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「世界一高い山」はエベレストだけではないという事実

9/1(日) 12:30配信
Forbes JAPAN
世間のほとんどの人は、世界一高い山はエベレストだと思っているが、それは何を基準にするかによって変わってくる。下記に例をあげてみよう。

世界で一番「標高」が高い山は? という質問に対する正解は、標高8848メートルのエベレストだ。しかし、ここでいう標高は地上に顔を出している部分の高さであり、海に隠れている部分から頂上までの距離では、別の山がエベレストを上回る。

海底からの距離を測った場合、世界で最も高い山は1万203mのハワイのマウナ・ケア山ということになる。ただし、マウナ・ケア山の標高は4205mとされている。

さらに、「山頂が地球の中心から最も離れている山」という基準で選んだ場合、エクアドルのチンボラソ火山がトップになる。チンボラソ火山の標高は6268 mだが、地球の中心からの距離はエベレストを上回っている。

背景には、地球は完全な球形ではなく、楕円形をしていることがあげられる。チンボラソは地球の半径が最も広い赤道付近にあるため、地球の中心から測ると、最も高い山となるのだ。

他にもこんなトリビアがある。

Q:火星で最も高い山は?
A:オリンポス(周囲の地表からの高さ2万7000メートル)

Q:コロラド州で最も高い山は?
A:エルバート(標高4401メートル)

Q:アメリカで最も高い山は?
A:デナリ(標高6190メートル、アラスカ州)
Trevor Nace
最終更新:9/1(日) 12:30
Forbes JAPAN

バイキングが絶やした緑を取り戻せ、アイスランド森林再生の矛盾

9/1(日) 10:03配信
AFPBB News
(c)AFPBB News
【9月1日 AFP】アイスランドは欧州で最も森林の少ない国といわれるが、9世紀末に北欧の海洋民バイキング(Viking)が入植するまでは、緑豊かな森が広がる島だった。今、土壌侵食でまるで月面と化した低地の景観を一面の森へと変えようと、国を挙げて植林の試みが進んでいる。

 バイキングが北大西洋の無人島だったアイスランドに入植したのは9世紀末。当時は島の4分の1以上を、カバの木を中心とした森が覆っていた。それから100年とたたないうちに、バイキングは家を建てる資材として、また放牧地を切り開くため、もともとあった森林の97%を伐採してしまった。

 今や、アイスランドで森を目にすることはほとんどない。植林された木々もまだ若すぎて、「アイスランドの森で迷子になっても、立ち上がるだけで道が見つかる」と冗談の種になるほどだ。

 厳しい気候に加え、活発な火山活動の影響で、森林の再生はひたすら困難だ。火山灰や溶岩が地面を覆ってしまうこともしばしばある。

 国連食糧農業機関(FAO)の2015年の報告書によれば、アイスランドの国土に占める森林面積は0.5%しかない。木々が生えていないということは、土壌の侵食を防いだり保水性を高めたりしてくれる植生が存在しないことを意味する。世界最北の島国アイスランドは、広範な砂漠化の危機にあるのだ。

 1950年代に森林再生の取り組みが始まり、特に1990年代の努力が功を奏して、岩がちなアイスランドの大地にはいくばくかの緑が復活した。植林活動は現在も続いている。だが、アイスランドの土壌は窒素含有量が少ないため肥沃(ひよく)化がなかなか進まず、木々の成長速度は南米アマゾン(Amazon)の熱帯雨林の10分の1程度しかない。

 アイスランド政府は2018年9月に発表した気候変動対策の中で、植林を優先事項の一つに掲げた。

 そして、矛盾したことに、気候変動に伴ってアイスランドの木の成長速度は上がっている。森林保全当局のエーデルスタイン・シガーゲイルソン(Adalsteinn Sigurgeirsson)氏は、「温暖化によってアイスランドでは樹木の成長が促されているようだ。その結果、炭素隔離率も上がっている」と語った。

 映像は、5月20、21日に撮影。(c)AFPBB News
最終更新:9/1(日) 10:03
AFPBB News

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タワークレーンはどうやって屋上に上がるか

意外と知らない、身近にある「すごい技術」

どうやって屋上に上げたか気になりませんか?(写真:ikuyan / iStock)
身近で活躍する「モノ」にはすべて、「活躍できるだけの技術」がある。だが私たちは、それを意識することはほとんどない。たとえば建設現場、ビル屋上の「タワークレーン」。これを見たとき、「クレーンをどうやって屋上に上げたのだろう」と思ったことは誰にでもあるはずだが、実はこのクレーンのしくみに「すごい技術」がうまく生かされているのだ。
新刊『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』を著したサイエンスライターの涌井良幸・貞美両氏に、身近にあるモノの構造やしくみについて、イラストを使いながらわかりやすく解説してもらった。

 建設現場でよく見る「タワークレーン」の謎

高層ビルの建設工事、一番高いところで大活躍しているモノがある。そう、「タワークレーン」だ。建設現場でもよく目立つので、道すがら、工事の様子をなにげなく見物する人たちの人気者といってもいいだろう。
タワークレーンは高層ビルの建築に欠かせない。低層のビルならクレーン車で資材を最上階まで上げられるが、高層ビルだとそうはいかないからだ。資材を最上部に持ち上げるには、どうしてもタワークレーンの力が必要となる。
ところでこのタワークレーン、建設過程でちょっと不可思議なことが起こる。ビルの成長に合わせ、自分自身も高い位置にどんどん移動していくのだ。
タワークレーンのクライミング(イラスト:小林哲也)

次ページ工事の流れは…

タワークレーンの一連の工事の流れは、①組み立て②クライミング③解体という順で行なわれる。①の「組み立て」は、足場を固める作業。次の②では、ビルの成長に合わせ、クレーンを尺取虫のようにはい上がらせていく。③の「解体」では、親亀・子亀・孫亀方式で屋上から分解していく。すなわち、ひと回り小さい子クレーンを元の親クレーンの隣に設置し、それで親クレーンを解体する。
次に、その子クレーンはさらに小さい孫クレーンを隣に設置して解体。これらを繰り返すことで、用済みのクレーンは地上に下ろされるのだ。そして、最後に残った解体用クレーンは人力で解体し、エレベーターで階下に下ろされる。

「マストクライミング」と「フロアクライミング」

尺取虫的にタワークレーンがクライミングする方法には、クレーン本体がマスト(本体を支える柱。帆船の「マスト」に見立てている)を昇る「マストクライミング」と、工事の進捗と共に工事中の鉄骨を使って土台部分を階上に上げる「フロアクライミング」がある。
前者は超高層マンション建築、後者は超高層ビル建築によく利用される。なお、電線の鉄塔を立てる際にもクレーンのクライミングが用いられる。山奥に鉄塔が立っている謎も、これで解消するはずだ。
タワークレーンの解体(イラスト:小林哲也)

 
次ページ意外と知らない、ビルの耐震・制震・免震構造の違い

都会には超高層ビルが林立している。地震多発国の日本なのに大丈夫かと心配になるが、備えはなされている。「耐震」「制震」「免震」と呼ばれる技術である。
1963年以前、日本では高さ31メートルを超える高層ビルの建築は法的に許されなかった。しかし、技術の進歩などにより法律が改正され、100メートルを超えるビルの建築も可能になった。その最初が東京にある「霞が関ビル」である。このビルが日本の高層建築の口火を切ることになる。
霞が関ビル以前のビル建設の地震対策には「耐震構造」がとられていた。鉄筋コンクリートで柱と壁を強くして地震の揺れに対抗する「剛構造」である。しかし、100メートルを超える高層ビルに適用すると、鉄とコンクリートの量で実用に耐えなくなってしまう。そこで採用されたのが「制震構造」だった。地震の揺れに合わせて建物を適度に揺らし、エネルギーを分散・吸収する「柔構造」の建築法だ。
「揺れ」を吸収する3つの構造(イラスト:小林哲也)

柔構造理論の発想には五重塔の技術が利用されている

柔構造理論の発想には、古寺にある五重塔の技術が利用されている。関東大震災で、東京でも多くの建物が倒壊するなか、上野寛永寺の五重塔は元の姿を保っていた。それを見た建築学者が構造を調べ、現代に活かしたのである。「心柱制振」と呼ぶ構造で、2012年に竣工した東京スカイツリーにも採用されている。
2011年の東日本大震災では、高層ビルが長周期振動で大きく揺れ、けが人も出た。これは柔構造の欠点である。ビルは壊れないが、大きく揺れることがあるのだ。現代では、この揺れも抑えようとする技術が開発されている。それが「免震構造」である。
免震構造はゴムなどの変形しやすいものからなる装置の上に建物を構築し、地震エネルギーが建物に伝わりにくくする方法。これに制震構造を組み合わせることで、地震の揺れを大きく低減させることができる。

次ページ建築目的に合う技術が採用されている

耐震、制震、免震のどれが優れているのかは場合による。あくまで建築目的に合う技術が採用されているのである。
五重塔を模した東京スカイツリーの構造(イラスト:小林哲也)

今さら聞けない「ゴミ収集車」のしくみ

ゴミ収集日に大活躍するゴミ収集車。作業員がゴミを入れると、回転板が器用にそれを押し込んでくれる。だが、そもそも収集車の構造とはどんなものなのかは、意外とよく目にするクリーンパッカー方式(略してパッカー車)を例に、そのしくみを説明しよう。
パッカー車は、主に燃えるゴミの収集に利用される。後部に回転板が2枚配置され、これが組み合わさって回転することで、ゴミを運転席側に押し込む。そして収集を終え、ゴミ処理場に戻ると、詰め込んだゴミを仕切りの排出板で外に押し出す(ダンプカーのように荷台を斜めにして圧縮ゴミを排出するものもある)。
クリーンパッカー車の構造(イラスト:小林哲也)

次ページパッカー車以外にも…

ゴミ収集車には、パッカー車以外にもいくつかの方式(プレスローダー方式など)があり、大きさの違いもあるが、この多様性には理由がある。1つは、集めるゴミ・集める地域に適した方式と大きさが要求されるという、至極当然の理由だ。

ゴミ処理施設の建設費が高騰している

『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)
もう1つ隠れた理由がある。ゴミ処理施設の建設費が高騰しているのだ。処理施設、特に焼却施設は公害対策のため高度な技術が要求される。また、エコ社会の実現に向け、燃やした廃熱で発電する施設を併設するのも時代の流れだ。当然、建設コストは膨大となり、小さな自治体が建設するのは財政的にも困難。そこで、いくつかの自治体がまとまって1つの処理施設を作り、利用するというネットワーク方式が一般的になりつつある。
ネットワークに対応するには、多様なゴミ収集車が必要になる。家庭からのゴミは小型収集車で中継施設に集め、そこでさらに圧縮して大型収集車で処理施設に運ぶ。このようにして、効率的なゴミの移動と処理を可能にしているのだ。
ネットワーク化されるゴミ収集(イラスト:小林哲也)
この記事では、私たちが日々の外出時になにげなく目にしている“すごい技術”を簡単に解説したが、「身近なのにそもそもよく知らない」ことは、あなたの身のまわりにも実はたくさんある。ちょっとだけ目を留めてみるだけで、日常がもっと楽しく、より刺激的なものになるかもしれない。

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タコの最期は涙なくしては語れないほどに尊い

雄も雌も子孫を残す瞬間のために命を捧げる

タコがどう最期の時を迎えるか、知っていますか?(イラスト:Remboman/PIXTA)
生きものたちは、晩年をどう生き、どのようにこの世を去るのだろう──。
老体に鞭打って花の蜜を集めるミツバチ、成虫としては1時間しか生きられないカゲロウなど生きものたちの奮闘と悲哀を描いた『生き物の死にざま』から、タコの章を抜粋する。

子育てをする無脊椎動物、タコ

タコのお母さんというと、何ともユーモラスでひょうきんな感じがする。
イメージとは、怖いものである。
タコは、大きな頭に鉢巻をしているイメージがあるが、大きな頭に見えるものは、頭ではなく胴体である。
映画『風の谷のナウシカ』に王蟲(おうむ)と呼ばれる奇妙な生き物が登場する。王蟲は体の前方に前に進むための脚があり、脚の付け根の近くに目のついた頭があり、その後ろに巨大な体がある。じつはタコも、この王蟲と同じ構造をしている。つまり、足の付け根に頭があり、その後ろに巨大な胴体があるのだ。ただし、タコは前に進むのではなく、後向きに泳いでいく。
タコは無脊椎(むせきつい)動物の中では高い知能を持ち、子育てをする子煩悩な生物としても知られている。
海に棲む生き物の中では、子育てをする生物は少ない。
食うか食われるかの弱肉強食の海の世界では、親が子どもを守ろうとしても、より強い生物に親子もろとも食べられてしまう。そのため、子育てをするよりも、卵を少しでも多く残すほうがよいのである。
魚の中には、生まれた卵や稚魚の世話をするものもいる。子育てをする魚類は、とくに淡水魚や沿岸の浅い海に生息するものが多い。狭い水域では敵に遭遇する可能性が高いが、地形が複雑なので隠れる場所はたくさん見つかる。そのため、親が卵を守ることで、卵の生存率が高まるのである。一方、広大な海では、親の魚が隠れる場所は限られる。下手に隠れて敵に食べられてしまうよりも、大海に卵をばらまいたほうがよいのだ。

次ページタコはメスが子育てする珍しい生物

子育てをするということは、卵や子どもを守るだけの強さを持っているということなのである。
また、魚類では、メスではなく、オスが子育てをする例のほうが圧倒的に多い。
オスが子育てをする理由は、明確ではない。ただし、魚にとっては卵の数が重要なので、メスは育児よりも、その分のエネルギーを使って少しでも卵の数を増やしたほうがよい。そのため、メスの代わりにオスが子育てをするとも推察されている。
しかし、タコはメスが子育てをする。タコは母親が子育てをする海の中では珍しい生き物なのである。

一生に1度の大イベント

タコの寿命は明らかではないが、1年から数年生きると考えられている。そして、タコはその一生の最後に、1度だけ繁殖を行う。タコにとって、繁殖は生涯最後にして最大のイベントなのである。
タコの繁殖はオスとメスとの出会いから始まる。
タコのオスはドラマチックに甘いムードでメスに求愛する。しかし、複数のオスがメスに求愛してしまうこともある。そのときは、メスをめぐってオスたちは激しく戦う。
オス同士の戦いは壮絶だ。何しろ繁殖は生涯で1度きりにして最後のイベントである。このときを逃せば、もう子孫を残すチャンスはない。激高したオスは、自らの身を隠すために目まぐるしく体色を変えながら、相手のオスにつかみかかる。足や胴体がちぎれてしまうほどの、まさに命を懸けた戦いである。
この戦いに勝利したオスは、改めてメスに求愛し、メスが受け入れるとカップルが成立するのである。そして相思相愛の2匹のタコは、抱擁し合い、生涯でたった1回の交接を行う。タコたちは、その時間を慈しむかのように、その時間を惜しむかのように、ゆっくりとゆっくりと数時間をかけてその儀式を行う。そして、儀式が終わると間もなく、オスは力尽き生涯を閉じてゆく。交接が終わると命が終わるようにプログラムされているのである。
残されたメスには大切な仕事が残っている。
タコのメスは、岩の隙間などに卵を産みつける。
ほかの海の生き物であれば、これですべてがおしまいである。しかし、タコのメスにとっては、これから壮絶な子育てが待っている。卵が無事にかえるまで、巣穴の中で卵を守り続けるのである。卵がふ化するまでの期間は、マダコで1カ月。冷たい海に棲むミズダコでは、卵の発育が遅いため、その期間は6カ月から10カ月にも及ぶといわれている。

次ページ卵から絶対に離れないメス

これだけの長い間、メスは卵を守り続けるのである。まさに母の愛と言うべきなのだろうか。この間、メスは一切餌を獲ることもなく、片時も離れずに卵を抱き続けるのである。
「少しくらい」とわずかな時間であれば巣穴を離れてもよさそうなものだが、タコの母親はそんなことはしない。危険にあふれた海の中では一瞬の油断も許されないのだ。
もちろん、ただ、巣穴の中にとどまるというだけではない。
母ダコは、ときどき卵をなでては、卵についたゴミやカビを取り除き、水を吹きかけては卵のまわりの澱(よど)んだ水を新鮮な水に替える。こうして、卵に愛情を注ぎ続けるのである。

ふ化まで卵を守りとおす母ダコ

餌を口にしない母ダコは、次第に体力が衰えてくるが、卵を狙う天敵は、つねに母ダコの隙を狙っている。また、海の中で隠れ家になる岩場は貴重なので、隠れ家を求めて巣穴を奪おうとする不届き者もいる。中には、産卵のためにほかのタコが巣穴を乗っ取ろうとすることもある。
そのたびに、母親は力を振り絞り、巣穴を守る。次第に衰え、力尽きかけようとも、卵に危機が迫れば、悠然と立ち向かうのである。
『生き物の死にざま』(草思社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします
こうして、月日が過ぎてゆく。
そして、ついにその日はやってくる。
卵から小さなタコの赤ちゃんたちが生まれてくるのである。母ダコは、卵膜にやさしく水を吹きかけて、卵を破って子どもたちが外に出るのを助けるとも言われている。
卵を守り続けたメスのタコにもう泳ぐ力は残っていない。足を動かす力さえもうない。子どもたちのふ化を見届けると、母ダコは安心したように横たわり、力尽きて死んでゆくのである。
これが、母ダコの最期である。そしてこれが、母と子の別れの時なのである。

セミの最期は澄んだ空を見ることさえできない

8/25(日) 6:20配信
東洋経済オンライン
生きものたちは、晩年をどう生き、どのようにこの世を去るのだろう──。
老体に鞭打って花の蜜を集めるミツバチ、成虫としては1時間しか生きられないカゲロウなど生きものたちの奮闘と哀切を描いた『生き物の死にざま』から、セミの章を抜粋して掲載する。

■死を待つセミは何を見る

 セミの死体が、道路に落ちている。

 セミは必ず上を向いて死ぬ。昆虫は硬直すると脚が縮まり関節が曲がる。そのため、地面に体を支えていることができなくなり、ひっくり返ってしまうのだ。
 死んだかと思ってつついてみると、いきなり翅(はね)をばたつかせてみたりする。最後の力を振り絞ってか「ジジジ……」と体を震わせて短く鳴くものもいる。

 別に死んだふりをしているわけではない。彼らは、もはや起き上がる力さえ残っていない。

 死期が近いのである。

 仰向けになりながら、死を待つセミ。彼らはいったい、何を思うのだろうか。

 彼らの目に映るものは何だろう。

 澄み切った空だろうか。夏の終わりの入道雲だろうか。それとも、木々から漏れる太陽の光だろうか。
 ただ、仰向けとは言っても、セミの目は体の背中側についているから、空を見ているわけではない。昆虫の目は小さな目が集まってできた複眼で広い範囲を見渡すことができるが、仰向けになれば彼らの視野の多くは地面のほうを向くことになる。

 もっとも、彼らにとっては、その地面こそが幼少期を過ごした懐かしい場所でもある。

 「セミの命は短い」とよくいわれる。

 セミは身近な昆虫であるが、その生態は明らかにされていない。セミは、成虫になってからは1週間程度の命といわれているが、最近の研究では数週間から1カ月程度生きるのではないかともいう。
 とはいえ、ひと夏だけの短い命である。

 しかし、短い命といわれるのは成虫になった後の話である。セミは成虫になるまでの期間は土の中で何年も過ごす。

 昆虫は一般的に短命である。昆虫の仲間の多くは寿命が短く、1年間に何度も発生して短い世代を繰り返す。寿命が長いものでも、卵から孵化(ふか)して幼虫になってから、成虫となり寿命を終えるまで1年に満たないものが、ほとんどである。

 その昆虫の中では、セミは何年も生きる。実に長生きな生き物なのである。

■幼虫の期間が長い理由

 一般に、セミの幼虫は土の中で7年過ごすといわれている。そうだとすれば、幼稚園児がセミを捕まえたとしたら、セミのほうが子どもよりも年上ということになる。

 ただし、セミが何年間土の中で過ごすのかは、実際のところはよくわかっていない。何しろ土の中の実際の様子を観察することは容易ではないし、仮に7年間を過ごすとすれば、生まれた子どもが小学生になるくらいの年数観察し続けなければならない。そのため、簡単に研究はできないのだ。土の中での生態については、いまだ謎が多いのである。
 それにしても、多くの昆虫が短命であるのに、どうしてセミは何年間も成虫になることなく、土の中で過ごすのだろう。

 セミの幼虫の期間が長いのには、理由がある。

 植物の中には、根で吸い上げた水を植物体全体に運ぶ導管(どうかん)と、葉で作られた栄養分を植物体全体に運ぶ篩管(しかん)とがある。

 セミの幼虫は、このうちの導管から汁を吸っている。導管の中は根で吸った水に含まれるわずかな栄養分しかないので、成長するのに時間がかかるのである。
 一方、活動量が大きく、子孫を残さなければならない成虫は、効率よく栄養を補給するために篩管液を吸っている。ただ、篩管液も多くは水分なので、栄養分を十分に摂取するには大量に吸わなければならない。そして、余分な水分をおしっことして体外に排出するのである。

 セミ捕り網を近づけると、セミは慌てて飛び立とうと翅の筋肉を動かし、体内のおしっこが押し出される。これが、セミ捕りのときによく顔にかけられたセミのおしっこの正体である。
 夏を謳歌するかのように見えるセミだが、地上で見られる成虫の姿は、長い幼虫期を過ごすセミにとっては、次の世代を残すためだけの存在でもある。

■繁殖行動を終えた成虫に待つのは…

 オスのセミは大きな声で鳴いて、メスを呼び寄せる。そして、オスとメスとはパートナーとなり、交尾を終えたメスは産卵するのである。

 これが、セミの成虫に与えられた役目のすべてである。

 繁殖行動を終えたセミに、もはや生きる目的はない。セミの体は繁殖行動を終えると、死を迎えるようにプログラムされているのである。
 木につかまる力を失ったセミは地面に落ちる。飛ぶ力を失ったセミにできることは、ただ地面にひっくり返っていることだけだ。わずかに残っていた力もやがて失われ、つついても動かなくなる。

 そして、その生命は静かに終わりを告げる。死ぬ間際に、セミの複眼はいったい、どんな風景を見るのだろうか。

 あれほどうるさかったセミの大合唱も次第に小さくなり、いつしかセミの声もほとんど聞こえなくなってしまった。

 気がつけば、周りにはセミたちのむくろが仰向けになっている。夏ももう終わりだ。
 季節は秋に向かおうとしている。

稲垣 栄洋 :静岡大学農学部教授
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最終更新:8/25(日) 6:20
東洋経済オンライン

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