母と子8 1914年 厚紙 油彩 50×38cm
個人蔵。 シャガールは「女の一生」の階梯を追い続けて,子育ての原形とも言うべき哺乳
の姿をおおらかに描いた。 若い母親の色香はその手の中であぶなげに乳を吸う赤ん坊の奇妙な姿態と対照 的に表出される。 惜しげもなく露にした肉づきのいい裸身を,シャガールはいつの間にか気持ち の余裕をもって眺められるようになっていた。 結婚前ではあったが……。 絵を描きながら,シャガールは,愛の営みを??予習"しているかのようである。 身近の情景や人物を描いているのだが,そこに表現されるイメージの持つ本質的 な内包が,日常的な存在の価値を高める作用をする。 「誕生」がキリストの「降誕」とどこか遠くで結び合うのと同じ趣向で, この「母と子」の作品は,新しい身近な「慈愛のマドンナ」に見えはしないだ ろうか。 聖なるものが地上的な存在の中に遍在するという考えや感じ方は,とくにユダヤ的なのであろうか。 シャガールの描く愛は,たんなる俗愛にとどまってはいない。 |
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