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少しの怒りを抑えながらフロントへ降りた。
「説教だ!説教。」
すると彼女はすでに待っていた。
「こっちです。こっち。」
「あぁ。。。すみませんお待たせしました。」
「じゃあ 行きましょうか?」
イカン!!!
空港からの流れで何やら行動のイニシアチブを握られている。
「まあ俺も初めて来たし、仕方ないか。。」
黙って付いていくことにした。
Soi Bang Lanの道を更に入ったsoi(路地などの意味です。)の中にあるタイ料理の店に
入った。
「ここの料理は何でも結構おいしいですよ。」
「そうなんだ。」
その店は何故か、日本の寿司屋さんの様な造りで、店員も寿司屋さんの様な格好で
そんな姿でタイ料理をサーブしている、おかしな店だった。。
「この店、何か間違ってない?」
「うん。私もそう思います。でもね結構おいしんですよ。ここの店長さんは日本語も
話せて、日本にも住んでいたんですよ。」
「君は良く来るの?」
「まあ 一応、ここへ来たら一度は来ますね。」
「ふ〜ん。」
「とりあえずビールにしますか?」
「そうだね。」
確かこんな会話から始まったと思います。
「私のこと変な女だと思ってます?」
「う。。。」
答えられない。。。
「仕事は何をしてるの?」
「公務員ですよ。岡山市役所で働いてます。」
「ふ〜ん。そっか。」
「あなたは?」
「会社員だよ。」
「お休みで一人旅?」
「うん。そうね。」
「そうなんだ。。。」
彼女は本当に何度も来ている様で、店員とも確かに知り合いの様だった。
店員は私の顔をジっと見てニヤっと笑った。
料理を食べ、ビールを飲む。
この間の会話はもうあまり覚えていない。
ひとしきり、差しさわりの無い会話をしていたと思う。
お互いに名前は名乗らなかった。
「あのさ、余計な事かも知んないんだけど。。。」
「ええ。」
「友人のところに泊まってるんでしょ?どうして友人と遊ばないの?」
「もう定期的に何回も来てるから、久しぶり〜とか、あらたまった出迎えとか何も
ないんですよ。勝ってに部屋に入って、勝ってに寝てる感じです。」
「ふ〜ん。」
その件は良しとしよう。
何となくわからなくも無い。。。
「とりあえず不自然じゃない。これって。」
「そうですか?」
心の声「そう、感じないのか。。?」
「ご迷惑でした?」
「いや、そう言う訳じゃないんだけど。。。俺も初めて来たし良くわかんないからさ。」
「じゃあ、いいじゃないですか。深く考えないでくださいよ。」
「私、自分でも少し変わった人間だなあって思ってますよ。」
そしてケタケタ笑う。
何かもうどうでも良くなって来た。
大人の男性として毅然した態度で説教をしてやろうと思っていたが
多分、聞き流されてケタケタ笑うだけだろう。。。
もうマインドがタイ人に近いのかも知れない。
職場も硬そうだから、「ここへ来た時ぐらい私は日本人じゃなくなるのよ。」みたいな
開き直り方をしている。。。
「GO GO行きますか?」(GO GO BARの事です。)
「そうね。一人でも行ってたけどね。」
「いやらしい。」
「あのね。俺はピックアップしないから。」
「雰囲気だけ楽しむんだよ。」
「え〜〜。本当〜で〜すか〜〜?」
そう言えば、この子を連れていけば、女の子のプレッシャーは掛からないな。。。
うん。
いいかも知れない。
「じゃあちょっと行く?」
「お邪魔じゃないんですか〜。」
「全然いいよ。」
Soi Bang La沿いのBAR街の店に二人で入った。
怪しく踊る、長い脚の女性達(全部女性か疑わしいですが。。。)。
ここは自由恋愛の場、女性が入る様なところでは無いが
彼女はあまり経験がないらしく興味深々の様だった。
フラッシュの光の渦の中で、カウンター席でダンサーに目線を合わせてもらおうと
欧米人の男どもが必死になっている。
「あれってさ、踊ってる女の子にも気に入ってもらわないとダメなんだよ。」
「もちろん向こうも商売だから、仕方なく降りてくる事もあるけどね。」
「へえ〜。おもしろいですね。私はこのお立ち台で踊れないんですか?」
「君、おもしろい事言うね。」
「私もはじめてじゃないんですけど、友達は女の子なので、こういう店の中には
入らないんですよ。」
「良く来るんですか?こう言うお店。」
「BKKでは何度か行ったよ。」
「ふ〜ん。」
「DISCO行きませんか?」
「ここじゃ踊れないじゃないですか。」
「何、踊りたいの?」
「私がここへ来るのは、すべてをリセットするためです。もちろんここが好きだし、タイ人も
好きなんですけど。。。」
すぐ近くにあるDISCOへ向った。
結構な広さで、ここも欧米人がほとんどだった。
もう一度、乾杯をして、しばらくすると彼女は「踊りませんか?」と言う。
「俺はいいよ。踊っておいでよ。」
彼女は一人で広いダンスフロアの中に消えて行った。
その広い店内で、私は彼女を見失った。
「もういいか。」
「何か、言ってる事は、まともそうだし。。ちょっと変だけど。。。」
私はそのまま、彼女を置いて店を出た。
多分、彼女は私に気付かずに踊っている事だろう。
あの子に説教などする必要は無い。
しなくて良かった。
何も、本音は話してないけど、馬鹿じゃない様な気がした。
ただ一時的に日本の現実から逃避し、自分を開放しているだけなのです。
日本のものさしをそのまま持って、ここへ来ている私が
この地に溶けていないだけなのです。
ただそれだけなのです。。。
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