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新元号「令」の字のナゾ “点スタイル”と“線スタイル”両方ある理由

4/17(水) 16:52配信
西日本新聞
 新元号「令和」の令。最終画が「、」の字形と「│」の字形が併存し、疑問だ。

 「、」の令は、手書き文字の規範である楷書体の字形である。7世紀、中国・初唐の時代に完成した。「│」の令は、印刷文字である明朝体の字形である。楷書体が変形し、17世紀、明の時代に成立した。印刷文字は版として彫刻されるので、刃を入れやすくするため字形が直線化した。「言」の1画目の点が「一」で表現されるのと同じ理屈で、令の「、」は「一」および「│」になった。

【写真】「令和」手話ではどう表す?

 新元号の「令」が示され、改めて2字形併用の現実に直面した。しかしこの問題は、既に2016年の文化庁・文化審議会国語分科会報告で指摘されていた。ある金融機関の窓口で書類に記入する際に「、」の令でなく明朝体と同じ「│」の令に書き直すように言われた事例をあげ、「印刷文字に見慣れてしまった」ため、手書きでは「、」の令を書くという習慣が「理解されにくくなっている」と説明した上で、どちらを使ってもよいとの見解を示している。

 点と線を巡る疑問は、以上の説明で一応、氷解する。しかし実は、はるか昔にもこの問題は存在していたのだ。もっとも当時は印刷文字が原因ではなく、古代文字が「│」の令だったからである。

 楷書体を完成させた初唐三大家の1人、※チョ(※「しめすへん」に「者」)遂良(ちょすいりょう)は「雁塔聖教序(がんとうしょうぎょうじょ)」の中に二つの「令」を書いている。私は、ここにチョ自身が、わざわざ点と線の2字形を用いて書いているのを見つけて驚いた。
 字源をたどると、「令」は人が集会する様子を表す「△」と、人がひざまずく姿を表す「卩」という、二つの象形文字を組み合わせて作られている。古代の篆書(てんしょ)は硬直した刻線で記すので「│」を用いて令を書いた。

 しかし、漢の時代に紙が発明されて自在に書く技術が普及すると、「、」の令が生み出され、好まれた。後世のあまたの書家はこちらを書いた。

 チョは、皇帝の補佐官であり書記官庁長官であると同時に、古今の名蹟(せき)を鑑定する学者でもあった。古典的な字形を葬り去るに忍び難く、自作に併記したとみられる。

 字形は規則に忠実であるべき記号だが、人が用いる道具でもある。不便が生じないのであれば選択の自由は鷹揚(おうよう)に認められるべきであろう。楷書体の完成者の書から、そんな声が聞こえてくる。「令」の点と線について、さらに得心した。(記者コラム)
西日本新聞社

「建国記念の日」は、なぜ「建国記念日」ではないのか

2/11(月) 17:56配信
BuzzFeed Japan
2月11日は「建国記念の日」だが、「建国記念日」ではない。

この「の」は、どこから来たのか。この祝日を制定した佐藤栄作内閣の国会答弁などを紐解きながら、背景を調べてみた。【吉川慧 / BuzzFeed Japan】

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いまは「建国記念の日」である2月11日は戦前、「紀元節」と呼ばれていた。

由来は『日本書紀』に基づく初代天皇・神武天皇の即位日だ。これを太陽暦に換算すると、紀元前660年2月11日にあたる。明治政府はこの日を「紀元」(建国の日)として、祝日にすると定めた。
戦後、紀元節は姿を消す。天皇の神格化に関係する祝日としてGHQ(連合国軍総司令部)の意向で廃止された。

1950年代に入ると紀元節を「建国記念日」として復活を目指す動きが高まった。

だが、紀元節の根拠となった『日本書紀』の内容が、史実であるという確証はない。

神武天皇が即位したとされる時代、日本は縄文時代の末期〜弥生時代の初期にあたる。即位日を裏付ける史料はない。なお同書では、神武天皇は127歳まで生存したことになっている。
三笠宮さま「紀元節」復活に反対
皇族(昭和天皇の弟)で歴史学者でもあった三笠宮さまは、「紀元節」の反対の論陣を張った。

1957年11月13日付の毎日新聞は、三笠宮さまが「この問題は純粋科学に属することであり、右翼、左翼のイデオロギーとは別である」と発言したことを報じた。

また、デイリー新潮によると、三笠宮さまは「紀元節についての私の信念(「文藝春秋」59年1月号)」の中で、以下のように記している。

「日本人である限り、正しい日本の歴史を知ることを喜ばない人はないであろう。紀元節の問題は、すなわち日本の古代史の問題である」

「昭和十五年に紀元二千六百年の盛大な祝典を行った日本は、翌年には無謀な太平洋戦争に突入した。すなわち、架空な歴史――それは華やかではあるが――を信じた人たちは、また勝算なき戦争――大義名分はりっぱであったが――を始めた人たちでもあったのである」

「もちろん私自身も旧陸軍軍人の一人としてこれらのことには大いに責任がある。だからこそ、再び国民をあのような一大惨禍に陥れないように努めることこそ、生き残った旧軍人としての私の、そしてまた今は学者としての責務だと考えている」

「2月11日」以外にも候補があった?
建国記念日」を定める法案は、1957年から何度も提案され、激しい論争となった。

当時の自民党が提案した2月11日以外にも、4月28日(サンフランシスコ講和条約発効日)や5月3日(憲法記念日)、4月3日(「十七条憲法」制定日とされる日)なども候補にあがった。
「建国記念日」ではなく「建国記念の日」
最終的には1966年、佐藤栄作内閣が2月11日を「建国記念の日」と制定した。「建国記念日」ではなく「建国記念の日」だ。

2月11日を「建国記念の日」とするにあたって、当時の総理府総務長官・安井謙氏は国会で以下のように答弁している。

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「建国をしのび、国を愛し、国の発展を期するという、国民がひとしく抱いておる感情を尊重して、国民の祝日にすることといたした」

「明治初年以来七十有余年にわたり祝日として国民に親しまれてきた伝統を尊重した」

(1966年4月15日・衆院本会議)
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安井氏は続く答弁で「日本書紀の史実についてこれは正しくないのだ、事実に間違っておるのだという学説は多々ございます」とした上で、神武天皇の即位日を「民族の伝承」とした。

その上で「これを象徴的に建国をしのぶ日とすることは、すなおな国民感情に一番これは触れてくる問題であろうという確信を持っておる次第でございます」と述べた。

佐藤首相も「建国をしのび、国を愛し、国の発展を期するという、国民ひとしく抱いているその感情を率直に認めて、そしてこの日を定めようとするものであります」と、「愛国心の涵養」に資するという姿勢から答弁した。

保守派から紀元節の復活を求める声が出る中、当時の政府は2月11日を歴史的事実として「建国の日」と位置づけることは避けた。あくまで「建国というできごと」そのものを象徴し、祝う日とするという姿勢を取った。

法律は『古事記』『日本書紀』に基づく建国神話には言及せず、「日本が建国された日」とも記していない。「建国をしのび、国を愛する心を養う」とだけ、記されている。

「建国記念の日」の「の」という文字には、こうした背景があるのだ。
他の国の建国記念の日は?
諸外国をみてみると、どのタイミングを「建国」とするかで異なるようだ。

フランスでは、フランス革命のきっかけとなった「バスティーユ牢獄襲撃事件」の日(1789年7月14日)を「革命記念日」として毎年祝う。

アメリカでは7月4日を「独立記念日」が建国の日とされる。1776年にイギリスから独立を宣言した日だ。

中国では、1949年に毛沢東が「中華人民共和国」の成立を宣言した10月1日を「国慶節」として建国を祝う。

ドイツでは東西ドイツの再統一(1990年10月3日)を記念し、この日を「統一の日」と定めている。
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本橋麻里「私たちでいいのかな」…「そだねー」が流行語年間大賞に

12/3(月) 17:47配信
デイリースポーツ
 「2018ユーキャン新語・流行語大賞」が3日、発表され、平昌五輪で女子カーリング日本代表が用いて話題になった「そだねー」が年間大賞に選ばれた。出場チームの「ロコ・ソラーレ」から本橋麻里が表彰式に出席。「ちょっと笑っちゃいます。なんか私たちでいいのかなっていう気持ち」などと感謝を述べた。

【写真】マリリン、ナマ「そだねー」を披露!

 「そだねー」は選手同士で作戦を立てることが重要なカーリング競技において、お互いの意見を出し合った時に、相手の意見を真っ向からは否定せず、「そだねー」と同意しながら最善策を導き出す時に用いられた。銅メダルを獲得したこともあいまって、五輪開催中は日常会話でも用いる人が見られた。

 本橋は「一般社団法人ロコ・ソラーレ」の代表理事として表彰式に出席した。大会中、シーズン中など決まった期間、チーム内の約束事として、「ポジティブな言葉だけを発するルールで、チームで活動してきた」のだという。そこから日本中に広まった言葉が生まれ、「ひとつその通過点として、また『そだねー』を皆さんに選んでいただいて、とてもうれしく思います」と五輪を振り返りつつ喜んだ。

 他の選手たちは海外遠征中で「(報告する)メッセージを送ろうと思います」。時差の関係で恐らく目が覚めた時にこの“朗報”に触れるといい「みんながびっくりすると思います」とにこやかに語った。

 北京五輪が次の目標になることは認めつつ、「カーリングを通して地元の皆さんと、日本中の皆さんと『楽しい』という時間を過ごしたいというコンセプトでやっているので、1試合でも多く、ロコ・ソラーレの試合だったり、カーリングを見て楽しいと言ってもらえるように頑張っていきたいなとは思います」と、カーリングの魅力を伝えることに力を注ぐと誓った。









そだねー大賞「笑っちゃう」

12/3(月) 20:59 掲載

本橋麻里「私たちでいいのかな」…「そだねー」が流行語年間大賞に

 「2018ユーキャン新語・流行語大賞」が3日、発表され、平昌五輪で女子カーリング日本代表が用いて話題になった「そだねー」が年間大賞に選ばれた。出場チームの「ロコ・ソラーレ」から本橋麻里が表彰式に出席。「ちょっと笑っちゃいます。なんか私たちでいいのかなっていう気持ち」などと感謝を述べた。(デイリースポーツ)
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今この瞬間も変化し続ける言葉〜「忖度」だけじゃない悩ましい日本語〜

今この瞬間も変化し続ける言葉〜「忖度」だけじゃない悩ましい日本語〜


福沢諭吉の「忖度」は格調高い

 学校法人「森友学園」をめぐる問題で注目を集めた言葉「忖度(そんたく)」。今年の「ユーキャン新語・流行語大賞」の有力候補とも言われていますが、本来は他人の心を推し量る意味だけで、何かを配慮する意味はないのだとか…。37年間、辞書編集に携わり、先日、言葉に関するコラム集の第2弾『さらに悩ましい国語辞典』を出版された神永曉(かみなが・さとる)さんに、変化し続ける日本語の不思議についてお聞きしました。
    *  *  *
 『さらに悩ましい国語辞典』では、政治家の使う言葉を多く取り上げました。辞書編集者の仕事は「言葉の収集」です。書き言葉は文献をあさります。国立国語研究所が構築した「コーパス」(データベース化された文献資料)もあります。でも話し言葉は難しい。用例を集めるのに国会会議録が有効だと気付き、「政治家の言葉」とのお付き合いが始まりました。
 国会会議録では興味深い言葉の使用例がいくつも見つかりました。
 例えば「しっかり」です。「仕事や勉強などを熱心・着実に行うさま」を表す言葉ですが、最近の政治家がよく使うのが気になっていました。そこで年別、内閣別にどれくらい「しっかり」が会議録に登場するか調べてみました。小泉純一郎内閣時代の2002年には925件も使用例が見つかります。1983年の中曽根康弘内閣時代は321件でしたから、3倍近くです。小泉内閣以降、国会の「しっかり指数」が上昇したと言えるかもしれません。
 次に気になったのが「忸怩(じくじ)」でした。本来は「自分の行いなどについて恥ずかしく思うさま」を言うのに使われます。ところが会議録を見ると、「残念、もどかしい、腹立たしい」などの意味で使っているのがほとんどです。他人にいら立っているばかりで、自分は全然恥じていない。
 本来の使い方ではない使用例は他にもたくさん見つかりました。例えば普通、将棋は「指す」、囲碁は「打つ」と言いますが、これを逆に「将棋を打つ」「囲碁を指す」と言っている例がかなり見つかりました。また「論議を呼ぶ」「物議をかもす」を混同して、「論議をかもす」と言っている例も多かったです。
 政治絡みで最近話題になった言葉というと、「忖度」がすぐに思い浮かびます。しかし「忖度」は本来、他人の心を推し量る意味だけで、その上で何かを配慮する意味はありません。森友学園の籠池泰典前理事長が国会の証人喚問の際に使ったことで一躍脚光を浴びましたが、実はそれ以前にも「政権に配慮する」意味で使われていました。テレビ番組や新聞などの報道内容が政権におもねった内容になることを「忖度」と表現していたのです。
 籠池前理事長のようなケースでは「斟酌(しんしゃく)」の方がふさわしいと思います。ただこの言葉も、もともとは「酒を酌み交わす」という意味だったのが「寛大な取り計らい」に拡大した歴史があります。どうも、この手の言葉は同じような変化をたどるようです。
 『日本国語大辞典』は「忖度」の用例として福沢諭吉の「文明論之概略」の一節を引用していますが、『さらに悩ましい国語辞典』では、その前後の文章も含めて現代語訳を掲載しました。人の心の推し量ることの困難さ、無意味さ、愚かしさを語った格調高い一文です。私自身もそうですが、耳の痛い人も大勢いるのではないでしょうか。

「だらしない」と「さざんか」の共通点

 政治家の言葉というと、安倍晋三首相が国会答弁で「云々(うんぬん)」を「でんでん」と読んだことも話題になりました。答弁原稿に難しい漢字を使わなければ起きなかった問題なのですが、難しい言葉を使って答弁に重々しさを出そうとしたことが原因かもしれません。
 この安倍首相の読みには驚きました。想定外の読みでしたから。
 私は、2006年に『ウソ読みで引ける難読語辞典』という辞書を作っています。間違った読み方を想定した「ウソ読み索引」で、目指す言葉の正しい読み方がすぐに分かる辞典です。見出しの「ウソ読み」は、東京と関西の5大学の学生数十人にお願いして、考えつく難読語のウソ読みを挙げてもらいました。
 「云々」もその辞典に掲載しているのですが、ウソ読みとしては「いいいい」だけです。「でんでん」という読みは大学生も思い付かなかったようです。
 紙の国語辞典の最大の弱点を挙げるとしたら、「読めないと引けない」ことでしょう。
 難読語とは言わないまでも、読み方に悩む漢字は多くあります。漢数字をどう読むのか、清音で読むのか濁音で読むのかなど、漢字を見ただけで二通り、三通りの読みが思い付くのに、正しい読みをしないと項目にたどり着きません。
 電子辞書の場合は、手書き入力もできます。ネットで検索するときは、誤読も登録されているのでウソ読みでもたどりつけます。
 ただ紙の辞書で、考えられる読み方で何度も引き直して、ようやく項目にたどり着く苦行は大切なことです。そうして正しい読みが身に付くことも多いのではないでしょうか。弱点が強みに変わることもあるのです。
 読み間違いの起きる原因として「連濁」や「音位転倒」があります。連濁とは、二つの語が結合して一語となるとき、後の語の語頭の清音が濁音に変わること。「桜・花」が「さくらばな」、「経・済」が「けいざい」、「月見・酒」が「つきみざけ」となるような場合です。ただ例外もあって、結合する語がどちらも動詞のときは連濁が起こりにくくなります。こうしたこともあって読み方に悩んでしまうのです。
 音位転倒は、一つの単語の中の隣接する音が位置を交換させてしまう現象です。幼児が「とうもろこし」のことを「とうもころし」と言ったり、「エレベーター」のことを「エベレーター」、「かもめ」を「かめも」と言ったりするのを思い浮かべると分かりやすいと思います。
 私たちが普段使っている言葉にも、音位転倒で生まれたものがあります。
 「だらしない」は「しだらない」の間違いから生まれました。「しだらない」の「しだら」は、「しどろもどろ」の「しどろ」と関係があるという説が有力です。「しどろ」は「秩序が乱れている」という意味です。
 「あたらしい(新しい)」は「あらたし」の間違い。「さざんか(山茶花)」は「さんざか」を音位転倒で読み間違えたことにより生まれた言葉なのです。山茶花はそのまま読めば「さんさか」ですよね。
 『さらに悩ましい国語辞典』では、こうした言葉の読みに関する“悩ましい”エピソードもたくさん取り上げています。


ホチキスの謎

 ホチキス。英語では「ステープラー」と言うあの文具を、なぜ日本ではフランスの重機関銃メーカーと同じ名前で呼んでいるのか、その関係は大きな謎です。それからホチキスのコの字型の針金を何と言うかも大きな問題です。地域や年代によって「ハリ」「シン」「タマ」と異なっているのです。これは「気付かない方言」と呼ばれるものの一つです。
 前著では、「スコップとシャベルのどちらが大きいかは地方によって違う」「蚊に『かまれる』か『くわれる』かで分布地図が書ける」などの気付かない方言や、「横入り」などの「新方言」と呼ばれるものを取り上げました。方言に関しては最近、研究が進んでいて、方言のバリエーションも広がっています。『さらに悩ましい国語辞典』では、「学校方言」や「食の方言」などと呼ばれるものも取り上げてみました。
 「学校方言」は、あまりなじみのない言葉かもしれません。でも、方言研究者の間ではかなり知られた言葉なのです。特定の地域の学校だけで使われているような言葉のことで、例えば学校の何時間目かを指す「コージ(校時)」などです。「校時」は東北各県や山梨、中国各県、長崎、宮崎、鹿児島などで使われている学校方言で、その他の地域出身の人は何のことか分からないでしょう。
 学校方言は文具や用具の呼び方、学校内の係の名称などいろいろあるので、出身地の違う友人や同僚との会話のネタにすると盛り上がるのではないでしょうか。例えば、鹿児島では黒板消しを「ラーフル」と言うなどといった話は面白いと思います。
 救急ばんそうこうを何と言うかでも出身地が分かります。関東など多くの地域では「バンドエイド」と言っていますが、北海道では「サビオ」、東北や中国・四国では「カットバン」と言っています。富山では「キズバン」、熊本を中心とした九州の一部では「リバテープ」と言います。
 これらは全て商品名なのですが、その地域でよく使われるものが一般化したのでしょう。そういえば、ハンバーガーチェーンの「マクドナルド」を、関東では「マック」、関西では「マクド」と言うのはよく知られた話です。ただ、最近は関西でも「マクド」はあまり言わなくなっているようですが…。
 「食の方言」で面白いのは、同じ料理名なのに地域によって内容が違うものがあることです。例えば「たぬきうどん」は、関東では揚げ玉を乗せたうどんですが、京都では刻んだ油揚げを乗せたあんかけうどんのことです。同じ関西でも、大阪には「たぬきうどん」はなく、「たぬき」と言うと油揚げを乗せたそばになります。これは関東では「きつねそば」と呼んでいるものです。
 また「カツ丼」と聞くと、多くの人は卵でとじたカツ煮を乗せたものを思い浮かべるのではないでしょうか。でも「カツ丼」と言えばソースカツ丼を指す地域もあります。お正月に食べる「雑煮」にしても、しょうゆ味の澄まし汁の地域、みそ仕立ての汁の地域、角餅、丸餅など、地域によって料理の内容はかなり違います。
 私が最近気になっているのは、酒のさかなを指す「あて」という言葉。関西の言葉なのですが、近頃は関東でも使う人が多くなっています。もともとは芝居関係者が使っていた隠語のようなのですが、なぜこんなに一般化したのでしょうか?

「ごねる」は「くたばる」の意味だった!?

 辞書づくりの基本は用例を集めることです。辞書の編集作業もここから始まります。
 『日本国語大辞典』(日国)の場合、用例を集める作業は上代、中世、近世などの時代別、仏教語や専門語などの分野別など、チームに分かれて行います。各チームのメンバーとなるのは学者や研究者ですが、このメンバーを選ぶのは編集委員の方たち。編集委員は各分野のトップレベルの学者・研究者で、その方たちが後輩や教え子に声を掛けてメンバーを集めてくれるのです。メンバーは全体で200人から300人くらいになります。
 私たち辞書編集者は基本的に出版社の社員ですが、編集委員の方は学者さんなのです。出版社が新しい辞書を作ったり改訂版を作ったりする場合は、編集委員をどなたにお願いするかという議論から始まります。出版社ごとに編集委員を委嘱する先生は変わりますが、中には複数の出版社の編集委員を務めている“売れっ子”の先生もいます。
 辞書づくりでは、まず各チームのメンバーがそれぞれ文献に当たり、用例を採集します。時代別・分野別に分かれているとはいえ、その数は膨大なものになります。ただ、底本となる文献はおおよそ決まっていて、各メンバーはその時代・分野の専門家ですから、どの文献のどの辺りにどんな用例があるか分かっている場合が多いのです。
 次に、採集した用例の中の言葉がどのような意味で使われているかを考え、その言葉の解説(語釈)を書きます。そして、その言葉を項目立てしていくのですが、例えば江戸時代の用例に出てくる言葉が、現代も同じ意味で使われている場合があります。この場合は現代の文献の用例を探し、同じ項目に整理していきます。当然、同じ言葉でも違う意味で使われている用例もあるわけですが、これも項目立ての際に整理していくことになります。
 『日国』の場合、解説は用例の古いものから順に並べて整理しています。他の辞書では、現在最も一般的に使われている意味を解説の最初に置き、その他の意味をその後に並べているものが多いですね。
 例えば「ごねる」の場合、『日国』は①死ぬ。死去する。くたばる。②夜寝ることをいう、盗人仲間の隠語。③ぶつぶつ不平を言う。文句をならべたてる―の順です。しかし『大辞泉』は①いろいろ不平を言う。くどくどと文句をつける。②死ぬ。くたばる―の順になっています。
 「ごねる」は、江戸時代には「死ぬ」の意味で使われていた言葉なのです。「不平を言う」意味で使うようになったのは昭和になってからのようです。
 辞書が、用例→解説(語釈)→項目の順に作られると言うと、驚かれる方が多いですね。多くの人は、まず項目を決め、次に語釈を書き、それに合わせて用例を探す―の順だと思っているようです。
 ただ、これはあくまで『日国』の場合で、収録語が7〜8万語の小型の国語辞典の場合は、掲載できる項目に限りがあり、必ず掲載しなければならない語もおよそ決まっているため、見出し語の選定から辞書づくりが始まる場合が多いようです。

「んん」「んーん」「んとす」とは?

 「国語辞典の解説って、みんな同じなんじゃないですか」と言われることがよくあります。でも実は、国語辞典は発行する出版社や辞書によってそれぞれ個性があるのです。
 分かりやすい例が「右」「左」の解説の違いでしょう。国語辞典では、こうしたごく当たり前の言葉ほど解説が難しいのです。そのため、各辞典の工夫がよく表れます。
 「人体で通常、心臓のある方と反対の側」/「人体で通常、心臓のある側」
 「北を向いたときに、東に当たる方」/「南を向いたときに、東に当たる方」
 「アナログ式時計の文字盤に向かったときに、1時から5時までの表示のある側」/「アナログ式時計の文字盤に向かったときに、7時から11時までの表示のある側」
 「この辞典を開いて読むとき偶数ページのある側を言う」/「この辞典を開いて読むとき奇数ページのある側を言う」
 先に「右」、後に「左」の解説を示しました。あえて辞典名は出さないので、お持ちの国語辞典はどう解説しているか、確認してみてください。このように同じ言葉を引き比べて、それぞれの辞典の個性を見つけ出すことも、辞書を読む楽しみ方の一つです。
 もう一つ、各国語辞典に掲載されている最後の言葉を比べてみるのも面白いと思います。「しり取り遊び」では最後に「ん」の付く言葉を言ったら負けになりますが、国語辞典の「ん」の項には、実は多くの言葉が掲載されているのです。
 『日本国語大辞典』(日国)は、思い出したり、自問自答したりするときに発する語「んん」が最後の言葉です。これに近いのが『三省堂国語辞典』で、「んーん」を載せています。ひどく言葉に詰まったときや感心したときの声です。『広辞苑』は「んとす」。「終わりな・んとす」など、「むとす」が変化した語ですね。『大辞泉』はセネガル西部の都市名「ンブール」です。
 現在の版でトレンドなのが「んぼう」。「甘えん坊」「食いしん坊」などの「ん坊」で、中型辞典の『大辞林』のほか、小型辞典の『新明解国語辞典』『岩波国語辞典』『明鏡国語辞典』『新選国語辞典』『現代国語例解辞典』が最後の言葉として掲載しています。
 「か」の行の最後の言葉に違いはあるか、「な」行は? など、各社の国語辞典を引き比べてみると新たな発見があるかもしれません。
 日本最大の国語辞典である『日国』は用例主義を掲げていて、100万用例を収録しています。出典として多いのは『万葉集』『日葡辞書』(イエズス会がキリシタン宣教師のために編纂〈へんさん〉した日本語辞書)と夏目漱石で、ご三家になっています。
 用例の整理をしていると、いわゆる誤用の多い作家にも気付きます。筆頭格は、宮本百合子と中里介山。掲載できないのが残念なほど、さまざまな誤用例が見つかります。
 驚いたのは、あの漢学の教養豊かな中島敦の作品に誤用があったこと。短編小説『弟子』に「後世畏るべし」という表記があるのです。これは決定版と言われる全集でもそのままになっています。もちろん正しくは「後生畏るべし」。
 中島敦が間違えるとは考えられないので、誤植なのだと思いますが、誤植を見落とした校正者や編集者はさぞ悔やんでいることでしょう。
 校正恐るべし!

プロフィル

【神永 曉(かみなが・さとる)】
 辞書編集者、元小学館辞典編集部編集長。
 1956年、千葉県生まれ。小学館に入社後、37年間ほぼ辞書編集一筋の編集者人生を送る。担当した主な辞典は『日本国語大辞典 第二版』『現代国語例解辞典』『使い方のわかる類語例解辞典』『標準語引き日本方言辞典』『例解学習国語辞典』『日本語便利辞典』『美しい日本語の辞典』など多数。NPO法人「こども・ことば研究所」を共同設立し、「辞書引き学習」を中心とした活動で全国行脚している。著書は『悩ましい国語辞典』『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)。

<国語世論調査>「なし崩し」本来の意味回答2割

9/25(火) 18:08配信
毎日新聞
 「なし崩し」という言葉を本来の「少しずつ返していくこと」ではなく、「なかったことにすること」の意味で使っている人が65.6%に上ることが、文化庁が25日に発表した2017年度「国語に関する世論調査」で明らかになった。文化庁は「言葉は時代とともに変容する。本来の意味から派生した使われ方も誤りとまでは言えない」と説明している。

 調査は国語に関する国民の意識や理解度を調べるため、1995年度から毎年実施。今回は16歳以上の男女3579人に面接し、2022人(56.5%)から回答を得た。

 慣用句の項目で、今回初めて「なし崩し」の意味を尋ねたところ、本来の意味を答えたのは19.5%にとどまった。文化庁によると、なし崩しの「なし」は「返済」を意味する「済(な)し」に由来し、そこから「(借金を)少しずつ返す」との意味になったという。現在は「勢いや流れに任せる」「うやむやにする」という意味でも使われることがあるが、これらも本来の意味から派生したとみられる。

 また「ゆっくりと」を意味する「やおら」を「急に、いきなり」と答えた人は30.9%に上った。

 一方で、「檄(げき)を飛ばす」を、本来の意味の「自分の主張や考えを広く人々に知らせて同意を求めること」と答えた人は、過去に調査した03年度は14.6%にとどまっていたが、今回は22.1%になった。

 新しい表現を使うかどうかを尋ねる項目では「同じ(年)」や「相手と対等」を意味する「タメ」を51.0%が、「真剣勝負」「本当に」の意味の「ガチ」は41.0%が使うと答えた。いずれも年代によって大きな開きがあり、「タメ」は30代までが80%以上なのに対し、70歳以上は13.2%だった。「ガチ」を使う70歳以上は8.9%にとどまった。【伊澤拓也】

 ◇カタカナ語も初調査

 今回の国語世論調査は「ガイドライン」(指針)など主に官公庁が作成する公用文に使われるカタカナ語についての意識も初めて調べた。

 調査したのはガイドラインに加え、ワーキンググループ(作業部会)▽コンソーシアム(共同事業体)▽インバウンド(訪日外国人旅行)▽フォローアップ(追跡調査)▽パブリックコメント(意見公募)−−の6語。カタカナ語と漢字が「同じ意味だと思う」と回答した人に、公用文にどちらを使うべきか尋ねたところ、6語とも漢字が多かった。コンソーシアムは78.8%、インバウンドとフォローアップは65.9%が漢字を望んだ。

 公用文を巡っては、文化審議会が書き方の見直しを進めており、今回の調査結果を参考にするという。文化庁は「カタカナ語は最近使われるようになった言葉が多い。受け止めるには時間が足りないのでは」と推測した。【伊澤拓也】









なし崩し 本来の意味回答2割

9/25(火) 21:32 掲載

<国語世論調査>「なし崩し」本来の意味回答2割

 「なし崩し」という言葉を本来の「少しずつ返していくこと」ではなく、「なかったことにすること」の意味で使っている人が65.6%に上ることが、文化庁が25日に発表した2017年度「国語に関する世論調査」で明らかになった。文化庁は「言葉は時代とともに変容する。本来の意味から派生した使われ方も誤りとまでは言えない」と説明している。(毎日新聞)
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