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夢を見た、で始まるのは文豪夏目漱石の夢十夜です。
もちろんそんな高尚な話ではありませんが昨夜見た夢を書いておきます。
私は焦っていた。
ああ、時間がない。早く飯を食って戻ってこなければ。
あれもこれもやらなければいけないのに、どうして昼休みはこんなに短いのか?
しかもこんな不慣れな場所で。
私はあいさつもそこそこに会議室を出るとエレベーターホールへ小走りに急いだ。
廊下の床はホテルのようにふかふかの絨毯で足が取られる。
どうしてこんな床なのか?まったくイライラする。
しかも何故か絨毯が真っ黒だ。汚れているのではない。喪服のような黒なのだ。
壁も天井までも真っ黒で黒曜石のように輝いている。いったい誰の趣味だろう?まったくイケてない。
ピカピカの黒い壁には憔悴した私の顔が映っていた。
胸の動悸を感じながらエレベーターホールに着くとちょうど1基のエレベーターのドアが閉まるところだった。
「あ、乗ります」
とっさに声をかけ、閉まりかけたドアに体を押し込んだ。
しかし乗ってみるとエレベーター室内には私一人。なんだ、声に出して損した。
しかもエレベーターは上昇していくではないか。
ええ〜?1階に降りたかったのに!
あわてて近い階のボタンを押すが、エレベーターはぐんぐん上昇していく。
外に出てコンビニで軽く済まそうとしたのにとんだ時間ロスだ。これはいよいよ昼食抜きか?
それにしてもいったい何階まで連れていかれるんだろう?早く降ろしてくれ。
と、体が徐々に重くなってきていることに気付いた。上昇を始めた時に感じる一時的なヤツではない。足に加わる重力が継続的に増している。
見ると階数を表すデジタル表示がスゴイ勢いで変わっている。
普通じゃない。
今や壁にもたれてかろうじて体を支え、立っているのがやっとだ。
これはマズいんじゃないか?明らかにエレベーターの故障だろう。
だとしたらこのエレベーターは最上階に叩きつけられるんじゃないか?
私は恐怖した。ヤバい。何とかしなければ!
必至に室内を見回すが頼りになりそうなものはない。廊下と同じく鏡面仕上げの壁にひきつった私の顔が映るばかりだ。
しかし何故かエレベーターは最上階に達する前に急に速度を落とした。
なんだ、故障ではなかったのか?いずれにしろこのエレベーターは降りて別のに乗ろう。もうコリゴリだ。
しかし、である。
エレベーターはドアを開くことなく下降に転じた。
オイオイオイオイ!!
しかも、もしかして加速していないか?
マズいマズいマズいマズい!
先ほどとは逆に私の足が床から離れようとしている。飛行機で急降下して無重力を疑似体験するというのがあったがアレに近い。違うのはこの急降下が終わった時、私は床に叩きつけられるということだ。
私は必死に考えた。叩きつけられるとき足から着地したほうがいいのか、それとも受け身の要領で体ごと衝撃を逃がしたほうが生き残る可能性が高いのか?
そもそもいったいどのくらいの加速度が掛かっているのだろう?そんな次善策が通用する高さだろうか?
今や私の体は完全に宙に浮き両手が天井に着こうとしている。
これはもうダメだ。仮に命が助かったとしても一生癒えない傷を負うのは間違いない。
アレもしたかったコレもしたかった、と私の頭を走馬灯のように駆け巡った。
エレベーターの箱の外から激しい金属の軋る音がしたかと思うと、室内の電灯が消えた。
そして私の体が床に。。。
と言うところで目が覚めた。
ホントもう勘弁してよ。
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