめろって事なんでしょう」

 男性が指摘する通り、50代の会社員の中には“隠れ介護”をしている人が相当数存在します。その数はおよそ「1300万人」。実に衝撃的です。

 この数字は日経ビジネスが算出し、一時話題になりましたが、その多くは上級管理職だったことも分かっています。

 また、労働政策研究・研修機構が行った調査では、「転勤で困難に感じること」に、全体の7割超が「介護」と回答し、「育児」の5割を上回りました。さらに、親の介護などを理由に転勤の免除などを求めた社員の3割以上が、会社側から配慮されることなく転勤していたのです。(参考:「企業における転勤の実態に関する調査」調査結果の概要)

 介護というと、一般的には「寝たきりになった高齢者のケア」と捉えられがちですが、実際には「プレ介護」が存在します。

 プレ介護とは文字通り、介護前。自立して生活はできる。でも、それまでできていたことが突然できなくなったり、前の日までバリバリ元気だったのが、突然、病気が発覚し、1週間で10歳以上老いてしまったかのようになったり。しかも、最初の“変化”をきっかけに次々と予期せぬ変化が起こり、「もう大丈夫ね」と安堵(あんど)する日と「どうなってしまうんだろう」と不安な日が繰り返され、仕事と両立するのにかなり精神的にも肉体的にも疲弊します。

“成長”につながる転勤が、人生を“邪魔”している
 働くことは人生を豊かにするかけがえのない行為です。しかしながら、人間は仕事、家庭、健康という3つの幸せのボールを持っていて、どのボールが地面に落ちても、幸せになれません。

 本来、転勤は前述した通り「社員が成長するため」の大切なリソースであり、私がインタビューした700人以上の中には「あのときのあの経験が私を成長させてくれた」と転勤先での経験を話してくれる人がたくさんいました。

 つまるところ、転勤が働く人の人生を邪魔する職場は、働く人をコストとしてしか見ていないのです。悪いのは「転勤」ではない。働く人を「人」として見ない企業であり、経営者です。

 企業=経営者は「お父さんは元気で留守がいい」という時代は過去のものであると認識し、「転勤の必要性」と「どういった転勤制度なら、社員を成長させるリソースになるのか?」をあらためて考える必要があるのではないか。そういう職場では、「仕事」「家庭」「健康」のボールをジャグリングのように回し続けられるため、会社の生産性も向上します。

 「転勤=悪」と短絡的に考えるのではなく、転勤の良い面を生かす経営をする企業が増えることを期待したいです。

(河合薫)
ITmedia ビジネスオンライン
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最終更新:6/14(金) 8:00
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